アメリカスポーツ三昧

アメリカ永住コースか、または第三国に出国か!?スリルとサスペンスの人生とは別にアメスポは楽しい。

Lacrosse

PLL決勝とスポーツ賭博と普及意欲

ツアー型男子ラクロスのプロリーグPremier Lacrosse League = PLLの決勝戦が日曜日に行われました。今季がPLLにとっては創設3年目のシーズン。過去2年連続でチャンピオンだったWhipsnakesを破ってChaosが初優勝しています。
ツアー型で所属8チームはニックネームはあってもアメスポ標準の「都市名+ニックネーム」という名前はない形態です。
場所はサッカーMLSのDC Unitedの本拠地Audi Fieldで。観客数は公式サイトを見ても発表がないようですが目測で3,000人ぐらいでしょうか(スタジアム収容20,000)。放送はNBC地上波と同系列のストリーミングPeacockで。NFLの裏番組なので見ている人はスポーツの好みがかなりニッチな方であろうと推測できます。試合開始時刻は東部時間正午で1時間NFLのキックオフより早いのが僅かな工夫。

試合はまずまずの好試合。PLLについては2年前の創設時に意図的に接戦を演出したという疑惑を当ブログ(コメント欄でですが)では指摘したことがあります。「試合をただやるのを見ろ」というのが現在成立するビジネスと言えるかどうかという点と、スポーツの純粋性というところを考えると一方的に批判はできないものの、危ういものだったなというのが当時の感想でした。
3年目の今季の決勝戦はChaosが抜け出して14−9で快勝したので、意図的に接戦を演出したプロレス的疑惑は存在しなかったのですが、もう一つ別の危ういものもありました。

つい先月触れたのですが実はPLLは積極的にスポーツ賭博との関わりを持っています。試合のスコアの画面のところにO/Uの賭けの数字が常に表示されています。この決勝戦だと23.5でした。Over/Underという賭けは両軍の得点の合計が設定数値の上になるか下になるかに賭ける各スポーツでよくあるスポーツ賭博ですが、これをPLLは試合の画面内に表示するという意味で積極的にエンゲージしている。

で。14-9が最終スコアで優勝の行方は決した最終盤戦にも追うWhipsnakesが果敢にゴールアタック。 両軍得点合計はこの時点で23。この最後の攻防は試合や優勝の行方にはもう無意味ですけれど、なんとO/Uで賭けていた人にとってはこの場面って手に汗握る盛り上がる瞬間ってことなんですよね。このまま決着ならアンダー、ラストゴールが入ればオーバーになるので。
選手たちがそれを意識していたかどうかは知る由もないですが、なにせまだ遠くない過去に得点調整をした疑惑の過去(少なくとも私の目では)があるPLLだけに、このギリギリになってこの熱の入った攻防はどうなんだよ、選手たちはわかっていてやってるのか?と変にハラハラしてしまいました。
O/Uのラインさえ知らなければ気にもならない攻防が、なにせ画面中央にデカデカと出てるので。


さてそれはおいておいて、試合のハーフタイムにPLLの創始者であるPaul RabilがPLLの展望などを語って登場していました。決勝やオールスター戦に団体のトップがTVに登場して総括質疑のようなことをするのはアメスポではおなじみのシーンです。Paulは選手として今季を最後に引退することを発表してます。

印象に残ったのはPaul Rabilがラクロス界のTony Hawkになって全米の公園にラクロスゴールを建てたいんだという話です。
Tony Hawkというのはスケートボード界のレジェンド、というかX Sportsに興味のない人が名前を知っているほぼ唯一の選手です。選手としては1980年代から90年代にかけての選手ですが、その後もビデオゲームのタイトル名になったり、現在2020-21年になってもTVコマーシャルに出ていたりというスケートボード界の顔として30年以上活躍している方ですね。
で、Tony Hawkがその顔となって全米の地方自治体に大量のスケートパークが建造されていきました。ちょうど私がアメリカに住み始めてからの変化でしたので、あーこんな小さな街でもスケートパークを作るんだ、へー、というようなのを何度も見かけたものです。あれが全米津々浦々に展開されていったのがTony Hawkの功績だったと。で、Paul Rabilはそれと同じことをラクロス界でやりたいと言っているのです。

野球のバックネットとダイヤモンド、サッカーゴール、テニスコートなどが郊外の公園に整備されているのはアメリカの郊外でのおなじみの風景でしょう。街中でも郊外でもバスケットボールゴールが設置されているのもまたおなじみのシーンです。
それに加えてスケートパークが(多くの場合警察署の隣とか)市街地に整備されているのもまたおなじみの風景になったと言えそうです。Paulはそれをラクロスでやりたいと言ってるわけです。野良ラクロスゴールをあちこちに建てて、ふと気が向いたときに選手がやってきて力いっぱいシュートする姿が全米各地で見られるようにしたいってわけですね。良い目標なんじゃないでしょうか。発想が健全だし、確かに効果ありそうに思います。ラクロスってキャッチボールする相手とか、壁打ちはできてもなかなか力いっぱいシュートををしまくる場というのは得難い面はたしかにありそうなので。土地は余ってる場合の多いアメリカなので、設置コストも知れていそうですから割とうまくいくのかもです。

五輪の裏でAUL on FS1

五輪一色であろう日本と違い、五輪放送はNBC系列の独占のためアメスポ最大手のESPN系列を始め、FOX SportsもCBS Sportsも他の放送をしています。

FOXのスポーツメイン局であるFS1では新女子スポーツ団体Athletes Unlimitedのラクロスの放送をやっていました。略称はAUL。Athletes Unlimitedは他にバレーボールとソフトボールも開催主体となっていて、バレーボールの場合はAUVという略称になっていました。ソフトボールはまだシーズンが開催されていないので確認してませんがきっとAUSなのでしょう。

バレーボールのときも紹介しましたが、AULも固定のチームは存在せずエース的存在のリーダーの名前をとってTeam O'Donnell、Team Bensonといったその場限りの名前で活動。

意外だったのが放送が手間をかけていて見栄えの良い放送になっていたことです。過去見てきたラクロスの放送って明らかに中継機材がメジャースポーツのお下がりっぽくてそれはただTV観戦しているだけでもわかる。それがこの日の放送は絵がきれい。カメラの台数もまずまずあるのでアップの絵も多い。その上、リプレイも早いし、ボールの動きや人の動きを示す矢印やらhalo型スポットライトやらがこぎれいに付加されている(=コントロールルームに人を割いているはず)。これはマイナースポーツではとても珍しいと思いました。画面からマイナー臭がしない。

またアナウンサーが選手やプレーについてかなり予習をしてきているのがわかる、かつ熱の入った内容だったのも大いに意外です。意外にもFOX SportsはAULへの継続的な支援を考えているのかもと思わせる初回放送でした。

季節の良いこの時期の昼間のTV放送はそれがなんのジャンルでも不利な時間帯。その上裏には五輪もあるという中、視聴者数でヒットというわけにはいかないのでしょうが、たまたま見てしまった私の感想としてはなかなか良かったのではないかと思いました。

なお、AULは独自ルールで9人対9人での試合となっていたはずでしたが、プレーの流れをざっと見ている感じでは人数の違いはあまり目立たず。

NLL新チームの件を整理

コメント欄で教えていただいた情報をもとに整理しなおしてみました。NBA Brooklyn Netsのオーナーであり、アリババの創始者であるビリオネアのJoseph Tsai氏が室内プロラクロスリーグのNLLの新チームを他のスポーツセレブと共同出資で創設した件です。

当初取り上げたのはNLLのLas Vegasにできる新チームのオーナーにTsai氏を含むグループがなったという話だったわけですが、実はTsai氏はそれ以前に同じNLLのSan Diego Sealsも保有していたと。よってTsai氏にとってはNLLの2チーム目の保有となるわけです。
このLas Vegasの新チームも含めて2022年シーズンにはNLLは15チーム態勢になるようです。うちカナダに5チームが所在。同じオーナーによるNLLの複数チームの保有は他にも前例があり珍しくない模様です。メジャースポーツでは複数チームの所有は禁じられますが、マイナースポーツではしばしばあることです。サッカーのMLSなども零細の頃は1つのオーナー企業が最大5チームだったかな、リーグの半分を所有するといういびつな形で支えてリーグの崩壊を免れていたことがあります。

Tsai氏はYale大在学中にラクロスをプレーしていたそうで、どうも儲けるためというより、ラクロス愛からの支援的な資金注入という理解の方が正しいのかもしれません。調べたところ1チーム目のSan Diego Sealsで参入したときにTsai氏が払った金額というのが$5 millionだったとか。米国内で露出が高いとは言い難いNLLへの参入の金額としては随分高い気がします。

なぜ投資先の都市がSan Diegoなのかなという疑問を最初に感じたのですが、その謎は他の方面からとけました。これもコメント欄で教えていただいたのですが、Tsai氏の娘さんがStanford大でラクロス選手として活動しているのですが、そのプロフィールで彼女の出身地がLa Jolla, CAとなっています。San Diegoの郊外です。ということはTsai氏家族のメインの居住地がSan Diego方面ににあるってことですね。

その昔、MLB New York YankeesのAAAの系列チームが中西部のオハイオ州、Columbus Clippersでした。今では系列の改変が行われ、Yankeesの系列チームはもっと東海岸に近いところおよびキャンプ地のTampaに配置されています。Columbus Clippersは現在は同州内のCleveland Indiansの系列です。

ではなぜ飛び地のColumbusがYankeesのAAAだったかというと、以前のオーナーだったGeorge Steinbrenner及び妻がオハイオの出身で、その親族もその方面に住んでいたからと説明されます。つまりColumbusにYankeesのマイナー組織があることで、Steinbrenner夫妻はYankeesのカネで同地に居住地を確保できるしプライベートジェットで老母や親類を訪れても経費をビジネスで落とせるからという説明だったと理解してます。ClippersがYankees系列から外れたのが2006年。Steinbrenner氏が亡くなったのが2010年、80歳。だいたい辻褄はあいそうな説明かと思います。

その前例からするとTsai氏がSan Diego Sealsを所有することで私用でのSan Diegoへの東海岸から北米横断のプライベートジェットの頻繁な運用も経費で落とせるなどのメリットが想像できそうです。


反面Tsai氏のNLLへの関与がラクロスの一般スポーツファンへの露出という目的もあったとするとSan Diego Seals取得のケースはあまり成功したとは言えないかにも思えます。私は自分で言うのもなんですが、一般のスポーツファンよりはずっとマイナースポーツのニュースに目を通す方であると思います。でもTsai氏がNLL San Diego Sealsを所有していたことは知りませんでした。今回もう一つのLas Vegasチームの設立にWayne GretzkyやらDustin Johnsonやらという名前が目立ってスポーツニュースネタとなったわけです。San Diego Sealsのときにはそんなことはありませんでした。いくら世界有数のお金持ちでもNetsのオーナーTsai氏がマイナースポーツチームを買っただけではニュースバリューに欠けたということです。NLL、ひいてはプロラクロスの露出に貢献するという意味ならNHL Gretzkey, PGA Dustin Johnson, Nets/元SunsのSteve Nashという広めの人選は目的に沿っていると言えそうです。実際にその人選ゆえにスポーツマスメディアでも報じられることになったわけですから。


そういうラクロス全体の露出ということが金銭的な見返り以上にTsai氏の念頭にあるのならば、少し前に当ブログでも紹介した女子スポーツの総合団体を目指しているAthletes UnlimitedなどはTsai氏の次の投資先としてフィットしている可能性があります。
Athletes Unlimitedは6人制バレーボール、変則の独自ルールの屋外ラクロス、そしてソフトボールと当面3種目で活動を展開。ラクロスに関しては気になる独自ルールのことを続編で書こうかなあと思いつつ書いていなかったので、この機会に書いてしまいます。

Athletes Unlimited Lacrosse(AUL)が予定している女子ラクロスは各チーム9人制と公式ページに紹介されています。通常の女子のラクロスルールでは2019年以降は各チーム10人になっていると理解してます。
それとは別にラクロスの統括団体がラクロスの五輪競技採用を目指して新規に制定したルール、Lacrosse Sixesが発表されており、それは6人制。なぜAULが独自の9人制なのかは存じません。せっかくLacrosse Sixesが発表されているのですからタイアップしてAULも6人制にしてしまえば良いような気もしますが、とりあえずそうはなっていない。きっとAULは零細なはずですから、Lacrosse Sixesで開催するならとどこかから資金提供オファーがあったらあっさり変わりそうな気はします。
そのどこかから、がTsai氏である可能性はあっても不思議じゃないかもなというのが私の連想ですが、どんなもんでしょうか。
少なくともAULの独自の9人制ルールというのは意味不明。通常の10人から1人しか人員削減になってないからコストカット効果も僅かだと思われます。そこまでして独自ルールにするメリットがよくわからない。Lacrosse Sixesの実施団体になった方がいろいろ良いことがありそうな気がします。

話がちょっと飛びましたが、そんなことを考えさせられたTsai氏のラクロス普及活動・投資という話でした。

有名オーナーが集まって室内ラクロスチームを創設

不思議なニュースが入ってきてます。室内プロラクロスリーグの老舗National Lacrosse League (NLL)の新チームがLas Vegasにできるそうなのですが、そのオーナーが異様に豪華な面々となっています。名を連ねているのはNHLの史上最高の選手であったWayne Gretzky、PGAゴルフ昨年のMastersチャンピオンDustin Johnson、NBA Brooklyn NetsのHC Steve NashとNetsのオーナー Joe Tsai氏が共同オーナーという話です。ちょっと豪華過ぎないか、というのが一報を聞いたときの感想でした。

まずJoe Tsai氏だけにしてもNBAチームを所有できる財力があれば、マイナープロスポーツのNLLのチームのひとつやふたつ簡単に買えそうです。それどころかリーグ全体を買い上げてもNets1チームの価値以下なのは確実。Tsai氏が単独ではなく共同オーナーになるのは資金量が理由ではないのでしょう。

有名人をオーナーに並べることでの宣伝効果というのは他にも数々例があるので珍しくないですが、たかがマイナースポーツリーグのNLLのチームにこれだけスポーツ界の有名人が揃うというのも奇異です。なにかすごい目論見があるのか?と疑りたくなるほどです。
Tsai氏は台湾と香港をルーツとするカナダ国籍も持つ重国籍者。GretzkeyもNashも米国内でお馴染みの顔ではありますがいずれもカナダ人。米国籍なのはDustin Johnsonだけという意味で米国籍のJohnsonを混ぜたいという他の3人の気持ちは多少はわかるかも。保守傾向が強まった昨今のアメリカでのビジネスなので外国人オーナーだけというのは少々のリスクを感じるところなので。
Dustin JohnsonはGretzkeyの娘と事実婚状態、Gretzkeyの孫ももうけているのでほぼ親族状態でもあります。

室内ラクロス、Box Lacrosseとも言いますが、カナダでは1987年の創設以来まずまずの人気だという話はアメスポマイナープロスポーツを学ぶ上で知っていることでしたが、私の契約している範囲のTVチャンネルでは近年お目にかかった記憶がない。
調べてみると今はB/R LiveというスポーツニュースサイトだったBleacher Reportが所有するストリーミングサービスが放映権を持ってるようです。どうも見かけないわけです。

既存のスポーツTV局に加えて、Apple TVやAmazon Primeという新興大手もスポーツコンテンツ獲得に参入。Apple TVやPrimeなんかは巨大資金がバックにあるのでNFL中継など超優良コンテンツに食い込みをはかったりしているわけですが、それ以外の大小のストリーミングメディアや、黒船のDAZNなどもなんとかアメリカ市場に食い込もうと様々な手を尽くして中小アメスポ(正確にはアメスポに限らず海外モノでも)コンテンツを抱え込もうとしています。

そういう流れの中で室内ラクロスのNLLにも資金が流れ込もうとしているってことでしょうか。

大学ラクロス選手権

ところで毎年恒例のNCAAラクロスの男女の決勝がこの3連休にありました。いずれも好試合となり女子はBoston Collegeが16-10でSyracuseを破って初優勝。男子は最後の瞬間までわからない17-16の大激戦でVirginaがMarylandを下して2019年シーズンに続いて連覇(2020年は優勝校なし)をしてます。特に男子の方はNCAA決勝史上最多ゴールでの熱戦で大変楽しめました。放映は準決勝を含めいずれもESPN系列局で。

今回の放送はフットボールでお馴染みのSkyCamが導入され、他のカメラの台数も多く迫力ある映像の放送となっていました。見せ方っていうのはやっぱり大事だなと改めて認識。カメラの台数が少ないと広いフィールドの引いた画面ばかりにならざるをえないので迫力が出ません。
2019年シーズンから導入されたショットクロックが奏功している。ショットクロックは先にプロラクロスリーグで採用されていたルールですが、カレッジでも遅れて採用。それが今回の男子優勝戦での史上最多スコアにつながったのは確実です。

ちなみに男子はショットクロックが80秒、女子は90秒。ここでわざわざ10秒の差をつける意味ってあるのかなという気がします。不必要な男女差ではないでしょうか。80秒でも90秒でも攻める方が選手交代その他で慌てなくてはいけないような短いものではないと思えるんですが。

以前から紹介していますがラクロスでは五輪競技への採用を目指して競技ルールを大きく変更しようという試みがなされています。それとは別に大学ラクロスでもルール変更に柔軟で、女子の方はグラウンドの線引も変わってました。

社会正義アピールへの各リーグの取り組み

トランプ大統領はYankee Stadiumでの始球式は取りやめるようです。2日前のツイートでRed Sox@Yankees戦で始球式をすると発表していたのを急にやめると。理由はコロナ対策に集中するから。8月15日という何週間も先の予定をコロナ対策で回避というのは理由がおかしいので、他の理由なのでしょう。

民主党の強固な地盤であるニューヨーク市の観客による激しいブーイングに迎えられるのがイヤ(だと思うんですが)でこれまで実現していなかったのを、無観客のこの機会にやってしまいたかったのでしょうが、結局撤回ということに。

歴代大統領が皆やってきた始球式なのでトランプ大統領もやっておきたかったはず。球団やMLBには事前に根回しはして計画・発表したはずですから、発表後に撤回というドタバタとなったということは発表後に知った陣営から問題が発生したと考えるべきで、選手から強い反対が出たと推測すべきなのでしょうね。

既報の通りMLBではシーズン開幕してから試合前の国歌演奏の前に全選手による膝つき行動と連帯を示す長い黒布を足元に置き、国歌演奏時の起立というスタイルでうまくバランスをとった行動をしてます。これは各地で同じスタイルとなっているので事前に選手会とMLBが合意していた行動であるはず。
その対応についてトランプ大統領はご満足だったようで、賛意をツイートしていました。その流れでYankee Stadium行きもツイートしていたわけです。

つまり状況から判断して、MLBと選手会の間、MLBとホワイトハウスの間はそれぞれ根回しがしっかりできていたと考えて良い。しかしトランプ大統領のYankee Stadium登場は選手会側には通っていなかったと。表には出てないですが、選手側からそんな話は聞いていない、トランプが来るなら国歌での起立もしないとかいう反対論が出たのであろうと想像できそうです。
せっかくうまい落とし所での統一行動がとれていたところで、大統領訪問で選手の国歌での膝つき行動が出たりして荒れるのはマズい、というかもったいない。選手側からの異論が激しいと判断したMLB側がお断り申し上げたという感じかなと想像します。


さてMLBとは比較にならない小規模プロ興行ですが、女子バスケのWNBAやプロ野外ラクロスのPLLも今週末からシーズンを開幕しています。抗議行動についてはまたそれぞれの対応となってます。

PLLはユタ州での集中開催。こちらでは試合前は国歌なしで、Black Lives Matterとは言わず「全ての人種へ社会正義を」と場内アナウンスがあり、各チームが円陣を組むというスタイルという試合前になっていました。円陣の際は起立のままの円陣のチームと膝をついて円陣を組むチームなど対応はまちまち。ラクロスは選手の構成は白人が大半。

PLLの放送では開幕初日にはラクロス好きでお馴染みBill Belichickさんが登場。2日目の放送にはNFL New Orleans Saints QB  Drew Breesも応援出演。息子がラクロスをやってるそうです。子どもたちは昨年のPLLオールスター戦にも観戦に行っていたそう。Drew本人はテキサス育ちで子供の頃はまったくラクロスには触れたことはなかったのだけれど、3年前に子供がやりはじめてすっかり好きになったとリップサービスして楽しそうに話してくれました。

BreesはBlack Lives Matterの問題発生時に国歌での起立を主張してその後謝罪した方。Belichickさんは前回2016年の選挙時からの隠れもないトランプ支持者。そしてPLLの試合ではBlack Lives Matterとはどこにも出てこないところからするとPLLはトランプ支持者に強めの配慮したスタンスをとったと判断できそうです。BelichickさんもBreesも政治的な発言をしたわけではないので明示的ではないですが。

屋外ラクロスではPLLとは別に老舗のMLLもあり、そちらは国歌は全員起立ですんなりやっていたようでした。PLLではやっていた社会正義への取り組みアピールもなし。2020年のアメスポの試合には見えないほど以前通りでした。

同じくこの週末にシーズンがスタートとなった女子バスケWNBAではコート上に「Black Lives Matter」と描かれ、全員着用のウォームアップウェアの背中にも同じフレーズが書かれているのとは差が出てます。またWNBAでは国歌演奏の前に全選手が会場から立ち去り、空のコート上に国歌が響くという状態になってます。バスケは黒人選手比率はとても高い。
来週からはWNBAと同じ経営主体による男子NBAも始まります。NBAはコート上にはBlack Lives Matterとは描かれないというニュースは先週流ていたと思うので、その点でWNBAはNBAとも対応に差があるってことになります。



PLLとかWNBAとか、MLBを始めとするメジャースポーツの露出力とはまったく比較にならない小規模スポーツビジネスですからそれがどういう対応をとっても社会的影響は極低いですが、それでもそれぞれの色が出ているのは興味深いとは言えるのでしょう。後続となるNBA、NHLのそれぞれの対応も気になるところです。

PLLが集中開催で創設2年目シーズン開始へ

昨年発進した新プロ野外ラクロスのPLLが西部ユタ州にあるZions Bank Stadium(収容5000人)でシーズンを執り行うと発表しています。7月25日から8月9日まで2週間の期間で。

またユタ州なんだ、という感じです。先日触れたSupercrossの集中開催もユタ州でのことでした。夏の暑い時期、高地の方が選手たちには優しいという理由もありそうです。Zions Bank Stadiumはサッカー2部USL(ここ数年組織名称がよく変わるのでわかりにくいですが)のチームや、ラグビーのMLRのチームのホームスタジアムとして使用されている2018年開場のスタジアム。たぶん新しくこぢんまり小ぎれいなスタジアムなのではないかと想像します。

PLLは昨年初のシーズンを行ったツアー型のラクロスプロリーグ。ツアー型でリーグ戦を戦うという編成がアメスポでは珍しい試みでした。2年目になるはずだった今年2020年シーズンはコロナ疫禍で予定通りのシーズン開催は望むべくもない状況でした。
零細なスポーツリーグは今年はもうビジネスを諦めるかどうかの判断を迫られている。マイナーとは言え規模の大きなところではMinor League Baseballですら全休してしまいそうな情勢です。
MiLBはMLBとの契約が今年の9月で切れるとかでMLB側の様々な強い要求にさらされて経営の先行きが怪しかったところへ疫禍での興行全面中止。MLBは小規模チームをMiLB組織から振り落としてスリム化を要求していたわけですが、その要求がなくても今季が完全に消滅したら潰れるチームが続出してしまいそうな情勢(この件はまた別項で細かく追求してみます)。

長年地元に根を張って運営されてきたMiLB辺りでも潰れるところがかなり出そうなのですから、PLLのような新興の、それもツアー型でサポートしてくれる地元ファンベースや地元自治体が存在しない組織ではどうしようもないんじゃないか、と思って見ていたんですが、なんと意外にもPLLはシーズン開催にこぎつけられるようです。どっからお金が出てるんですかね。

PLLは既存のプロリーグだったMLLから選手を大量に引き抜いて、プロラクロス界の改革という理念を掲げて昨季発進した組織。ツアー型で元々予定試合数が少なく、NFLの大会場を使うというスタイルだっただけに採算を合わせるのが大変そうで、初年度の動員規模では大赤字で間違いなかったはず。そして2年目の今年は疫禍でツアーができなくなった。小規模スタジアム一箇所での集中開催でコストはほとんど人件費のみになったであろうと想像できますが、ラクロスは1チームあたりの所属人数も多いので人件費だけでもかなりの出費で、会場費用は抑えられるにしてもかなりの赤字なのは確実ですが、それでも創設2年目のシーズンをどうしてもやるのだ、この事業は続けるのだという強い意思、執着が感じられます。

例えばXFLが疫禍で出鼻をくじかれたのちあっさり事業を放棄したのとはずいぶんと違う方向性の話です。XFLが破産を選択した4月の時点で私はプロラクロスについて「昨年MLLとPLLに事実上分裂した野外ラクロスのプロも選手関係者離散に近い状態になる可能性もありそうです。シーズンが消滅する可能性はとても高い。」と書きました。その推測をはねのけてシーズン開幕にこぎつけたPLLの経営陣の情熱と資金調達などビジネス遂行能力は称賛されて良いのではないかと思います。プロラクロス選手がアメリカから全滅しかねない事態を小規模集中開催ででもつないだのですから。

ラクロスはOK

引き篭もり命令または要請が各地で発動されているわけですが、どうもバスケは相性が悪いようです。学校が休みな子どもたちがどうしても野外のバスケゴールのあるところに集まってバスケをしだすらしい。各地の首長は毎日の会見で散歩などで野外に出るのは気分転換は良いことなので6 feetの距離を保っていれば推奨、しかしバスケはその距離が保てるスポーツではないのでやめましょうということを先週からずっと言っていたわけです。
しかしどうも埒が明かないらしく、公営の公園などにあるバスケットボールゴールの撤去を既に始めたという話が聞こえてきます。子どもたちは暇ですからね。この疫禍がなければいまはMarch Madnessのシーズン、外もぼちぼち暖かくなってきた地方も多く、子どもたちがバスケを楽しむ姿は微笑ましいシーンのハズだったのが、いまや禁止対象です。


と、そういうタイミングでおもしろいものを見かけました。
近所のスーパーへ行く途上で学校の校庭で子どもたちがスポーツをやっていたようです。そこへ警察の車両が停まりなにやら子どもたちに話しかけているのをみました。そそくさと買い物を済ませての帰り道で同じところを通ったらバスケをやっていた子たちは解散させられたようで全員いなくなってましたが、その向こうでラクロスのキャッチボールをしていた女の子たちはまだやってました。あーなるほどー、と。
バスケはフリースロー合戦(HORSEという遊びがアメリカにはあります)を2−3人ぐらいでのんびりやるならともかくそうでなければSocial Distancingはバスケでは達成できないけれど、ラクロスなら確実に6 feet以上離れていないとキャッチボールにならないわけでこれはSocial Distancing準拠だ!だから警察も解散させなかったんだ!と妙に感心してしまいました。
というわけでラクロス、おすすめです。

PLLの選手が日本遠征、臨時教室開講の模様

みなさんも各種SNSで興味を持つモノ・人とつながっていらっしゃることと思います。私もそうなんですが、そのひとつで今年初年度を終えたラクロスの新プロリーグPLLにつながっています。そこのフィードで日本らしき写真がここのところ何度か流れてくるのです。プレーのクリニック風の写真なんかが多い。状況がいまいちよくつかめなかったのですが、どうもPLLの選手が来日中で、日本選抜(?)とエキシビションを2試合戦ったとか。1試合目は旧来のルールで18-5、2試合目は五輪向け6人制ルールで19-10、いずれもPLL側の勝利、とキャプションがついてました。

説明があまりついてないので状況がよくわからず、日本語で検索したところこれがそのイベントだったようです。PLLと同時に女子プロのWPLLの選手も同じ日に日本に遠征に行っていたと。アメリカの本場のラクロスのレベルを感じてもらうという感じのイベントでしょうか。昨年も同イベントは盛況であった、ということで、二年連続の開催。ちゃんとスポンサーがついて意外にもそんな多人数でアメリカから遠征しても全体としてペイしているってことですよね。

昨年に同じイベントがあったとしてその時期に来た選手はPLLの選手だったのでしょうか。PLLのリーグ戦は今年が初年度。昨年秋の段階では所属選手がいてもまだ試合をしていない段階だったかと思われます。そもそもまだ老舗のMLLも存在していて、MLLには日本選手も所属しているのに、それでもPLLの選手を呼んでいるということは、PLLが積極的に海外にアプローチしているってことなんでしょうか。

アメリカには様々なマイナープロスポーツが存在しますが、マイナースポーツでありながら海外への普及活動をしているというケースは割と珍しいように思われます。経営がカツカツのところが多くてそんな活動に手が回らない場合が多いのであろうと想像されますが、PLL(や女子のWPLL)はどういう具合でそういうコストを捻出してるんでしょうか。外からうかがえない強いスポンサーがいるのか。
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