なにかとてつもない偶然で特効薬やワクチンでもすぐに見つからない限りはとても来年の春までに世界のアスリートや日本国民を守れる形になりそうにない。来年の今ごろに最終的に「苦渋の決断」という名の今からでもわかりきった発表を1年遅れでするのではないでしょうか。チケットを買ってしまわれた方々、納税者の皆様、残念でした。
いやはや、一年前に事前の予想を遥かに上回る幸せなラグビーW杯が行われたのとの対比がすごいことになりますね。たった1年でこれほど明暗が分かれるとは。
ラグビーにしても2021年に新プロリーグを日本で立ち上げると言っていたのももう無理でしょうし、ラグビーW杯での勢いで作るプロリーグという流れは完全に消えてしまってるんですからラグビーも無傷ではないわけですが。米国内でラグビーの着実な成長を目指して立ち上げたMajor League Rugbyもとても存続できないで2−3年後に仕切り直しでしょう。
アメスポに限らず無傷なものは限られた業界だけになりますが、あとはどれだけ新時代に即したビジネスに早く移行できるかの競争になりそうです。eSports化の加速が一つでしょうし、他方やっぱり血の通った肉体が躍動するスポーツは良いと再開したスポーツイベントがプレミア化する可能性もあるのかも。
毎度同じようなことを書くことになりますが、米国内ではNBC系列が五輪の独占放映権を長年確保し続けている。他系列にとっては延期がうまく行こうがいかなかろうがどうでも良い。毎大会のことですが他系列はせいぜい五輪本番が始まってからのみニュースで触れるか触れないか程度。他系列もNBC Sportsも東京五輪の延期の事実関係に触れて以来放置状態。コロナで緊迫してるので遠い他国の五輪の予定なんてどうでも良いし記事に需要もなかったかと思います。NBCだけがいまも五輪マークを小さく局のロゴに添えているのが唯一今年が五輪年であった事実を確認できる事象です。
ちなみに日本語報道で東京五輪の延期時にアメリカのマスコミから延期決定のタイミングその他で批判があったがごとく伝えられていますが、きっとそんなのも広く自由なアメリカのマスコミ報道のどこかにあったのかもしれませんが、根本的に日本側の自意識過剰です。米国内のスポーツニュースは相当に多く読む私が一度も目にしたことがないんですから批判などほぼ存在してないかと。延期の事実の報道以外は意識にも登っていないというのが現実だったんじゃないかなと思います。
現役の五輪選手として米国内で最も知名度の高いであろう女子体操のSimone Bilesは延期が決まった時期にNBCの朝のワイドショーに遠隔出演して1年後に向けてまたスケジュールを立て直してがんばります!と明るく受け答えしてました。前回リオ五輪では個人総合を含めて金4つ。彼女は今23歳。体操選手としては時間との戦いになりそうな年齢ですが彼女はとりあえず前向きな態度で、番組的に救われてるなあと思って見ていました。当時は延期発表直後でもあり米国内の危機感もピークの前でしたからBilesは2021年に試合があると思って応答していたんだと思います。現実は来年やっぱり開催できませんってことでそのまま引退の可能性を今ごろは気づいているかも。
Bilesは年齢的にもうご利益が得られる部分は少ないかもしれません(逆に大いにあると考えるべき?)が、アスリートにとってはこのコロナ疫禍のタイミングを利してドーピングに励む可能性があるという指摘があります。ロシアは既にドーピング検査停止を宣言しているし、そうでない国でもドーピング検査機関による抜き打ち検査が事実上ストップしているとされ、プロアスリート、五輪アスリートともに使いたいならこれが千載一遇絶好の機会でしょう。多くの国で外国人の入国制限が実施されていてWADAからの抜き打ちなんて完全に不可能になっている国も多い。
もし2021年の東京五輪が滑り込み実現したとしてもコロナ防疫が主たる関心事になってドーピングで作られた体についてのチェックはおろそかになってしまう可能性が十分あるのでしょう。ロシアが率先して国内の検査中止を宣言したところなんて過去の同国の国家ぐるみのドーピング疑惑を考え合わせると苦笑せざるを得ない。ロシアがやるぞと高らかに宣言しているのに他国はやらないで臨むべきなのか。
こういう特殊な事態になってしまうとすべてをうまくやることはできないわけで、ドーピングぐらいはしかたないと思う方が良いのかもしれません。ドーピングは目の前の不公平であっても絶対悪ではない、という点については当ブログでは長年議論してきているところでもあります。