アメリカスポーツ三昧

アメリカ永住コースか、または第三国に出国か!?スリルとサスペンスの人生とは別にアメスポは楽しい。

ドーピング・PED

2021年五輪はドーピングの無法地帯かそれとも

1年延期を決めた東京五輪ですが、日本ぽい理由でいきなり損切の意思決定ができなかったというだけで現実的にはもう開催されないと考えて差し支えないと個人的には判断してます。来年の7月に世界各地からアスリートを迎えて選手村に収容…大量の選手関係者報道の移動…そして大量のおもてなし人員の動員…考えただけでもくらくらしますね。普通の生活をとりもどせていたらそれだけでもありがたい、五輪なんてできないと考えた方がまっとうかと思います。

なにかとてつもない偶然で特効薬やワクチンでもすぐに見つからない限りはとても来年の春までに世界のアスリートや日本国民を守れる形になりそうにない。来年の今ごろに最終的に「苦渋の決断」という名の今からでもわかりきった発表を1年遅れでするのではないでしょうか。チケットを買ってしまわれた方々、納税者の皆様、残念でした。
いやはや、一年前に事前の予想を遥かに上回る幸せなラグビーW杯が行われたのとの対比がすごいことになりますね。たった1年でこれほど明暗が分かれるとは。

ラグビーにしても2021年に新プロリーグを日本で立ち上げると言っていたのももう無理でしょうし、ラグビーW杯での勢いで作るプロリーグという流れは完全に消えてしまってるんですからラグビーも無傷ではないわけですが。米国内でラグビーの着実な成長を目指して立ち上げたMajor League Rugbyもとても存続できないで2−3年後に仕切り直しでしょう。
アメスポに限らず無傷なものは限られた業界だけになりますが、あとはどれだけ新時代に即したビジネスに早く移行できるかの競争になりそうです。eSports化の加速が一つでしょうし、他方やっぱり血の通った肉体が躍動するスポーツは良いと再開したスポーツイベントがプレミア化する可能性もあるのかも。


毎度同じようなことを書くことになりますが、米国内ではNBC系列が五輪の独占放映権を長年確保し続けている。他系列にとっては延期がうまく行こうがいかなかろうがどうでも良い。毎大会のことですが他系列はせいぜい五輪本番が始まってからのみニュースで触れるか触れないか程度。他系列もNBC Sportsも東京五輪の延期の事実関係に触れて以来放置状態。コロナで緊迫してるので遠い他国の五輪の予定なんてどうでも良いし記事に需要もなかったかと思います。NBCだけがいまも五輪マークを小さく局のロゴに添えているのが唯一今年が五輪年であった事実を確認できる事象です。
ちなみに日本語報道で東京五輪の延期時にアメリカのマスコミから延期決定のタイミングその他で批判があったがごとく伝えられていますが、きっとそんなのも広く自由なアメリカのマスコミ報道のどこかにあったのかもしれませんが、根本的に日本側の自意識過剰です。米国内のスポーツニュースは相当に多く読む私が一度も目にしたことがないんですから批判などほぼ存在してないかと。延期の事実の報道以外は意識にも登っていないというのが現実だったんじゃないかなと思います。


現役の五輪選手として米国内で最も知名度の高いであろう女子体操のSimone Bilesは延期が決まった時期にNBCの朝のワイドショーに遠隔出演して1年後に向けてまたスケジュールを立て直してがんばります!と明るく受け答えしてました。前回リオ五輪では個人総合を含めて金4つ。彼女は今23歳。体操選手としては時間との戦いになりそうな年齢ですが彼女はとりあえず前向きな態度で、番組的に救われてるなあと思って見ていました。当時は延期発表直後でもあり米国内の危機感もピークの前でしたからBilesは2021年に試合があると思って応答していたんだと思います。現実は来年やっぱり開催できませんってことでそのまま引退の可能性を今ごろは気づいているかも。

Bilesは年齢的にもうご利益が得られる部分は少ないかもしれません(逆に大いにあると考えるべき?)が、アスリートにとってはこのコロナ疫禍のタイミングを利してドーピングに励む可能性があるという指摘があります。ロシアは既にドーピング検査停止を宣言しているし、そうでない国でもドーピング検査機関による抜き打ち検査が事実上ストップしているとされ、プロアスリート、五輪アスリートともに使いたいならこれが千載一遇絶好の機会でしょう。多くの国で外国人の入国制限が実施されていてWADAからの抜き打ちなんて完全に不可能になっている国も多い。
もし2021年の東京五輪が滑り込み実現したとしてもコロナ防疫が主たる関心事になってドーピングで作られた体についてのチェックはおろそかになってしまう可能性が十分あるのでしょう。ロシアが率先して国内の検査中止を宣言したところなんて過去の同国の国家ぐるみのドーピング疑惑を考え合わせると苦笑せざるを得ない。ロシアがやるぞと高らかに宣言しているのに他国はやらないで臨むべきなのか。

こういう特殊な事態になってしまうとすべてをうまくやることはできないわけで、ドーピングぐらいはしかたないと思う方が良いのかもしれません。ドーピングは目の前の不公平であっても絶対悪ではない、という点については当ブログでは長年議論してきているところでもあります。

過酷なロードはテスタストロン減少につながる?

今日ESPNの毎日のNBA情報番組The Jumpでこの情報をやっていました。なんでも20代のNBA選手のテスタストロンの数値がシーズンが始まって3ヶ月ほどすると50代一般男性のレベルまで下がってしまうのだとか。その原因として旅から旅へのシーズンと睡眠の質の低下が関連しているのではないかという話をしてました。

NBAの20代現役選手というのは世界的に見てもこれ以上健康な人はいないという母集団といえるでしょう。栄養管理や疲労回復に最新の科学的な手法が取り入れられているという面でもほぼ世界でベストの環境下にいるであろう人たちです。その人たちのシーズン前には異常のなかったテスタストロン数値が僅か数ヶ月でガタガタに減ってしまっているというのはかなりマズイのではないかという問題提起ということになります。

NBAのレギュラーシーズンは10月開幕4月終了のおよそ6ヶ月間。プレーオフを勝ち抜くとさらに1ヶ月半ですが、ここではレギュラーシーズンに焦点を当てて考えます。6ヶ月間に82試合をこなします。
アメスポで試合数が抜群に多いMLBは6ヶ月間に倍の162試合を消化しますが、こと遠征旅行という意味だと実はNBAの方がしんどいのかもしれません。MLBは年間81試合のアウェイの試合をこなしますが3連戦が基本ですから旅は3日に一度以上にはほとんどなりません。なのでたぶん各チーム27都市前後を毎シーズン訪れているのでしょう。NBAではアウェイの同都市での連戦はほとんどないので試合をしてはそのまま飛行機に乗って次の都市へということになります。それが41試合。MLBよりもかなり多い移動負担といえそう。さすがに移動しながらの連戦はキツイということになって昨年になってアウェイのスケジュールの緩和がなされて4日間に3試合というのはなくなりました。


アメリカのTVコマーシャルでテスタストロン増強サプリの宣伝は多いです。有名なところでは元MLB Chicago White Soxの強打者だったFrank ThomasがCM出演している商品のCMはとてもよく目にするところ。他にも同様の商品は多いです。いわくアメリカの現世代のテスタストロンのレベルはアメリカ史上最低、世代ごとに減少の一途をたどっているんだとかで一世代前の男性と比較して半減、二世代前からは1/4になっていると言います。テスタストロンはやる気・筋肉の維持・精力・性欲に強く関わるとされ、そのレベルが低いと言われては男がすたると思うのかこの手のテスタストロン補強サプリはものすごくよく売れるようです。これとは別に以前にもご紹介したことがありますがED薬のTVCMもスポーツ放送では大量に流されていますから男性としての力の低下に危機感を持ってるひとたちがどちらも買ってるんだろうなあと思われます。

今回問題提起されたNBA選手たちもこういったテスタストロン増強サプリを飲んでるんですかね?それともそれはドーピングにあたるんでしょうか?ちょっとまた調べてみますが、それを飲んでいてもシーズン中にはテスタストロン値がガタ落ちになるのだとしたら、それは「治療」すべきことなんでしょうか。この件は2012年に「
ドーピングの未来 または新人類の開発
」というタイトルでこういう記事も書きました。治療と言えばOK、そうでないとドーピングと言われるというあやふやな基準がそこにはあります。
医学が進歩して、過去だったら自然な老化だとか、疲労は当たり前とされていたものが治療対象になっていくと、ドーピングと治療の境目もますますあやふやになっていくとも言えます。

Clemsonの3選手出場停止は大事のはずなのに

土曜日に迫ってきたカレッジフットボールプレーオフ準決勝。その出場校であるClemsonから3人の選手がNCAAから出場停止処分を受けています。どうもPEDが検出された模様。3人ともディフェンスの選手です。Clemsonにとっての最大の痛手は大型DTのDexter Lawrenceがそのうちの1人であること。

これ、なぜかあまりマスコミが騒ぎません。私にはとても大きな問題な気がするのですが。
3人も一度にドラッグテストに引っかかるというのはどういうことなのか。基本的に全員検査ではなくランダムで検査は行われているはずで、それで3人も引っかかるというと、全員検査したらもっとClemsonには引っかかる選手がいるんじゃないのか。過去10年ほどで急激に成績が上昇してカレッジフットボールの強豪の一角に浮上したClemsonですが、組織的犯行の可能性はないんですか。まったくそういうマスコミ論調が見えません。プレーオフ後、Clemson敗退後に話題にするつもりなのか。
もしチームぐるみでないというならば、3人の学生選手はどういうルートからそのPEDを得て、その代金はどうしていたのか、というところまで掘り下げる必要がある問題に思えるのですが。

以前、Miami-FLがチームぐるみでPEDを提供していた疑惑が持ち上がったことがありました。フロリダのBiogenesis社からみでMLBでAlex Rodriguezその他大量の処分者を出した事件に関連して、Miami HurricanesにもPED提供がなされていた可能性が指摘されました。公式には何もなく立ち消えになって具体的な処罰などはカレッジ関連ではありませんでしたが、Biogenesis問題が勃発する前後に偶然なのかそうでないのか、一時期カレッジ界を席巻したMiami-FLは大きく弱体化しました。それまでは毎年のようにNFLドラフト上位にスター選手を次々送りこでいたのが、ピタリ止まってしまったのです。

Clemsonが取って代わってカレッジフットボールで浮上してきたのはちょうどその頃からですかね。

過去の経緯はいまさら意味はないですが、今まさに3人もまとめて捕まったClemsonのPED違反者についてマスコミ各社がなにも言わないのはなんなのか。とても気になります。

ESPN社長が薬物濫用で辞任

これがアメスポの範疇の話かどうかは微妙ですが、アメスポメディアの最大手ESPNの社長が薬物濫用を理由に辞任してます。使用薬物が何であるかは明らかではないですが自身の出したコメントによれば長年使用してきたということです。憶測で言うとたぶん処方箋薬の向精神薬か鎮痛剤辺りではないでしょうか。アメリカ社会における薬物というと派手な娯楽薬物であるヘロイン・コカインなどがニュースで多く取り上げられますが、実際には処方箋薬の濫用による死者の方が多いという統計になっていたと思います。日本でトヨタの米人女性役員かが数年前に逮捕されたのも鎮痛剤Hydrocodoneでしたよね。Hydrocodoneは人気濫用処方箋薬(放送禁止の曲にもしばしば出てきます)ですから、私がトヨタの件を読んだときにはああそれかとあっさり納得したんですけど、日本の方からすると鎮痛剤がなんだって?という感じだったのはないでしょうか。

アメスポの選手だとNFL Green Bay PackersのQB Brett Favreが同じく鎮痛剤の常用を告白して治療施設に入ったことがありました。あれはかなり状態が悪くなっていて滞在型の治療施設に入らないとどうしようもない段階まで行っていたのでしょう。Favreは顔が売れているから治療施設に入ったらどこからか情報が漏れるのは避けられず、自分から告白して治療に行ったということだと思います。

上級ホワイトカラーの人たちが手を出してしまうのと、アスリートが手を出してしまうのは意味合いが違うようにも思いますが、いずれにせよ薬物濫用禍はアメリカ社会の大きな問題であるのは間違いありません。向精神薬の濫用の話もすごくよく聞きます。

エリートアスリートというのは特殊な身体能力を持ち、その能力を最大限発揮することが職業。よって怪我も起こりやすく、その結果として大小の医療手術を受ける機会も多い。その際に処方される鎮痛剤使用がきっかけでハマってしまう人が多いとされます。一般人もそういう経験から処方箋薬の娯楽使用に興味を持ち、興味を持ったらいまはインターネットでいくらでも情報はありますから。

Favreは自己申告とその後の治療成果が良かったせいか、引退後の今もTVコマーシャルなどで顔を見るしパージされている感じじゃないですね。NFL番組ではまったく見かけないですが。

なぜSharapovaならいいのか

テニスのUSオープンが始まっています。今日初日の目玉試合はメジャートーナメントに18ヶ月ぶりに復帰したMaria Sharapovaの一回戦。相手は第2シードのSimona Halep。なんでも過去の両者の対戦成績はSharapovaの6戦全勝とか。結果は熱戦の末、Sharapovaの勝利。満員のメインスタジアムの観客総立ち、一回戦に勝っただけなのに優勝でもしたかのような騒ぎです。Sharapovaも勝った瞬間にコートに伏し、涙。試合もおもしろかったし、放送したESPN2にとっては狙った以上の放送になったのは間違いないでしょう。

でもこれでいいんでしょうか?Sharapovaが欠場していたのはケガではない。ドーピング発覚での出場停止処分です。そういう選手が帰ってくるのが話題になるのはわかりますが、諸手を挙げてお帰りなさい!ヒロインの帰還のような扱いでいいものなのか。

試合の途中に他の選手たちのTwitterが紹介されていて、Sharapovaへの痛烈な批判を表明する選手もいたのですが、その辺は適当にスルー。解説のChris Evertも「彼女はテニス界の財産」などとまで言ってしまう始末。

考えてもみてください。例えば過去のMLBのドーピングがバレたスーパースター選手たちの状況を。Barry Bondsが、Mark McGwireが、Sammy Sosaが近いところではAlex Rodriguezがどういう扱いになったかを。殿堂入りは完全に否定され、残した輝かしかったはずの数字も眉唾ものとされている惨状です。彼らを「野球界の財産だから」などと言って臆面もなく擁護した人はいなかった。本当は彼らは野球界の財産だったのです。少なくとも私はそう思います。少なくとも全否定はやり過ぎかもしれないと思う面があります。(特に初期の違反者はルール整備が遅れていた時期に「違反」した選手たちは本当は違反でもなんでもない、とすら擁護できます。ルール整備が進んだ後でもそれを進んでやったA-Rodは初期の「違反者」とはちょっと訳が違う。)

ただドーピングの撲滅のためにはそれぐらいの厳罰が必要だという理由で彼らが全否定の対象になっている、という理屈も十分にわかるので、殿堂入りを許せとかそういうことは思わないんですけど。

で、それと比較して今夜のSharapova大歓迎の大盛り上がり、いいのか?ということです。なぜMLBのスターはダメで、テニスのスターはOKなんでしょう。女性だからですか?美人だから?どうも理屈がわからないです。テニスのプロツアーのドーピング検査態勢がどういうことになっているのか知らないのですが、色々疑問を感じる試合後の状況でした。

試合内容はおもしろい試合で楽しめましたし、Sharapovaの衣装もあーこれは売れそう(対してHalepのウェア、あれはひどい…注目の試合でコレかという…)などいろいろとエンタメ度は高い一回戦だったと思います。

UFC王者Jones コカイン使用を認める

総合格闘技MMAの最大手UFCのライトヘビー級王者Jon Jonesがネバダ州のスポーツ管理当局による薬物テストに引っかかっています。本人もコカインの使用を記者会見で認めています。但し本人は中毒者ではないと否定。このニュース、反響がアメスポ内でも薄いんですがどうなんでしょうか。

麻薬の問題はアメリカ社会と切り離せない大きな問題です。この問題はアメリカに定住してしまった私と日本の一般的な方々とでは相当問題意識に差があると思うので、わかりにくい部分もでるかと思いますがご容赦ください。

まずスポーツビジネスの側面の方から。UFC・ジャンルとしてのMMAが明確に頭打ちになってきているこの時点で人気王者だったJon Jonesがコカイン使用発覚というのはUFCにさらに重いボディーブローとして効いてくるのかもしれません。本人は常習を否定していますがそれが信じられるかどうかというと、信じるべきものではなく本人がこれからの継続的な検査で更正を証明していく以外ありません。コカイン以外の違法薬物の使用については記者会見では大学時代にいろいろ試したとして具体的に何を試したのかは明言せず。UFCがどういう処分をするのか。人気王者だっただけに選手生命を絶つことはしないような気がします。それにコカインぐらいなら…という人もけっこういるしなあという。

PEDなど成績を伸ばすための薬物使用はあくまでスポーツ世界のルール違反であって、今回のような麻薬等の違法薬物の使用とは次元が違うのですが、PEDの方は大きな話題になるのにより大きな問題のはずの麻薬事件なのにマスコミの関心が薄そうなのがどうなのかなと。


アメリカに住んでいると誰それの親族がヘロインで家も車も売って全部ドラッグにつぎ込んだとか普通の子が麻薬のために売春に走ったとか行方知れずだとか言う話が流れてきます。他方ソーシャルメディアで薬を売り込みしてくる大馬鹿者もいます。もちろんダミーアカウントでしょうが。街中にはいくらでも売人がいます。ひどいものです。いや本当に。日本からアメリカへの留学生は近年減ったようですが、留学中に薬に引っかかって大変な状態になって日本に送り返されてからも止まらずという例も存じてます。

現在アメリカで最も大きな問題薬物はヘロインです。ざっとの話ですが統計上ヘロインにひっかかった人は9割方以上もう二度とまともな人生に戻れません。これは統計上の事実で、なんとか常習を断った人も心の中で常に葛藤している状態、常に我慢している状態とされます。受容体ブロッカーも既にあるんですが、そのブロッカー自体も常習性があって毎日摂取しなくてはならず…とキリがありません。ヘロインよりマシというだけです。そしてそういった患者を扱うクリニックの外にはドラッグディーラーが徘徊して元常習者をまた元に戻そうと活動します。そういうことでヘロイン禍は大変な社会的コストであり、家族にとっても悪夢の事態が全米中で蔓延しているわけです。

そういうヘロインという最悪の存在があるので「コカインぐらいなら」という意識が広がっているのがいまのアメリカなわけです。それがある種の常識になってきているのです。そういう背景があるので今回のJon Jonesも取り立てて大げさに謝罪するわけでもなく淡々とコメントを残して悔いるわけでもないということになるんでしょうね。

そういうお国柄なのでコカインよりさらに健康問題が少ないとされる大麻=マリファナは当ブログでも何度か取り上げた通り解禁論議が進行中。日本とは足切り点が全然違ってしまっているのです。

強調しておきますが日本の方が絶対いいのです。日本のダメ絶対的なキャンペーンはいまの日本の常識と現状においては間違いなく正しいので、ぜひぜひそのラインを死守していただきたいです。後戻りは効きませんので。大麻開放論者などの嘘に騙されないようにされてください。間違いなくゲートウェイドラッグとして機能してしまいます。今のアメリカのようになってしまうとどうしようもないのです。

A-RodはNPBに移籍できない?

New York Yankees Alex RodriguezへのMLBが課した出場処分の異議申し立ての仲裁結果が発表になっています。出場停止試合数は従前の211試合から162試合に短縮という内容。A-Rodは即座に連邦裁判所で争う旨のコメントを発表していますが、実際に提訴するかどうかは若干懐疑的です。顧問団弁護士に乗せられている可能性を感じます。2014年シーズンは諦めて2015年シーズンに復活を賭ける、でいいんじゃないのかなと思うんですがどうでしょうか。細かいことを言うと今回の処罰はPEDの使用そのもの以外の部分、捜査妨害で罰せられている面が強いのでA-Rodが実際にPEDを使ったかどうかはあんまり関係ない話になってきているんですが、マスコミでさらっと触れるファンにとっては違反薬物摂取ととられてしまうのでその点にA-Rodが拘っているのかなという気がします。MLB選手会側はMLBの手続き瑕疵や証拠への異議は唱えておらず連邦裁判所に持ち込んでもこりゃ見込みないんじゃないのかな?という感触です。


それはともかく。MLB Networkでこの件の詳細な特集番組をやっていたのですが、その中でおもしろいことを言っていました。Bob Costas氏が持ち出してきたのでどれほどそれが真実か裏は取っていないんですが曰く「2014年のMLBの出場停止は日本リーグその他も尊重するので、一年間だけ海外リーグでプレーするというのもできない。ありうるとしたら米国内の独立リーグだろう」というコメントがありました。え?という感じです。NPBはMLBの出場停止処分を尊重する?そんな話が過去にあったんでしたっけ?NPBの事情を私は知らないのでそうなのかもしれません。どうなんでしょうね?

私が意外だと思ったのはこういう過去事例があるからです。NFLの話ですが、RB Ricky Williamsが薬物違反(PEDではなく大麻。Rickyは大麻愛好家でオフシーズンはオランダで大麻三昧)で1シーズン出場停止処分となったときにCFLでプレーした事がありました。NFLとCFLは独立の組織ですが、相互不可侵条約を結んでいるであろう(そういう公表された事実はありません)CFLがRickyを受け入れていたのはOK。それがMLBとNPBだと不可?本当に?と思ったわけです。一年だけまだ賞味期限の切れていないA-Rodが日本でプレーするなんてNPBにはいい宣伝機会で良いんじゃないかと思っていたので、単なる紳士協定とかなら無視してNPBは取っちゃえばいいのにと思うんですがどうでしょうか。


ただNPBは例のポスティング契約のあまりのダメさにコメントする気も失せたほどの無○集団(失礼)ですから、MLBになんか言われるとそのまま受け入れちゃいそうではあります。本当はそれをバーゲニングパワーに使ってなんらか他の部分でMLBから譲歩を引き出すぐらいの手管があるといいんですが。

いよいよ出てきたMiami HurricanesのPED疑惑

いやこれはちょっと意外でしたが、妙なところから私の憶測記事が現実の話題に発展する可能性が出てきました。PED使用で出場停止中のMLB Milwaukee BrewersのRyan Braunを旧友が民事訴訟で訴えており、その中でBraunが大学在学中からPEDを使用していたということをぶちまけています。Braun側は現時点では全面否定。ただ過去の行状からBraun側の全面否定を信じるべき理由はまったくなく、関係ない第三者である私から見るとそういうことがあったのかもしれないねーという感じです。もうすでにMLBに対して全面降伏の方向で近々謝罪会見をすると言われているBraunがさらに何年も前の大学時代の事などもうどうでも良いわと相手にしないのは対応としては理解できるところ。

それよりも飛び火して迷惑するのはBraunの出身校=Miami Hurricanesでしょう。同校の学校ぐるみのPED違反について憶測だと散々ことわって記事を書いたのがつい先月のこと。散々憶測だと強調して、それを担保にまったく直接的な情報がない中、状況証拠を各種並べてMiamiを疑ってみたわけです。その時点ではそれが現実的に問題化するとは思っていなかったのです。大学スポーツの元締めであるNCAAは学生の小遣い稼ぎ規制やリクルート違反の摘発などに忙しく、大学レベルでのPED取り締まりには力は入れていない。Miamiの場合、前の記事にも書きましたがチーム成績の下降のタイミングからしてかなり以前にPEDの組織的な供給はやめているはずで(もう一度強調しておきますが憶測です)そんな過去のPED使用などNCAAが追求できる材料はないだろうし露見する可能性はほぼないと思っていたわけです。情報源があるとしたらまあお金に困った食いっぱぐれのOBぐらいでしょうか?

それが意外にもBraunの旧友(旧友ってなんでしょうか?)との諍いから表の話題として出てきてしまう。もし私と同様の疑惑をMiami Hurricanesに対してもっているジャーナリストがいればこの旧友氏に取材しておもしろいネタが書けるはずです。さあどうなるか。MLBが握っているBiogenesisの顧客リストというのもMLBは自分たちに関係のある部分だけ使用して処罰に使っていますが実際は他のジャンルの選手の名前も載っている可能性は十分。それがどこかのタイミングでリークしてくる可能性もあるのかどうか。それにHurricanesの選手の名前が載っているのかどうか。

適正手続きからA-Rodを擁護

では予告していたAlex Rodriguezの擁護をしてみたいと思います。まず以前に書いた記事のリンクを張っておきます。このリンク先の記事を書いたのは二ヶ月ほど前で今回処分対象になっている選手達の名前がBiogenesis社からMLBに提供されて、その処分についてのリーク情報(MLB側が意図的にリークしているような気がします)で過去のPED処罰と違う処罰が下される可能性が報道された時期です。

MLBは労使間の取り決めでPED違反者への処罰は三段階と決まっていましたし、いまもその取り決めは有効です。初回違反者は50試合出場停止、二度目は100試合、三度目は追放という三段階です。先日発表された初回違反者はこの取り決め通りに50試合の出場停止が課されたところです。シーズンの残り試合が50試合強なので優勝争いに関わるチームの処罰対象者は即座の出場停止を受け入れを表明していますね。控訴すればその控訴期間中は試合出場はできますが、それをやると強いチームの選手はプレーオフに出場停止がかかる。またプレーオフに出ない選手でも来シーズン冒頭まで出場停止がかかることになり問題を来季まで引き摺ることになるのは決して好ましいことではない。よって50試合出場停止組はほぼ全員が既に即時の処分を受け入れる方向です。MLBはこれを狙ってわざわざこの時期まで出場停止の発表を遅らせた可能性がありますね。


ただ一人事情が違うのがA-Rodです。以前に書いたリンク先の記事当時の話としてはA-Rodに対してはPEDの使用だけでなく捜査妨害を行った云々ということで初回処分を超えた懲罰を与えるという話だったんですが、最終的にMLBが下した処罰がなんと来季2014年シーズン末までの211試合出場停止。二ヶ月前に50+100で二回分の懲罰で150試合出場停止を課すという話でも理屈上おかしいな、という話なのにそれを超えて211試合ときました。これをA-Rod側は不服として徹底抗戦に向かうようです。そして私はそれを支持してみたいと思うのです。

まず一つ押さえておきたいのはこれまでMLBのPED違反使用処分で労使の申し合わせの三段階の処分以外の処分を与えられた例はただ一件だけです。先月先行して処分を受け入れたRyan Braunのケースです。但しBraunの場合は65試合の出場停止処分。初回処分相当に15試合毛が生えた程度です。Braunはご存じの通り既に一度サンプル移送の瑕疵を言い立てて逃げおおせた過去歴もある、言わばすねに傷を持つ身。理屈からいけば50試合の出場停止が相当のはずですが、ごねるよりも15試合余分に処分を受けて話題の中心から逃げた方が得策。それに調整面でももう今年は終戦してしまった方が本人も楽でもあります。チームもとうにプレーオフ戦線から脱落しています。諦めてしまった方がよいという判断は合理的に見えます。よってBraunは協定からはずれる処分を受け入れました。

A-Rodの方はBraunとは異なり、来季も丸一年出場不可の危機ですから必死です。年齢も上がっていますから実質キャリアエンドにつながる話だからでもあります。また高給取りのA-Rodにとっては来年丸一年間のサラリーが消える(PED出場停止期間中のサラリーは支払われません)わけですからその逸失利益を考えれば高額な弁護師団を組織して戦っても経済合理性もありそうです。それ以前に労使協定を理由に今回の処分の不当さを訴えるのは筋が通っているのですから弁護団もこの訴訟はいけると読むように思えます。

ではMLBはなにを考えてこの協定から外れた処分を課してきたのかという点についてはどうでしょうか。また私の推測好きが炸裂するのですが、MLBは最初からA-Rod側が控訴すること、そしてMLB側が敗訴して最終的には50試合または100試合または150試合なりの処罰になるのを読んでいてなおかつこの処分を課したのではないかと思うんですがどうでしょうか。なぜそんなことをするのか?といえばアナウンス効果。A-Rodという大物に稀に見る強い処罰で臨むことでのアンチPEDの宣伝効果を狙ったという可能性です。実際にA-Rod側のアピールで最終的な出場停止が50試合になったとしてもMLB側は強い処罰をもって厳格にこの問題に臨んだのだというアリバイになるから、ということでないのかなと。もし仮にA-Rod側の言い分が通って初回違反なのだから50試合となった場合、今度はMLBは選手会に対して強硬に現行の三段階の処罰基準の協定改定を迫るというシナリオを考えているのではないか。大騒ぎしても結局初回は甘い甘い50試合だけの出場停止なんて!という世論を喚起して一気に労使合意を厳罰化の方向の大幅改訂に持ち込もうというのを狙っているのでは、とまで疑っておきたいです。

そのMLBの遠望の犠牲にされるA-Rodはとばっちりというかお気の毒な役回りになってしまいました。PEDでの抜け駆けは非難されるに値する違反行為ですからそれは処分されるべきですが、MLBのアンチPED宣伝に無理矢理登場させられる、適正手続きを無視したMLBの戦術に翻弄される一選手という意味でこれは擁護してみてもいいのではと思う次第です。

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