アメリカスポーツ三昧

アメリカ永住コースか、または第三国に出国か!?スリルとサスペンスの人生とは別にアメスポは楽しい。

ドーピング・PED

五輪がリアリティ番組に

時差の都合もあってたぶん半日遅れで見たのですが、北京冬季五輪の女子フィギュアスケートの結末がカオス。どこにも救いがなくて、これが創作作品なら救いがなさ過ぎて絶対に脚本ダメ出しされてしまうでしょう。
演技がぼろぼろになって泣き崩れたドーピング疑惑の中心の大本命。テクニック面でベストの選手は自身納得の演技だったのに銀となりブチ切れ狂乱、こっちも泣きまくり。その二人をなだめるのにロシア陣営が総出となったため金メダルを獲得した選手は放置され、獲った本人も何を感じていいのかわからない空白の表情でポツンとトップのソファに座ってる。
さらには横にドーピング疑惑から無縁の日本選手が感涙。スポーツ番組でこれほどの混沌を露出した番組が過去あったでしょうか。

米国で五輪独占放送をするNBCもこの顛末はエグいと思ったのでしょう、米国人選手は全然絡んでいないのにプライムタイムに最終組の演技前後、そして上記の混乱も長尺で含めて放送する力の入れようでした。それにしても若い選手たちのメンタルがぼろぼろになりそうで、マジで救いがない。
ただでさえ今の時代、ストレスが多くて大人も子供も病んでるのに、さらに病む人間を量産してどうするよ、という。


米NBCのフィギュアスケートの解説は長年ずっとTara LipinskiとJohnny Weirの名コンビが務めてるんですが、これが今回の混乱ではドンピシャの人選となってます。Lipinskiは15歳のときに長野五輪で金メダルを獲得。今回の混乱の渦中となったミドルティーンのロシア人スケーターたちがどれほどの重圧と緊張にさいなまれているのか、どれほど人生の全てがスケートだったかを自身の経験も元に熱く代弁し、Johnnyの方は試合後に大荒れとなった選手やコーチたちのロシア語の発言をそのままライブで英訳。Johnnyはゲイ婚をしている相手がロシア人男性なのでロシア語がわかるんですね。その実況ライブ感がすごかった。作り物ではない悲劇をライブで配信できてしまった状態ですねー。アメリカで人気のリアリティ番組をライブでやってるみたいなもんです。
またTaraは「私の場合は周りの立派な大人が皆助けてくれて幸運にもあのときに金が獲れた。今回の悲劇は選手の周りの大人が責められるべき」と悲痛な訴え。

ショートプログラムの時点からNBCの解説陣は一貫してドーピング違反発覚選手の暫定出場を許したIOCの措置を批判。彼女にとっては酷でも、彼女はここで演技していてはいけない存在なんだと主張。そこはずっとブレなかったのは良かったわけです。ただショートプログラムでの圧倒的な演技でのトップ。批判はすれども金はとりそうだなと諦めも感じてる面もあったと感じていました。
そういう前振りがあってのこの予想外の結末。彼女が最終演技者の順になったのも偶然ですよね。それが衝撃と混沌の結末へ。


五輪で過去に米国が強かった花形種目でアメリカ人アスリートが勝てなくなっている種目には陸上競技があります。特に短距離走でジャマイカをはじめとするカリブの小国にアメリカが勝てなくなってもう長くなりました。たぶん関係者の中には、証拠は掴めないけどあの辺の国の連中は絶対違反薬物使ってるだろ、アメリカでは使えないから勝てない、悔しいと思っている人もいると想像してます。陸上で小国に歯が立たない米国という番組は、米国内向けカタルシスの面で五輪放送の価値を落としています。

今日のフィギュアスケート放送の最後に、今回も米国選手がメダルを獲得できませんでした。米国人選手がフィギュアスケートでメダルを連続して獲得できなかったのは1920年代にフィギュアスケートが五輪競技になった当初以来です、とのコメントでそのセグメントを終えていました。
うーん、フィギュアスケート界でも陸上短距離みたいに組織的ドーピング疑惑国への強い(でも表立っては言えない)鬱憤が溜まってるってことかな、という締めのコメントにも聞こえました。

選手がMLBに逆襲 粘着物質問題

MLB Tampa Bay Raysのエース投手であるTyler Glasnowが現在MLBで問題になっている投手の禁止されている粘着物質の取締強化のせいでケガをしたと発言。過去50年に渡ってどんな投手だって何か使っていたはずで今になって我々を悪者に仕立てて非難して罰則を与えるというMLBのやり方はおかしいと反論告発しています。

いよいよ議論が核心に迫ってきたというところでしょう。Glasnowの言い分によればMLBの供給するボールの質はばらつきが大きく、投手はなんらかの対策をとらないと安定した投球ができないのだとも主張しています。

この問題が浮上して以来、一番目立つところではLos Angeles DodgersのTrevor Bauerの直近2度の先発試合でのボールのスピン速度がガタ落ちになっているそうです。近年このボールのスピン速度は速球の伸びや変化球の曲がり方に直結する重要な観察ポイントとなっています。これはStatcastが導入されて以降の傾向です。

スピン速度をアップさせようとより性能の高い粘着物質を投手が(チームが?)求めるようになり成績を伸ばす投手が続出。三振続出、投高打低傾向に歯止めが効かなくなってきている、というのがMLB機構側の問題意識のようで、シーズン途中の今の段階で検査の強化、罰則適用の明言というMLB側の施策となってきていたわけです。

それに遂に選手側から真正面からの反論が出たという意味で今回のTyler Glasnow発言には意味があります。彼が肘内側側副靱帯に負傷を負ったのもボールの品質のばらつきを長年放置してきたMLBと、シーズン中に急に使用禁止の取締強化に乗り出した施策のデタラメさのせいだ、なぜ我々を悪者にするのだ、問題があるのはMLBの方だろうというわけです。

投高打低の是正というのはいろいろな側面がありますが、粘着物質問題が噴出したここ1ヶ月以前も打ってる打者はかなり好ペースでホームランを打ってると言える。本当に投高打低なのかは、単にバランスの問題で、それが排除すべき悪という一方的な批判は違うだろうなあとも思えます。

同時に肘を痛めるMLB投手は常に多く、毎年何人もがケガをするのは織り込み済みとすら言える。これは本当に投高打低なのか。投手は被害者なのか、それとも打者を実力以上に抑え込めてしまえるという意味で加害者なのか。どうとでも表現できる状態な気もします。

シーズン途中に違反物質使用問題をとりあげるMLB

MLBが投手がルールに違反して投手が使用しているとされる粘着物質の規制を強化するという問題がシーズン中の今持ち上がってます。ノーヒットノーランが続発する今季。投高打低傾向はもうここ何年ものMLBの傾向なので、もしこれがシーズンオフに持ち上がった話題ならゲームバランスの改変努力として理解可能なのですが、シーズン中に問題提起され、実際にMLBが取締強化に乗り出すというのは異常事態と言えるはずです。

グラブや帽子になんらかの粘着物質を塗っておいてそれを指先に付けて投球するというケースは過去のシーズンにも何度か相手チームからのクレームがついたり、審判から咎められたりという形で報道されてきました。規則上はマウンド後ろに置かれているロジンのみOKというルールですが、実際には多くの投手(ひょっとしたら全員)がなんらかの違反物質を塗布しているのではとされます。そういえば投球間にあのロジンバッグを触っている投手という絵を最近あまり見たことがないような。

シーズン中に取締強化を言い出すというのはよほど今季2ヶ月に目に余るケースが増えているということなんでしょう。一番言われているのがNew York YankeesのGerrit ColeとLos Angeles DodgersのTrevor Bauerのケース。Coleは記者会見で問われてのらりくらりな返事をして、言外に使用を認めているかのよう。業界内では公然の秘密という状態であることが伺われます。

一方打者側からもこの時点での取締強化に反対する声が出ている。New York Metsの強打者Pete Alonsoが投手の粘着物質使用に異議がないと発言していたりもします。急に使用をやめられてコントロール能力が低下して打者の頭に向かって100マイルの速球が投じられるより良いとか。
Metsの場合、現役最強投手Jacob deGromが所属。チームメイトでMetsの大黒柱であるdeGromもそれを使用しているとしたら、擁護するためにこういう発言になるかもなあと疑えば疑えます。

MLBがこの問題をまったく知らなかったということはないという評判で、もしそうならばなぜシーズン中に言い出すのかという点で強く批判されるべきな気がします。

元Hawaiiの名QB Brennan死去のニュース

Colt BrennanがFentanylで死亡したようです。37歳。BrennanはHawaii大のQBとして多数のNCAAを打ち立ててBrennan本人やその後のHawaii大所属のQBや、Hawaii出身のQBを本土の有力校にそしてNFLに送り込む端緒となった選手です。

Fentanylの中毒死が増えてる実感があります。BrennanのニュースによればBrennanはリハビリ施設に入っていたが何らかの理由で施設から退去、その数時間後にホテルの一室で意識不明となって救急が呼ばれ、そのまま死亡したとのこと。そうははっきりは書いてないですが、薬物のリハビリ施設から予定外の退去を命じられたのなら、たいていの場合はBrennanかその同居の患者が薬物を施設内に持ち込むなどして規則違反で強制退去の場合が多いはず。リハビリ施設に一度入ってdetox(薬物を体内からなくす)をした後の最初のドラッグ使用で命を落とすことはとてもよくあることです。入所前に日常的に使っていたのと同じ用量でも一度クリーンになった身体は耐えきれないためです。

ニュースにはlaceされたFentanylで死亡と書いてありました。この場合のlaceというのはフリカケの意味で、Brennanが通常使っていた・本人が使用するつもりで入手した違法薬物にBrennanの意図しないFentanylがフリカケかけられていた、という意味になります。

アメリカの違法ドラッグ談義をするとどんどん脱線していくらでも話せるので適当に端折りますが、Fentanylは少量でも強力な幻覚作用をもたらす合成物質で、メキシコで安価に製造されて大量の密輸入が行われており、以前に大きな市場を形成していたヘロインを凌駕しそうな勢いに見えます。ローカルニュースでもFentanylの摘発や死者の話題が増えている。以前はFentanylは元々市場のあったヘロインやコカイン、場合によっては大麻に微量を加えることで効きを良くして顧客満足度を高めるのに使われていたのが、最近ではFentanylそのものを売買することが増えてきているという話をよく聞くようになりました。
MLB Los Angeles Angelsの投手Tyler Skaggsが死亡した際にもFentanylは体内から検出されました。

Brennanのケースではlaceされていたという報道なので、それが正しければBrennanの個人の好みはもっと昔からあるドラッグであった可能性がありそうです。なにせ違法で流通しているモノなので何がどれぐらい混じっているのかわからない。自分の身体で試してみるしか、または仲間に試させるぐらいしか確かめる方法はないという話です。違法薬物が欲しくてしょうがない状態になった人はそんな細かいことは気にしないようですが。


それとは別の話になりますが、最近また銃撃での死者が増加傾向です。死亡事件だけでなく口論が激化して威嚇発砲という逮捕者もうちのローカルではどんどん増えている模様。
統計によれば例年発砲事件が増えるのはMemorial Day(5月下旬、今年は5月31日、祝日)以後なので今の時期の発砲事件の増加は怖いと解説する専門家もいます。Memorial Day以後にはもっとすごく増えるのではないかとか。やれやれであります。

Curt Schillingが殿堂投票対象から除外を希望

今年の野球の殿堂の投票結果が発表されています。今年は2013年以来の当選者なしの年となっています。記者投票で決まる殿堂入りは、最多得票のCurt Schillingが71%(75%以上で当選)、ステロイド期のスーパースターだったBarry BondsおよびRoger Clemensがそれぞれ62%の得票となってます。3人とも来年が投票対象の最終年となります。

こと成績だけならBondsとClemensの成績はSchillingを大きく上回っており、この2名に関してはPED使用の是非が殿堂入りを阻んでいると言えます。以前から何度か書いてますがBondsに関してはPED使用に走ったのはキャリア後半のはずで、キャリア前半のPittsburgh Pirates時代に既にMVPを獲得(計7度)しており、入れてあげてもいいのではないかという気はします。
但しこれを許すとその後のPED使用選手(Alex Rodriguezが最有力)の評価にも関わってくるので否定したいという投票者がいるのもまた理解はできます。

Schillingについては一応PEDではクリーンってことになってます。時代がそういう時代だったので完全にクリーンな選手がどれほどいるかというと大変疑わしい。そもそもがボーダーライン上の選手は全員落とした方が良いというのが私見なのでSchillingのような選手は落として良いのではないかと思ってます。既に当選した落としておいた方が良かったレベルの選手が殿堂入りしているのはもう仕方ないですが。


歴史的には一旦70%の得票をした候補選手はほとんど最終年までに75%の投票を得て殿堂入りするので、来年が資格最終年となるSchillingには当選の望みがあり、BondsとClemensは無理というのが予想される未来だったわけですが、その有望なはずのSchillingが自ら来年の投票から自身を除外して欲しいと殿堂組織側に申し出ています。

除外希望の理由は声明で長々といろいろご本人は言ってますが、要は来年の投票で得票がガタ落ちするのが見えている、その過程でさんざん晒し者になるのも嫌だという話かと。10年の記者投票による殿堂入り投票の期間を過ぎるとベテラン委員会と呼ばれる過去の選手の殿堂入り審査機関による殿堂入りの道があり、Schillingは記者ではないベテラン委員会の審査を経ての殿堂入りなら受けたいと言ってます。つまり言外に記者投票の対象にはなりたくないと言っているのです。

1月6日にトランプ支持者が連邦議会に突入するというテロ事件が起こったわけですが、Schillingはそれを支持する発言をしていたようです。支持する方、非難する方、個人がどう思うかはまったくそれぞれ自由ですが、さすがにあの事件だとトランプ支持者御用達チャンネルFOX News辺りでも支持までは表明できない。それをSchillingは支持すると表明していたらしいです。引退した一野球選手の意見などあの事態でさしたる意味があるとは思えませんが、ことが殿堂入りという野球人としての最高レベルの名誉に関わっているとなるとただの一野球選手ではないことに。

殿堂入り投票はあの事件の前に締め切りになっており、議会突入事件とSchillingの支持発言は今回の結果に反映されていません。一部投票者がSchillingの議会襲撃支持発言を知った後に、投票を撤回したいと申し出たという話もありますが、それは今回発表された結果では認められていないはず。今回Schillingは落選したので大事にはなりませんが、Schillingが唯一の当選者だったりしたら今頃、投票撤回要求が高まったりかなりの騒ぎになっていたんじゃないですかね。

そんな事情なので歴史的には当選見込み圏内の70%超の得票となったSchillingですが、来季の得票の上積みには期待しにくい情況となった、というかたぶん下がる。その過程で必ず議会襲撃支持発言が何度も取り上げられて晒し者になるのも見えているので、自分から投票対象から撤退申し入れをするということと理解してます。

個人的には殿堂は名前を並べただけでドリームチームになるような選手だけ入れるのが良いのではと思ってるので、ひたすら成績だけでもSchillingは要らないだろとは思いますので、議会突入支持だろうがどうだろうがそれは関係ないような気もしますが、それを大いに気にする投票者がいるのも理解できます。

Schillingが言うベテラン委員会というのは時代の変遷を鑑みて、当初は受け入れられなかった名選手を救済する使命があります。ニグロリーグの選手など人種的マイノリティが再評価されたという場合もありましたし、慈善活動が後世で当時より評価されたというケースもあり、未来で言えば打撃成績の指標が過去20年で大きく変わったことで、その昔の選手の見過ごされていた成績が見直されるという可能性もあるでしょう。
PED使用についても将来正当化されていく可能性はゼロではない。実際BondsやClemensへの投票はこの10年間でかなり増えました。Bondsの成績の数字自体は否定しようのない抜群の成績なので再評価の可能性はあるんでしょうね。PED自体は悪ではないということは当ブログも何度も議論してきています。

一方Schillingは…ないかな。そもそもの成績がボーダーラインなのに、PEDでも灰色だと認識してますし、暴力革命支持では三重苦ぐらいですからベテラン委員会から再評価を受けるのは苦しいように見受けます。
殿堂投票資格者から実際に外されるかどうかは次回の殿堂の運営会議で決まるそうです。

UFCがマリファナ解禁

UFCが使用禁止薬物についての運用を今年始めに遡って変更、マリファナの主成分であるTHCについて条件付きで取り締まりをやめると発表したようです。条件としてはTHCを運動能力向上に使用した場合は処罰対象のままですが、少量の喫煙摂取などは禁止からはずすということです。

2020年12月時点でNBAがマリファナ検査の廃止を宣言。そのときの記事でも説明したのですが、アメリカ連邦法上のマリファナの合法化の可能性が高まっています。記事を書いた時点ではジョージア州の上院戦2議席の再投票前で、マリファナ合法化支持の民主党候補が2議席とも勝つかは不透明だったのですが結果は僅差ながら民主党候補が2議席とも確保したため連邦議会がマリファナ合法化を可決できる情況となりました。

ジョージアの2議席が確定後の連邦上院は与野党50議席同士。誰か一人でも欠けると事情が変わるという緊張感のある情況となりました。また大統領の弾劾訴追も現在俎上に上がっている局面でもあります。平穏な時期ならともかく、いまは過激派が上院議員を狙って暗殺を企てる可能性を排除できませんし、そうでなくてもコロナ疫禍で年配の議員が突然欠ける可能性も否定できない。実際つい先日連邦下院議員でコロナ感染で死亡した方も出てます。その方の場合は41歳と若いのに11月の選挙で当選して、年を越す前に死亡してしまってます。なにが起こるかわからない。

そういう緊張感のある中、マリファナ合法化のような不要不急の案件の優先度はかなり低いので早急に審議されるとは想像できず、その順番を待ってるうちに民主党上院議員が数名暗殺されたらマリファナ合法化が霧散する可能性は十分なのですが、それはともかくもし何事もなければ1−2年のうちに連邦レベルでは合法化される可能性は高まったわけです。各州の州法はまた別ですが。

NBAは連邦上院の先が見通せない時点での検査廃止でしたが、今回のUFCはNBAよりは政治的なアジェンダの見通しが良くなった今の時点での禁止物質からの削除ということになってます。今後これに続くスポーツ団体は増えていきそうだなと推測できます。
マリファナの効用として鎮痛効果が謳われているため格闘技のUFCとは比較的相性が良いのか。そうだとすると他のコンタクトスポーツであるフットボールやホッケーでもOKになっていく可能性はありそうです。既にカナダでは娯楽使用が合法化となっており、カナダ人選手の比率、在カナダのチームの比率の高いホッケーNHLが次に続く可能性が高いかなと想像したりもします。

NBAが大麻使用検査を廃止

なるほど頭の良い人がいるもんだなと感心するタイミングでこの話題が急浮上しています。2つのニュースが別々にほぼ同時に発表になってます。まずNBAで今月開幕する2020−21シーズンで選手の大麻使用のランダム検査を取りやめるというニュースが出ています。それとはまったく別の話題としてアメリカ連邦下院で急に連邦法レベルで大麻の合法化を議決をしています。これ、リンクしているのかしていないのかは現時点ではわかりません。
ただこの話題が今の時期に急浮上したというところには意図があるだろうなあと感じるわけです。

連邦下院は民主党が多数で、アメリカの議員には党議拘束というような(たぶんアメリカ的思想では憲法違反行為でしょう)ものはなく、単純に党の勢力図で決まるようなことではないですが、とにかく急にいま持ち出してきて議決した。
しかし二院制のもう一方の連邦上院は現時点では共和党が多数を維持しており上院が現実的に同法案を可決する可能性はほとんどありません。当面上院で議論することすらまずない。上院下院がともに可決しないと法案として通過しませんので、下院が前のめりになって議決してもそれ自体では事態は変わりません。

ではなぜ下院が上院で成立の見通しのない大麻の合法化を急に言いだしたのか。こっからは完全に私の個人的な読みですのでそのように読んでください。

先月11月に大統領選と同日で各地で投票された連邦上院議員選の結果、現時点では連邦上院は定員100名のうち50議席が共和党、48議席が民主党(及び無所属)、2議席が欠員となってます。この欠員の2議席は1月に再投票が行われるのですが、どちらも南部のジョージア州の議席です。この2議席は11月にも投票されたのですがいずれの候補者も過半数を制することができず再選挙になってます。
もし民主党がこの2議席を獲れれば50対50。もし上院が賛否同票となった場合、副大統領が最後の1票を投ずるルールになっており、既に大統領選は民主党勝利となっているためタイブレーカーは民主党側。よって1月のジョージアの結果はアメリカという国のこれから数年の行き先を大きく変える可能性がある大事な選挙なわけです。

しかしながら場所は南部ジョージア州。共和党の有利は動かないのではというのが一般の読みでした。大統領選ではジョージア州は民主党のバイデン候補が勝利してますが、それは僅かな差。11月の激しい選挙の疲れもあり1月の再選挙の投票率は下がるのはほぼ確実。投票率が下がれば元々の地盤の共和党の勝ちだろうなというのが私の観測でした。

そこへ今回の連邦レベルでの急な大麻解禁への下院の動きです。これ、私には、「もしジョージア州で民主党が2議席とも獲れたら全米規模で大麻解禁になりますよ!」というキャンペーンに聞こえるんですよね。
つまりですね11月の段階では存在しなかった別の投票に出向く動機を作って、ジョージア州での投票率をあげようとしてるんじゃないかなと。今回の下院の議決では将来の大麻の娯楽使用・医薬品としての利用を非犯罪化するだけではなく、過去に大麻関連で有罪判決を受けた人たちの犯罪歴も全部消去しようというもので、過去大麻で有罪となったことのある人たちにとってはメリットのあるものとなってます。政治的な右左に関わらず大麻愛好家や犯罪履歴を持つ人はかなりいると考えられ、固い南部の地盤を割りにかかるにはこの法案は意外と効くかもなとは思えます。民主党の選挙戦略としてはかなりひねった変化球ですが、これを考えついた人はなかなかの策士で頭が良いなと思えます。
以上すべて私の解釈で、こういうことを今の時点で言ってるマスコミはないと思います。


そこで最初のNBAの話に戻ります。同日に急に連邦下院とNBAが大麻解禁方向の動きを起こしたのは本当に偶然なんだろうか、という疑問を感じるわけです。連邦下院の民主党の動きと、NBAは示し合わせている可能性があるのかもしれない。NBAがこの話題を持ち出すことで政治ニュースに疎い層へも連邦下院の動きの宣伝になるのではないかということを感じます。大統領選のときもトランプ大統領が「NBAは政治団体みたいだ」と非難していたのですが、確かにそういう面はあるのかもなーというところです。

現状、全米の既に半数以上の州で医療大麻がどういう形でか合法、およそ1/3の州が娯楽大麻を合法化の方向。但し連邦レベルではいまも違法なため医療目的で用いられても医療保険の対象になりえず、また購入する際もほぼ現金のみ。クレジットカードは連邦法で違法のものを購入することができないからです。キャッシュレス化が進んでいる中、これは不便ではありましょう。また合法州から合法州に大麻を持って移動する場合でも連邦法では違法という微妙な状態です。これらの問題が全部消失するってことです。大麻好きが嵩じてNFLを追われていったRicky Williamsが懐かしいですね。

Texansの2選手がPED違反

NFLでは昨日Houston TexansのWR Will FullerとCB Bradley RobyがPED違反で6試合の出場停止処分になっています。今季は残りが5試合なので今季の出場ができないとともに、来季の冒頭1試合も出場不能となります。Fullerは今季後にFAとなる予定でしたので次の契約を目指してPEDを利用して評価アップを狙ったのかもしれませんが、違反・処分となったこと、さらに出場停止が来季にも及ぶことでFAでの評価も落とす結果になりそうです。

少し前にMLBでNew York Mets所属のRobinson CanoがPED違反を問われて2021年シーズン丸1シーズン出場停止処分になったのは記憶に新しいところでした。
MLBにしてもNFLにしてもちゃんとドーピング取締活動をしてるんだなというのは地味ながら評価すべき点ではないかと思いました。今年4月の時点で「2021年五輪はドーピングの無法地帯かそれとも」という記事を書きました。コロナ疫禍の影響で国際機関によるドーピング検査が無力化されるのではないか、ドーピングやり放題になるのではということを指摘した記事でした。
国際機関によるものと、国内機関によるものはヒト物の流れも違いますので同列には語れませんが、MLBもNFLもコロナ蔓延の今年もちゃんとドーピングへの取り組みは続けているのだなというのはけっこうなことかと。特にNFLではチーム施設内への出入りを厳しくし、かつ施設内では選手スタッフ全員の動きをトレースする追跡デバイス着用を義務付けるなどで感染者が発生した場合に濃厚接触者や経路重複などを瞬時に判別できるしくみを導入するなど、真剣度の高い防疫予防措置をとっているのは過去にも報告しています。
そういう中へ、ドーピングの検査機関からの人員を(その訪問の性質上)予告なく入れているということであるはずで、ということはドーピング検査機関自体もその検査職員にNFL並の頻度でコロナ検査をしてるということかなと想像できます。本当にそうならば相当にカネも手間もかかることをドーピング検査員にも課しているわけで、そのカネはどっから出てるんだろうなといらぬ心配をしてしまったりもします。並の組織では真似ができない態勢になっていそうです。

娯楽大麻が3州で合法化へ

大統領選挙がヒートアップしていたのであまり話題になってませんが、今回の選挙日にニュージャージー州、アリゾナ州、サウスダコタ州で娯楽大麻の合法化が住民投票の対象となっていて、3州とも賛成多数で合法化となるようです。

アリゾナ州とマリファナと言えば、セドナを始めとしてヒッピーな方が多く住む同州なので賛成が多くなるのは予想されていたところ。遅かれ早かれという。それよりも全米的に影響が大きいのは東部ニュージャージー州での合法化賛成多数の方でしょう。全米最大都市のニューヨーク市の川向うはもうニュージャージー州。なし崩しにニューヨークやその他のニュージャージー州と州境を持つ東部の大都市周辺でも娯楽大麻の合法化はもう止められないことになりそうです。

今回の大統領選挙のサイクルでは両候補とも大麻には関心を示してなかったので争点になりませんでしたが、民主党の候補選びの段階では娯楽大麻合法化を明言する候補も何人もいましたし、4年後の次のサイクルまでには連邦法での合法化がアジェンダに乗るかもですね。トランプもバイデンもまったくお酒を飲まないとされていて、トランプさんなんかは大麻なんて解禁しても大したカネにならなさそうと思ってそうでしたが、4年後は共和党側もトランプじゃない候補になりますから(可能性だけなら今回トランプが敗戦したら2024年も立候補は可能ですけど)この問題への党内コンセンサスが必要になるかもしれません。

合法州と違法州が入り混じり、州法で合法でも連邦法だと違法というねじれ状態だったため、全国区で活動をするプロスポーツでは選手の大麻使用を違法ドラッグ使用扱いせざるをえなかったのが、これから数年で様変わりするかもしれません。大麻が大好きでシーズンオフに合法の国に渡ってヘロっていたRicky WilliamsがNFLからクビになったりとすったもんだしていた時代がありましたが、そんなのが昔話笑い話となるんでしょうか。

追記: 同じNew Yorkを名乗るプロスポーツチームでもMLBのYankeesやMets、NBAやNHLチームはニューヨーク市内に本拠地がありますが、NFLのNew York GiantsやJetsの本拠地は川向うのニュージャージー州に所在します。サッカーMLSだとNew York City FCはニューヨーク市内ですが、New York Red Bullsは本拠地はニュージャージー州側。NHLのNew Jersey Devilsはその名の通りニュージャージー州側。
ニュージャージー州側が娯楽大麻が合法と言ってもMetLife Stadiumのスタンドでぷかりとやるのは違法になるはずですが(先行した合法州がそういう運用)目を充血させてゲラゲラ笑いながら観戦する観客がいても不思議じゃないってことになります。
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