アメリカスポーツ三昧

アメリカ永住コースか、または第三国に出国か!?スリルとサスペンスの人生とは別にアメスポは楽しい。

女子サッカー

Rodmanの娘がサッカー米女子代表初招集

Dennis Rodmanの娘であるTrinity Rodmanがサッカーの米女子代表に初招集されるようです。Trinity Rodmanは19歳。サッカー女子代表はアメリカスポーツ界でも激戦区の一つですから19歳での招集は早いと言えそうです。

Dennis RodmanはNBA Chcago Bullsの後期三連覇時代、それ以前にDetroit Pistons "Bad Boys"での二連覇などNBAで異彩を放った選手。選手としてNBAから去ったあともセレブ活動で知名度が高く、容姿も派手。当時人気歌手だったマドンナとの交際、また北朝鮮との交流に中心的な立場を努めたなど単なるNBAの好選手だった以上の人物です。
時代が下ってさすがに最近は顔を見かけることは少なくなりましたが、今でもPlanet FitnessのTVCMに出てたりもします。

そのRodmanの娘が一流アスリートとして活躍しようという時期が来ているってわけですね。ちょうど昨日、カレッジバスケでKentucky@Vandarbilt戦を見ていて、Vandarbilt所属のScotty Pippen Jr.が活躍していたのを見たばかりだったので、また元Bulls栄光の時代の次世代の台頭です。
先日当ブログではRon Harper Jr.の活躍について触れました。これでBulls後期三連覇のスタメンのうち3人までが息子娘がアスリートとして活躍していることになります。すごい確率ではないでしょうか。後期三連覇時の他のスタメンはMichael JordanとLuc Longley。Longleyはオーストラリア人で今はどこで何をしているかまったく存じません。スタメンのアメリカ人4人のうち3人までがジュニアの育成に成功し、スーパースターのMichael Jordanのみそうはならなかったというところがおもしろいなと思います。

Rodmanは現役当時から奇人変人とみなされ異端扱い、Scottyは破産を経験。Ron Harperは当時の先発メンバーの中では一番目立たなかった。スタメンでなかったToni KuKocやSteve Kerrの方がHarperより記憶に残っているファンも多いはず。それぞれ一流選手ながらすべてが順調というような人生ではなかったのが、自身のジュニアの育成では生きた可能性もあったりするんですかね。

NWSLが今週末の全試合を急遽中止

零細からやっと抜け出そうという女子サッカーのNWSLが今週末の全試合の中止を決定しています。直接の理由はNWSLのトップ幹部が揃って辞任したこと。なぜ辞任となったかというとリーグ所属のNorth Carolina Courageの監督であったPaul Rileyが選手との不適切な関係を持ち、それについての調査の要求が選手側から出ていたのをNWSL幹部が放置したからということになっています。

North Carolina Courageは旧女子プロリーグのWPSなどで活動したWestern New York Flashの流れを汲むチームなので言ってみれば女子サッカーの中では数少ない名門の類。テニスのNaomi Osakaが今年1月に出資して共同オーナーにもなっているチームです。オーナーと言っても実質的に恒久スポンサーになっただけで日々のことに関与しているわけではないようですが。オーナーになった当時にチームの帽子をかぶって記者会見に登場したということがありました。この夏の全米オープンの頃にはWNBAのNew York LibertyのTシャツを着て登場という場面もあったりと女子スポーツ全体の応援に熱心なのかなという感じではあります。

女子スポーツにおける監督と選手の不適切な関係というのはしばしば噴出します。監督が男性でなく女性の場合というのも過去カレッジでありました。いずれの場合も表面化するとあっという間に解任という場合が多い。もし今回のNWSLで言われているようにリーグが数ヶ月(可能性としては数年?)に渡って放置したとすると批判は免れない可能性は高いのでしょう。なぜ放置したのかがよくわからないのですが、Paul Rileyは名コーチと目されており影響力が強かったからという説が唱えられたりもしてます。あんまりピンとこない説のように私には思えますけれど。

いずれにせよつまらない不手際でマイナープロ組織にとっては大事な商品である試合が中止。中高カレッジNFLとフットボールシーズンがたけなわの今の時期にわざわざ女子サッカーを観戦に来てくれようと思っていた多くないファンをこんな理由で試合中止、失望させるのは実にまずい気がします。解任されたNWSLの女性コミッショナーは一体何を考えていたのか知りたいものです。放置しておけば消える問題だと思ったんでしょうか。

サッカー女子代表 準決勝敗戦

サッカー女子米代表が東京五輪の準決勝でカナダに1−0で敗戦しています。PKによる1失点なので失点の方は仕方ないとしても、90分でゴールを一度も割れないままの敗戦はいよいよ最強を誇った米女子代表も一時代終わったかなということになりそうです。

今大会これが5試合目ですが、無得点の試合が実に3度目。多彩な攻撃陣を誇り、試合途中で前線を総入れ替えする形で試合を通して圧力を維持したはずなのに得点につながっていかないという結果です。
準決勝で敗戦して3位決定戦に回っていますがアメリカンな価値観からして銅メダルにどれほど執着できるものか。栄光の時代のメンバーによる最後の公式戦になる可能性は高いです。
例年国際大会の年はビクトリーツアーとかなんとか銘打って大会後に米国内での巡業をするので現メンバーによるサヨナラ興行はあるとは思いますが。

たまたまですが昨夜男子の代表の方が若手を揃えてのGold Cup決勝で快勝をしたばかり。女子の方が知名度のある高齢の選手たちがこの五輪での敗戦を境にさすがに去っていくケースが増えるはず。自主的に去らなくても協会の方が世代交代に舵を切ろうとする可能性もある。女子の方が人気も実力も高いというアメリカサッカー代表の風景が、久々に男子向きに潮目が変わる瞬間が今なのかもしれません。


知名度では劣るものの既に女子代表のベストプレーヤーは26歳Rose Lavelleです。Lavelleは既に60キャップ超えと代表での実績は積んでいるんですが、上の世代が大量に残っているためLavelleでも若手扱い。テクニカルで良い選手。
年齢的に次のサイクルにも確実に残りそうなのはKristie MewisとSam Mewisの姉妹、Lindsey Horan、Julie Ertz辺りまででしょうが、この中盤の選手たちでも27−30歳ばかりでかなり年齢的にこの先の伸びしろはどうなのか。つまり中盤の選手は次のサイクルでも同じ顔ぶれになりそうだという意味なんですが、Lavelleはともかく他のメンバーは体力勝負の選手が多い。いままでは前線に決定力のある選手が多かったので中盤からのセットアップなどは適当で運動量でボールを相手から奪って前にどういう形でも供給していれば勝てていたのが、今大会でがっくり得点力が落ちてしまったことで、中盤のタイプの見直しもちょっと考えないといけないようにも思えます。

フォワードの方はさらに深刻。若い方で32歳Alex Morgan & Christen Pressから36歳Megan Rapinoe、39歳Carli LloydというFW陣がこれまでより良くなる可能性は低い。Morganは産休明けなのでひょっとしたらまだ回復途上でまだ次のサイクルで復活する可能性はありますが、こちらも世代交代を目指さないといけないのは確実でしょう。少なくとも若い世代のストライカー候補に機会は作る必要がある。

米女子代表が良く言うセリフで「米女子代表のサブの選手たちで世界2位のチームが組める」というのがあります。代表のベンチの選手の質の良さを讃える言い回しなのですが、同時に固定化・高齢化した先発メンバーが押さえ込んでしまっていた若手の選手の不満を回避するガス抜き発言でもあったかと思います。今五輪での失敗でさすがにこのセリフで若手の不満をそらしているだけではうまくいかなくなる。

ただ同時に女子代表が米国内の興行動員で長年好成績を残していられたのは栄光の時代の知名度の高い選手たちがいつも出場していたからでもあります。米女子代表の戦力の立て直しとして大幅に若手に切り替える起用が求められるのですが、知名度の高い選手をごっそり外すという事は興行成績という面では危険を犯すことになります。

女子代表による男女同報酬要求の問題は過去数年大きく報じられました。法廷闘争も含め論点はほぼ出尽くしています。その中で女子側の大きな主張の根幹のひとつは女子代表の動員力やグッズ販売などの経済的貢献の高さでした。男子代表と遜色がない、または勝っていた。その重大なアドバンテージが世代交代で失われる可能性が高いです。

サッカー女子米代表が五輪初戦で敗戦

サッカー米女子代表、東京で初戦で完敗。スウェーデンに0−3。アメリカからだと見にくい時間帯の試合だったのでハイライトしか見てませんが、さんざんだったようで。

米代表の組は他はオーストラリアとニュージーランド。その対戦は引分となったので、米代表はグループ最下位でのスタート、得失点差-3。まだあと2連勝は十分可能でしょうが、得失点差のビハインドまで解消するような勝ち方は望みにくい相手かも。もし残りの2試合のどちらかを引分るようだと米代表の3位通過なんていう事態が発生しえます。もしそうなると可能性としてはトーナメント初戦でトップ通過した日本代表がアメリカを引き当てるという可能性もありそうです。

たまたまなのですがこの試合の報道を私が最初に見たのがFOXのニュースサイトで。そしてさすがFOX、そのニュースの切り口というのが優勝候補の米代表が予想外の完敗を喫したことではなく、米女子代表が試合前に人種差別に抗議する膝つきをしたという報道になっていて苦笑でした。2021年も半分過ぎてもまだFOXのディレクターにとってはそっちのが重要なのか、と。好きだねーという。ちなみにこの試合は米代表だけでなく、相手のスウェーデン代表も同様に膝つきをしていたようです。


サッカー女子代表の大舞台での大敗というと2007年の女子W杯の準決勝でブラジルに4−0で惨敗したのが思い出されます。今回はグループステージ、そして3位でも通過可能という仕組みの中のことですから取り返しはいくらでも付く話ですが、10代を多く含む健全な若い女性ファンを獲得してアメスポ内に異彩を放ったサッカー女子代表もメンバーが高齢化。多くない若手選手で代表主力になっている選手たちが(そういうことを言ってはいけないのですが)あまり可愛げがなく、いつまでたっても10年前の主力ばかりがTV出演、CM出演でも目立つ。
今回の五輪の結果がどうなるかはわからないですが、さすがに次のサイクルは世代交代になって人気が怪しくなっていきそうなタイミング。現メンバーでの最後の戦いがはかばかしくない結果に終わったときに女子サッカー代表の人気や露出がどうなっていくのかは気になるところではあります。

Bullsの子どもたち

女子サッカーのNWSLのドラフトがあり、全体2位でTrinity Rodmanという選手が指名されてます。Dennis Rodmanの娘さんです。みんなそんな年頃か、と。

みんな、というのは来季のNBAドラフトの上位指名が期待される選手の中にScotty Pippen Jr. (Vandarbilt) とRon Harper Jr. (Rutgers)がいるからです。Chicago Bullsの後期三連覇時の主力メンバーの子どもたちが揃ってプロスポーツに入ってくるというのがちょっとおもしろいかなと。Pippen Jr.とHarper Jr.はともに20歳で2000年生まれ。Rodmanの娘は18歳とのこと。

Chicago Bullsの後期三連覇は1995-96シーズンから1997-98シーズンまでなので、1998年夏にBullsが解体となったあとにそれぞれ生まれた子たちですね。PeppenはPortland時代、Harperはキャリア最晩年Lakers所属の頃ということになります。RodmanのとこはNBA引退後の子ですね。

後期三連覇時の他のメンバーというとSteve Kerr、Toni Kukoc、Luc Longly辺りですが、後ろの2人は外国人ですのでいろいろ人生設計はアメリカ人とは違うかも。Kerrの子供がどうとかいう話は聞いたことがないです。

ところでBullsの中心人物Michael Jordanさんのところはどうなんでしょうか。その手の話に私は強くないのでいまちょっと調べてきましたがどうも息子さんはバスケの才能は足りなかったようでカレッジレベルで埋もれちゃったみたいですね。まあJordanの場合、他のメンバーたちとは桁違いにお金を持ってるので子どもたちがあまりハングリーさを維持できないとかあるのでしょうか。
Jordanと後妻との間にできた娘が産んだJordanの孫の父親が元Indiana PacersのRakeem Christmasなんだそうです。Christmasは海外でプロリーグを転々、現在台湾で現役選手を続けているとWikiには書いてあります。

NWSLがチームスポーツの先陣を切って開幕

女子サッカーNWSLが今日からシーズンをスタートしています。これまで個人競技・モータースポーツで再開はありましたが、NWSLが疫禍後初のアメスポチームスポーツの開催となります。合計23試合のChallenge Cupとしてユタ州で開催。またユタ州なんですね。
NWSLで過去2シーズン連続優勝しているNorth Carolina CourageとPortland Thornsのカードで。NWSLの過去7シーズンでそれぞれが2度優勝しており、Portland Thornsの方は試合平均20,000人の動員を誇るNWSLの単独で突出した動員頭。一般の方はわからないでしょうが、ほぼこれがNWSLが提供できるベストのカードと言えるのでしょう。
地上波CBSが放送。NWSLにとって創設以来初の地上波全国放送となります。現地で午前10:45、東部時間午後12:45キックオフ。

NWSLには9チームが所属しますが、Orlando Prideはコロナ感染者が10名出てしまい今大会から離脱、8チームの参加となります。
Orlandoのあるフロリダ州は全米で今コロナ感染が一番マズい州のひとつで、その上Orlandoの選手たちはSocial distancingを実行せず夜バーに繰り出して集団感染したというバカっぽさ。ガキか?プロアスリートという自覚はないのか?という感じですね。まあNWSLは大した金額は選手に払っていないのでカネも払わず自覚ばかり要求するのは酷なのかもしれませんが、それにしてもチームごと離脱を余儀なくされたのは今後再開していく各チームスポーツリーグにも反面教師としてもらいたいところです。残りが8チームあってまだ救われてます。7チームになっていたらスケジュールに多きな支障になっていたはず。

また個人の選択としてかなり今大会への辞退者がかなり発生してます。女子アスリートで最も知名度の高いひとりであるMegan Rapinoeは参加しません。他にも日本にも知られた名前ではCarli Lloyd、Tobin HeathもAlex MorganもChristen Pressも出ません。Morganは産休扱いだと思いますが。Rapinoeが出ていればBLM問題や膝つき問題始め、最近出た同性愛者の勝利と言える連邦最高裁判決についてなどマスコミからコメントを求められたでしょうが不参加。


さて試合を見ようかと思ったら、今年は試合の前にこの問題があるんでした。すっかり忘れていました。

試合前の国歌演奏時は両軍全選手が膝つき。立っていたのは審判団だけ。この時点では審判団を含め選手がBlack Lives MatterのTシャツを着用。コマーシャルを挟んでの試合開始前にも場内アナウンスがあって全員が膝つき46秒黙祷。なぜ46秒かというと例のGeorge Floyd氏が警察官に首を押さえつけられていた時間が8分46秒で、抗議の初期の頃には8分46秒の黙祷をしていたイベントもあったのですが間が持たないので最近は46秒らしいです。選手は試合中もBlack Lives Matterと書かれた黒のアームバンドを着用。

さてもう一方の喫緊の問題コロナ対策の方はというと、監督除きベンチの選手・スタッフはマスク着用。但しアップをしているときは外してました。
ハーフタイムにロッカーに向かうときに出場していた選手にすぐにスタッフがマスクを手渡しして、選手たちは屋内に入る前にかけてました。いままだハーフタイムになったばかりで息が切れてるだろ、そこでマスクさせるのかというタイミング。体力のリカバリにこれは障るのでは。防疫としてはなかなか徹底しているとも言えますし、スポーツ的にはちょっと疑問。この先続く他のスポーツもここまできるのかな。いろいろ考えさせられますね。


プレーの方は足を滑らせる選手が目立ったりと準備不足が疑われるところもありましたが、両チームとも球離れの良いプレーぶり、意思が見える展開が多めでなかなか楽しめました。最後の20分にゴールが立て続けに出て2−1でNorth Carolinaの勝利。

それよりもなによりも、やっぱり快晴の太陽の下のスポーツは良いですね。それだけでも開放感と爽快感があります。

女子サッカーの構造的問題が男女同報酬問題に投影

女子サッカー代表チームの報酬が男子代表との差があるという問題ですが、どうも過去ほとんど語られていなかった部分があるということが指摘されるようになってきてます。先日連邦裁判所の一審で女子代表側が敗訴。原告が控訴審に進むことを宣言していますが、アメリカの訴訟の仕組みでは一審の敗訴は日本のそれと比較してとても重いです。

一審の判決文の中で女子側の報酬は男子に劣っていないという認定があったわけですが、これの中身には男子代表には協会が提供していない福利のコストが女子側に提供されていて、その部分を報酬として計算していたってことのようです。それで原告側から見ると男子と女子では手にする金額が違うというもともとの言い分になるし、協会側からするといや女子にも総額で男子と相応の金額をかけている(直接手取りとしては払っていないけど)ということになったようです。
また訴訟の対象となった時期は女子代表の方が公式試合数が多く(女子はほとんどの大会で勝ち進みますからそうなります)総額での収入だと女子が多かったという事情もあるようです。

男子代表選手はほぼ例外なくどこかのプロチームに所属しており、例えば手厚い医療保険やチームドクターによるサービスを所属チームから無償で受けられる。ところが女子選手は今はNWSLというプロリーグがありますが零細リーグでとても福利厚生にコストがかけられる状態ではなく、産休などの補償もない。その辺の事情があるので女子代表は過去サッカー協会との協議で男子よりも手厚い福利厚生条件を引き出していたということです。その部分の女子のみ得ている利益を金額換算して加算すると女子の報酬は少なくないという主張になりえ(議論の余地はありますが)、連邦裁判所一審もその線で女子への利益は多いといえるとして、原告の主張を証明不足、棄却としているということです。これは女子サッカーをめぐる構造的な問題の投影と言えるのでしょう。

なるほど、そういうことなら判決文の女子の方が報酬が多いという指摘の意味がやっとわかりました。報酬金額という具体的・明瞭な数字のあるもので原告の主張が退けられているのが訝しかったのですが、報酬の認定基準が違ったということですね。
それでもわからないのはもしこれが事実なら、なぜ協会はこの点を事前にもっと広報して主張しなかったんでしょうね。私はこの件の記事はかなり目を通しているつもりですが福利の男女差の件をはじめて知りました。今年の3月時点での被告サッカー協会側の主張は多岐に渡ったものでしたが、スポーツニュースや一般非スポーツ報道で取り上げられたのは女子代表の責任は男子より軽いとか、スピードに劣るとか、お金に換算しえない余計なことを書いた部分で、代表選手だけでなく一般女性からのスカンも喰って荒れ、結果として協会会長が辞任する騒ぎとなりました。
一審で勝利したのですから全体としての協会の主たる主張は間違っていなかったと認定されても、女性の権利を阻む悪の組織というレッテルが外れるわけではない。これじゃ女子代表に出すカネを抑制する以上のダメージじゃないか、という。
全体としては女子代表側も協会側も主張を整理すべきなのであろうと思われます。それを双方が検討する中で、出口戦略・和解の機運が熟成されることになりえます。


ところで今回の女子代表の一審敗訴を受けて、男子代表チームの選手会からは女子代表の同額報酬の主張を支持するというコメントが出てます。これは賢いのでしょう。男子代表対女子代表という対立構造にされて男子代表が悪役の一部にされるのを避けられています。
過去、SNS上で男子代表選手と女子代表選手が子供じみた言い合いをしていたりと長く見てるものからすると男子側には忸怩たる思い・またはそれ以上の悪感情を持ってる選手もいるのはずっと感じられていましたが、ロシアW杯進出失敗以来は男子側は完全に沈黙をせざるをえない状況に追いやれており、男女選手によるいがみ合いを見かけることもなくなりました。見かけないからと言って男子側の女子側への不満が消えたわけではないと思いますし、外から見えない形で協会内で女子代表への抵抗勢力があるのは容易に推測できますが(そうでないと協会の執拗な抵抗の理由がわからない)、とりあえず表立っては男子代表は応援してますとさらっと言ってしまうのは賢いでしょう。協会の対応の下手さのとばっちりを受ける必要なんてありません。

サッカー女子代表が一審敗訴

サッカー女子代表選手が米サッカー協会を同待遇問題に関して訴えていた連邦裁判所の一審で敗訴してます。判断が出たのが金曜日、それも西海岸のカリフォルニアでの判決だったため(東部時間では週末間際)か詳細な敗訴理由についての解説記事があまり多方面から出ていないのですが、訴えていた主要部分の主張が証明不足とされて敗訴。原告側は判決を不服として控訴審に進むことを宣言しています。

この件は当ブログでは何度か取り上げてます。判決文についての記事を読むと、選手にとってあまりお金にならない待遇の男女差については認定しているものもあるようです(例えばW杯へ移動するときのチャーター機の差、サポートスタッフの質量など)が、たぶん女子代表側が一番望んでいた試合への参稼報酬を男子と同等とするという部分については証明不足として棄却。他では2015年カナダ女子W杯のときに人工芝で試合をさせられたのが同等の労働環境が提供されていないという点も訴えていたそうですがこれも棄却されたようです。

訴訟の中身を又聞きとなる新聞記事だけで批評するのは問題がありますから避けますが、試合当たりの報酬だと女子の方が高いという計算も成立する(?)という記述が判決文の中にあるらしく、事実関係自体が良くわかりません。金額という客観的な事実で主張が食い違うというのが既によくわからない。
控訴審に進むというのですから原告側はこれからさらに法律上の主張を練り直す必要がありますが、原告側の資金面が脆弱だとどれほど一審以上の主張ができるかは不透明です。アメリカの弁護士事務所は強いところは高いですからね。

敗訴の報を受けて民主党側の大統領候補のバイデン候補は女子代表に今後も法廷闘争の継続を強く勧める発言をしてます。バイデン候補は副大統領候補に女性を起用することを既に公言しており、女性票を強く意識しており、ここでの女子代表への支持はその線に沿ったものなのでしょう。リップサービスも込みでしょうがバイデン候補は自分が当選したあかつきにはもし女子代表が係争中のままでも他の方向からサッカー協会に強力な圧力をかけることも言及してます。

そこまで言われてしまうと控訴審が進む過程で協会と女子代表の歩み寄りがあるんですかね。以前ならトランプの再選が有力視されていたと思いますが、コロナ疫禍で状況が大きく変わりバイデン候補が当選する可能性は数ヶ月前とは比較にならないほど高くなってますから。

米サッカー会長、職を投げ出す

どさくさまぎれのカオスですね。米サッカー協会の会長Carlos Cordeiroが辞職。後任には元女子代表選手で協会副会長のCindy Parlow Cone(選手当時はCindy Parlow)が就くことに。米サッカー協会会長職に女性が就くのは初。

これはあれですね、もうとても対女子代表の訴訟、およびソーシャルメディアでの支持者の圧力に耐えられず辞任、男性会長が後任ではこの問題は決断ができないことでは同じで、女性新会長に責任を押し付けて処理しようという感じでしょう。たぶん男子代表側からの外から見えない圧力がすごいんでしょうね。
新会長となるParlowと現役の選手たちの関係が過去良好かは存じません。Parlowが会長としてこれまでの協会の主張を繰り返すかどうかも見ものです。

少なくとも会長の首の挿げ替えで「旧態依然の男性社会対女性の権利」という構図を崩すことには成功していると言えます。また法廷闘争で事態が長期化することを防げる可能性も新会長の登場で復帰したかも。態度を硬化させていた原告の女子代表もとりあえずParlowの対応を見守ろうとするでしょうし。

Parlowが女子代表の要求を大方の部分で認めたとして、その後長期政権を築けるかはわかりません。なにせ2026年の自国開催は100年単位での米サッカー協会の最大の事業です。それを仕切る手腕があるかどうかは見えない。また現行のコロナウィルスのごたごたという目前の問題も存在しますし、Cordeiroが逃げたのは難しい仕事を全部女性会長に任せて、次期選挙で地位は取り戻せる、あとから見れば好判断ということになるかもです。
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