アメリカスポーツ三昧

アメリカ永住コースか、または第三国に出国か!?スリルとサスペンスの人生とは別にアメスポは楽しい。

女子サッカー

3AMの試合開始の試合番宣に批判記事が出る

先日も書いたのですが今回のサッカー女子W杯関連の動向のニュースが非スポーツのマスコミで報道されています。それはかなり異例なことなんですがスポーツに不慣れな読者リスナーを相手にしているようで米女子代表のグループリーグ最終戦の放映時刻への不満の記事なんかの記事が出てます。こんなことまで記事になっちゃうんだなという意味でサッカー米女子代表の存在とそのフォロワーは違うんだなあというところが際立ちます。

今夜の試合開始は東部時間帯で3AM、西海岸だと深夜24時。見づらい時刻です。それを試合中継をするFOXが試合開始を1AMからであると誤解させるような番宣をしているというのがその記事の主旨です。
先日から報告しているとおりFOXではFIFA World Cup Todayという名の2時間の前番組を過去2試合で展開。それが第3戦でも続くということなんですが1AMだったら我慢して見ようかと思うけれど3AMなんてムリというのは個人の感想としては当然あって良いと思うんですが大手のマスコミ記事でそんなことを書くんだなあと。

試合の相手はFIFAランク29位のポルトガルで引分でもグループ突破という状況でさすがに大丈夫だろと思うので個人的には起きてまで見る予定はないです。

トーナメントの予定を見ると米女子代表がE組を首位で突破すると一回戦は現地正午=米東部時間帯で8PM試合開始のFOXにとっておいしい枠で試合ができるようです。2位通過だとトーナメント初戦はアメリカ5AM開始の刑ですからFOXとしてぜひ一位通過して欲しいでしょう。まあ5AM開始の方が3AMよりは見やすいですけど。3AMって夜更かしでも早起きでもない時刻でしんどい。
さらにE組1位が二回戦=まで勝ち進んだ場合の試合時刻は米東部時間帯で9PM試合開始。つまりは最初から米女子代表は1位で通過することを前提にこういう試合時間が組まれていたってことですか。

Siclair6大会連続ゴールを達成できないまま敗退

サッカー女子W杯でカナダがホスト国のオーストラリアに0-4で完敗、グループリーグでの敗退となってます。長年のカナダ女子の大エースだったChristine Sinclair40歳はさすがにここまでか。2003年の米国開催のW杯での3ゴールから連続5大会続けてきたW杯でのゴールを今大会では決められずW杯6大会連続ゴールの偉業は達成ならず。6大会はさすがにすごい、今後も破られない可能性のある快挙だったと思うので惜しかった。第2戦の対アイルランド戦で惜しい場面がいくつかありましたがもしあの試合でゴールを決めていてもカナダのグループでの敗退は変わらなかったことになります。

Sinclairとカナダ女子代表というと2012年の五輪準決勝を思い出さざるをえない。Sinclairが3ゴールして3度までリードしたカナダが米国有利の判定の連続となった試合終盤の連続反則(ほとんどお目にかかれないGKの6秒ルール→米国FKを含む)で米女子代表に逆転負けした試合を思い出さざるをえないのですが、そんなのは歴史の底に埋まってしまい勝者の名だけが残る。
Sinclairと同程度の実績をアメリカ人選手が残したらマーケティング価値は大変なものになったはずですけどカナダ人だってことで米国内では地味な扱いまたは無視に近い扱いになってます。これってスポーツに限らずですがカナダ人の有名人って米国内での扱いが雑になる面が強いしピークを過ぎるとフォローがほとんどないように思います。

今大会の敗退が決まってからの取材に応じてSinclairはカナダでの女子サッカーの改革について語ってました。女子のプロリーグの不在にも言及。どうですかね。今カナダは男子が急速にCONCACAF内での地位を向上させているタイミングで2026年の北米3カ国共催W杯もある。対して女子の方にはSinclairのような突出したスター選手が後に続く様子もないようです。カナダ側のリソースは限られており今は男子の方に思い切ってリソースは振り向けているタイミングでもありSinclairの引退(と決まったわけではないですが)とセットでカナダ女子は一区切りになってしまいかねない。

いまは米女子代表と互角の勝負のできる国が増えましたが参加国のレベルが低かった時代にはカナダ代表は米女子代表にとっては大事な国際試合の相手だったものです。低予算で女子代表の運営をしなきゃいけなかった時代には近場のカナダに腕試しになるチームがあることは米女子代表にとっても有益だったはず。
それが予算も上がり世界のどこからでも対戦相手は選んで呼べるし公式戦でも日欧豪と難敵のバラエティが増えたんでネタには困らずカナダ女子が没落してもアメリカはもうあまり困らない様になっちゃってるとは言えます。

一般ニュースで話題にされるのは意味が違う

扱いが違うなあと感心しているのがサッカー女子米代表の昨夜の試合、W杯グループリーグでの対オランダ戦。先制されて苦戦しながら1-1の引分。これで2戦で1勝1分勝点4。期待されていたグループ突破は最終戦に持ち越しになってます。

そのただのグループの1戦が各メディアのニュースで報じられています。この辺の感じは日本の常識からはわかりにくいと思うのですがアメリカでは非スポーツの一般メディアの日々のニュース報道でスポーツの結果が報じられることはまずないです。メジャースポーツの優勝決定などが一般ニュースが報じられる程度。日々の話はまず扱われません。
英語でのW杯の独占放映権を持つFOX系列やスペイン語放映権を持つNBC系列だけではなく関係のない系列でもみな報じていますから供給側の事情ではなく非スポーツファンの視聴者の需要が高いという意味だと考えて良いのだと思います。

思い出せないのですが昨秋の男子のW杯でこんな扱いだったかどうか。たぶんそうではなかったはず。この辺に女子サッカーの人気の特殊性が反映しているんだろうなという気がします。普段スポーツを追っていない人が大量に見てるはずということが一般ニュース番組の制作側の念頭にあるのでしょう。たぶん男子の大会なら興味のある人はスポーツ局にチャンネルをあわせて見てしまいそうです。

昨夜の試合の視聴者数はまだ出てないですけど第1戦の対ベトナム戦のときは計626万人が視聴。内訳はFOXで526万人 スペイン語放送Telemundoで100万人となってます。

第1戦のときは裏番組で例のMessiのInter Miamiデビュー戦をやっていたわけですがそちらの数字はスペイン語放送Univisionでの放送は175万人視聴と出てますからスペイン語放送に限ればMessiが女子代表を上回ったということのようです。当ブログで事前に予想していたのにほぼ沿う事態といえましょう。ヒスパニック人口では女子サッカーなんてと言わないと彼らのマチズモが満たされない傾向は確実にあります。

Messiのデビュー戦の英語放送の方はAppleTVの担当でAppleTVが視聴者数を明らかにしないポリシーのため数字がわかりません。AppleTVの普及度ってどうなんですかね。私はAppleユーザーなので機器を更新するたびに「AppleTV3ヶ月無料」などの特典が付いてきたり宣伝がくるのをよく目にするわけですがAndroidユーザーやWindowsユーザーにはどれほど浸透しているものなのか。

AppleTVの数字はわからないとしてもスペイン語放送の175万人視聴は確定でこれは一選手のMLSデビュー戦としては2004年のFreddy Aduのデビュー戦での地上波放送の197万人以来の数字とか。懐かしいですね、Freddy Adu。当時煽りまくっていたんでした。消えちゃいましたが。2004年だとまだTVの視聴者が多かった時代です。

女子代表の第1戦の前のプレゲームショーで言われていましたが今大会は一部の層から激しく視聴のボイコットが呼びかけられています。その層(いわゆる保守層)っていうのはFOX Newsの視聴者層と重なるのでFOXとしては痛し痒しなんですがそういう動きがあるのが現実でそれを番組内で言及していました。

Messiのデビューは女子W杯の真裏

MLS Inter Miamiに加入したLionel MessiのMiami所属でのデビュー戦が前項で書いた米女子代表のW杯初戦の真裏の時間帯になるようです。なんでまたそんなところに被せたのか。それともわざとかぶせたかったのか。

Messiの所属先Inter Miamiは7/21 8PMキックオフのLeagues Cupのグループリーグでの試合でメキシコのCruz AzulとMiamiのホームで対戦予定。Leagues CupというのはMLSとLiga MXの共同イベント内での対戦です。Cruz AzulはLeagues Cupの初年度の優勝チーム。

Leagues Cupは2019年に創設で今大会が公式には3度目の大会となってます。パンデミックもあったりでしたが当初の予定では毎年開催予定だったはずのイベントです。言ってみれば昨今のアメスポの流行の試みであるシーズン中のトーナメント開催です。来季からNBAもやるというアレです。長いレギュラーシーズンにアクセントを付ける意味があります。MLS内だけでやってもあまりアクセント付にならないしLiga MXのチームを混ぜて違いを出している。以前から紹介しているMLSとLiga MXの合併の可能性も含めて連携維持の意味合いもあったはず。

だいたいがこういうサッカーの米墨対抗試合はメキシコ人ファンの方が熱くてアメリカでの開催試合でもビジターのファンがスタジアムを占拠してしまうケースが多いですがさすがにMessiの本邦デビュー戦ということでどういう観客構成になるのか読みづらいです。ひょっとしたらMessiのデビュー戦となると発表になった後はメキシコ人よりもアルゼンチンからの移民の方が熱が入ってチケットの転売市場で席をゲットしているかもしれませんし。Miami近辺は中南米各国の移民がどこもたっぷりいますから。キャパ18000人と小ぶりのスタジアムがどの色に染まるのか。

一般に言ってラテンの国は女子スポーツに関心が薄い。薄いというよりは女子スポーツなんてケッぐらいのコトを言わないと彼らのマチズモは保てないそういう文化的な要素があります。なのでそれらの方々は女子W杯があっても気にせず(乃至は気になっても目をそむけて)Messiの方が重要というスタンスはアリなのかもしれません。

ところでこのLeagues Cupの試合はTV放送はどうなってるのかなと思ったらこの試合も含めてAppleTVで全戦放送だそうです。なるほどそういうことか。
前項で紹介した通り地上波FOXがゴールデンタイム4時間超を費やして全力で米女子代表の試合を盛り上げる中、Messiのデビュー戦は完全に別系統の雄 AppleTVで放送ですか。AppleTVを通じて日本を含めて全世界で見られるようです。全世界を相手にするAppleTVとしてはMessiの米国デビュー戦というのはAppleTVの普及に良いネタです。
以上の考察からAppleTVはサッカー好きでたぶん女子スポーツが嫌なラテン男性に向けに女子W杯にかぶせてLeagues Cup=Messiアメリカデビュー戦を提供するということだと判断して良さそうです。


ここからのInter Miamiのスケジュールは

7/21Fri  Cruz Azul@ Inter Miami  Leagues Cupグループリーグ
7/25Tue Atlanta United@Inter Miami    Leagues Cupグループリーグ  
そこから時期が飛んで
8/20Sun  Charlotte@Inter Miami  MLS公式戦
8/23Wed Inter Miami@Cincinnati  US Open Cup準決勝
8/26Sat  Inter Miami@New York Red Bullsi  MLS公式戦
8/30Wed Nashville@Inter Miami  MLS公式戦

8月前半に試合予定がまったくないのはLeagues Cupの決勝トーナメント部分があるからですね。Inter Miamiが勝ち続けていればその時期にMessi登場の試合も増えるということになりますがどんなもんか。Inter MiamiはMLS東カンファレンスの最下位15位のチーム。Messi加入や助っ人のSergio Busquets
の加入でトーナメント戦で気を吐くことができるのか。Busquetsは間に合うのかな?
それとも亜熱帯の夏に早くもうんざりしてMessiはあまり出場しないのか。そういう正体不明なトーナメントに夏の盛りで暑い時期にアメリカに来たばかりのMessiは何試合も出場してくれるもんなんでしょうか。


8月下旬にMLS公式戦が再開予定。そこがMessiのMLSでの正式デビューになります。随分先の話です。この状態ってMessiのデビュー戦をAppleTVがMLSの公式戦の放映権者(FOXとESPN)から横取りした形という見方もできます。MLSデビューまでにLeagues Cupで散々露出したりすると8月下旬になって「MessiのMLSデビュー戦!」と言っても目新しさはその頃には消えていそうでもあります。

MLSは長年の放映パートナーのESPNやFOXにそんな不義理をしてまでAppleTVのためにMessiのデビュー戦まで初登場を渋ったのですからきっとAppleTVからはよほどいいお金が出てるってことでしょうね。Messiを獲得するに当たって相当のお金が動いたと報道が出てましたからAppleTVでデビュー戦を含めて1ヶ月MessiをAppleTVで独占できるのを見込んでAppleもかなり金銭面でMessi獲得のアシストをしたってことなんでしょう。

優良コンテンツも押しのける女子サッカー

地上波FOXの金曜日の夜のゴールデンタイムはプロレスWWEのSmackdownの2時間の定時放送枠。年間に何度かその枠が削られて同系列のスポーツ専門チャンネルのFS1にSmackdownが移動します。毎年MLBのポストシーズンの時期にはWWEのFS1送りが発生するのは定例。定時放送枠が移動すると視聴率がガタ落ちになるのもお決まりでWWEからすれば嬉しくはないでしょうが契約で優先権は決まってるはず。平均で230−240万人近辺を毎週叩き出すFOXにとっては優良コンテンツのSmackdownを押しのけてまで次週放送するのは何か。

何かあったっけ?と思ったら7PMから女子のサッカーW杯の放送だと放送予定に書いてあります。女子W杯が始まるのはもちろん知ってましたがアメリカのゴールデンタイムが試合時刻とは知りませんでした。生?それとも録画?といぶかしく思いました。
今回のW杯はニュージーランドとオーストラリアの共催。時差は日本からだとないのでしょうがアメリカからすれば現地の昼間や夜はあまり都合の良い時間帯ではないはずですがそれを放送するのが金曜日の夜?現地土曜日の午前ですか?換算したら現地1PMかな?(夏時間もあるので1時間ぐらいずれているかもしれません)。

アメリカのTVの都合に合わせて試合開始時刻をその枠にしたってことなんでしょうね。アメリカ的には年少者の視聴者が多いと想像されるため東部時間で9PMキックオフ11PM頃終了は若干遅いが許容範囲ってとこですか。アメリカ西海岸だと6PMキックオフですからそちらにも目配りするとこの時刻が最良とFOXは判断したかも。現地としてはそれよりは早くはしにくいということでこの枠か。FIFAの試合予定を見ると米代表の試合と同じ時刻の試合開始の試合は他にないので米代表のみの特別待遇のようです。

ちなみにこれは今週ニュースで言っていたんですがニュージーランド現地でのチケット販売がふるわず大会直前になってかなりの数のタダ券を配ることになったとのこと。共催のオーストラリアの方は代表通称Matildasが現実的な優勝候補であるという認識で地元の期待は盛り上がっているとされますがニュージーランドはそうでもないらしい。米代表はグループリーグをニュージーランドで戦います。

放映スケジュールの詳細をFOXの公式で読むと東部時間7PMから「FIFA Women’s World Cup Live」というプレゲームショーを2時間放送、9PMから米代表の開幕戦対ベトナム戦を放送、試合後に「FIFA Women’s World Cup Tonight」という名のポストショーも30分予定。さすが女子代表サッカー、人気の高さで地上波トータル4時間半占拠ですか。感心するような分厚い放映態勢です。
その後米代表の第2戦となる7/26水曜日対オランダ戦も同じ態勢のプレ&ポストゲームショーで4時間半地上波ゴールデンタイムを占拠予定。2戦目もプレゲームショー2時間かよという。初戦はW杯開幕を関心の薄い一般非スポーツファンにも告知目的もあり話すべきこともいっぱいあるのかも知れないからともかく2戦目で平日のゴールデンタイムでも2時間も前振り番組をやって良いというのがすごいです。

ベトナムもオランダも強敵ではないはずで米女子代表ファン一般が期待するような爽快圧勝試合になる可能性はあります。一方先日の壮行試合でW杯に出場できないウェールズ女子を相手にゴールを割るのに苦労した例もありFOXや善良なサッカー少女たちが期待するような大量ゴールでの圧勝劇になるかどうか。

女子W杯まであと1ヶ月

FIFA女子W杯の開幕があと1ヶ月となって放映をするFOXを中心に宣伝や露出が増加してきています。他のスポーツの国際大会と比べて宣伝開始が早い。力が入ってる感じがします。今回でさすがにMegan Rapinoe37歳やAlex Morgan33歳など知名度・顔認知度の高い黄金世代は見納めの可能性があり宣伝に余念なしといったところか。
目標はW杯3連覇以外眼中になし。上のリンクで紹介したCMも世界各国を全部敵にまわしても余裕というムードで作られています。そしてそういうのがまさにファンが女子代表に求めるところなのでしょう。男子サッカーではこんな上から目線の宣伝なんて絶対に作れない。
おもしろいのは日本が米国対策で時間を遡ってRapinoeをテニスに誘導とかいうくだり。日本のアニメ連想でこういうのは日本の役かという。他の国の部分も大半ステレオタイプではあるんでしょうがおもしろいかなと。

なんでも欧州各国や日本ではまだ女子W杯の放映権の販売すら確定していないという報道を読むにつけ米国内の女子サッカーの特異性が様々思われます。それらの国がFIFAとモメるのもまた良いのではないでしょうか。FIFAのあこぎな商売に毎度付き合う必要もないわけで。

米国での放映権販売は女子W杯やユース大会も含めて男子のW杯放映権とセットで2026年大会までの分をFOX陣営が獲得しており他国のように女子大会単独の放映権価格を交渉するようなしくみになっていない。何年も前から女子W杯もFOXの全面支援で放映をする予定は固まっており事情はまったく違います。男女セット販売なので女子大会にいくら払ったとは数字が出せない形でもあります。アメリカの国内的な事情としても女子の代表選手の方が米代表男子の選手よりも知名度が高いのもまた米国ならではの事情です。


男子の方もそうですがFIFA W杯は学校の夏休み期間にがっつり放映できるのがスケジュール的にはおいしいです。アメスポ年間スケジュールに抵触しない。ここは大事です。アメスポの場合夏休み向けにはMLB、MiLB、さらにはCollege World Series(開催中)、Little League World Seriesなど野球成分が多めなのですが、正直言えばそれだけではバラエティに乏しい。MLSやNWSL、NASCARなどもありますがファン層の広がりは限定的。X Gamesなんていうのもありますがせいぜい数日のイベント。今年だとラクロスの世界選手権がSan Diegoであったりもしますがラクロスはまだまだマイナースポーツ。
その点でサッカーのW杯は目先が変わって良いです。なにかと道具立ても派手でメジャー感があります。アメスポの夏枯れの時期にその華やかさは良い。移民が多いお国柄で米代表以外の放送にもそれなりに視聴者がつくのも国情に合っている。女子サッカーはプロリーグは目立たず、人気の女子米代表はほぼ五輪とW杯だけが大きな露出機会ですから飽きられるほどは放映がないし、夏休みでお暇となる人口の半分は女性なのですからこれでうまく回ってます。

ついでに言うと6月はPride Month、性指向の多様化の活動の季節であります。米国内各地で関連イベントが開催されています。スポーツ関連でいうと女子サッカー米代表とイメージ的にセットでなんらかの高揚効果がありそうでもあります。サッカーの試合のスタンドではLBGTQのシンボルとされる虹色の旗が振られるのが常です。
これは微妙なんですけどね。他のスポーツのジャンルでも皆無ではないもののなぜかサッカーの会場であきらかに多い。MLBの試合でPride関連の行事を行うと抗議の人が集まっちゃったりすることでこの件は日本では知られているかもしれません。この件とスポーツの関わりについてはまた別途考えてみたいところでもあります。

日本の女子スポーツだと東洋の魔女からの長年の遺産を受け継いでいまも人気をたもっている女子バレーボールなんかもあって、それに次いで女子サッカーも人気を保てる可能性があるのかなと思ってましたがその後あまりうまくいってないみたいですね。(なぜ唐突にバレーに言及したかというとたまたまYouTubeでVNLの試合ビデオがオススメに出てきて女子日本代表の試合を見ちゃったからです。)

女子サッカー加盟料が$50 million

サッカーの話題の連続ですみません。
アメリカが金融引締状況下でも好景気なのは体感でも感じていたところですが、その体感を上回る景気の良い話が女子プロサッカーNWSLから出ています。現在12チーム体制のNWSLに新たに3チームが加盟を申請。そのうち後発となるBostonとSan Franciscoベイエリアの2チームがそれぞれ加盟料で$50 millionをNWSLに支払うというニュースが出てます。

それはすごいなと。カネが余ってる人がいるんだろうなあと思わせられる額です。3チームが新規加盟するうちUtahのチームは昨年度時点で既に加盟申請をしていたので加盟額は$5 million以下になるとのこと。単純に言って過去1年で加盟料が10倍以上に跳ね上がった計算になります。それでも加盟したいという投資家がいるってことですね。それも女子サッカーで。

女子サッカーにとって新市場となるUtahはともかくSan FranciscoベイエリアやBostonは過去の女子プロサッカーリーグのメンバーだった頃に赤字を垂れ流して解散してきた土地柄でもあります。BostonにはBoston Breakersがありました。21世紀初頭の女子プロリーグのくさ分けだったWUSAの創設時のチームとして以来長年存在。SFベイエリアにはWPSでスーパーチームとして好選手を多数保有してWPSで優勝もしたFC Gold Prideがありましたが解散済み。女子プロサッカーチームが経営を失敗してきた都市への再参入となります。

$50 millionなどという加盟料を支払えるオーナーグループなのですから資金は潤沢なのでしょう。よって過去のBoston BreakersやFC Gold Prideの当時の(有り体に言って)貧乏くさいイメージを払拭してきらびやかなマーケティングで市場開拓をはかるということなんでしょう。どれぐらい資金を突っ込んでどれほどの利益を出せるものになっていくのか興味があります。
都市フランチャイズ型の女子プロスポーツとしては現実的にはバスケのWNBAとこのサッカーのNWSLしか投資先がない。それでお金の行所がなくて今回の事態になったとは想像できますが、それにしてもカネ余ってる人がいるんだなあという。

過去の女子プロリーグであったWUSAやWPS当時より現在有利な点としては、全米各地に男子MLSが建てた新しいサッカー専用スタジアムが存在することか。MLSの施設を利用することで低コストで秀逸なユーザーエクスペリエンスを来場者に提供可能というのがあります。UtahはMLSのReal Salt Lakeのスタジアムを使うのであろうし、SFベイエリアはMLSのSan Jose Earthquakeのホームに同居することが可能でしょう。

しかしながらBostonはどうするのか。男子MLSではBoston近郊にNew England RevolutionというMLS創設時からの老舗チームがありますが、ここはサッカー専用スタジアムを持っていません。
RevolutionのオーナーはRobert KraftでNFLのNew England Patriotsのオーナーでもあります。そしてNFL PatriotsもMLS RevolutionもKraft Groupが所有するGillette Stadiumをホームとしてます。Gillette Stadiumは収容65,000人を超える大スタジアムです。MLSの試合のときには20,000人収容扱いとして運営。使わない席は幕で覆っています。いまとなっては数少ないサッカー専用スタジアムを持たないMLSチームとなってます。
よって女子NWSLに新規加入する新チームはサッカー専用スタジアムを使用する目処がないはず。過去Boston Breakersは同市内のHarvard大のフットボールスタジアムをホームとして利用してきました。これは前時代のコンクリートむき出しのスタジアムで完全に時代遅れの代物です。Boston Breakersの不人気に寄与した施設と言っても差し支えないでしょう。

Gillette Stadium自体は美麗なスタジアムで周辺のショッピングモール風施設も含めて優良なユーザーエクスペリエンスは提供できますが、問題はガラーンとしたスタジアム内です。MLSでも大スタジアムの一部に観客が入っている様はあまり見栄えの良いものではないし、ファンにとってはがらがらではわざわざ来場したのにわくわくしない。MLSが専用スタジアムを建てまくったのもNFLスタジアムでは箱が大きすぎてファンのエクスペリエンスを高めようがなかったからで、動員の実力に見合ったサイズの小スタジアムを建てることにしたというのが実態です。新女子チームがBostonでどこをホームとするつもりなのかは成功に直結する大事な問題に思えます。

その問題も含めてもなおかつ$50 millionの加盟料を払い新規に女子サッカーチームを設立してなおかつ儲けが出る可能性を見ている人がいるってことですよね。すごい話だとは思います。

NWSL決勝 地上波プライムタイム放送

女子サッカーNWSLの決勝戦が地上波CBSのプライムタイムでの放送になってます。時間はMLB World Series第2戦(地上波FOX)の裏番組。他にもMichigan State@Michigan戦始めカレッジフットボールの試合も地上波や主要ケーブル局で同時刻に放送されていましたのでどれほどの視聴者を集めたのかはわかりませんが、それでも一種の快挙なのではあるのでしょう。

これがNWSLの10年目のシーズン。リーグ創設当時からエリートチームとして運営されてきたPortland Thornsがリーグ史上最多となる3度目の優勝をしています。Portland Thorns 2−0 Kansas City Current。
場所はWashingtonにあるサッカー専用スタジアムAudi Field(収容2万人)で。今書いている時点では正式な観客数が出てませんが目測では結構入っていたように見えました。どちらのホームでもない中立地での開催でこんなに入るのかという意味では立派かなという感想を持ちました。

試合のMVPは先制ゴールを決めた22歳Sophia Smith。Sophia SmithはレギュラーシーズンでもMVPを獲得しており22歳にして堂々のダブルMVP。
米女子シニア代表でも25キャップ10ゴール。なかなか主力メンバーの代替わりが進まなかった米女子米代表の次世代スコアラーの本命ということになるようです。Portland Thornsにはカナダ代表の大エースを務め続けたChristine Sinclairが創設時から所属。Thornsで3度優勝、前身となるWPSでも2度優勝した北米の女子プロサッカーの大貢献者だった39歳Sinclairの正当後継者ということにもなりそうです。
他にThornsには日本人選手Hina Sugitaも所属。


女子スポーツの放映機会が男子のそれに比べて著しく少ないという課題がアメスポ放送にはあって、そういう問題意識もあって機会を捉えて女子の各種試合の放送をするべく各局努力している感じで、その流れでの今日の放送だったのでしょうが、その辺の事情はともかく私が見たところサッカーの試合としてはまずまず悪くないものだったと思いました。

NWSL/MLS Portlandのオーナートラブル

女子サッカーのNWSLで噴出したセクハラ等問題が男子MLSにも飛び火する形になって来る可能性が出てきたかもしれません。女子NWSL Portland Thornsおよび男子MLS Portland TImbersのオーナー(正確にはMLSはリーグが全チームを所有しますが)であるMerritt PaulsonがThornsの業務・意思決定から退くことを発表しています。これは前日に公表されたNWSL内においてNWSLでの日常的なセクハラパワハラ行為や体質を問題視する第三者機関による調査結果が発表、それを受けた形でPortland ThornsとChicago Chicago Red Starsのオーナーが自主的に業務から外れると表明しています。

これを日本語にそのまま移し替えるのは少々危うい話です。さまざま報道に接していると日本語のセクハラというのと英語でのsexual harassmentは同じ言葉で違うものを表しているといつも感じていてそれをそのまま同義語のように伝えると意味が違ってしまうことを危惧します。特に言葉を輸入した側である日本がセクハラという言葉をうまく定義しないままでなんでもかんでもセクハラと呼んで放置して茶にしている感じは気になるところです。以下その点を留意の上読んでいただけると幸いです。

約200人の選手関係者から聞き取り調査をしたという元判事による調査結果でNWSL内でのsexual harassmentや言葉による侮辱などが日常的に行われている体質が指摘がされています。このニュースが流れた後に選手たちからは、いままでリーグはなにもしてくれなかった、やっと改善するのかという発言が出てます。
その報告の詳細は公表前に関連各所に配布されたのでしょう、上記のThornsとRed Starsのオーナーが自主的に業務から外れると発表。他にも広がる可能性がありそうです。


つい最近NBAのPhoenix Sunsのオーナーが人種差別的で好悪をあらわにした運営をしたとのことで糾弾され1年間の業務停止をリーグから課され、実質的に1年の猶予期間内にSunsを売却することを余儀なくされたという事例があります。
NBAチームなんていうのはアメスポ業界内でも垂涎の物件。めったに売り物は出ないので現実は放逐でもお金の面ではオーナーは高く売って儲けることはできそうです。Sunsは所属選手との契約状況もChris Paulの巨大契約(年間約$30 million)はあと3シーズン残ってますが、NBAチームの売買の額と比較すれば文字通りのはした金。そういう事情もあってSunsのオーナーの退場はスピード感をもって決着しそうに思えます。


NWSLはNBAとは比べ物にならない小規模なプロ組織です。NBA Sunsならリッチな買い手はいくらでもいるわけですが、NWSLのチームではそうは簡単いかないであろうことは容易に想像できます。
NWSL経営がいくらかでも儲かってるかというとなかなか疑わしい。Portland Thornsはリーグ創設時からNWSLの目玉チームとして優遇されてスタートしたチームで、現在も動員では昨年まで2位以下を2倍以上引き離した状態のトップ。公表されていませんがThornsは単体黒字が達成できている可能性があるとすれば最もその可能性の高いチームでした。

今季2022年は新設されたAngel City FC(Serena Williams始めセレブオーナー多数)が試合平均19,000人近い動員に成功して動員で初めてThornsがトップから滑り落ちてます。それでもThornsは試合平均15,000人以上を集めていますから女子プロサッカーとしては世界でも有数の人気だと言って差し支えないでしょう。
Angel City FCが参入して女子プロサッカーの人気が爆上げのきっかけになるか。なかなかしんどいのではないでしょうか。Angel City FCの初年度動員は刮目すべき新しい動きでしたが、それがNWSL全体の底上げになるかは疑問。Angel City FCやPortland Thornsがプロ興行として利益を生む可能性のある動員の数字を出している反面、平均動員で5,000人に届かず今後も浮上の可能性の薄いチームもいくつもあります。Naomi Osakaが部分オーナーであるNorth Carolina Courageもその域。リーグ全体での利益体質構築までにはまだまだ力不足なのが現状でしょう。Thornsとともにオーナーが業務を退くChicago Red Starsは2022年の動員実績は6,200人。

動員好調のThornsならともかくRed Starsの方は簡単に買い手なんて付くのでしょうか。カネ余りのアメリカですから誰かかれか手を挙げる人はいるのでしょうか。

Thornsの方も売るのは売れるのかもしれませんが、今回の調査で批判を浴びているオーナーのMerritt Paulsonのもう一つの物件=MLS Portland Timbersの経営権への影響も気になります。MLS TimbersとNWSL Thornsは同じスタジアムに同居でこれまで同オーナーだったので一体感のあるマーケティングも行われていたのが分離することでダメージを受ける面もあるかもしれません。

MLSは経営形態としてはMLS自体が1つの会社です。各チームは言ってみれば営業所のようなもので、新規参入する「オーナー」たちは各チームの運営でほぼ全権を振るえますが法律上のオーナーではありません。NWSLの方で経営から徹底しなくてはいけない事態となった「オーナー」の持つPortland Timbersは不問・安泰となるのかどうか不明です。女子選手相手には居丈高だった組織が男子チームとは無問題という理屈はアメリカでは通りにくいように思われ、そうなるとMLSはTimbersに対してなんらかの内部調査をして公表しないと対外的に具合が悪くなるんじゃないでしょうか。その結果によってはNWSLだけでなくMLSの経営権も手放さねばならない事態も想像できそうです。事態を注視です。
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