アメリカスポーツ三昧

アメリカ永住コースか、または第三国に出国か!?スリルとサスペンスの人生とは別にアメスポは楽しい。

New Sports/Minor Sports

ラクロス世界選手権@San Diego

男子ラクロスの世界選手権が開催中。今ちょうどグループリーグが終了して決勝トーナメント部分が始まるところです。ラクロスは観戦スポーツとしてはマイナーではありますが一応米国内でプロリーグも形を変えつつ存続しておりTV放送枠も確保しているというまあまあの立ち位置。以前からときどき当ブログでも触れてきています。今大会の放映はESPN系列で米代表の主要試合はTV放送(ESPNU)、他の全試合がストリーミングのESPN+で見られるという形になっています。

この世界大会は毎回そうなのですが力量の差のばらつきが尋常でない30カ国以上(前回大会は46カ国)を一つの大会に組み込んで開催、その創意工夫と努力と熱意が感じられて私は好きです。
但し力の差が大きくて早々に大差になって勝負にならない試合が多いのもまた事実で実力拮抗カードを選んで見ないと初見で何だコレ状態にもなりえます。個人的には3大会前の英国開催の2010年大会から継続して見ているのでどのカードが好試合になりそうかの感覚はそれなりにあります。昨日A組の最後の試合でA組3位4位を争ったHaudenosaunee対オーストラリアが激戦となりこれは楽しめました。ラクロス観戦の能力が私にはないので技術的戦術的なことがなにも書けない良さを伝えられないのがもどかしいのですが。

今大会のグループリーグでは日本代表がB組で圧勝の連続で4戦全勝。決勝トーナメントでは一回戦のドイツ戦に勝てばA組3位のHaudenosauneeと二回戦=準々決勝で当たる山に入りました。日本代表の目標は4位以内、具体的にはHaudenosauneeまたはオーストラリアに準々決勝で勝つという意味です。健闘を期待します。

現在のラクロスの世界選手権の仕組みではA組に実力上位の5カ国が集うのですが、A組5カ国目のイングランドはA組でけちょんけちょんにされて大敗の連続のA組最下位となってます。
でこれがもし次回大会で日本とイングランドが入れ替わって日本がA組に行けるとやっぱり同じ目に遭いかねないんですよね。つまりは上位4チーム(米加豪Haudenosaunee)とその下の力の差が大きい。四強に迫れる次の国がもっと抵抗できるとおもしろくなるんですがなかなかそうはいっていなさそう。でそこの壁を破りたいというのが今回の日本代表の目標というわけです。なのでそれは日本代表にとっての躍進というだけでなくラクロスの世界レベルの底上げという意味で突破できれば時代が動くということになります。
四強にチャレンジしていくべき5位候補は日本イングランドに加えて新興のイスラエル(C組1位通過)とプエルトリコ(C組2位)あたりということになります。日本代表は2010年大会で4位に入ったのが最高成績ですがそのときはイロコイ(現Haudenosaunee)がパスポート問題で不参加だったためトップ4に食い込めたという事情でした。

最上位グループA組が今大会は5カ国構成で、前回大会では6カ国と大会の形式は常に揺れ動きながら各国の実力に合ったベストの大会形式模索しているという有機的な大会です。前回大会の最後5位決定戦での日本対イングランド戦で日本代表が7-0とリードしたところから大逆転負け(コメント欄)を喫したということがあって、当時は5位でも6位でも次回大会には関係ないのではと書いたのですが、今大会は最上位カテゴリが5カ国制となって前回大会の最後で日本は6位となったことでA組回避。それでB組に入って勝ちまくれたのですから士気には良いのでしょう。

ルールは前回2018年大会とほぼ同じようです。五輪採用も念頭に試合の短縮化などを目指した時期もあったはずですがそちらへはルールは動かず。プロリーグで採用されているショットクロックも今大会も採用されず。よって大差の試合の最後は時間つぶしになってしまう傾向もあります。上位国の試合だけでもとか試合中の時間帯を限ってとかどういう形でかショットクロックがないとつらいかなという気はしました。

放映権を持つESPNですがESPN.comを見ると今大会の報道がまったくないようです。ジャンルとしては男子プロリーグであるPLLのページは存在するのですが世界選手権の報道はない。残念ながらスポーツ報道最大手のESPN.com視点では推すだけの魅力がないと見切られてしまった感じなのかもしれません。地味なのはそうなんでしょう。大会形式では常に意欲的に新しいものを試しているのにルールでは保守的っていうのも少し考えものかな、一考しないと外に向かってのアピールがきつくなる可能性を少々感じます。

女子ラクロス世界選手権全試合放送

アメスポ夏枯れのこの季節にESPN系列はウィンブルドンテニスを大量中継してました。男子単女子単はたぶん全試合がESPN系列で放送されていたと思います。一部のトップ選手の試合はESPNで。大半はストリーミングのESPN+でですが。ダブルスも米国の選手やカナダの選手の出場している試合はたぶん全試合放送されていたような。いつも思うんですが、ESPN系列だけでいったいどれほどのすごいサーバー群を持ってるんだろうなと感心します。

同時期にESPN+が全試合を放送しているのが今回のテーマ、女子ラクロス世界選手権です。開催地は東海岸メリーランド州で29カ国・地域(当初30カ国参加予定)が参加して開催中です。以前も書いたのですがラクロスの世界選手権は最強国を決めるための大会という意味以外に、競技の世界普及、普及初期の国のチームに与えられた数少ない力試しの場という意味合いがあります。なので大会の仕組みの上では全参加チームに優勝の機会はあるものの、下位の国が優勝争いから敗退後に参加する順位戦を丁寧に実施して参加国が多くの試合(最低6-7試合)をこなせるように工夫されています。

先週末に見ていたら朝の7AMから中国対日本の試合がライブ放送されていたりもしました。私の住んでいるところと会場は時差がないのでこの中国対日本戦は朝の7時から試合をやってるんですね。アマチュアの大会って感じが満点。
自国のチームという興味以外で純粋に観戦スポーツとしておもしろいかというと問題はあります。試合開始から一方的、中国にポゼションを与えないうち数分で日本が3−0だか4−0になって最終スコア19−1で日本の圧勝。この手の勝負にならない試合がたくさん発生するのはラクロスの世界大会ではよくある話です。ラクロスは勝ってる方が得点後の試合再開時も含めてボールポゼッションを独占し続けることもできちゃう仕組みなのがキツいです。ショットクロックもない。
各国の実力の選別が進んだ大会後半のプレーオフの段階になると実力が接近した同士の試合が増えてあまりにも一方的な試合は減ってきてもう少し観戦に耐えるようになってきます。

こういうのを見ると他競技、例えば野球にせよバレーボールにせよホッケーにせよ10カ国程度またはそれ以上が優勝国に抵抗できるだけの実力をもっているというのは立派に多国間での優勝争いが機能していると言えるのだな、普及レベルが進んでいるのだなと再確認できます。


今日土曜日が大会最終日。雨の影響でフィールドコンディションは悪かったようですが滞りなく試合は消化されて米国が優勝してます。日本代表はイスラエルとの5位決定戦に勝って大会を終了。大会形式が変わらないのであれば次回大会の最上位グループ入りになりそうです。5位フィニッシュは過去最高タイ。今大会の戦績は7勝1敗で敗戦したのは最強の対米国戦のみ、現実的に望みうる最良の成績かと思われます。おめでとうございます。全勝優勝となった米国以外ではF組から躍進したチェコが7勝1敗で7位の好成績となったのが目立ちました。
試合放映中に日本代表の9番の方がカレッジに入るまではバレリーナだったとか紹介されていたり、米代表の誰それの母親が日本人で、日本代表にも元のチームメイトがいて云々。別の試合ではジンバブエ(今回不参加)から米国へ移民した選手の方がアナウンスを担当していて、母国にラクロスを布教努力して次回大会にはきっと出場できるはずなんていう話をまじえていたり。規模は小さくアマチュア的とは言え関係者の熱心さが染み出しているような放送だったかなと。こういう手作り感のあるのもまたスポーツの良さかなと思いました。
メモとして今大会から過去イロコイとされていたチーム名がHaudenoseaunee(スペルはバリエーションあり)と変わっています。


ところで以前にラクロスの五輪種目化というテーマがあって、6人制にするとか男女同ルールにするとかやっていたと思いますが、今大会は従来のルールのまま。五輪採用となる可能性のある2028年のロス五輪まであと6年ですがいまの世界選手権で従来ルールで開催しているともう多くの国にとって新6人制で国際試合をやる機会は次回大会(未定)の一回っきりってことになりそうです。

ラクロス カレッジシーズンからプロシーズンへ

恒例のMemorial Dayのカレッジラクロス決勝戦が開催。現在カレッジ界最強となっているMarylandが前半の大量リードを保って全勝優勝。Cornellが後半に強く抵抗、追われるMarylandがガス欠気味となり最後の1分までわからない好試合となりました。最終スコアMaryland 9−7 Cornell。
昨年2021年のこの大会を見た記憶がなく、一昨年2020年はパンデミックでカレッジ春シーズン終了できずで大会キャンセル。久しぶりにカレッジラクロスをしっかりと見られる機会となりましたが、そこでこの好試合。大変楽しめました。
久しぶりに観戦して、やはり他のどのスポーツとも違う味わいがあるなとよろこばしく思いました。2日前の女子の方の決勝も少し見ていましたがそちらも最終第4Qに7点差をひっくり返す大逆転試合となり、一度流れが傾いたら点差が短時間で吹っ飛ぶ競技性は類を見ないところがあります。


ところで試合以外の部分で興味深かったのはこの放送はカレッジの決勝戦ですがハーフタイムにプロのPLLの番宣を大きく組入れ、試合中も選手のPLLドラフト指名情報など、ほぼプロPLLの話題とカレッジの決勝を混ぜた番組構成になっていたことです。カレッジスポーツの放送がこれほど明らかにプロリーグとのつながりを強調するのは珍しいです。

ESPN系列は今季から4年契約で男子プロラクロスリーグPLLの放送を開始。来週末からシーズンがスタート、放映も開始予定でカレッジラクロスとプロPLLのシーズンをシームレスにつないでいく状態になってます。現状ラクロスに興味のある人口が狭い中、カレッジの試合を使ってのプロシーズンに誘導というターゲットマーケティングは正しいのでしょう。
ただNCAAがこのような明確なプロとの融合のような放送の仕方にOKを出しているのなら新しいなと思います。それともESPN側の独断措置か。

PLLシーズンのプレーオフを含む全47試合をESPN系列で放送。ほとんどの試合はストリーミングのESPN+での放送ですが、地上波ABCで3試合(プレーオフ決勝戦含む)、メイン局であるESPNでの放送は3試合などもありある程度のラクロスになじみのないスポーツファンにも露出がはかれるようです。


プロラクロスがどれほどのコンテンツとしての実力があるのか、またここから育つのかはわかりませんが、現状アメスポ4大スポーツ、その下となるサッカーMLSがあり、その次のチームスポーツとしてラクロス、バレーボール、ラグビーが候補だという話は当ブログで何度か書いています。ラグビーはW杯開催という大仕掛けの起爆剤が2031年に仕掛けられたところ。そこに向けてピークを持っていくべく動くことになる。ラクロスは来年にSan DiegoでWorld Championshipが開催予定となってます。ラグビーのW杯とは比較にならない小規模な大会ではありますが、ラクロスの米国内の全国的な普及に向けてはラクロスが弱い西海岸での開催の大事な大会でもあります。
その2023年大会(及び今年の女子大会+男子U21大会)はESPNが全世界放映権を獲得済みだそうで、継続的に放映している男女のNCAA決勝大会に加えて、男子プロPLLの放映権契約、World Championshipの放映権獲得と今年来年とラクロスがスポーツ最大手ESPNで全方位弱プッシュされうる態勢は整ったようでもあります。

マイナー競技ではありますが4年毎のラクロスのWorld Championshipは毎大会私は楽しみに見ています。他のメジャー競技の世界大会とは異なり優勝を争う国だけでなく有機的につながった普及レベルの国もプレーする仕組みのおもしろさもある。ESPNが完全に放映権獲得ということは下位ディビジョンの試合もESPN+で放映されるんでしょうから、それをツマミ見することができるのならそれは楽しそうです。

PLL決勝とスポーツ賭博と普及意欲

ツアー型男子ラクロスのプロリーグPremier Lacrosse League = PLLの決勝戦が日曜日に行われました。今季がPLLにとっては創設3年目のシーズン。過去2年連続でチャンピオンだったWhipsnakesを破ってChaosが初優勝しています。
ツアー型で所属8チームはニックネームはあってもアメスポ標準の「都市名+ニックネーム」という名前はない形態です。
場所はサッカーMLSのDC Unitedの本拠地Audi Fieldで。観客数は公式サイトを見ても発表がないようですが目測で3,000人ぐらいでしょうか(スタジアム収容20,000)。放送はNBC地上波と同系列のストリーミングPeacockで。NFLの裏番組なので見ている人はスポーツの好みがかなりニッチな方であろうと推測できます。試合開始時刻は東部時間正午で1時間NFLのキックオフより早いのが僅かな工夫。

試合はまずまずの好試合。PLLについては2年前の創設時に意図的に接戦を演出したという疑惑を当ブログ(コメント欄でですが)では指摘したことがあります。「試合をただやるのを見ろ」というのが現在成立するビジネスと言えるかどうかという点と、スポーツの純粋性というところを考えると一方的に批判はできないものの、危ういものだったなというのが当時の感想でした。
3年目の今季の決勝戦はChaosが抜け出して14−9で快勝したので、意図的に接戦を演出したプロレス的疑惑は存在しなかったのですが、もう一つ別の危ういものもありました。

つい先月触れたのですが実はPLLは積極的にスポーツ賭博との関わりを持っています。試合のスコアの画面のところにO/Uの賭けの数字が常に表示されています。この決勝戦だと23.5でした。Over/Underという賭けは両軍の得点の合計が設定数値の上になるか下になるかに賭ける各スポーツでよくあるスポーツ賭博ですが、これをPLLは試合の画面内に表示するという意味で積極的にエンゲージしている。

で。14-9が最終スコアで優勝の行方は決した最終盤戦にも追うWhipsnakesが果敢にゴールアタック。 両軍得点合計はこの時点で23。この最後の攻防は試合や優勝の行方にはもう無意味ですけれど、なんとO/Uで賭けていた人にとってはこの場面って手に汗握る盛り上がる瞬間ってことなんですよね。このまま決着ならアンダー、ラストゴールが入ればオーバーになるので。
選手たちがそれを意識していたかどうかは知る由もないですが、なにせまだ遠くない過去に得点調整をした疑惑の過去(少なくとも私の目では)があるPLLだけに、このギリギリになってこの熱の入った攻防はどうなんだよ、選手たちはわかっていてやってるのか?と変にハラハラしてしまいました。
O/Uのラインさえ知らなければ気にもならない攻防が、なにせ画面中央にデカデカと出てるので。


さてそれはおいておいて、試合のハーフタイムにPLLの創始者であるPaul RabilがPLLの展望などを語って登場していました。決勝やオールスター戦に団体のトップがTVに登場して総括質疑のようなことをするのはアメスポではおなじみのシーンです。Paulは選手として今季を最後に引退することを発表してます。

印象に残ったのはPaul Rabilがラクロス界のTony Hawkになって全米の公園にラクロスゴールを建てたいんだという話です。
Tony Hawkというのはスケートボード界のレジェンド、というかX Sportsに興味のない人が名前を知っているほぼ唯一の選手です。選手としては1980年代から90年代にかけての選手ですが、その後もビデオゲームのタイトル名になったり、現在2020-21年になってもTVコマーシャルに出ていたりというスケートボード界の顔として30年以上活躍している方ですね。
で、Tony Hawkがその顔となって全米の地方自治体に大量のスケートパークが建造されていきました。ちょうど私がアメリカに住み始めてからの変化でしたので、あーこんな小さな街でもスケートパークを作るんだ、へー、というようなのを何度も見かけたものです。あれが全米津々浦々に展開されていったのがTony Hawkの功績だったと。で、Paul Rabilはそれと同じことをラクロス界でやりたいと言っているのです。

野球のバックネットとダイヤモンド、サッカーゴール、テニスコートなどが郊外の公園に整備されているのはアメリカの郊外でのおなじみの風景でしょう。街中でも郊外でもバスケットボールゴールが設置されているのもまたおなじみのシーンです。
それに加えてスケートパークが(多くの場合警察署の隣とか)市街地に整備されているのもまたおなじみの風景になったと言えそうです。Paulはそれをラクロスでやりたいと言ってるわけです。野良ラクロスゴールをあちこちに建てて、ふと気が向いたときに選手がやってきて力いっぱいシュートする姿が全米各地で見られるようにしたいってわけですね。良い目標なんじゃないでしょうか。発想が健全だし、確かに効果ありそうに思います。ラクロスってキャッチボールする相手とか、壁打ちはできてもなかなか力いっぱいシュートををしまくる場というのは得難い面はたしかにありそうなので。土地は余ってる場合の多いアメリカなので、設置コストも知れていそうですから割とうまくいくのかもです。

五輪の裏でAUL on FS1

五輪一色であろう日本と違い、五輪放送はNBC系列の独占のためアメスポ最大手のESPN系列を始め、FOX SportsもCBS Sportsも他の放送をしています。

FOXのスポーツメイン局であるFS1では新女子スポーツ団体Athletes Unlimitedのラクロスの放送をやっていました。略称はAUL。Athletes Unlimitedは他にバレーボールとソフトボールも開催主体となっていて、バレーボールの場合はAUVという略称になっていました。ソフトボールはまだシーズンが開催されていないので確認してませんがきっとAUSなのでしょう。

バレーボールのときも紹介しましたが、AULも固定のチームは存在せずエース的存在のリーダーの名前をとってTeam O'Donnell、Team Bensonといったその場限りの名前で活動。

意外だったのが放送が手間をかけていて見栄えの良い放送になっていたことです。過去見てきたラクロスの放送って明らかに中継機材がメジャースポーツのお下がりっぽくてそれはただTV観戦しているだけでもわかる。それがこの日の放送は絵がきれい。カメラの台数もまずまずあるのでアップの絵も多い。その上、リプレイも早いし、ボールの動きや人の動きを示す矢印やらhalo型スポットライトやらがこぎれいに付加されている(=コントロールルームに人を割いているはず)。これはマイナースポーツではとても珍しいと思いました。画面からマイナー臭がしない。

またアナウンサーが選手やプレーについてかなり予習をしてきているのがわかる、かつ熱の入った内容だったのも大いに意外です。意外にもFOX SportsはAULへの継続的な支援を考えているのかもと思わせる初回放送でした。

季節の良いこの時期の昼間のTV放送はそれがなんのジャンルでも不利な時間帯。その上裏には五輪もあるという中、視聴者数でヒットというわけにはいかないのでしょうが、たまたま見てしまった私の感想としてはなかなか良かったのではないかと思いました。

なお、AULは独自ルールで9人対9人での試合となっていたはずでしたが、プレーの流れをざっと見ている感じでは人数の違いはあまり目立たず。

NLL新チームの件を整理

コメント欄で教えていただいた情報をもとに整理しなおしてみました。NBA Brooklyn Netsのオーナーであり、アリババの創始者であるビリオネアのJoseph Tsai氏が室内プロラクロスリーグのNLLの新チームを他のスポーツセレブと共同出資で創設した件です。

当初取り上げたのはNLLのLas Vegasにできる新チームのオーナーにTsai氏を含むグループがなったという話だったわけですが、実はTsai氏はそれ以前に同じNLLのSan Diego Sealsも保有していたと。よってTsai氏にとってはNLLの2チーム目の保有となるわけです。
このLas Vegasの新チームも含めて2022年シーズンにはNLLは15チーム態勢になるようです。うちカナダに5チームが所在。同じオーナーによるNLLの複数チームの保有は他にも前例があり珍しくない模様です。メジャースポーツでは複数チームの所有は禁じられますが、マイナースポーツではしばしばあることです。サッカーのMLSなども零細の頃は1つのオーナー企業が最大5チームだったかな、リーグの半分を所有するといういびつな形で支えてリーグの崩壊を免れていたことがあります。

Tsai氏はYale大在学中にラクロスをプレーしていたそうで、どうも儲けるためというより、ラクロス愛からの支援的な資金注入という理解の方が正しいのかもしれません。調べたところ1チーム目のSan Diego Sealsで参入したときにTsai氏が払った金額というのが$5 millionだったとか。米国内で露出が高いとは言い難いNLLへの参入の金額としては随分高い気がします。

なぜ投資先の都市がSan Diegoなのかなという疑問を最初に感じたのですが、その謎は他の方面からとけました。これもコメント欄で教えていただいたのですが、Tsai氏の娘さんがStanford大でラクロス選手として活動しているのですが、そのプロフィールで彼女の出身地がLa Jolla, CAとなっています。San Diegoの郊外です。ということはTsai氏家族のメインの居住地がSan Diego方面ににあるってことですね。

その昔、MLB New York YankeesのAAAの系列チームが中西部のオハイオ州、Columbus Clippersでした。今では系列の改変が行われ、Yankeesの系列チームはもっと東海岸に近いところおよびキャンプ地のTampaに配置されています。Columbus Clippersは現在は同州内のCleveland Indiansの系列です。

ではなぜ飛び地のColumbusがYankeesのAAAだったかというと、以前のオーナーだったGeorge Steinbrenner及び妻がオハイオの出身で、その親族もその方面に住んでいたからと説明されます。つまりColumbusにYankeesのマイナー組織があることで、Steinbrenner夫妻はYankeesのカネで同地に居住地を確保できるしプライベートジェットで老母や親類を訪れても経費をビジネスで落とせるからという説明だったと理解してます。ClippersがYankees系列から外れたのが2006年。Steinbrenner氏が亡くなったのが2010年、80歳。だいたい辻褄はあいそうな説明かと思います。

その前例からするとTsai氏がSan Diego Sealsを所有することで私用でのSan Diegoへの東海岸から北米横断のプライベートジェットの頻繁な運用も経費で落とせるなどのメリットが想像できそうです。


反面Tsai氏のNLLへの関与がラクロスの一般スポーツファンへの露出という目的もあったとするとSan Diego Seals取得のケースはあまり成功したとは言えないかにも思えます。私は自分で言うのもなんですが、一般のスポーツファンよりはずっとマイナースポーツのニュースに目を通す方であると思います。でもTsai氏がNLL San Diego Sealsを所有していたことは知りませんでした。今回もう一つのLas Vegasチームの設立にWayne GretzkyやらDustin Johnsonやらという名前が目立ってスポーツニュースネタとなったわけです。San Diego Sealsのときにはそんなことはありませんでした。いくら世界有数のお金持ちでもNetsのオーナーTsai氏がマイナースポーツチームを買っただけではニュースバリューに欠けたということです。NLL、ひいてはプロラクロスの露出に貢献するという意味ならNHL Gretzkey, PGA Dustin Johnson, Nets/元SunsのSteve Nashという広めの人選は目的に沿っていると言えそうです。実際にその人選ゆえにスポーツマスメディアでも報じられることになったわけですから。


そういうラクロス全体の露出ということが金銭的な見返り以上にTsai氏の念頭にあるのならば、少し前に当ブログでも紹介した女子スポーツの総合団体を目指しているAthletes UnlimitedなどはTsai氏の次の投資先としてフィットしている可能性があります。
Athletes Unlimitedは6人制バレーボール、変則の独自ルールの屋外ラクロス、そしてソフトボールと当面3種目で活動を展開。ラクロスに関しては気になる独自ルールのことを続編で書こうかなあと思いつつ書いていなかったので、この機会に書いてしまいます。

Athletes Unlimited Lacrosse(AUL)が予定している女子ラクロスは各チーム9人制と公式ページに紹介されています。通常の女子のラクロスルールでは2019年以降は各チーム10人になっていると理解してます。
それとは別にラクロスの統括団体がラクロスの五輪競技採用を目指して新規に制定したルール、Lacrosse Sixesが発表されており、それは6人制。なぜAULが独自の9人制なのかは存じません。せっかくLacrosse Sixesが発表されているのですからタイアップしてAULも6人制にしてしまえば良いような気もしますが、とりあえずそうはなっていない。きっとAULは零細なはずですから、Lacrosse Sixesで開催するならとどこかから資金提供オファーがあったらあっさり変わりそうな気はします。
そのどこかから、がTsai氏である可能性はあっても不思議じゃないかもなというのが私の連想ですが、どんなもんでしょうか。
少なくともAULの独自の9人制ルールというのは意味不明。通常の10人から1人しか人員削減になってないからコストカット効果も僅かだと思われます。そこまでして独自ルールにするメリットがよくわからない。Lacrosse Sixesの実施団体になった方がいろいろ良いことがありそうな気がします。

話がちょっと飛びましたが、そんなことを考えさせられたTsai氏のラクロス普及活動・投資という話でした。

有名オーナーが集まって室内ラクロスチームを創設

不思議なニュースが入ってきてます。室内プロラクロスリーグの老舗National Lacrosse League (NLL)の新チームがLas Vegasにできるそうなのですが、そのオーナーが異様に豪華な面々となっています。名を連ねているのはNHLの史上最高の選手であったWayne Gretzky、PGAゴルフ昨年のMastersチャンピオンDustin Johnson、NBA Brooklyn NetsのHC Steve NashとNetsのオーナー Joe Tsai氏が共同オーナーという話です。ちょっと豪華過ぎないか、というのが一報を聞いたときの感想でした。

まずJoe Tsai氏だけにしてもNBAチームを所有できる財力があれば、マイナープロスポーツのNLLのチームのひとつやふたつ簡単に買えそうです。それどころかリーグ全体を買い上げてもNets1チームの価値以下なのは確実。Tsai氏が単独ではなく共同オーナーになるのは資金量が理由ではないのでしょう。

有名人をオーナーに並べることでの宣伝効果というのは他にも数々例があるので珍しくないですが、たかがマイナースポーツリーグのNLLのチームにこれだけスポーツ界の有名人が揃うというのも奇異です。なにかすごい目論見があるのか?と疑りたくなるほどです。
Tsai氏は台湾と香港をルーツとするカナダ国籍も持つ重国籍者。GretzkeyもNashも米国内でお馴染みの顔ではありますがいずれもカナダ人。米国籍なのはDustin Johnsonだけという意味で米国籍のJohnsonを混ぜたいという他の3人の気持ちは多少はわかるかも。保守傾向が強まった昨今のアメリカでのビジネスなので外国人オーナーだけというのは少々のリスクを感じるところなので。
Dustin JohnsonはGretzkeyの娘と事実婚状態、Gretzkeyの孫ももうけているのでほぼ親族状態でもあります。

室内ラクロス、Box Lacrosseとも言いますが、カナダでは1987年の創設以来まずまずの人気だという話はアメスポマイナープロスポーツを学ぶ上で知っていることでしたが、私の契約している範囲のTVチャンネルでは近年お目にかかった記憶がない。
調べてみると今はB/R LiveというスポーツニュースサイトだったBleacher Reportが所有するストリーミングサービスが放映権を持ってるようです。どうも見かけないわけです。

既存のスポーツTV局に加えて、Apple TVやAmazon Primeという新興大手もスポーツコンテンツ獲得に参入。Apple TVやPrimeなんかは巨大資金がバックにあるのでNFL中継など超優良コンテンツに食い込みをはかったりしているわけですが、それ以外の大小のストリーミングメディアや、黒船のDAZNなどもなんとかアメリカ市場に食い込もうと様々な手を尽くして中小アメスポ(正確にはアメスポに限らず海外モノでも)コンテンツを抱え込もうとしています。

そういう流れの中で室内ラクロスのNLLにも資金が流れ込もうとしているってことでしょうか。

新プロバレーボールはチームすらない

アメリカ人ビジネスマンは昨年のパンデミックの中でも活発に動いていたんだなと感心する事例がマイナープロスポーツの中でもいくつかあります。以前の記事と同じ書き出しですみません。元々は今回のネタのために書いた書き出しでした。

もう半年前の話になりますが、ラクロスの老舗プロリーグだったMajor League Lacrosse = MLLが、2019年に設立された新興ツアー型プロPremier Lacrosse League = PLLと合併。法律上は合併ですがその後の運営形態はPLLのツアー型に集約され呼称もPLLになるので吸収、MLL消滅にほど近いものです。
PLLは2019年に6チームで初年度を開催、パンデミックの2020年はユタ州で集中開催。そして2020年12月にMLLを吸収して、元MLLのBoston Cannonsを新チームとして加えて全8チームで2021年のツアーが先週末から始まっています。放送はNBC系列の新有料ストリーミングサービスのPeacockで。チーム数は増えて保有選手は増えたのに試合数は増えてないので収入は苦しいとは思いますが、新規立ち上げでコンテンツの品揃えを急ぐPeacockからの資金も入ったのでしょうから当面は持ちこたえられるのか。
それよりも2020年のパンデミックの中でどういう形であれリーグ拡張を達成したという辺りが立派なもんだなという気がします。


女子スポーツの方でも動きがパンデミック下であったようです。Athletes Unlimitedというブランド下でプロ女子バレーボールと女子ラクロスの活動が発進。Athletes Unlimitedは女子プロスポーツに特化して各種競技を統合した団体を目指している模様です。

この弱者連合のようなAthletes Unlimitedの行き方って成立するのかわからないんですが、弱者連合を作ることで事務方のコストが統合されて節約になるというのはありそうです。男女同権というアメリカ連邦憲法の要請もあり女子スポーツをビジネスで成功させようという潮流はたしかにあって、うまく供給ルートに乗せる土台としてこの新しい試みがうまくいくかどうか。
Athlete Unlimitedが女子スポーツの内で先行発進させた競技がバレーボールとラクロスなのはセンスは悪くないようにも思えます。まったくもって個人的なイメージですがこの2競技は女子でも比較的同じジャンルの男子にはない魅力があり見ていられると思うからです。


バレーボールはアメリカでの観戦スポーツとしての人気が立ち遅れているジャンルなのは過去何度もご紹介してきました。女子の米代表はほぼ常に世界でトップクラスですが、国内では6人制プロバレーボールリーグは作っては潰れるの連続の歴史です。選手たちの収入は海外リーグや、代表での大会に勝っての賞金稼ぎに頼る状態が続いているわけです。そのため米代表は賞金の高い大会に必死になる傾向が強い。

ところで今年発進した新プロ組織Athletes Unlimited Volleyball(以下AUV)にはチームがないという斬新な企画です。
どういうことかというとAUV所属の選手たちが毎週別のメンバーで組んでTeam LarsonとかTeam Kingとかエースアタッカーの名前で戦うんですね。そしてチームの勝利ポイントやキルの数を個人に分配してシーズン全体の個人ランクで競うというものです。チームとしての勝敗の優劣とか優勝という概念はないってわけです。アメリカ人らしい柔軟な発想の企画と言えましょう。
上で触れた男子のPLLにしても、過去存在したビーチバレーのツアー団体にしても、地元都市という概念がないのでその日見に来た観客にとってはシーズン全体での優勝というのは無意味ではあります。お客さんは良いラクロス、良いバレーボールが見たいだけであってどのチームを応援するわけでもないし、ましてや優勝とか関係ない、と言えばそのとおりなんですね。

参加しているバレーボール選手たちは日本中国欧州のリーグなどにプロとして所属していてオフシーズンに集合してこのAUVでも活動するという仕組みのようです。他国と活動時期をずらすことで兼業が可能になるという方法論はバスケWNBAでも成功している形ですからこれは悪くないと思います。選手を主たる雇用者として獲得するのではなく、副業として参加してもらえる形でリーグの方がニッチに徹するわけです。初年度の今季は2月から3月にかけての5週間の短期興行。まだパンデミックが明けていなかった時期のことなのでテキサス州Dallasでの固定開催無観客。テストでやってみたという状態に近いのか。

AUV初年度の最優秀選手となったのはJordan Larsonで、彼女はいま進行中のVolleyball Nations League =VNLの米代表メンバーにも最年長(34歳)キャプテンで参加中です。米代表で一線を張れる人がきたらAUVでは無双ってことですね。Larsonは東京五輪代表の最終メンバーにも残ってます。他にはAUVには米代表クラスは出ていない模様。

尚、米女子代表は現在進行中のVNLで唯一の無敗でトップ。今朝やっていた試合では開催地地元のイタリア代表に意外な苦戦を強いられて1セットを落としたものの全勝は維持しています。


話は逸れますが、このVNLとか、先週までやっていたアイスホッケーのIIHF World Championshipとかはアメリカから見ると平日の午前とか昼間に開催しています。アメリカの平日昼間のスポーツマスコミがスポーツトークショーばかりになってしまい、傾聴に値する議論もないことはないのですが多くは同じことの繰り返し。または話題がないのでないところにムリに話題を作って議論している。そんなのよりは欧州で開催中のバレーボールやホッケーの方が良いと私などは時間があるとそれらを見ていたりしてます。バレーとかテニスとかは隙間の時間にチラ見するのに向いてるなと思います。今はホント便利で何でも見ようと思えば見られるんですよね。

突然USFL復活

アメリカのビジネスマンは昨年のパンデミックの中でも活発に動いていたんだなと感心する事例がマイナープロスポーツの中でもいくつかあります。今日になって飛び込んできたニュースはUSFLが復活して2022年春から活動再開するというニュースです。1980年代に短期間活動し、当初は新人選手の獲得競争でNFLをしのいでHarshell Walkerを獲得するなどアメスポシーンに一石を投じた組織です。
2022年の復活はFOXが放映パートナーとして組んでいるというので、若干臭いかもなという気もします。何が臭いかというと、USFL当時のチームオーナーの一人がDonald Trumpだったんですね。話を端折って説明すると、TrumpさんはNFLに参入したかったのですがNFLオーナーからの承認を得られず、怒ってUSFLの創設に参加したという顛末がありました。規模を大きくしてUSFLとNFLの合併という大技でNFL参入を目指したのではないかという話もありますが、そうはならず。

FOXは現在The Spring Leagueというマイナーリーグを放映中。そこへUSFLが来季春に復活してFOXが放映するというのなら現行のSpring Leagueはそのためのパイロットプロジェクトの意味もあったのかも知れないと今となっては考えることもできます。

さてTrumpは大統領から退陣後、発信力の低下に悩んでいる。既存のSNSから締め出されてしまったし、TVもほとんど発言や動静を取り上げてくれない。トランプ御用達ニュース専門局であるFOX Newsにかじりついて毎日見てくれるような熱心な信者はともかく、その外への働きかけができない状態が続いている。
USFLの再興にTrumpとFOXがタイアップしていたら?というのはどうでしょうか。スポーツ報道なら無理やりでもTrumpの顔出しが可能になっていくかもしれませんよね。
なんでもUSFLは1980年代に活動していた時期のチーム名の法的権利を維持しているそうで、Trumpが当時所有したNew Jersey Generalsも復活可能のようです。

尚、2022年の春のフットボールリーグというとXFLもその復活の目標時期にしています。
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