カレッジフットボールのプレシーズンランキングも出てきていよいよフットボールシーズンも近づいてきました。その話はまたやります。

前項でLos Angeles DodgersのMLBトレード期限での補強ぶりについて書きました。このトレード期限の最大の大物Tarik Skubalを獲得に成功。それもマイナーのプロスペクト3名との交換でDodgers一軍の戦力を落とさずに獲得してしまった。3人のうち2名はもともと他のチームから獲得した選手で子飼いの新人の頃から大事に育てた自前の選手というわけではなく、マイナーリーグの選手にも気を配るような熱心なDodgersファンからもこのトレードが驚くべき安い対価で達成されたと評価されています。

NLの覇権争いでDodgersとの激突が期待されていたMilwaukee BrewersやAtlanta BravesもSkubalを狙っていたという前評判でしたが、Skubal獲得競争が行われたのかどうかすら怪しい安価でのDodgersのSkubal獲得。Dodgersがこの程度のマイナープロスペクト3名ならBrewersはいったいどんな対価をDetroit Tigersにオファーして獲得競争に敗れたのか。Dodgers以下の価値だとTigersが判断するような交換要員しか提示しなかったのでしょうか。

Brewersサイドからは「初動に失敗した」という意味のとりにくい反省コメントが出ているようです。初動もへったくれもSkubalを獲得して、Brewersの105マイルの剛球を投げまくっている自軍のエースJacob MisiorowskiとSkubalを並べてポストシーズンの殴り込んで昨季2025年にスイープを食ったDodgersへのリベンジ挑戦への機会を求めるのかと思ったら、安く済ませたDodgersよりもSkubal獲得に出し惜しみをしたとしたら、それはポストシーズンリベンジへの準備として寂しい。そもそもMisiorowskiのようなタイプの投手が今後何年もケガなく剛球をシーズンを通して投げられるシーズンが何年もあるとは思ってはいけない。もしSkubalが残り2ヶ月のレンタル契約になったとしてもMisiorowskiのピークに最強左腕Skubalを加えて勝負に行くべきタイミングじゃなかったかと思いますが、行かないんですね。
それともその初動に失敗というのはSkubalの対価を完全に読み違えて今の一軍ローテから誰かを出さなくてはいけないと判断、現在NLトップのチームを崩してまでSkubal獲得競争に参戦するかというような球団内部で相談というような判断ミスがあったのかもしれません。2ヶ月のレンタル移籍に大事な選手を対価に出せないという勘違い。

Skubal側から見るとDodgersの方が好ましいという部分もあります。高額契約を引き出すことで知られるボラス氏がSkubalの代理人。ただのレンタル移籍となるか、Dodgersのようにシーズンが終わる前=FAとなる前に大型の契約延長をオファーできる球団の方がボラス氏にとっては腕のふるいようがあるという読みも可能です。

Dodgersから見ると今季後に現行の労使協定が失効するという事情がプラスに働く面がある。12月1日に現協定が失効するとFAの立場は次の協定がまとまるまで決まらない。そして可能性として次期協定ではサラリーキャップ制が導入される可能性があるので、Skubalのような大物でも金額も契約年数も強い制限が加えられる可能性があります。そうなってしまえば剛腕代理人でも腕のふるいようがない。よって現協定失効前にSkubalの次期契約をまとめてしまいたいというインセンティブがSkubal側に働くことになるのです。
Dodgersから見れば過去のボラス案件のようにネチネチとした長く執拗な値段のやり取りを避けて短期決着が見込める。ボラスからすれば「おたくがこの額を出さないならFA市場で欲しがるところはいくらでもある」と恫喝しにくいです。
金額は高くなってもサラリーキャップ制導入前にSkubalの契約を取りまとめれば労使協定交渉でロックアウトが始まる前に来季のDodgers投手陣をエース級でずらりのローテを固めてしまい、労働争議が長引いてもDodgersは安泰になっているという可能性もあります。

但しサラリーキャップ制が導入されるかどうかは先行きが怪しくなってきたとも私は思っています。サラリーキャップ制導入の建前は一部の金満チームだけが勝てて地方都市のチームにチャンスがないというものだったはずです。もっと多くのチームが競う方がMLBという商品の価値の向上になると。
ところが今季の現実はどうでしょうか。トレード期限を迎えた残り2ヶ月の時期になってもポストシーズンに向けて完全に脱落したと言えるのは6チームだけです。もちろんポストシーズンの枠が増えたからでもあるんですけど、両リーグの最後のワイルドカード枠まで3ゲーム差以内と限定的に見ても全30チーム中20チームがポストシーズン出場を争ってる。4ゲーム差5ゲーム差のチームも入れればもっと多くのチームが圏内です。
サラリーキャップがなくても十分に競争は充実してるんじゃないのかという反論が成り立つ状況です。

さらに金満チームばかりが勝つというサラリーキャップ制推進の理由は突出した2位のサラリー総額を誇るNew York Metsが完全脱落側にいることでこれも主張としては弱くなっています。キャップでなくぜいたく税制でいいのではないのか。あとはぜいたく税からの分配金を懐に入れてしまって選手に還元しないやる気の薄いオーナーを抑止するための最低額の仕組みを導入すれば足りるのではないかという決着もありえそうな状況です。ただオーナー側の戦術は読めないですからそれはこの冬から春の労働争議でのお楽しみです。