ESPN.comのサイトに抗議広告が載っていて知りました。サテライトTVプロバイダの大手DirecTVがESPNおよび系列の地上波ABCの放送ができない状況になっているようです。カレッジフットボールとNFLというアメスポ2大人気ジャンルの開幕の時期。さらにはテニスの全米オープンも進行中。このタイミングでのESPN系列の視聴ができないのはDirecTVの契約家庭にとっては大きな問題で、急遽ネットベースのプロバイダに契約を切り替えるなどドタバタしていそうです。
日曜日からこの問題は始まった模様。日曜日の一番の目玉だったスポーツコンテンツのLSU x USCの激戦は地上波ABCでも放送していたので地上波をキャッチすれば視聴可能であったはずですが、DirecTV経由でも見られたはずの部分は不可になっていたと。DirecTV経由でのHuluの視聴も止まってるようです。

理由はDirecTVとESPNの親会社Disneyとのライセンシング契約のもつれから。金額その他どの部分で具体的にモメているのかは未公表。DirecTVも危ない橋を渡っている感じになってます。チキンレースです。

DirecTVは過去にはNFL Sunday Ticketを独占、域外のNFLの試合を全試合見られるのはDirecTVだけという大きなアドバンテージがあったので契約家庭数で業界最多を誇ったのですが、その肝心のNFL Sunday Ticketの権利はYouTube TVに移ってしまっておりDirecTVのアドバンテージは消滅。残ったのは業界一高かった月額料金だけ。
それでも元々高額な料金を払うことを厭わなかった契約視聴者は細かいことは気にせずに契約を続けていた可能性はある。テックに弱い高齢の消費者もそのまま契約を続けていた可能性もある。過去数年のCable cuttingのトレンドは金額に敏感な消費者を抱える比較的安価なTVプロバイダの契約者に顕著であったろうとは想像ができるからです。

しかしESPNが見られないとなると鷹揚だったDirecTVの契約者もこれは何事かと気づかざるをえない。このままDirecTVを含むサテライトTVプロバイダという業種は斜陽産業となっていくのか。


話が逸れますがチームの大量離脱で2校になってしまったPac-12は今季も一応カンファレンスとして存続しているようです。おもしろいのは残ったWashington StateとOregon Stateの大半の試合の放送がマイナー地上波局だったThe CWで放送される予定になっていること。大量離脱でPac-12が昨季まで持っていたTV放映権の支払いを拒否され別の放映チャンネルが必要となったPac-12がThe CWと急遽組んだという弱者連合状態と言えます。
しかしながらThe CWは地上波なのでこの記事の前半で書いたような放映権者とプロバイダの確執に巻き込まれることなく全米の大半の消費者に届くことになります。The CW側から見ると同社はACCフットボールの放映権を持っていたところへ弱体化したとは言えPac-12を加えることもできてこの時期のスポーツコンテンツの充実に成功。

The CWはマイナー地上波ネットワークだったのがこれでLIV Golf、NASCAR Xfinityシリーズ、WWE NXT、ACCフットボール&バスケットボール、Pac-12など一流以下のコンテンツながらスポーツ放送で一定の力を蓄えてきています。ケーブルTV局というジャンルが緩慢な死に向かっているように見える現在においてそこから漏れてくる各種コンテンツの受け皿として存在感を増しています。

今回最大手TVプロバイダだったDirecTVのトラブルの発生と、細かく拾って地位を上げるThe CWに業界の変化を感じさせられます。