NILという形で学生アスリートへのカネの流れを合法化したNCAA。現行の学生たちは才覚次第で稼げることになったので良いとして、つい数年前までは学生アスリートがその地位と名声を利用して利益を得ることは違反行為とされていたわけです。NIL施行前後で事情がころっと変わってしまった。

2005年のハイズマン賞受賞者だったRB Reggie Bush (USC、後NFL New Orleans Saintsなど)が金銭の授受の違反でハイズマン賞を事後に剥奪されました。それがNILが施行されて当時の金銭の授受も現行ルールなら違反に当たらないと事情が変わったこともありハイズマン賞受賞の事実が再度確認されてます。以前に一度返還した同賞のトロフィーも正式にBushの手に戻されています。
ハイズマン賞の場合、元受賞者は毎年の実質のカレッジフットボールの最優秀選手賞であるハイズマン賞の選出に関わるし、受賞セレモニーでも(存命で可能なら)登壇できるという伝統になっています。Bushは剥奪期間中はそういう受賞者としての名誉ある活動もできなかったのでご本人も復活できて喜んでいることでしょう。

Bushの場合はプロではあまり活躍できませんでしたが、それでもSaints在籍時代にSuper Bowlリングもゲットしてます。引退後はFOXのカレッジフットボール解説で職を得て幸せなフットボール人生になっています。喋りはまあまあ。FOXの解説陣にはUSCでBushと組んで数々の名勝負をやった当時のQBのMatt LeinartもいてBushからすれば居心地の良い職で好き放題喋れて生活ができるんですから。その上ハイズマン賞の名誉回復も果たしてます。


Bushはそれで良かったのですが、他にも小金をスポンサーやらブースターやらから貰ったことで出場停止を食ってプレータイムが削られた選手や、NIL的ルールがあれば稼げたはずのビジュアル抜群の選手や、疑惑が持ち上がって転校都落ちを余儀無くされた選手たちも無数にいたはずです。これをどう救済するかという問題があって、その救済措置への総額が表題で書いた約$2.8 Billionになるというのが新しい報道です。支払う主体はNCAAおよびPower 5カンファレンスとなってます。

誰に幾ら払うのかはまったく不明。NIL施行直前の選手たちは含まれるのでしょうが何年前まで救済対象いなるのかも、どのスポーツの選手も貰えるのか、スター選手補欠でいただけの選手も貰えるのか中身はまったく不明です。$2.8 Billionというと今の円ドル相場だと4400億円ですか。桁が外れているので間違っていたらすみません。4400億円ってすごいような気もしますが、救済対象となる人数が多い可能性も高い。大雑把な話、救済対象元選手が28万人いたら1人頭 $1万、150万円程度でしょう。いまとなってはただの人になっている元選手がほとんどですから$1万でも貰えるなら貰うんでしょうけど、いまのNILで荒稼ぎしている選手たちの稼ぎっぷりからすると残念な額。

救済対象を絞れば一人頭の金額は増えますがどうするのか。当時のルールのせいで稼げたはずのカネということで言えば10年前のフットボールやバスケのスーパースター選手たちに手厚く還元するほうが合ってるいるようにも思えるし、全員公平にとマイナースポーツの補欠選手もスーパースターも同額とするのか。さらに男女同権問題が絡んでさらにやっかいな分配議論となりそうに見えるニュースです。

あとこれは微細な話になりますが支払い主体がPower 5カンファレンスとなってます。しかしPac-12は既に崩壊して今季を最後にほぼ活動停止になります。意味あんのかなという。いまちらっとPac-12の公式ページを見ましたが2023−24シーズンのことだけ書いて所属校の大量離脱の様子はパッと見には目立たない状態になっているようです。