地味な話題です。カレッジバスケ男子の名門Kentuckyから終身契約を得ていたHCのJohn Calipariが辞任、同じSECのArkansas Razorbacksの指揮をとるのだそうです。なぜにArkansas。

Arkansasの今季の成績は16勝17敗、SEC内で6勝12敗。SEC14校中10位タイ。Arkansasがカレッジバスケで全米制覇をしたのは二昔以上前の1993–94シーズン。同州の知事だったクリントン大統領が大統領在任中のことでゴキゲンで同校を応援してる姿を報道されたりホワイトハウスに招いたりしていた。

当時のArkansasは「40分の地獄」というHC自身が名付けた超攻撃的バスケが売り物。試合の最初から勝負が付くまでフルコート&ハーフコートプレスと速攻で相手をボロボロにして勝つ印象的なチームでした。

しかしHCのNolan Richardsonが大学側と対立してプログラムは崩壊。Nolan Richardsonは黒人コーチで人種問題に歯に衣を着せぬ発言がしばしばあり。30年後のいまですらトランプ支持者の蜂起で南部では人種差別是正政策は終わりにしろという意見になってしまう、そういう土地柄の30年前の話ですから嫌がらせその他いろいろあって不思議なし。

とにかくそのように南部の目立たない学校が黒人コーチの下で全米制覇を成し遂げたものの、Richardson放逐後はまた目立たない学校に戻っていました。バスケもフットボールも目立たない。バスケはNCAAトーナメントに出場できたら成功シーズンというのが現実の時代が続いた。
それがここ数年はNCAAトーナメントで8強16強にまで進めるシーズンが増え復興気味だったのですが、それを率いていたEric MusselmanがUSCへ栄転(なんだと思います)。
Arkansas側から見ると近年の成功をさらに押し進められる大物HCの招聘ということでしょう。

Arkansasの意向はそれで理解可能ですが、CalipariにとってはArkansas就任にどんなメリットがあるのか。メリット云々よりもKentuckyでのファンやブースターからの圧力が激しくてそこから離脱する事の方に意義があったのかもしれません。
過去Kentuckyは全米制覇HCでも成績が落ち始めると早々と切ってきた歴史もあり、その歴史に沿っているといえばそうでしょう。
Arkansasなら16強まで残れば皆が幸せ、Kentuckyでは16強ぐらいでは全然ファンの期待に届かない。Arkansasならハードルが低い。ぼちぼちお歳でそういうところの方が良いと思えるようになったか。

どこかに転任するのは良いとしてSEC内の学校というのも興味が湧くところ。同カンファレンス内ですから毎年か少なくとも隔年ではKentuckyのホームへ訪れて敵軍Arkansasを指揮をすることになります。それをCalipariが望んだってことですからなにがしかの凱旋ないしは小さな復讐もCalipariの腹の中にはあるってこととも想像できます。

あの自信満々だったCoach Calでも居残れない名門Kentuckyの職。それを考えるとお歳が上がっても最後まで名門Dukeを勝たせ続けてキャリアをフィニッシュしたCoach KことMike Krzyzewskiの手腕を再評価してみたい気にもさせられます。


=追記=
続報でArkansasから貰えるサラリーはKentucky時代よりも年間$1 million以上安いと報道が出ています。安くてもKentuckyを離れたかったってことはArkansasに行きたかったのではなくKentuckyを去りたかったということだと理解して良さそうです。