こういう調査結果があります。Gen Z(現在の20歳代とほぼ同義)とスポーツの関わりについての調査の長い解説記事になっていておもしろいことがたくさん書いてありますので良かったら全編読んでいただきたい資料となっています。元調査へのリンクも含まれてます。調査自体は2022年の末に発表されたものですからほぼ最新。
今回はそのうちのGen Zのジャンル比較・嗜好の部分について書いてみます。

Gen Zでも全世代と好きなスポーツの傾向は概ね相似といえます。eSportsに関してだけは明らかに違うんですけどそれ以外の傾向はほぼ同じ。それぞれのジャンルのファンか否か(「熱心な」と「カジュアルな」の合計)を訊ねています。ざっと列記するとファンだと答えた割合は

NFL 53% NBA 47% カレッジフットボール 41% MLB 35% カレッジバスケ 34% esports 33% NHL 25% MLS 16%

となってます。大雑把に言ってGen Zの半数がNFLやNBAを好むし、ざっと1/3程度はMLBカレッジバスケeSportsを好むということになります。調査母数は男女が混じっているはずなので男性だと大半がNFLとNBAに興味ありぐらいの感じかもしれません。

全世代との比較で明らかに異なるのはeSports。ゲーム実況観戦や自身がオンラインで対戦する人口はこの世代では相当に多いことが伺われます。その総数はメジャースポーツとして確立しているMLBやカレッジバスケのファン数に匹敵しているってことだと解釈してます。相当な数と言えます。どの辺までのゲームのオンライン対戦をeSportsに含めているのか定義を知りたいところですがいずれにせよ既に無視してはいけない量のファンが存在しているのは事実のようです。
伝統的な同種の調査だとeSportsという選択肢自体が調査に含まれていないでしょうから比較しにくいですがもし旧来から継続している調査の選択肢にそれを付け加えたとしても上の世代はeSports自体をあんなのスポーツじゃない的な意識が邪魔をして回答しないかもですから年代間の比較は難しいところではあります。
アメスポ全体を守備範囲(主に全体のバランスの観察)としている当ブログですがeSportsに関しては大いに無知。これからの世代を理解するためにはもうちょっとその辺にも目配りしなきゃいけないのかなと思わされる調査結果ですね。一時期Johnny Footballくんが加入したFCFやパンデミック時のNASCARのシミュレーションでの開催の件を書いたりなどリアルに関わってきたときは反応してしまいますし他にも時々は書いてますが。
eSportsを除けばジャンルごとへの興味の順列はGen Z世代の嗜好は全世代のそれにほど近いです。私の所属する旧世代と新世代にはそこまでの断絶がないようです。

Gen Z世代ではNBAとMLBの差ははっきりNBA上位。これは1990年代の調査でも若い世代では同傾向だったことを思い起こさせます。その昔でもNBAの人気がはっきりMLBを上回っていたのです。1990年代の当時の若者はもう今は立派な50代60代になってるはずですがしかし今に至っても全世代調査をするとNBAが明確にMLBを人気で大きく上回ったというデータは存在していないということは過去何度か当ブログで指摘してきました。どこかで昔NBAファンだった層がMLBファンに転向していない限りそういう結果にはなり得ないわけです。NBAが比較的若年層にアピールするのは30年前でも今でも同じなのでNBAには確かにその「年代」への訴求力があるのでしょう。しかしその訴求はその年代に対してであってその「世代」ではなかった、その世代が年齢が上がる過程のどこかの時点でNBAから離れていることが推定できます。年齢が上がってくるとMLBを好むようになるまたはNBAから離れるという傾向があると結論しなくてはいけなさそうなのです。数字はそうなんですけどなぜそうなっているのかのその理由を言い当てた分析に接したことがありません。謎です。しかしながらそういう傾向があるのは事実のようです。

MLBの改革が遅れてファン離れを放置したとしてMLBコミッショナーを糾弾する記事は当ブログは何度か書いてます。その影響はより若い層に顕著なんじゃないかなと想像していたんですがこのGen Z世代調査ではMLBは全ジャンル比較で4位を確保して第2グループ。全世代での傾向とあまり変わらない順列に落ち着いており懸念想像したほどには若い層Gen Z相手でも落ち込んでいなかったという数字になってます。調査時点はピッチクロック導入前のあのスローなMLBなのにです。
改革は遅れたなりに2023年からはピッチクロックその他の改革が発動、苦痛レベルでスローモーだったMLB観戦のしやすさは今年大いに改善しています。それがGen Zや全世代の嗜好にどの程度の好影響を与えるものかどうかは今後の調査を待たないといけないでしょう。


当ブログではしばしばアメスポのメジャースポーツを6種目と定義して書いてます。プロの4大スポーツ=NFL/NBA/MLB/NHLに加えてカレッジの2大ジャンルのフットボールとバスケで6種目。
この6つの中ではNHLはかなり離されてたプロ4位で6ジャンル中最弱というのが認識。ポジションはたしかにメジャー最下位の6位なのですが、この調査結果を見ると意外にもNHLはGen Zでも健闘しているではないかという気がします。NHLは最強クラスのNBAとシーズンが丸かぶり、全国放送の試合もほぼ常にNBAの裏番組である中でNHLでも底堅い支持をこの世代で持ってるんだなあと。

NHLがナンバーワンスポーツであるカナダで若い世代のNHL離れが顕著だという危機感を持って書かれた記事を一時期多く見かけたものですが、カナダと比較して明確にホッケーの人気の基盤が狭いアメリカでの調査でGen Zの25%がファンだと回答するのはまずまずな数字な気がします。さすがにメジャー側に含まれるだけのことはあると言えるのではないでしょうか。上位のジャンルに迫れそうではなくてもGen Z世代でも一定のファン層は確保して今後もメジャースポーツとしての地位は維持していけそうな数字に見えます。

この調査では最下位となったサッカーMLSはどうか。最下位になったのは一般に言うメジャースポーツと同列に比較されたので最下位なのであって例えば20年前なら調査の対象にすらならず、調査の対象でなければ最下位にすらならなかったはず。そういう意味では調査対象入りした事実だけでもサッカーのアメスポ内の地位は過去と比較すれば向上しているのだと思って良いとはいえます。

しかしながらMLSをメジャー側最弱のNHLと比べても差は大きいです。NHLが25%、MLSが16%。アメスポ市場でサッカーファンの裾野が狭いのは過去の様々な調査からも明らかですがその傾向はGen Z世代でも変わっていないようです。MLSが若い世代で人気が高いという出処不明な主張がされることがあるようですがなにかの誤解ないしはデマのようです。

この差はMessiが2年ほどMLS在籍するぐらいで一気に詰められる差なのかどうか。ここが詰められるならMLSのメジャースポーツ入りという展望が開け始めるわけですが。これは私の単なる憶測ですがMessiという名前に今強く反応しているのはMessiを若い頃から知ってる世代=Gen Zより上の世代の可能性が高そうにも思えます。
アメリカサッカーが2026年のW杯開催に向けてアメスポ市場内で地位向上の勝負を賭けるべく態勢を整えているという記事を別途書いているんですが、その努力の余勢やMessi効果でGen Z世代を含めてもMLSへの支持は伸びうるのか。予断を許さないところです。


話は逸れますが前項でAppleTV+の囲い込みでMessiのデビューからの試合が(少なくとも英語放送では)見られにくい状態になってしまっているという点を指摘しました。今回取り上げたGen Zのスポーツの関わりの調査記事ではおもしろいことを言っていて、Gen Zはスポーツの視聴を理由にサブスクに加入する傾向は弱く、同時にGen Zは違法視聴をする傾向が他の世代よりも高いということが指摘されています。若くてお金がないからということが根本原因なんでしょうね。大人になってしまえば失うものが多くなって違法視聴という行動はとらなくなるように思えますが若い人はその辺の分別がちょっと異なっている様子が伺えます。

違法視聴の問題はタブーの面がありアメスポマスコミでもあまり語られませんがこの調査ではそこまで言及していて興味深い調査報告です。違法視聴までしてスポーツを見る人っていうのはある意味熱心なスポーツファンかとも思えます。MessiにせよOhtaniにせよ旬の話題の選手が正規の方法で見やすい形で提供されていないと違法視聴を助長する面っていうのがありそうです。
その対策としてNBAやMLBはYouTubeなどにハイライトを試合終了から時間をおかずにさっさとアップしているのかなとも思います。昨今はアップされるまですごく早いですよね。MLSもその方向にいかないといけなくなるのかもですがサッカーはあまり短いハイライトに向いた競技性ではないのがどうなるか。