開幕前にも書いていた米国内のW杯放送にサッカーファンからケチがついています。予想通りかなという気はします。代表的な意見ははこんなところです。要約すればFOXの解説陣のコメントにはまるで中身がなくプレーについての洞察が皆無、サッカーファンを満足させる気がない、普段サッカーを見ない層向けの説明に毛の生えた程度の安全なコメントしか発しない、という批判です。

それは開幕前に当ブログで
解説陣はなんとかアメリカ人でほぼ全員で賄うというFOXの方針のようです。大丈夫かなという気がします。彼らって本当に欧州サッカーとか好きで見てるのかどうか疑わしいんですが。仕事として欧州サッカー追うっていうのはつらい量のはずで、好きじゃないと多岐にわたる欧州サッカーのあれこれ追いきれないのではないのか。たぶん米国内在住のサッカー国出身者が多く見るであろうW杯英語放送、ちゃんとおもしろい話をそれらの視聴者に届けられるのか、少なからず不安に思いながら見てみたいと思ってます。
と書いていた不安、予想通りの批判ですね。実際FOXの解説は全然おもしろくないです。プレー分析なんてひどい。皆無に近い。Stu Holdenなんてまったく言語化できていなくて何が言いたいのかわからない。Holdenの場合はMLS放送のときもあんなもんですから仕方ないとは言え、せっかくカネをかけて獲得したW杯放送なのだからハーフタイムや試合終了後のプレーのダイヤグラム的な解説ぐらいあっても良いように思いますが皆無。全てがありきたり。

以前にも論じたことがありますがアメスポ市場でのサッカーの人気というのは裾野が相当狭いというのは各種調査からも明らかです。見る人はサッカーを愛しているが、そうでない大多数のスポーツファンはW杯ぐらいでしかサッカーは見ないという傾向は明らか。だからこそW杯の機会にその層にサッカーの魅力を伝えられる解説が欲しいところですがそうなってません。
冒頭にリンクしたFOXの解説への不満をぶちまけているコラムで言ってるのは今大会の解説はサッカーファン向けじゃない、サッカーを見ない層向けだと嘆いているんですが、私から見るとサッカーを見ないファンにとっても全然おもしろくない、誰得な放送になっているかと思えます。

元々のサッカーファンはどれだけ解説陣がひどくてもどうせ見るわけです。そういう人たちはアメリカがダメなら英国発などの英語での各試合の論評は文字でも映像でも各種ネット上に探すこともできるでしょう。ESPN+でやってるESPNFCなどの濃いめのサッカートークショーならアメリカ発でもさすがに情報量がある。でも普段サッカーを見ない層はそこまで能動的には動いて見てはくれないんですよね。

ところで2日前にあったイングランド対米代表戦は視聴率の数字は好成績を出したと速報値が出てます。スペイン語放送も加えると2000万人超。男子のサッカーの試合としては米国史上最多を記録(米史上最多は2015年女子W杯決勝がサッカーの最多記録を維持。スペイン語放送も込だと男子でも2014年の米対ポルトガル戦以来の史上2位とか)。
ただ正直言ってイングランド戦は試合自体はたぶんカジュアルなファンにとっては十分にエキサイティングではなかったように思います。アメリカ人一般にウケが悪いであろうスコアレスドロー0-0でしたし。その上実況も面白みもなく、多角的な解説もない。
これでサッカーファンを増やせたかというと疑わしいような。
数字が出たのはFOXの番宣の物量と感謝祭4連休中で在宅率が高かったのが奏功したってことでは。試合が連勝中の金曜日の午後(東部時間)で裏に強いスポーツイベントもありませんでした。FOXには手持ちに人気の高いNFL放送やカレッジフットボールの放送があり、その際にサッカーW杯の番宣は相当量流している。よって一般スポーツファンに向けて米代表の試合予定の告知は相当に行き届いていたとは思います。

次戦の
グループリーグ最終戦対イラン戦も宣伝はしてますが、平日の火曜日の昼間の試合。グループ突破がかかりイングランド戦より重要な試合ですけど視聴率面ではぐっと下回るのでしょう。

なんでも米サッカー協会の公式がイランの国旗から中央の紋章を消した絵を使ったとかなんとかでイラン側から抗議を受けているというニュースが出てます。プロレスならそういう因縁づくりのサイドストーリーで盛り上げる手法がありそうですが、サッカーですから協会の中の人はマジでイラン体制批判の意図でそういうことをしたようです。話が拡散してしまうのでその是非はまたいつか機会があれば論じてみます。