チリの気迫 プラス戦略勝ちですね。ほぼ試合を通してリードしていた米代表を後半に捉えて逆転勝ち。最終スコアはチリ 31−29 米代表。2試合合計で52-51でチリが米州代表2枠目として2023年ラグビーW杯フランス大会に進出決定です。これで米州からはウルグアイとチリと南米勢がW杯へ。チリはW杯初登場決定。米代表は11月の世界最終予選で最後のチャンスに賭けることになりました。

ホームの米代表がリードを守りきれなかったのは直接的には後半にオープンフィールドでチリ側のスピードと接点での強さに負けたから。チリ側は体格で劣りながらも気迫で個々の接点でフィールドをゲインしていきました。そしてそれを可能にしたのはチリ側の戦術的な選手マネジメントもあったでしょう。

米代表は先週の@チリでの試合から先発メンバーを換えたのは2名のみ。チリは7人代えてきた。この意味するところは高地デンバー郊外での試合で終盤の息切れを避けるために主力メンバーを後半まで温存して後半スパートを狙ったということです。そうであれば米代表は前半からリードをつける必要があったのですが、瞬間最大19点リードしたものの、前半終了直前のチリのトライもあって差がつききらない。 

29−28米代表リードで迎えた終盤残り10分強。米代表が第1戦を1点リードで終えているので合計で米代表2点リードの場面。チリは大事なペナルティキックのチャンスをミスして逆転に失敗。
対する米代表もダイレクトタッチを連発するなど凡ミスもありチャンスを広げられない。

73分に米ボールのスクラムをチリが押し勝ちして反則でポジションを奪ったのがこの一戦の最大のハイライトでしょう。ここからのキックが決まって31−29チリが逆転この試合初のリード。2戦合計でもチリ1点リード。
その後も5分を切ってから米代表ボールのラックでチリはボールを奪取するなど気迫がこもったプレーが続く。残り3分の段階でチリ陣内でのラックでの反則のコールが当初チリ側の犯した反則と判定されたのが、ビデオ判定で覆って米代表の反則となったところでほぼ米代表の命運は尽きました。

戦前にはチリ側の酸素の薄い高地での試合での息切れの可能性を指摘しておいたのですが、結果からみればホームの米代表の方の運動量が落ちて競り負けしたと言えるように思います。気温も今日は高かった中での逆転勝ち。息切れを避けるべく選手マネジメントに成功したチリコーチ陣の判断も良かったですが、それにこたえた選手たちの気迫が素晴らしかったですね。ラグビーの世界に南米という新たな血が導入されることは喜ばしいことだと思います。W杯本戦でどれだけやれるかはまた別の話ではありますが。

この日の動員は4000人満員。さすがに以前の試合の倍入っていたのは良かったですが、チリの応援団もけっこう入っていました。今日のチリのアウェイでの選手の気迫、第1戦での19,000人というチリ地元ファンのファンの集まりぶり。フィールド上でもスタンドでも急速にチリがアメリカラグビーを追い抜こうとしているのか。


米代表の戦術的なことを書くと、後半序盤の追加点となった右斜行するドライビングモールを押しながら、最初から狙っていた大型2番がカウンターで左方向単騎特攻トライをとったところなんかは、最初から決めていたセットプレー。こういうのが得意っていうのはとてもアメリカ人っぽいかなーという感じですね。他方オープンフィールドや密集からのリサイクルには工夫の足りない面が目立ったようにも思います。フライハーフからの人数をとばしての展開もうまく決まらない。
点差が競り合いのまま推移したので試合としてはおもしろかったですが、技術的には見るべきものが少ない試合でもあったように思います。

米代表が回ることになった11月の世界最終予選の相手はケニアとポルトガルが確定。4カ国目はトンガと香港の敗者。4カ国での総当りでボーナス点も絡んで勝者1カ国を決めます。さすがにこれは勝ってくれるんじゃないかと思いたいです。世界最終予選に勝った場合は本戦ではC組に入ることになりました。ウェールズ、オーストラリア、フィジー、ジョージアと同組となります。