つい先日知りました。米ラグビー協会が2027年および2031年に開催が予定される男子15人制ラグビーのW杯のホスト国として立候補していました。さらにこの立候補では2029年の女子のラグビーW杯開催の立候補も込みとか。

アメリカではラグビーは極マイナーな種目なので一般のスポーツニュースで取り上げられることは稀です。それもあって良いことも悪いこともめったにラグビーの話題を目にすることはありません。私が最後に米国ラグビー協会関係で知っていた事件は2020年の3月に自己破産を宣言したことです。パンデミックでアメリカスポーツ界が完全停止した時期の初期にも当たります。
当時のイメージではまだアメリカ経済・アメスポ業界が完全停止になる前のタイミングでさっさと破産を宣言したので、もちろんパンデミックの影響も皆無ではないにせよ財政状況が悪かったのはその前からずっとだったのだろうなという風に捉えていました。

そんな状態だったことからまさかラグビー協会がW杯の開催に立候補しているとは思いもせず。次期W杯フランス大会がもう来年に迫っていて、その次のホスト国は決まったのかなと調べていたところ、2021年6月の時点でアメリカが立候補していたことを知りました。現時点で残っている2027年大会の立候補国はアメリカの他はオーストラリアのみ。

米国は2026年にサッカーのW杯をカナダ・メキシコとの北米3カ国でのホスト国になることは決定済み。全米各地に存在するNFLスタジアムを利用することが決まっています。ラグビーW杯誘致も同様にNFLスタジアムのインフラを使うことが想定されていますが、具体的な会場などの具体的なプランは決まっていない模様。

ラグビー協会は2020年3月に破産して、15ヶ月後の2021年6月にはW杯誘致の立候補。破産なんてその時点の負債をちゃらにするだけの手続き、再出発するための手段って感じでしょうか。破産しても大胆に1年強後には次の大プロジェクトに進んじゃうんですね。この辺のビジネスセンスは計り知れないところがあります。本当にやれるのか。協会の破産の話題を以前に書いたときはとても誘致には動けないだろうと書いたのですが、大外れ。動けるんですね。そして破産管財人もそういう積極策を許すものなんですね。


2027年というのは2026年のサッカーW杯北米大会の翌年となります。さらに2028年にはLos Angelesでの五輪開催も決まっている。もし2027年のラグビーW杯が実現するとサッカー、ラグビー、五輪競技と非アメスポな海外依存なイベントを毎年連発することになります。
インフラ面ではサッカーW杯が使うのと同じ豪華なNFLスタジアムを使用できるでしょうし、NFLの巨大スタジアムでは過剰となるマイナー国同士のグループリーグの試合にはサッカーMLSの収容2万人程度の真新しいスタジアムのインフラも全米各地に配置されており、新たにインフラ投資をしなくても良いという意味ではラグビーW杯を迅速に開催できる環境はあると言えます。やれるやれないを言ったら確かにアメリカ開催は可能なのでしょう。

しかしながらサッカーW杯の翌年にラグビーW杯をやって一般の興味は惹けるもんなのでしょうか。サッカーもアメリカではメジャーではないですが、それでもラグビーとは段違いに上。またサッカーならその競技性から米国代表が弱くてもごまかしも効く。そんなに弱くないかのように振る舞える余地はありますが、15人制ラグビーはもっと残酷なスコアを米代表に突きつける可能性が高いスポーツです。実際昨年2021年10月の親善試合対ニュージーランド戦では14-104で惨敗。観客動員もパンデミック下で海外からの集客ができなかったせいか4万人に届かず苦戦。現在の環境下ではラグビーが4万人も集められたという評価の方が良いのか。そのもう一つ前の親善試合対アイルランド戦はアウェイで10-71。こういう点差の戦績のアメリカが2027年=わずか5年後にホスト国になってアメリカ国内に顔向けができるような成績って残せるものなんでしょうか。

日本が2019年のラグビーW杯開催権を獲得したときにも大いに悲観論は出たはず。ただ日本代表は自国開催の一つ前の2015年大会でのW杯史上最大のアップセット南ア撃破をやってのけて事態を大きく変えてます。アメリカが日本の大逆転大会ホスト成功への過程を真似るとすれば、既に来年に迫っている2023年のフランス大会で米代表はなにごとかを成し遂げないといけないわけです。

しかし現時点ではまだ米代表は2023年大会への出場を確定できていません。ウルグアイとの米州予選に敗れて、2022年7月にチリとH&Aでの試合で米州2カ国目としての本戦出場を目指す段階にあります。もしチリに敗戦した場合は11月の世界最終予選(4カ国で1枠)へ回るというルートになってます。米代表が2023年フランス大会出場を逃すようだと2027年の誘致はかなり苦しくなるのか。そうなると2031年ですかね。また長年米州からW杯へ連続出場してきた隣国カナダは2023年大会予選で既に敗退済みです。