ツアー型男子ラクロスのプロリーグPremier Lacrosse League = PLLの決勝戦が日曜日に行われました。今季がPLLにとっては創設3年目のシーズン。過去2年連続でチャンピオンだったWhipsnakesを破ってChaosが初優勝しています。
ツアー型で所属8チームはニックネームはあってもアメスポ標準の「都市名+ニックネーム」という名前はない形態です。
場所はサッカーMLSのDC Unitedの本拠地Audi Fieldで。観客数は公式サイトを見ても発表がないようですが目測で3,000人ぐらいでしょうか(スタジアム収容20,000)。放送はNBC地上波と同系列のストリーミングPeacockで。NFLの裏番組なので見ている人はスポーツの好みがかなりニッチな方であろうと推測できます。試合開始時刻は東部時間正午で1時間NFLのキックオフより早いのが僅かな工夫。

試合はまずまずの好試合。PLLについては2年前の創設時に意図的に接戦を演出したという疑惑を当ブログ(コメント欄でですが)では指摘したことがあります。「試合をただやるのを見ろ」というのが現在成立するビジネスと言えるかどうかという点と、スポーツの純粋性というところを考えると一方的に批判はできないものの、危ういものだったなというのが当時の感想でした。
3年目の今季の決勝戦はChaosが抜け出して14−9で快勝したので、意図的に接戦を演出したプロレス的疑惑は存在しなかったのですが、もう一つ別の危ういものもありました。

つい先月触れたのですが実はPLLは積極的にスポーツ賭博との関わりを持っています。試合のスコアの画面のところにO/Uの賭けの数字が常に表示されています。この決勝戦だと23.5でした。Over/Underという賭けは両軍の得点の合計が設定数値の上になるか下になるかに賭ける各スポーツでよくあるスポーツ賭博ですが、これをPLLは試合の画面内に表示するという意味で積極的にエンゲージしている。

で。14-9が最終スコアで優勝の行方は決した最終盤戦にも追うWhipsnakesが果敢にゴールアタック。 両軍得点合計はこの時点で23。この最後の攻防は試合や優勝の行方にはもう無意味ですけれど、なんとO/Uで賭けていた人にとってはこの場面って手に汗握る盛り上がる瞬間ってことなんですよね。このまま決着ならアンダー、ラストゴールが入ればオーバーになるので。
選手たちがそれを意識していたかどうかは知る由もないですが、なにせまだ遠くない過去に得点調整をした疑惑の過去(少なくとも私の目では)があるPLLだけに、このギリギリになってこの熱の入った攻防はどうなんだよ、選手たちはわかっていてやってるのか?と変にハラハラしてしまいました。
O/Uのラインさえ知らなければ気にもならない攻防が、なにせ画面中央にデカデカと出てるので。


さてそれはおいておいて、試合のハーフタイムにPLLの創始者であるPaul RabilがPLLの展望などを語って登場していました。決勝やオールスター戦に団体のトップがTVに登場して総括質疑のようなことをするのはアメスポではおなじみのシーンです。Paulは選手として今季を最後に引退することを発表してます。

印象に残ったのはPaul Rabilがラクロス界のTony Hawkになって全米の公園にラクロスゴールを建てたいんだという話です。
Tony Hawkというのはスケートボード界のレジェンド、というかX Sportsに興味のない人が名前を知っているほぼ唯一の選手です。選手としては1980年代から90年代にかけての選手ですが、その後もビデオゲームのタイトル名になったり、現在2020-21年になってもTVコマーシャルに出ていたりというスケートボード界の顔として30年以上活躍している方ですね。
で、Tony Hawkがその顔となって全米の地方自治体に大量のスケートパークが建造されていきました。ちょうど私がアメリカに住み始めてからの変化でしたので、あーこんな小さな街でもスケートパークを作るんだ、へー、というようなのを何度も見かけたものです。あれが全米津々浦々に展開されていったのがTony Hawkの功績だったと。で、Paul Rabilはそれと同じことをラクロス界でやりたいと言っているのです。

野球のバックネットとダイヤモンド、サッカーゴール、テニスコートなどが郊外の公園に整備されているのはアメリカの郊外でのおなじみの風景でしょう。街中でも郊外でもバスケットボールゴールが設置されているのもまたおなじみのシーンです。
それに加えてスケートパークが(多くの場合警察署の隣とか)市街地に整備されているのもまたおなじみの風景になったと言えそうです。Paulはそれをラクロスでやりたいと言ってるわけです。野良ラクロスゴールをあちこちに建てて、ふと気が向いたときに選手がやってきて力いっぱいシュートする姿が全米各地で見られるようにしたいってわけですね。良い目標なんじゃないでしょうか。発想が健全だし、確かに効果ありそうに思います。ラクロスってキャッチボールする相手とか、壁打ちはできてもなかなか力いっぱいシュートををしまくる場というのは得難い面はたしかにありそうなので。土地は余ってる場合の多いアメリカなので、設置コストも知れていそうですから割とうまくいくのかもです。