NHLがSan Jose Sharksの選手の負けベット疑惑を調査すると発表しています。Sharks所属のEvander Kaneの妻がSNSで告発したというのが疑惑の発端。NHL選手歴12年目のベテラン29歳のLW。過去4シーズンはSharks所属。人種は黒人、国籍はカナダ。直近2020-21シーズンでは49ポイント、Sharksでのポイントリーダーです。

妻だと言う方がツイッターで、Kaneが所属チームの負けに賭けた上で実際の出場試合で意図的に敗戦しようとした、と告発。NHLコミッショナーのGray Bettmanがどう処理するのかしら?とNHLの対応を促しています。
こういう手段に出たのはきっと夫婦間のトラブルがこじれてのことと推測されます。夫婦喧嘩は犬も食わないと言いますが、ただ事がなかなかに重要な問題を含むのでNHLとしても対応を取らざるを得ないのでしょう。NHLが調査をすると公言しています。


スポーツ賭博の合法化は全米で順次進んでいます。オンライン化・スマホ対応で誰もが瞬時に参加できるものとなっています。その昔、Pete Roseが野球賭博でMLBから追放された頃のように賭博自体の合法性からして怪しいというのとは事態は異なります。

Pete RoseのときはRose自身はCincinnati Redsの監督。私の認識ではRoseがCincinnatiの敗戦に賭けたことは証明されていないながら、MLBの試合に賭けたことまでは追跡できたのでそれで疑惑は十分となり永久追放処分となったと理解しています。

今は賭けるのも簡単ですが、もしKaneが実名でアカウントを開いて賭けていたとしたら、いつどんな賭けをしていたかの詳細情報は胴元側のサーバーに記録は残っていることが推測できます。適正な手続きを経て開示命令を裁判所から得ることができれば胴元側は情報開示することになるでしょう。
偽名で賭けをしていたとなると適正手続きと認められるまでに困難は生じますが、その場合Kaneは別の連邦犯罪を犯していることにもなりかねず事が大きくなります。
米国ではSocial Security Numberが日本で言うところの国民背番号制として定着。Kaneはカナダ人ですが米国内で合法的に労働しているので同番号を持っているはずです。

私の知る限り近年アメスポメジャーで実名で八百長が疑われて調査を受けた例は記憶がないです。NHLの調査結果がどうなるのかわからないですが、このケースは選手の家族というインサイダーからの告発がきっかけとなっているということでたぶんレアケースに属する事件になるのではないかと想像します。実際にNHLが調査に入る前にKane自身なり代理人なりが妻にコンタクトして火消しを図ってる可能性もありますが、もし夫婦間が既に修復不能レベルでこじれている場合は妻が全面的にNHLの調査に協力することで調査が進む可能性もまたありそうです。
ただこういう事情で疑惑が浮上するのは稀なのではないか。多くの場合はそうはならない、と思えます。

スポーツ賭博の敷居が限りなく低くなった現在、八百長を発見するのは困難な作業に思えます。選手や審判本人のアカウントからならともかく、妻だ家族だ友人だのアカウントを使われたら発見することはどんどん難しくなる。犯罪性の証明も困難となるのは確実です。

それでももうスポーツ賭博が止まることはほとんど期待できない。メジャースポーツスポーツだけでなく、マイナースポーツでさえ賭けの対象になっていたりもします。
例としてはラクロスの新興プロのPLLが試合の放送中に、両チームの得点とともに賭けのオッズを画面に表示しています。こんなマイナープロスポーツが積極的にスポーツ賭博を使って人気の足しにしようとしているのかと驚きました。実際に賭けている人がどれほどいるのか。

メジャースポーツとなれば賭けの参加者の数も多く胴元側のデータに自由にアクセスできたとしても捜査側が不正を見つけ出せる可能性はほとんどないように思えます。スポーツ賭博の公正さを保つことはなかなかに難しい。となるとあとは厳罰主義で心理的な圧迫を加えるしかなくなることが想像できます。
スポーツ賭博新時代の最初の八百長摘発対象になった場合のKaneの処分は相当に厳しいものになるかもしれません。