2020年に異例のスケジュールのシーズンだったり空白の1年だったりした各種スポーツがパンデミックから抜け出して、活動を再開しています。15人制ラグビーの男子米代表が1年半ぶりに活動を再開、欧州遠征で先週イングランド代表と、今日アイルランド代表と対戦しています。これが米代表にとっては2019年の日本開催のW杯に出場して以来の試合です。会場はAviva Stadium。Notre Dameのフットボールチームなどが過去公式戦を行ったこともある会場です。キャパ5万人超のところに8000人に限定して観客を入れての試合です。

先週の対イングランド戦は29-43で敗戦。いま英国はBritish & Ireland Lions(英4国合同代表チーム)が南アツアー中なので、たぶん米代表と対戦したイングランド代表のメンバーはかなり格落ちのメンバーになっているのだと思うんですが、そのイングランドに完敗。
欧州遠征第2戦となる対アイルランド戦(こちらもLionsに選手を拠出しているはず)では良いところを見せてもらいたかったのですが、またも完敗となってます。71−10。一昔前の日本代表が強豪国にズタズタにされていた時代を彷彿とさせるスコアです。
試合内容も相変わらず。キック処理だとか、タッチライン際の攻撃で簡単に押し出されてターンオーバーとかの拙いミスが多い。キーとなるポジションの選手にボールが手に付かないプレーが続出するなど、10年前から成長がないなあという中身です。一時期、元NFL選手など素のアスリートとしての素養の高い人材がラグビーに挑戦するという流れがあったのですが結果的にはそれでモノになった選手がいない。育て方が悪い、元からラグビーをやってる選手側が受け入れに消極的だった、ラグビー競技をまったく知らない見たこともないアメリカ人選手ではいかに素材が良くてもラグビーに落とし込めなかったなど色々事情はあるんでしょうが、それにしても進歩がなさすぎる。

米代表ラグビーはセブンスの方では長足の進歩を見せてパンデミック前の2018−19シーズンではシーズン最終戦まで優勝を争うという大健闘を見せて東京五輪出場権も獲得、アメリカラグビーに光明をもたらしたのですが、これが15人制になると成長が見えない。以前は米代表と同じような強さだった日本代表が一気にTier 1国に勝てるチームへと変貌していったのと比較してはいけないのかもしれませんが、内容も結果も伴わない。10年前に比べて良くなったのは隣国カナダにはコンスタントに勝てるようになったぐらい。

以前も書きましたがラグビー米代表のタッチライン際で押し出される頻度の多さはきっとアメリカンフットボールのプレースタイルの悪影響だと思っているわけです。
キッキングゲームが弱点なのも米代表の特徴で、キックで攻撃にアクセントをつけることができない。米国内のプロ組織Major League Rugby(MLR)の試合でもほとんどキックパスは見かけないのでそれに対する守りやそれが行われる前の警戒心構えもないので、欧州のチームにキックパスを出されると虚を突かれ算を乱して後退することになります。

38−3となった後半戦には米代表側が相手頭部へのタックルでレッドカード退場。これも変わらないですね。これもヘルメット着用のアメリカンフットボールからの悪習でしょうか。フットボールの方でも近年は肩より上への接触で反則を積極的に取るようになってますが、それは主にヘルメット対ヘルメットの接触を罰しているのであってディフェンダーの手が首にかかるぐらいは見逃されがち。そしてそれをラグビーでやっちゃうと一発レッドカードの反則に近い行為になってしまうわけです。
人数が減った米代表はその後なすすべなく大敗という結果になってます。

その昔、日本代表が100点差でボロボロにされて負け続けた時期に日本ラグビーはその人気を恐ろしいまでの勢いで失いました。その前の時点では日本のラグビーは国立競技場を年に何度も満員にする人気があったので、元々マイナーなアメリカラグビーとは比較になりませんが、それでも米代表が71-10というスコアはアメリカ国内のラグビーの人気を高めていけるような結果ではないとは言えそうです。