1月13日から始まるNHLの新シーズンについての要項がさらに明らかになっています。先にキャンプ開始日、開幕日などについての発表があったことは書きました。
噂されていた通りの新しい4地区制による区割りも確定しています。レギュラーシーズン56試合を全部地区内同士での対戦で消化することも発表。NHLは31チームが所属し、北地区のみ7チーム所属、東、中、西各地区は8チーム所属。北地区はカナダ所在の7チームがきれいに収まり、これによってレギュラーシーズンは全チームが一度も米加国境を越えないままで消化することができることになっています。8チームの地区は各チームが8試合ずつ対戦。北地区は9度ないし10度。
正式発表になっていないと理解していますがプレーオフには各地区上位4チームが出場して、これも地区内同士で対戦していくことになるようなのでもしそうなると1シーズンに10度以上戦うカードなんてのも出てくることになります。

地区で完全に区切ってしまうのは2020年にMLBが実施して効果を挙げた方式です。MLBはシーズン開始後から何度か各地で感染が広がりはしましたが、後から見れば概ね感染拡大は抑止できたと言える結果を残せました。地区に対戦を限定することで防疫面でもスケジュール再調整の面でも感染の影響を限定的にできました。NHLの新たな区割りもそのメリットを目指すものでしょう。
試合スケジュールはまだ発表になっていませんが同じチームが連戦、場合によっては3連戦で対戦するというような試合消化方法も検討されていて、移動での感染を抑える効果も期待されているようです。野球では3連戦は標準的な試合消化方法ですが、ホッケーでとなると目新しいことになります。

その場合の副作用として、コンタクトスポーツであるホッケーで連戦をやると前の試合のいがみ合いが次戦に持ち込まれて選手が第2戦第3戦の開始早々から荒れた行為に出るのではというのが若干心配されるところです。プレーオフでは何試合も続けて同じチームが対戦しますが、プレーオフでは勝利が至上命題なので試合開始早々からラフプレーなんていうのはありませんが、これがレギュラーシーズンの試合だとその限りではないはず。
特に北地区はオールカナダ地区となるため例年以上に各チームがライバル感・敵視を持って対戦する試合が増えるはずで、熱いレギュラーシーズンが展開される可能性があります。
他方、感染で試合消化がスムーズに進まない場合には試合間隔が狭まり各チームが疲弊して試合がグダグダになりがちという事態もありえない話ではないですが、これはやってみないとわからない。チームが帯同できる選手の数を増やす可能性は高く(未決定)、主力選手をシーズン中に休場させる試合をつくるローテでの起用を模索するという実験的なシーズンになる可能性もあります。

オールカナダとなる北地区が作れたのはNHLにとってはラッキーだったです。Winnipeg Jetsが2011年にカナダに復帰(移動前はAtlanta)していたおかげで在カナダのチームが7チームあって独立の地区を構成できました。カナダは米国以上に防疫意識が高く、その結果MLBでは2020年シーズンにToronto Blue Jaysが国境をまたいだ移動ができず米国に移動。NBAでも新シーズンでToronot Raptorsがフロリダ州に移転しての新シーズンを戦うことになってます。カナダ政府が国境越えの移動に強い難色を示しているからです。

カナダ内で完結する北地区結成でカナダの国の政府の懸念は避けられたのですが、カナダ国内で大都市チーム(Toronto、Vancouver、Montreal)を擁する州政府はカナダ内での頻繁な移動に難色を示しており、北地区内の試合がそれぞれのホームアリーナを使用できるかはまだ不透明となってます。同じカナダでも孤立した地方都市であるWinnipegやEdmontonなどと北米有数の大都市であるTorontoでは防疫懸念で格差があるのは理解できるところです。
最悪の場合は昨シーズンNHLがプレーオフを2都市でバブル開催したのに似たハブ方式での試合消化をすることで州政府の規制を避けるというのも念頭とされます。詳細な防疫手順も政府、さらにNHLと選手会の間で取り決めが最終段階に入っているようです。
ここまで述べてきた通り、既に発表済みのこと、これから発表されることなどまだまだ流動的な部分はありますが、全体としては一旦協議のテーブルについたら手早く効率的に物事が発表されているようで、私の視点では好意的に見ることができます。

北地区の話を中心にしたのですが、他の地区割りでは実は新中地区が楽しみです。中地区に割り振られた8チームはCarolina Hurricanes, Chicago Blackhawks, Columbus Blue Jackets, Dallas Stars, Detroit Red Wings, Florida Panthers, Nashville Predators, Tampa Bay Lightningとなってます。2019-20シーズンのStanley Cup Finalを戦ったDallasとTampa Bayが同地区に配されたことに。今年の特殊なレギュラーシーズンの対戦方式のためDallas x TampaのStanley Cup Finalリマッチはそれぞれのホームで4試合が行われることが期待されます。
各地の州レベル・都市レベルの地方自治体が独自の判断で動く傾向の強い米国なのでどこのチームがホームアリーナで試合を開催できるのか、そしてそこに観客を入れられるのかは見通せないのですが、Dallasのテキサス州とTampa Bayのフロリダ州はこれまでスポーツイベント開催に積極的であったため、NHLシーズンでも同様の措置をとる可能性はあります。DallasなどはStanley Cup Final中にホームアリーナを開放、5000人規模でのアリーナでの応援を許していたほどですから、人数制限はあってもStarsがホームゲームを開催するなら観客ありになる可能性は高そうです。そうなればStanley Cup Finalリマッチとなる対Tampa Bay戦はかなりの盛り上がりも期待できるかもしれません。それもこれもその時期の感染情況次第なんですが。

他にも新中地区では元の地区ライバルだったDetroit Red WingsがBlackhawksと8試合で顔をあわせることになるのも楽しみです。Detroitが2013−14シーズンから西カンファレンスから東カンファレンスに移動したためNHL創設時からのライバルと言えるChicagoと顔をあわせる機会が激減していたのが、今年のこの変則シーズンの新区割りのおかげで復活。各地元で4試合、計8試合も対戦できる。パンデミックが終わってしまったらまた別カンファレンスに別れ別れになってしまう古い縁のRed WingsとBlackhawks。Blackhawksの方はチーム名変更の可能性もあるためRed Wings対Blackhawksとしては今季が最後のシーズンになってしまう可能性もゼロではない。100年以上の対戦の歴史を持つ両チームの最後に巡ってきた濃厚なシーズンになるかもなのです。レトロジャージなどふんだんに使った楽しく激しい試合の数々を期待したいところでもあります。