先週のNFLドラフトは比較的波乱の少ないドラフトでしたが、その中で一番波風が立った指名はGreen Bay Pakcersが1巡目全体26番目の指名権でQB Jordan Loveを指名したことでしょう。エースQB Aaron Rodgersは36歳ながら契約がまだ4年残ってる状態での後継QB指名と取りざたされ、遠くない将来のRodgersの放出が突然課題として浮上してきました。
ただの全体26番目の指名権を使ったのではなくトレードアップまでして獲りに行ったのですからPackersはぜひ欲しいと考えた指名であったはず。

Loveが言うには指名からほどなくRodgersから直接連絡が来て祝意を伝えられたとか。その辺は大人ですね。とりあえずはエースの座を譲る気もなければ実力で敵うはずもないとRodgersが思っていても不思議ではない。昨季もNFC優勝戦まで行ってSuper Bowlに1勝及ばなかっただけ、という言い方もできるチーム状態ですから。大きな穴のあるチームではないしRodgers本人も来季への強化を楽しみにしていたドラフトだったでしょう。
試合に出場しないであろう控えQBを1巡目で獲ったことで来季のチームの底上げという観点では足踏みした指名とRodgersからは見えたであろうとも言えます。

それよりもRodgersにとっての大問題は生涯Packersとしてキャリアを終えることに黄信号が灯ったことでしょう。
RodgersがPackersに入団してきたときに大エースだったBrett Favreが今日になって、RodgersはキャリアをPackersで終えられないだろう、と言わなくても良い、ふさがっていない傷をいじるようなことを発言しています。大方、マスコミがおもしろおかしくなるようにそういう質問をした結果なんでしょうが。
当時全国区で人気のあったFavreのバックアップとしてRodgersはドラフトで指名されてPacker入団。その後3年も待った後にスターターへ昇格。同時にFavreはPackersを退団してJets、Vikingsと渡ってキャリアを終えていますから、Rodgers、おまえも俺と同じ運命だ、と呪いをかけたようでもあります。

今回のRodgersとLoveの関係は、Rodgersが2005年にドラフト指名されたときのFavreの関係と似ているというのは当時のPackersを知ってるファンは皆思ったはず。FavreもRodgersも当然それは思ったはず。Rodgersが指名されたのは2005年の1巡目全体24位なのですから今回のLoveの26位指名とほど近い位置での指名です。Rodgersが現在36歳、Rodgersが指名された当時のFavreが35歳ですからそれも似ています。当時のFavreのNFLに占める人気と今のRodgersの知名度もそうかな。


Favreは2005年当時、Rodgersが1巡目指名を受けたのを不快と感じ、FavreとRodgersの関係は入団最初から冷え切っていて険悪だったという話もあります。個人的にはあまりその辺はよく覚えてないです。たぶんそういうリアルタイムの報道も少なかったのでしょう。Favreは有数のスターだったし、Rodgersは大学時代目立たないCalを好成績に導いたもののカレッジでスターだったかというといつもの西海岸バイアスで評価はそれほど高くなかった。

FavreがRodgersにしたようにRodgersはLoveを冷たくあしらうこともできたはずですが、そこは大人らしくそうはしなかったということですね。2005年とは時代が違って小うるさいSNSが津々浦々行き渡っている現在2020年においてはそれがたぶん正しい対応でしょう。Facebookが誕生したのが2004年、Twitterは2006年、Instagramは2010年です。2005年じゃあまだMySpaceの方がFacebookより優勢だったか、どっちも一般に認知されていなかったかという時代でしょう。Favreがいじわる舅みたいなことをしていたとしてもそれを細々マスメディアがつつくなんてことはなかった時代だったのでRodgersとFavreの関係はあまりファンに知られていなかったのかなと思えます。今だとその手の話題はすぐに漏れてよってたかってネタにされかねません。

いずれにせよRodgersは同じ状況を二度、一度目は新人の側で、今度はベテランの側で経験することに。Favreがそうだったように力で抑え込めればそれも良し、そうでないといまどきのファンは気が短くなっていますから2シーズンも経たないうちに新QBのお試し待望論が出てくることも想定しておくべきでしょう。どうもRodgersの契約は最短だと2021年シーズン後にはリリースできる契約なのもそのタイミングを目指して憶測を呼ぶ材料になるのでしょう。


一部には2020年シーズンがRodgersのGreen Bayでの最終年になるという先走った意見もあるようです。Loveはマイナー校Utah Stateの出身なのでカレッジフットボールファンでもよほどのカレッジフットボールファンであるか当地に地縁があるとかでないとLoveの試合を見たことがある人は少ないはず。Green Bayの地元のウィスコンシン州のフットボールファンではUtah Stateなんてマイナー校と気にもしていなかったはず。彼に限らずカレッジのQBがいきなり活躍できるほどNFLの世界は甘い世界ではなく、特にマイナーカンファレンスからだと味方敵ともにサイズ・スピードともNFLの選手とはレベルが異なるだけに早い段階でのLoveへの切替への期待と圧力はそれほど大きくないと想像できます。

昨季NFC優勝戦まで行ったPackersが2020年にいきなり失速大破するという予想はしにくい。今回Loveが加入した事情を受けてRodgersも気合の入った1年になるでしょうし、コロナ疫禍で2020年シーズンはチームの骨格を前年から保ったチームの方が強いはずなのでPackersはそこその成績は残すはず。来年2021年の冒頭に早くもLoveに切替という話にはならないと想像する方が良いですが、どこかでRodgersがケガであるとか、チームの成績不振が表面化したときには一気に情勢が変わる可能性はあります。

あとRodgersの近年の態度が悪かったからPackersの首脳の心象が悪かったという可能性はちょっとあるかも。勝てないときにうんざりしたような態度や表情をフィールド上や記者会見で見せる場面は割と多かった気がします。同じベテランフランチャイズQB、例えばDrew Breesだと若い周りの選手を立てた発言が多いですが、それと比較してRodgersはちょっとその面が弱かったという印象は私にもあります。もっと間近で見ているPackersの内部からはこのまま力が落ちてきたときのRodgersへの処遇やチームメイトの離反崩壊の可能性に危惧が高まっていた可能性はあるかもな、とLoveを指名した後から考えれば思い当たります。