MLB Los Angeles DodgersのJustin Turnerが延長戦を10イニングまでに限りその後はホームランダービーで決着をつけることを提案しています。Turnerによれば、NHLで5分間の延長戦の後にシュートアウトで決着をつけているののMLB版のアイデアであるとのこと。

なるほどと頷けるところもあります。Turnerがこれを言い出した理由のひとつはDodgersに有利だからでしょう。
Dodgersには昨年のホームランダービーで大激戦をやってのけたJoc Pederson(昨季37本塁打)がいるし、昨季47本塁打を飛ばしたNL MVP Cody Bellingerもいる。その前年のダービーでBryce Harperの引き立て役になったものの存在感があったMax Muncy(同35本)もいる。Turner自身も2019年は27本打ってるし、FAで獲得したMookie Bettsは移籍前の昨年29本塁打。つまりはDodgersは人材豊富で有利だからです。NHLのシュートアウトに倣って両チームが3人づつ出してホームランダービーをやるという提案なのも粒の揃っているDodgers有利でしょう。

身びいき提案だという部分を除いてもおもしろいと言えるところがあります。NHLのシュートアウトでの決着も元々は反対がありました。ホッケーの本分以外の部分で勝負をつけているという邪道批判ですね。でもやってみたら引分よりはずっと良いということで定着しています。
野球の決着をホームランダービーでという案は当然ながら邪道批判を受けることになるでしょう。実際邪道でしょう。アメスポの中で野球が一番伝統派ファンが多いと一般に考えられているしこの案は強い反対を受けて実現しにくいことでしょう。

但しです。今年に限ってはMLBは例年通りの延長戦を行えない、行うべきではないではないか、という課題があります。コロナ疫禍でMLBがいったいいつ開幕できるのかわからないシーズンです。
もし7月上旬独立記念日に開幕できたととしても3ヶ月90試合程度のレギュラーシーズンとなります。たぶんスケジュールは詰め詰めのほとんど休みなしでのシーズンとなることでしょう。ダブルヘッダーも多くなると予想されています。そんなシーズンで例年のごとく延長13回だ15回だなんてことをしている余裕があるのか。ブルペンの消費は限定的にしないと今年の短縮凝縮シーズンは戦いきれません。この特殊事情があるので邪道でもなんでも延長戦を限定的にする制度を急遽導入すべきではないのか、というのは意味のある議論でしょう。そして議論するならば早急に議論すべきです。
今回の新提案のホームランダービー決着である必要はないです。既に国際大会で採用があったタイブレーカー制でも良いでしょう。でもなにかしないままで休みもない短期決戦のシーズンに突入して良いのかな、そういう無策を伝統という名で許して良いのかなと思えます。


なおNHLとの比較でいえば、NHLはシュートアウト決着に飽き足らず5分間の延長戦部分を3人対3人に変更してこれもまたヒット企画となっています。これもまた伝統派からは邪道批判を浴びたアイデアでしたがやってみたらスピード感があってとても楽しい企画となり定着しています。

アメスポの良さ(アメリカ社会全体の良さにも通じますが)はおもしろさを追求していく、伝統に縛られない発想にもあると思います。ホッケーの場合、国際式ルールとかけ離れない範囲内でという縛りがありながら商品である試合をより良くしていっているNHLの舵取りは褒められて良いと思います。
野球はホッケーほど国際式ルール準拠を意識する必要はなく、MLBがこうだと決めればそれで通る世界です。それこそホームランダービー決着だってかまわない。タイブレーカー方式も関係者やファンの保守的傾向で現実的にMLBで採用されそうなところまで議論が進んだことはないかと理解してます。
が、今季はある意味チャンスなのかもしれないのです。邪道であろうとなんであろうととにかく延々続く延長戦はやれないという現実を踏まえて思い切って導入するには絶好のタイミングなんじゃないでしょうか。
MLBコミッショナーを私は信頼していないのであまり期待できないんですけど、せっかくの機会なので考えて欲しいなあ、今回のTurner提案を期に伝統的ファンという方々にも少し考えて欲しいなあと思ったりします。