Gallupというのはアメリカの市場調査会社の老舗です。手がける分野は広く言ってみればなんでも調べる。その一ジャンルとしてスポーツ関連でも長年定点観測の貴重なデータを集収公開している会社でもあります。データの信頼性は高いです。
アメスポにおける各ジャンルの人気の推移データとしても多く引用されるので日本のアメスポファンもご覧になったことがある方は多いかと思います。最もよく引用されるのは「What is your favorite sport to watch?」という一択質問の結果でしょう。長年同じ質問形態を保っているのでその経年推移はアメスポの人気の推移を映し出す良い資料となってます。参考までにコピペすると以下のようになってます。
小数点以下四捨五入の%。
この資料単一でも様々なことが言えます。サッカーに関してだと上昇トレンドになったのは数年内のことでほんの10年以上前だとフィギュアスケート辺りと上だ下だを争わなくてはいけない時代があったこととか、NASCARを含むモータースポーツはその人気のピークを10年以上前に打ったであろうこととか、野球がなぜか2013年調査でピークになっていることなどが目立つところでしょう。2013年に野球になんかあったっけ?という感じですが。
ただしここで留意すべきなのはこの資料が一択の回答を元にしていることです。アメスポではまったくもって当然のことですがフットボールファンだってMarch Madnessは当然見るわけです。大いに熱狂もするでしょう。でもそういう数字はこの調査では拾われないわけです。私個人で言えばそうとうにいろいろなジャンルを楽しみますが、もし一択で回答を求められたら自分のfavorite sportsはカレッジフットボールと答えるでしょう。でも例えばNBAも相当の試合数を毎シーズン見ます。たぶん大半のNBAファンよりも試合数は見るでしょう。でもそういうのは数字に出ない調査なんですね。
定点観測の大きな価値があるのでこの調査は今後も同じ内容で続けられるべきものですが、各ジャンルの人気の中身がどうなっているのかは別の分析が必要になります。この資料だけで結論づけるのは無理がある面があるのです。
Gallupはちゃんと他の調査も様々にしてるんですね。例えば「For each of the following, please say whether you are a fan of that sport or not.」という設問でここにあります。それぞれのスポーツについて「あなたはファンですか、非ファンですか」を問うているものです。
ざっと結果を列記すると(ファン/非ファンの%)
プロ野球 47/48、プロフットボール 54/44、プロバスケ 34/60、プロホッケー 24/72、カレッジフットボール 52/44、カレッジバスケットボール 34/62、モータースポーツ 27/68、プロサッカー 24/71、フィギュアスケート 34/58、プロレス 8/89 などとなってます。
どうでしょう。最初の資料とはかなり違うものが見えてくる数字が並んでいると言えるでしょう。最も頻繁に引用されるGallupの資料だとサッカーが野球に肉薄しているかのように見えますが、実質複数回答となる設問のこの調査だとサッカーは狭いファン層、野球はずっと幅広いファン層を持っていることが伺えます。同じく野球との比較で野球の人気を近年になって抜いたと認識されることの多いプロバスケNBAですが、実はファン層は意外と狭い(対野球比)ということも示されてます。非ファンだと回答する人が野球やフットボールと比較してかなり多いです。最初の資料だけだとアメスポでダントツ一強のように見えるプロフットボール(事実上=NFL)でも人口の44%は興味がないという結果になってます。またフットボールはプロもカレッジもほとんど同じファンの割合です。これが一択になるとNFLの方が圧倒的に一強の人気、のように見えてしまうんですけどね。そういうわけで一択の調査結果だけではわからないことが見えてきます。
サッカーについて見れば自身をサッカーファンと自覚する人は24%。ほぼ国民の4人に1人。けっこう多いのではないでしょうか。これはホッケーファンとほぼ同じ、モータースポーツやフィギュアスケートを下回る。熱心なサッカーファンがサッカー人気を牽引する裾野はかなり狭いジャンルと言え、サッカーよりも狭いファン層で、それにも関わらず盛り上がっているというとプロレスぐらいしかないということになります。
ホッケーとサッカーの比較で言うとファン・非ファン比率がほぼ同じなのに、一択の方の調査結果だとサッカーの方がずっと大きい数字になっている。これはホッケーファンは他のアメスポメジャーファンと重なりが大きくて、一択で回答を迫られたときにかなりの人がホッケー以外を回答している可能性が示唆されます。逆にサッカーファンはサッカーへの忠誠心が強いという言い方も可能でしょう。この辺りは私の体感とも合う調査結果に思えます。サッカーファンは一神教型、ホッケーファンは多神教の一部を構成という感じでしょうか。
サッカーのファン層が伝統的アメスポメジャーよりは裾野が狭めとは言えホッケーと同等なら立派なもののはずですが、先日論じた通りサッカーの熱狂的なファンを多く含むヒスパニック人口がアメリカ全体の17%を占めているという事実と複合的に考えるとちょっと問題もあります。ヒスパニックの全員がサッカーファンとまで極端な仮定はすべきではないでしょうが、それでも24%のサッカーファンと回答した人たちのうちのかなりの部分をヒスパニックが占めている可能性はあります。
もしそうだとすると非ヒスパニックのサッカーファンの割合はここでの見かけの24%よりかなり小さい可能性が高い。前回Our Soccer編で取り上げた通りMLSはこの狭いファン層をきっちり動員したりTV視聴につなげたりしないと数字が上がっていかないことになります。動員の方ではいくつかの新市場でうまく行ってると言えるMLSですが、TVの方では苦戦が続いてますね。
中期的にはこの裾野の狭さをどう解消していけるかが課題になります。
アメスポにおける各ジャンルの人気の推移データとしても多く引用されるので日本のアメスポファンもご覧になったことがある方は多いかと思います。最もよく引用されるのは「What is your favorite sport to watch?」という一択質問の結果でしょう。長年同じ質問形態を保っているのでその経年推移はアメスポの人気の推移を映し出す良い資料となってます。参考までにコピペすると以下のようになってます。
2017 | 2013 | 2008 | 2007 | 2006 | 2005 | 2004 | |
---|---|---|---|---|---|---|---|
% | % | % | % | % | % | % | |
Football | 37 | 39 | 41 | 43 | 43 | 34 | 37 |
Basketball | 11 | 12 | 9 | 11 | 12 | 12 | 13 |
Baseball | 9 | 14 | 10 | 13 | 11 | 12 | 10 |
Soccer | 7 | 4 | 3 | 2 | 2 | 3 | 2 |
Ice hockey | 4 | 3 | 4 | 4 | 2 | 4 | 3 |
Auto racing | 2 | 2 | 3 | 3 | 4 | 5 | 5 |
Tennis | 2 | 3 | 1 | 1 | 1 | 3 | 2 |
Golf | 1 | 2 | 2 | 2 | 3 | 2 | 2 |
Volleyball | 1 | * | 1 | * | * | 1 | -- |
Boxing | 1 | 1 | 2 | 1 | 2 | 1 | 1 |
Gymnastics | 1 | * | 1 | 1 | 1 | * | 1 |
Motocross | 1 | * | * | * | * | * | 1 |
Ice/Figure skating | 1 | 1 | 1 | 2 | 3 | 3 | 4 |
Rodeo | 1 | * | * | * | * | 1 | 1 |
小数点以下四捨五入の%。
この資料単一でも様々なことが言えます。サッカーに関してだと上昇トレンドになったのは数年内のことでほんの10年以上前だとフィギュアスケート辺りと上だ下だを争わなくてはいけない時代があったこととか、NASCARを含むモータースポーツはその人気のピークを10年以上前に打ったであろうこととか、野球がなぜか2013年調査でピークになっていることなどが目立つところでしょう。2013年に野球になんかあったっけ?という感じですが。
ただしここで留意すべきなのはこの資料が一択の回答を元にしていることです。アメスポではまったくもって当然のことですがフットボールファンだってMarch Madnessは当然見るわけです。大いに熱狂もするでしょう。でもそういう数字はこの調査では拾われないわけです。私個人で言えばそうとうにいろいろなジャンルを楽しみますが、もし一択で回答を求められたら自分のfavorite sportsはカレッジフットボールと答えるでしょう。でも例えばNBAも相当の試合数を毎シーズン見ます。たぶん大半のNBAファンよりも試合数は見るでしょう。でもそういうのは数字に出ない調査なんですね。
定点観測の大きな価値があるのでこの調査は今後も同じ内容で続けられるべきものですが、各ジャンルの人気の中身がどうなっているのかは別の分析が必要になります。この資料だけで結論づけるのは無理がある面があるのです。
Gallupはちゃんと他の調査も様々にしてるんですね。例えば「For each of the following, please say whether you are a fan of that sport or not.」という設問でここにあります。それぞれのスポーツについて「あなたはファンですか、非ファンですか」を問うているものです。
ざっと結果を列記すると(ファン/非ファンの%)
プロ野球 47/48、プロフットボール 54/44、プロバスケ 34/60、プロホッケー 24/72、カレッジフットボール 52/44、カレッジバスケットボール 34/62、モータースポーツ 27/68、プロサッカー 24/71、フィギュアスケート 34/58、プロレス 8/89 などとなってます。
どうでしょう。最初の資料とはかなり違うものが見えてくる数字が並んでいると言えるでしょう。最も頻繁に引用されるGallupの資料だとサッカーが野球に肉薄しているかのように見えますが、実質複数回答となる設問のこの調査だとサッカーは狭いファン層、野球はずっと幅広いファン層を持っていることが伺えます。同じく野球との比較で野球の人気を近年になって抜いたと認識されることの多いプロバスケNBAですが、実はファン層は意外と狭い(対野球比)ということも示されてます。非ファンだと回答する人が野球やフットボールと比較してかなり多いです。最初の資料だけだとアメスポでダントツ一強のように見えるプロフットボール(事実上=NFL)でも人口の44%は興味がないという結果になってます。またフットボールはプロもカレッジもほとんど同じファンの割合です。これが一択になるとNFLの方が圧倒的に一強の人気、のように見えてしまうんですけどね。そういうわけで一択の調査結果だけではわからないことが見えてきます。
サッカーについて見れば自身をサッカーファンと自覚する人は24%。ほぼ国民の4人に1人。けっこう多いのではないでしょうか。これはホッケーファンとほぼ同じ、モータースポーツやフィギュアスケートを下回る。熱心なサッカーファンがサッカー人気を牽引する裾野はかなり狭いジャンルと言え、サッカーよりも狭いファン層で、それにも関わらず盛り上がっているというとプロレスぐらいしかないということになります。
ホッケーとサッカーの比較で言うとファン・非ファン比率がほぼ同じなのに、一択の方の調査結果だとサッカーの方がずっと大きい数字になっている。これはホッケーファンは他のアメスポメジャーファンと重なりが大きくて、一択で回答を迫られたときにかなりの人がホッケー以外を回答している可能性が示唆されます。逆にサッカーファンはサッカーへの忠誠心が強いという言い方も可能でしょう。この辺りは私の体感とも合う調査結果に思えます。サッカーファンは一神教型、ホッケーファンは多神教の一部を構成という感じでしょうか。
サッカーのファン層が伝統的アメスポメジャーよりは裾野が狭めとは言えホッケーと同等なら立派なもののはずですが、先日論じた通りサッカーの熱狂的なファンを多く含むヒスパニック人口がアメリカ全体の17%を占めているという事実と複合的に考えるとちょっと問題もあります。ヒスパニックの全員がサッカーファンとまで極端な仮定はすべきではないでしょうが、それでも24%のサッカーファンと回答した人たちのうちのかなりの部分をヒスパニックが占めている可能性はあります。
もしそうだとすると非ヒスパニックのサッカーファンの割合はここでの見かけの24%よりかなり小さい可能性が高い。前回Our Soccer編で取り上げた通りMLSはこの狭いファン層をきっちり動員したりTV視聴につなげたりしないと数字が上がっていかないことになります。動員の方ではいくつかの新市場でうまく行ってると言えるMLSですが、TVの方では苦戦が続いてますね。
中期的にはこの裾野の狭さをどう解消していけるかが課題になります。
日本では近年フィギュアスケートの成績が上がり、テレビでの露出が多いですが、ファンの多くはあまりスポーツに馴染みのない女性などです。アメリカのファン層も同じような感じでしょうか。
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