この前の五輪の新競技採用の話の続きのような話になります。前回は「若い世代に人気」という実態のない殺し文句に煽られてIOCが妙な新競技をいくつも五輪種目に採用しているように見えるということを書きました。この前初めてテレビで見かけたクライミングもそうですが、これが人気視聴コンテンツになるのかなぁ、なわけないよなと呆れるところがあります。
そういえば同じく五輪の新しい種目であるサーフィンの大会の放送っていうのはかなり昔からときどきアメリカではやってました。それこそ20年以上前から。それがアメリカで大きな人気だったことは一度もありませんが、見たことはあります。多チャンネル化が進んで以降の最近では見た記憶なし。たぶん地元では人気のイベントなんでしょうが、あまりTV向きとは言い難かったように思われます。昨今はドローンやアクションカメラの進歩その他撮影方法が多彩になっているでしょうから味付け次第では昔とは比べ物にならないいい絵が撮れそうではありますが。
クライミングにせよサーフィンにせよBMXにせよ、やっている人は若い世代にいるのはわかりますが、視聴コンテンツとして世界のどこかで既に数字を出しているのかというとたぶんどこにも実績はないであろうところが共通点のように思われます。

近年の五輪の新採用スポーツで一気に人気競技になったと言えば冬季五輪のX Sports系競技でしょう。あれは五輪採用前に既にX Gamesという形でアメリカで人気イベント化していたのを五輪が取り入れたもの。有力選手もWinter X Gamesでお馴染みの選手たちでした。TVで見せるノウハウも蓄積されていた。それゆえ五輪競技化した後もあっさり人気プログラムに(少なくともアメリカでは)。プロツアーも既に成功形成されていたため4年に一度の五輪に頼る必要もなく選手たちも安心して競技に打ち込める経済環境になってました。冬季のX Sportsも「若い世代に人気」な種目ではありましたが、最近の夏季の実態のない諸々の競技とは違ってちゃんとTV番組としての実力が既にあって五輪種目になったからすぐに五輪でも人気種目になった、というように見えます。

さてそういうことを考えると昨日も触れたe-sportsの番組化視聴パッケージ化が着々と進んでいるのはe-sportsにとって良いことであろうと。そしてIOCが実態不明の「若い世代に人気」なスポーツに振り回されるぐらいならe-sportsを五輪種目化した方がよほどマシだろうなと思うのですがいかがなものでしょうか。Overwatch Leagueと、あとはSASUKE(アメリカでの番組名はNinja Warrior)類似な競技を五輪採用したら若い世代への五輪番組の浸透にはよほど良い、なんて思います。(後者はアメリカ五輪の守護神NBC系列が類似番組を制作中)

もちろんそんなことはできない、という理屈もわかります。e-sportsはスポーツじゃない、というところから始まって、その競技の性格上開発したゲーム会社一社に全権が集中するという問題がある。4年に一回の五輪というサイクルの中でゲームの陳腐化をどう考えるのかなど懸案は様々あるでしょう。ただIOCが視聴者の若返りを本当に望むのなら、わけのわからない「若い世代に人気」な競技よりはマシではなかろうか、と。

他方2028年ロス五輪へ向けて例えば北米産のラクロスの競技採用を目指す動きがある。または(アメリカン)フットボールの採用の可能性を模索する動きもあります。そういう動きはIOCが求める視聴者の若返りとはまったく別の動きなのでまた別途ということになります。ある意味逆行ですらありますね。競技種目の永年固定化よりも開催地元にあった競技を逐次採用というやり方もあるのかもしれません。