前項で触れたEnglish Premier Leagueのアメリカ市場での放映権契約の伸びというのは大変なものです。EPLとNBCが結んだ6年間で総額$800 millionから$1 billion圏内(公式発表なし)、単年で$133~167 million/年という大きな額になっています。なぜこんなに金額が伸びたのか。移民の多いアメリカ社会なので潜在的にサッカーへの需要が存在したという説明は可能ですが、ここ最近の金額の高騰ぶりは驚くべき金額に思えます。ちなみに国内サッカーMLSの方は複数系列と並行して契約していますがESPN系列とFOX系列合計で$75 million/年となっています。EPLの契約とMLSの契約金額を合計すると、第4のメジャースポーツであるホッケーNHLのNBCでの放映権料とほぼ同額まで来ているのです。
サッカーにはさらにUEFA CLもあるし他国のリーグもある。それらも踏まえればTVでの経済規模では遂にサッカーがホッケーに追いついてきたのかもと言える事態です。地方局の放映権(これは試合数の多いNHLの方がMLSを圧倒する)もあるし、NHL Center Iceの有料契約、実際のアリーナへの動員・高い客単価の売上などサッカーには手が出ないNHLの強みもまだまだ存在しますから一概にTV契約だけを取りだしてサッカーが追いついたというのは間違いでしょうが、それでもサッカー市場が現実的にNHL規模に届くところまで来たというのは確かなのでしょう。
さてそのアメリカのサッカー観戦市場でなぜEPLばかりがもて囃されるのかという疑問をお持ちの方はいらっしゃいませんでしょうか。アメリカの移民ルーツでいうとドイツ系やアイルランド系が英国系よりも多いのです。メキシコ系住民を中心にスペイン語話者も増えているしサッカーを知らないアメリカ人でも名前を聞いたことのある世界的なスーパースターの多いスペインリーグでも良いはずです。でもなぜかEPL一辺倒。イギリスとアメリカは英語を母国語とする二大国として政治でも経済でも共同戦線を張ることの多い特別な関係の二国関係ではあります。でもことルーツでは決して英国系は多くないのになぜずっとEPL一辺倒なのか。
でここで陰謀論を一発ぶってみたいと思います。表題の件。EPLがアメリカ市場での存在感を増した時期とNFLが英国での定期戦を打つようになった時期がほぼ同じという点を深読みしてみようというわけです。つまり米英両国政府が双方のスポーツエンタメ最強のEPLとNFLに相互の市場を開放することに同意していたとしたら、なぜアメリカ市場がEPL一辺倒になっているのかの説明にならないでしょうか。
NFLではつい最近になってやっと懸案だったLos AngelesのNFL再参入の道筋がつきました。LAへの市場再参入問題をほったらかして英国進出ばかりに注力していたNFLに対して「なぜロンドン?LAは?」という一般の疑問はかなりあったのに、明確な返答もないままNFLはロンドンゲームを推進。そこにはEPLの本格アメリカ進出と同時にイギリス市場が開放されたというタイミング的な要素があったからLAをほったらかしにしてもロンドンゲームに邁進していたのだ、というのが私の憶測なんですが、どうでしょうか。これならNFLの当時の優先順位のおかしさも説明が付きますし、EPLがなぜか圧倒的に優位な形でアメリカのサッカー市場伸張の恩恵を受けていることの説明にもなります。なんらかの見えない力がEPLを他の海外サッカーリーグを押しのけて好位置に据えたと読んでみたいのです。一方、NFLが英国サッカーの聖地であるWembley Stadiumをロンドンゲームで問題なく継続使用できているのも英国政府を通してEPLやFAと相互市場開放に同意する前に調整済みだったという想像も可能なわけです。
来季からはラグビーの聖地Twickenham StadiumもNFLの試合会場として加えられる予定なのは、相互市場開放が成功していることから、アメリカでも15人制ラグビーへの関心が高まるかもという期待とセットなのかも知れない。そうなるともし15人制ラグビーの定期放送が始まるときには現在人気の高いニュージーランドやフランスリーグやSuper Leagueではなく、英国のPremiershipがプッシュされたりする可能性もあるのかもと先読みしたくなります。またラグビーの件はいつか別途に。
Premier League ないしそれに冠スポンサーのBarclays をつける Barclays Plemier Leagueという表現はよく見ますし、日本では"イングランド"と形容詞にせず名詞のまま頭につける表現が一般的なので(これはまさしくジャパニーズイングリッシュかもしれませんが)、僭越ながらコメントさせていただきましたm(__)m
まぁ、頭に固有名詞を付けないで一般名詞的に代表させるのは、The Football Association のように大英帝国の一方的な自己中心意識なのかもしれませんが…