熱いコメントを集めるTebowネタを継続してみたいと思います。
Tebowがなぜあれほどに玄人筋にウケが悪いかというと投球メカニクスがセオリーを無視しているからというところに尽きます。フットワークが根本的に間違っている、ボールの持ち位置が悪い、リリースまでが遅いなどプロから見ると気になって仕方がない部分が多々あって言わずにはいられないものらしい。これはTebowが大学からハイズマン賞選手としてNFLドラフトにエントリーするときにもかなり言われたことです。その欠点を修正すべくドラフトに向けて個人コーチを雇って修正。プロ入り後もオフに直しても直しても尚、批判に晒されている。じゃその直す前のハイズマン賞獲ったカレッジの頃はどれだけ酷かったんだ?ということになるわけです。フォームがプロ的視点で見てどうしようもないぐらいダメでも獲れてしまうハイズマン賞。そのダメQBが率いて全米制覇二度(一度目はサブでしたが存在感はありました)してしまうカレッジフットボールはお遊びだとでも言うことになるんでしょうか?どうもそうとは思えないんです。メカニクスの問題があるとしても、それはパフォーマンス=試合結果から見てそれほどまでにそのメカニクスの問題は重要なのかどうか。
前回のTebowの記事へいただいたコメントで指摘されてなるほどなあと思った点がたくさんあったのですが、その一つとして野球でセイバーメトリクスという切り口が流行したおかげで伝統的な投手成績である勝利数を指標とすることを否定する考え方が力を増してきている、それと似たところがこのTebowへの評価にはあるのではないかという指摘がありました。投手の勝ち星は打線の援護など投手本人とは無関係な要素で積み上がるから投手の能力の指標としては不適当という見方ですね。確かに野球やフットボールのように攻守が切り分けられているスポーツでは勝ち負けとはそういう面があります。ですが勝利以上の価値が存在しない(という建前の)スポーツというメタ世界、特に勝敗に関わる比重の大きさから言って野球の先発投手、NFLのQBが勝利数が多いことを理由に評価されるのは大きくは間違ってはいないはずです(同じような勝利数の投手を同等と評価するというところまで言ってしまうと言い過ぎですが)。その上フットボールのQBは現代MLBの分業制投手リレーのようなものはなく、野球的に言えば先発完投をほぼ常に実践して勝利を得ているわけです。
もうひとつ毎度Tebowネタを語るときに気になる点として、なぜDenver Broncosの副社長でありかつてのDenverのヒーローQBであったJohn ElwayはあれほどTebowを嫌がったのかというのがあるのです。Elwayはその現役時代、数々の第4Qの逆転ドライブでその名を挙げた名QBです。Elwayは豪腕型でTebowはそうではない。ElwayはポケットパサーでありTebowはそうではない。プレースタイルでは共通項は少ないですが、勝負所でやたら強いという大きな共通項もありますよね。なのにElwayがその土壇場の場面で「持ってる」Tebowをあれほど嫌うのはどうも解せない点がありました。
もちろん背広組のトップの視点からすればTebowとAndrew Luck(現Inidianapolis Colts=Elwayの大学の後輩で本格派パサーであるLuckをBroncosがドラフトで獲りに行くとの観測が強かった)との比較、またはFAとして獲得できそうだとなったPeyton ManningとTebowの比較で見ればTebowでは絶対的に劣るという見方があっても良く、決して「嫌った」というわけではないのかもしれないですが、それでも自らも散々苦しい試合を最後に締めて名声を上げてきた過去を持つわりにはTebowの土壇場力を評価しないんだなあと、なにやら割り切れないものを感じていました。
Elwayご本人の弁によれば彼の現役時代の華々しい逆転勝ちの数々は当時のBroncos HC Dan Reevesの采配が悪くてすんなり勝てたはずの試合が逆転されたり追いつかれたりで何度もあんな場面に立たされることになったんだ、とのこと。それが本当かどうかはいまさら検証の方法もないですがElwayはそう公言したことがあるわけです。昨年のTebowの劇的な勝利の数々は私なんかから見ればElwayの現役当時の逆転劇と似通って感じるわけですが、そういう視点を持つElwayからすると同じに見えなかったのかもしません。Elway自身のときの接戦は「俺はちゃんとやってるのに、毎度終盤また点を取ってやらなくてはならない流れになったのを自分が決めた」のであって、Tebowの接戦は「ディフェンスが試合を作っているのに試合を決められず、やっと最後に決めた」というような。自分の接戦は良い接戦、あいつの接戦は悪い接戦。どうなんでしょうね。
再び話を野球に喩えていきます。フォームがセオリーに適っていないため評価に困った選手というとBoston Red Soxで活躍した岡島投手を思い出します。リリース前に顔が下を向いてしまう特異な投球フォームでもなぜかコントロールも良い。他にない投球フォームなだけに相手打者を困らせた面もあったのかRed Soxの優勝年にも大きな貢献して活躍をしましたね。
他にもIchiro選手がSeattle Marinersに来た初年度のキャンプでMarinersの打撃コーチは「打ち終わる前に走り出すのをやめさせようと思っている」と発言していたことがあります。Ichiro本人は打つ前には走り出してはいないですよと言って取り合わず、その後はご存じの通りの新人王・MVP・首位打者とこれ以上ないMLBでの初年度となり、当然ながらそれ以降誰もIchiroのフォームをいじろうとは言い出さなくなりました。
岡島やIchiroにはセオリー無視と見える特殊スタイルが許されて、なぜにTebowにはそれが許されないのかという点はどうでしょうか。結果が出ていないのならともかくTebowは勝利という結果を出し続けているわけですから。
http://www.nfljapan.com/column/41418.html