昨年のハイズマン賞最終候補だった元LSUのHoney Badger=Tyrann Mathieuが再びマリファナ所持容疑で逮捕されていますね。一緒にいた昨年までのチームメイト(現役選手はいない)たちと自宅アパートでふかしていたようです。今季のシーズン前にMathieuは「チームルール違反」を犯したとしてLSUフットボールチームから除名。公式には発表はなかったですがこれもマリファナ使用だったとされており、懲りずにまたやっていた、ということになるようです。選手としての能力としてはNFLでも十二分に通用することが見込まれる選手なので今季を棒に振っても来春のNFLドラフトで指名されることは確実と考えられていましたが、これだけ常習性が認められると相当に評価を落としそうです。
LSUを追われた後、Mathieuは自主的にリハビリ施設に入所したことを公表。それはつまり「ちゃんとリハビリしたからドラフトであんまり順位を落とさないでね!」というアピールであったはずですが、このリハビリ後の逮捕でまったくの無駄に。
先日コメント欄で少し展開させていただきましたがNFLドラフトでフィールド外での問題で指名順位を落とすことがしばしばあります。例に挙げたRandy Moss(現San Francisco 49ers)は薬物というよりは粗暴とされた性格的なものでしたが、マリファナ問題は広くアメリカ社会の問題であり根絶は不可能に近い。Mathieuの場合は一年間プレーしていないことや一連のマリファナへの染まりぶりからして順位は相当に下位まで落とされるんじゃないでしょうか。
NFLでマリファナというと思い浮かぶのはSaints, Dolphinsなどで活躍したRB Ricky Williams。マリファナが大好きでオフシーズンはマリファナ合法のオランダに入り浸り、NFLから薬物テストではねられ処罰を受けるとフットボールよりもマリファナの方がいいと早期引退までしてしまった選手。その後契約不履行その他のお金の事情からしぶしぶNFL復帰しましたが。
現在アメリカではカリフォルニア州など17州(DC含)ではすでに医療用に限ってマリファナが合法に処方されることになっており、同州在住の元ヒッピーの方たちなど大量のひとたちが関節炎の症状を訴えて合法でのマリファナ治療のお世話になっています。関節炎は本人の痛みの訴えを外部から検証できないのがミソです。さらに現状で全米六州でマリファナの合法化が政治のアジェンダに乗っておりこれらが通ると全50州の半数に迫る勢いになります。また十日後に迫った大統領選と同日にコロラド、オレゴン、ワシントンの各州では非医療・娯楽的理由でのマリファナの合法化の住民投票も行われます。各州が医療または娯楽での合法化を認めても連邦政府はこれを認めていないので完全な自由化からは遠いですが、地域の警察は連邦政府の指揮権限下にはなく、よって連邦政府が地域の細かいマリファナ使用を取り締まることは実質的にはできないという形になっています(連邦保安官を使えばできますが、人員が極限られる)。今回Mathieu他が捕まったルイジアナ州では医療用も含めて使用は禁止です。禁止と言っても微罪ですが(所持量による)。
他州で医療用合法で流通していれば転売を企てる者も当然に発生する。そもそもアメリカという広い国土で野生の大麻草を根絶することも不可能。現在六十代以上となった1960-70年代当時の若者の多くがマリファナ経験者という現実などもありマリファナ解禁の住民投票で解禁論が健闘してしまうようです。他方、私個人の知る限りで言うと90年代にはスポーツの観客席やコンサート会場でぷわーんと匂ってきたあの香りにそれらの場所で出くわすことはずっと減ったと思います。これは会場での煙草喫煙の禁止が進んで煙を上げている人がほとんどいなくなったのも要素と思いますが(昔は煙はあちこちから上がっていて会場整理員もいちいちチェックできなかった)、やっている人たちとそうでない人達が分化しているのかも、という感触を持っています。
マリファナ自体の是非については両側の議論は十分承知しています。入口理論、身体依存性が認められないなどなど。ただ今回のMathieuの件でもわかるように身体依存がなくてもやはりそこへ戻っていってしまうと言う意味での依存性は否定し難いものがあり、勤勉なアメリカ人の経済活動に各種生活保護を受ける人間が大量にぶら下がる形のアメリカの社会構造をさらに難しいところへ追いやる可能性がある。少なくとも高額を投資するのだからしっかり働いてもらわないと困るプロスポーツでは強く問題視しておくべきものだとは思います。Ricky Williamsだってマリファナがなければもっと勤勉に試合に臨み活躍していたかもしれない(しなかったかもしれませんが。誰にもわかりません)。スポーツの文脈で考えればステロイド禍の方がより問題(自転車のLance Armstrongの永久追放・全勝利剥奪が最近ありましたね)でしょうが、社会全体としてはマリファナ問題の方がよほどやっかいです。
Ricky Williams といえば Dolphins での突然の引退宣言直後になぜか東京に立ち寄っているんですよね。
当時は渦中の人だったので、東京でインタビューの一つでも出てきそうなモノですが、私の知る範囲ではみたことがありません。一方、最近になって Ricky のドキュメンタリーを観ましたが、東京行きの件には触れず、インドでヨガの修行している映像が出ておりました。仮の話として、東京でヨガ系の新興宗教に接触したのであれば、日本のメディアは記事にしないでしょうね。とりとめのない話ですがこれにて失礼します。