日本男子サッカー、残念でした。ゴール前でのボールロスト・ターンオーバーでの決勝点献上ですからこれが実力ということになるのでしょう。でも本当にU-23ですが良いサッカーをしていると感心しました。今回の代表選手たちがフル代表の底上げにもきっと貢献していくのでしょうね。銅メダルマッチも頑張っていただきたいところです。


さて表題は昨日の五輪女子サッカー準決勝=アメリカ x カナダ戦の疑惑の判定について。疑惑というか本来ルールブック通りなら文句なしの反則であり、それをとったまでですが、アメリカ国内でもさすがに酷いという意見が噴出しています。ルールブック通りならばGKはキャッチからリリースまで6秒以内というルールがある。そして今日もさんざんビデオでも検証されていましたがカナダのGKが保持していた時間はおよそ10秒。ルールブック通りに判定すれば明らかに違反であり、主審の判定は間違いとは言えません。が、問題はサッカーを見る誰もが知っている通り6秒を超えてGKがボールをキープするのは日常茶飯のこと。実際の運用は努力規定とも言えるルールです。試合終了間際にリードしているチームのGKがぐずぐずしていてイエローを貰うという場面はしばしば見かけるところですが、6秒ルールで間接FKが与えられるのは極々珍しいはずです。

GKのリリースが速いと言うと日本女子の試合でGK福元がやたらとリリースが速かったのが目立ちましたよね。フランスの猛攻を受けて、ちょっとみんなを落ち着かせてからリリースしたらいいのに、という感想を持った方は多いのではないかと思うのです。が、このカナダが主審にハメられた場面を考えると、この可能性を怖れて速いリリースを心がけたファインプレーなのかなとも深読みできます。開催前に内々にこれを厳格にとる可能性があると内示があったとか。

話をアメリカ戦に戻すと問題の判定があったのは77分。通常ならまだ遅延行為に目くじらを立てるような時間帯でもないし、このプレー自体も目立った遅延行為でもない。6秒まで許されるのに対して10秒でリリースしている。今回の場合、6秒の数え始めはポスト際は腹ばいでボールを確保したところから。GKが立ち上がり、周りの両チームの選手を去らせ、ペナルティエリアのトップまでボールを持ち出してキック。ここまでで10秒。福元選手のようにやたらと速いリリースではなかったものの、こんなプレーは男女やレベル問わず年がら年中発生している「反則」でしょう。しかしグレーエリアとしてコールされることはほとんどない。なぜこれをこの場に限ってとったのか、というところが問題の焦点ですね。確かにカナダGKのErin McLeodはもっと早い時間帯にこの時よりもずっとモタモタしていた場面がありました。それを主審から注意を受けていたのは試合観戦中に私も気づきましたから、その辺で既に主審の心証を悪くしていた可能性があります。

それにしても、というわけです。その直後のハンドの判定もノーコールでもいいような顔を守るため上げた手に当たったもの。身体の外に広げていた手ではないのでこれも疑問なコール。この二つが重なってPK→同点となったわけで、この主審はアメリカ側に勝たせたかったんだという批難がネット上でも渦巻いてしました。カナダの3点を叩き出したChristine Sinclairも試合後「勝利を盗まれた気分」と落胆。その気持ちはよくわかります。この日のSinclairはすごかったですから。あれだけの試合をやってのけて、それがこの疑問判定の連発で追いつかれたのは落胆なんていう言葉では表せない無力感でしょう。

試合を放映したNBC系もさすがにこれは無視できず検証を何度もするとともに、アメリカ人解説陣も「これはなあ…」ととても正当性は主張しかねていました。(但しこの問題の直後にセットで「カナダ側にはLloydの頭を踏みつけるラフプレーがあった」というビデオも流して、カナダの「汚さ」もアピールするなど一方的な自国の勝利の価値が下がることに抵抗していたりしますが。この辺はまあご愛敬ですね。無駄な抵抗ぽいです)


ちなみにこの日のSinclairのハットトリックと、米代表Abby Wambachの因縁のPKによる1ゴールでこの二人は共に代表通算ゴールが143個に。これは史上二位タイ。史上最多の158ゴールのMia Hammまであと15ゴール。Wambachは32歳、Sinclairは29歳。この二人のどちらが先にHammの記録を破るか、そしてその後、キャリア最多ゴール争いがどうなっていくのか。Wambachは昨年まで調子の悪かった足首の調子も良さそうで、もし本人が現役を続けるつもりがあるならばまだまだ数字は伸びそう。

一方のSinclairはWambachよりも若いし、カナダは次回の2015年女子W杯の開催国。2015年にはSinclairは32歳。キャリアの集大成としてW杯自国開催での優勝を目指すことになるんでしょう。カナダ代表監督John Herdmanが昨年就任以来、なでしこ風のつなぐ戦いが徐々にできるようになってきているカナダ。3年ありますからそれまでにこの有能な監督がカナダをどこまで引き上げてくるのか。Siclair をサポートできる選手をどう育てるのか。昨日の試合以前だといくら自国開催であってもカナダが優勝候補という感じではなかったのですが、昨日の大激戦「盗まれた勝利」でカナダが極短期間のちにアメリカを脅かす位置まで上がってきているのだということはカナダ国民にも知れ渡ったことでしょうし、隣の大国アメリカへの国民の対抗心も燃え上がるところ。これはカナダ女子W杯開催への関心向上には素晴らしい宣伝になったと思います。銅メダルマッチも頑張って欲しいところです。