少しタイミングズレになりますが、書いてあったので以下アップしてみたいと思います。
記事のタイトルとしたSidney CrosbyがPittsburgh Penguinsと新たに結んだ契約についてまず触れてみて、その後に本題に移りたいと思います。Sidney Crosbyは現在24歳、この夏に25歳となるPittsburghのキャプテンであり、NHLで最も知名度の高いリーグを代表するスーパースター選手。このCrosbyとPenguinsは12年間 $104.4 millionの契約延長を結んだと発表になっています。2025年まで。単純に年数で割って年$8.7 million換算。この契約延長以前のサラリー年額が$7.5 million。16%ほどのベースアップで金額自体はさほどでもないとも言えますが、2011年のWinter Classicでの脳震盪事故が長引いて欠場を繰り返し、若くしてNHLの大看板スターがこのまま引退を余儀なくされるのではという危惧も一部に流れたCrosby。2011-12シーズンも82試合のうち出場したのは僅か22試合。脳震盪問題を抱えたエースに12年という契約オファーが相当にリスキーなのは間違いないところ。脳震盪が一切影響がないとしても12年契約をまっとうする時点でのCrosbyの年齢は37歳。プレースタイルによっては年齢が進んでも現役が続けられるNHLですが、Crosbyのスタイルでそれが可能なのかどうか。ちなみにNHLの歴代最高選手であるWayne Gretzkyが引退したのが37~38歳のシーズン。Crosbyに12年を与えたのはこのGretzkyの引退時の年齢が参考になっていそうです。これでほぼCrosbyはNHL全キャリアをPittsburghで過ごすことにほぼ確定しました。
さて本題のそのCrosbyのサラリーのお金の出所の話です。まず純粋にチーム作りという観点でいうと、CrosbyとEvgeni Malkinという二大スターを抱えるPittsburgh Penguinsですが、第三のセンターであるJordan Staalにこのオフの優先事項として長期契約をオファーしていました。プレーオフでポイントトップでもあり、ペナルティキルなどでもStaalの存在感はCrosby/Malkinほど派手ではないですがファンにとっては納得の選手。ところがこのチームの申し出をStaal側が拒否。交渉が決裂した段階でPittsburghはすみやかにStaalをトレードで放出。ここでお金が浮いた。Staalに長期契約で投資するつもりのお金が浮いたのでCrosbyの長期契約に振り向けられた、というのが事情のひとつ。ちなみにMalkinの契約は2013-14シーズンまでであと二シーズン。Crosbyと違って健康面での不安は少ないMalkinの契約延長問題もできればこのオフのうちに片づけておきたいところ。カナダ人であるCrosbyが北米マーケットでの価値がMalkinに勝るのは当然のこととしても、あまりMalkinに劣ったオファーをするわけにもいかない。Crosbyは契約の長さで褒賞、金額は比較的抑えめの金額。MalkinにはCrosby並の長期契約オファーは想像できず、最低でも五年以上で単年でCrosbyより若干多いといったオファーになるのではないかと予想しておきます。Malkin側がそれで納得するかは微妙ですが。
さて実は本題はここからなのです。チーム内のサラリーのやりくりでは以上のような様相なのですが、そもそもPittsburgh Penguinsはそんなにスター選手を確保できるほどカネがあるのか?という部分。Crosbyは契約更新、Malkinもその人気実力から言ってけっこうな額での契約延長オファーにならざるを得ない。その前段でStaalにも長期契約オファー。この三人以外にも引き留めたいスター選手を数名抱えているのがPenguins。チームの現有のコアをがっちり契約で固めるには結構なお金がかかります。他チームではDetroit Red Wingsがそういうチーム作りに成功して長年NHLのトップコンテンダーとしてその地位を固めましたが、Red Wings並にメンバーを固められるほどPittsburghに資金があるのか、という疑問をCrosbyの契約更改ニュースを聞いて最初に感じたわけです。デトロイトは別名Hockey Town USAと言われるホッケー人気の高い街。ピッツバーグという街はなによりもスポーツはまずはNFL Steelersという街。人口規模も知れているし平均年収が高い街でもないという予備知識もあったのでそういう感想になりました。
でもやっぱり調べるとちゃんと理由があるんですね。Penguinsは地元のローカル局の独占放送契約を2028-29年シーズンまで延長契約を完了したばかりでした。2028年ってとんでもない未来のような気がしますが、ここしばらく当ブログでも指摘しているスポーツ放送の放映権料の高騰の恩恵がここでも発生しているようです。放映権は2028-29年シーズンまで、Crosbyの生涯契約は2025年まで。Crosbyの脇を固めるStaalにも長期契約オファーしたのはこの放映権契約が背景だった模様。なんでも昨季のPenguinsのローカル放送の視聴率はシーズン70試合放映を通して8.7%平均。この数字はMLBの人気チームのローカル放送と比較しても優秀。またローカル放送とは言うものの実際の視聴可能区域は市域を大きく越えてペンシルバニア州の多くや隣州のウェストバージニアやオハイオにも広がっているとのこと。なるほどPenguinsはピッツバーグ近郊だけのローカルチームではなくなっているわけですね。文句なしの全国区スターがいることで「ローカル」の地盤が拡大している、よって単なる率以上に視聴者数自体が多いので商品価値が高いのでしょう。また昨年移転したホームアリーナ(本当に道路を隔てたはす向かいなので場所的には同じ場所)も大半の席をシーズンチケットで売り切って動員からの収入も安定が見込まれるようです。