NCAA大学野球の64校参加によるトーナメントが週末にスタートしています。大学野球はインターネットが発達するまでは極一部の強豪校以外では地味な扱いですが、全国トーナメントの八強部分に当たるCollege World Series(CWS)はESPN系が全試合放送するようになってもうかなりの年数となって学校の夏休み期間序盤の定番のコンテンツとなっています。昼間の番組でお金をそれほどかけるわけにいかず、それでもまずまずの注目を集めるということで大学野球がニッチにESPNの番組表に食い込んだのが最初。その後うまくESPNが手持ちのコンテンツとして育てて、夏休み序盤のCWSそして夏休み終盤のLittle League World Series(少年野球 LLWS)と非MLBなベースボールがコストパフォーマンスのよい番組として定着しています。
昨今はサッカーがその夏休み市場に食い込んできていて、昨年の女子W杯、一昨年のW杯は視聴率的にもまずまずの成功を収めています。女子W杯はともかく男子の方は放映権料も高い(正確には男女大会セット価格で契約してますが)のでコストパフォーマンスではちょっと問題がないとはしませんが、ここ数年は男女大会とも欧州時間の大会だったので都合良く米国の昼間の枠にはまって生徒学生の夏休み需要を満たすには最適。昼間に放送している分には各局のプライムタイムの有力番組とかぶりませんから直接的敵対しないですむし。(次回ブラジルW杯は時間帯がアメリカと近いため視聴率が前回以上に伸びるのではという期待をする向きもありますが、逆に各局のプライムタイム番組と相対することで苦戦する可能性もないことはないです)尚、今年のEuro2012大会も全戦ESPN系で放映があるのですが、アメリカやメキシコ中南米に関係のないサッカー大会がどの程度視聴率を得られるものか。
さて大学野球の方ですが、ここ数年の傾向として伝統的な強豪校が苦戦する傾向がはっきりしてきています。Texas, USC, Arizona Stateといった過去に大学野球の名門であった学校は64校にもエントリーできず、地区大会のホスト校として1位シードで今回のトーナメントに入ったMiami-FL, North Carolina, Riceといった大学野球の有力校があえなく地区敗退。特にMiami-FLはStony Brook, Missouri Stateといった無名校に二試合連続大敗惨敗で未勝利のまま敗退。地元スタジアムに1万人の大観衆(大学野球ではこれだけ観客を入れられる学校は多くありません)を集めながら無名校に完敗して消えたこともあって監督のクビもとびかねない事態に。
そのMiami-FLを大アップセットで破った最下位シードStony Brook Seawolvesはその勢いをかって地区大会を勝ち抜いて次週のSuper Regionalに駒を進めています。同校にとっては地区大会突破は初の快挙。それ以外でも3位シードだったKent State、St. John'sと下位シード校がSuper Regionalに進んでいますし、敗れたものの地区大会で上位シードを追い込んだ小規模校がいくつも目に付きました。
この傾向がここ数年続いているのは間違いなく2008年のFresno Stateの最下位シードからの全米制覇の快挙が効いているはず。あの年以降、下位のチームが気合い十分で気持ちで負けてくれないので上位校が地区大会から四苦八苦という場面がより多くみられるようになって、結果として地区大会から好ゲームが頻発するようになっています。2008年から四年、あのFresno Stateの快挙がアンダードッグ校を触発・影響して下位校によるアップセットの危機が数多く見られるようになった。いまの現役の選手たちは皆あのFresno Stateの優勝を知って大学に入ってきている世代。だから有名校でプレーしていなくても、俺たちだってという意欲をもって日々練習しているはず。元々野球というスポーツは弱い側でもそこそこの勝率は確保できるスポーツだけに、下位校が気持ちの上で準備万端でかかってこられたらいくら有名校であろうと所詮プロ未満の大学生がプレーするわけですからそう簡単に勝てないわけでスリルがある。大学では野球はマイナースポーツのため奨学金の数も限られ有名校が有力選手確保で(フットボールやバスケほどの)超えられないほどの大きなアドバンテージをもっているわけでもない。
これは今後、大学野球がTVコンテンツとして伸ばして行くのには絶好の環境とも言えます。冒頭でも述べましたがCWSはESPN系が手持ちコンテンツとして長年育ててきたコンテンツ。CWS全戦放送からさらに最近では多チャンネル化ともリンクして地区大会やSuper Regionalもけっこうな数を放送するようになってきています。今年はSuper Regionalは一部試合時間が重なるものの基本的にはESPN2とESPNUで全戦カバーの模様。全国の小学校~大学の夏休み入りのタイミング(全国ばらばら)との兼ね合いもあるので地区大会の放送数はどこまで行っても限られるでしょうが、手軽で手堅い視聴率が見込めるコンテンツとしてESPN系にとっては重宝する番組・イベントではあります。
#1~#8シードのうち敗退したのはご指摘のUNCのみで、残りの7校はSuper regionalに駒を進めています。
NCAA D1 tounamentは3ステップでのそれぞれDouble elimination方式のトーナメントですが、Dr. BCSさんも触れているように野球というスポーツが弱者にもそれなりの勝率が確保されているという環境下ではすごいフェアな方式だと思います。
日本の高校野球もこうしてあげればと思うのですが、単純にゲーム数が倍近くになるから日程で難しいのでしょうね。