読者の需要がないのは重々承知しているのですが、個人的に気になっているのでまた女子サッカーの話題です。女子プロサッカーWPSの三年目のシーズンが始まっていることは先日一度記事にしました。書いてませんがその後も試合放送あると見ていて、今年から新設のWestern New York Flashに移籍したMartaが出場した試合も観戦。鮮やかな頭でのゴールを決めるなどあいかわらず図抜けた選手として見る楽しみを与えてくれています。今年はなんか化粧をばっちり決めて出場してます。あの目力のメイク、夏場も続けるんでしょうか。

それはよいのですが、私が気づかないうちにアメリカ女子サッカーで最も伝統のあるWashington Freedomが首都からフロリダ州に移転して、その名称もmagicJackと変更になったようです。大文字小文字はこれで正しいです。これ商品名そのままなのです。一般電話機を使ったIP電話のUSBデバイスの名称で、以前からときどきTVで宣伝されていたのは見たことがあります。そのmagicJackがWPSのチームを買い取りチーム名を商品名に変更して宣伝に当てたということのようです。

WPSが経営で苦しんでいるのは過去にも触れた通り。試合中継を見てもわかりますが観客動員もふるわずマイナーなムードが強く漂います。3000人も入る試合があれば盛況。スポンサー撤退などで活動停止となったチームは創設三年目が始まったばかりで既に4チーム。そういう状況では背に腹は代えられない、チーム名を売っても現金収入を採ってリーグの存続を目指したということではあるんでしょう。

ただ売ってしまったチームが(全チーム知名度低い中でもなんとか)一番名前の通っていたWashington Freedomだったのはなんともせつない。

Freedomは2001年創設。同年にリーグが始まった初の女子プロサッカーリーグ=WUSAのオリジナルメンバーで創設11年を誇ります。WUSA所属当時のFreedomのウリは当時人気最高だった米女子代表のエースストライカーMia Hamm。Hammの知名度は強く引退してもう8年になるいまでも間違いなく最も知名度のある女子サッカー選手でしょう。WUSAが経営崩壊して活動停止したあともWashington Freedomはリーグなしでも組織として存続しマイナーリーグクラブとの試合をやったりしていました。Hammは引退してしまったものの地道に復活の目を求め続け、WPSが女子プロリーグを再興するとなったときにもWUSAからの生き残りとして参加しています。現女子米代表のエースストライカーのAbby Wambachも所属。他にも女性ファンに人気のGK Hope SoloやFW Lindsay Tarpley、DF Christie Rampone、Shannon Boxxと米代表メンバーをずらりと揃えて(いつの間にこんなに揃えたんですかね?ひょっとするとmagicJackとの契約の絡みで有力メンバーを集中移籍させたのか?)、メンバーだけ見ればこれは即優勝候補のはずのチームでしょう。女子プロサッカーのチームとしては最も長く存続もし、新旧の代表エースストライカーをスターとして確保し続けた、アメリカ女子プロサッカーの看板的なチームだったはずなのですが、それが知らないうちに売り飛ばされてその名称すら消滅していたということなのです。せつないと言うか辛そうだなというか。

アメスポの世界で女子で黒字ビジネスはツアー型のテニスとゴルフ。定住型女子プロスポーツではWNBAやその他の過去の女子プロバスケリーグも女子プロサッカーリーグもいずれも黒字となったことがありません。サッカー女子米代表チームは黒字のはずですが、これは全米各地を転戦=ツアー型と言えます。これら以外では大学の女子バスケットボールがUConnやTennesseeなど一部の強豪校に限ってですが黒字。但し大学スポーツは選手にサラリーを払っていないから黒字というトリック付き。と見てくると女子で定住型で成功するのは至難であることが伺えます。そういう過去の実績の中、リーグが崩壊しても地元人気でなんとか潰れなかったFreedomのようなチームがあっさりその名前も奪われて移転させられてしまう。なにか貧乏村落の娘が女郎奉公にいかされるような風情すら感じるさびしさです。

WPSの試合内容は決して悪くないように感じるだけに経営がついていかないのはなんとも残念だなといつも思います。