しかしまあ水に落ちた犬を叩くという表現がありますがそういう感じ。Roger Clemensがカントリー歌手の某と十年来の恋愛関係にあったとかいうもうどうでもいいゴシップが流れてます。報道をうけてClemens側は即座に否定したのに、翌日に当の女性シンガーの方が肯定。これ、Clemensは嘘つきという印象効果が高いです。

当面の最大の懸案の議会公聴会での偽証問題には直接は響かないでしょうが、印象はますます黒方向へ流れるばかり。公聴会でClemensのステロイド使用を証言した元のトレーナー相手にClemens側が起こしている名誉毀損の訴訟などでは今回のゴシップでのやりとりなんかもClemens側に明確に不利に影響することになります。

最終的に偽証罪ではシロとなってもステロイド使用自体についてはクロの印象で固定してしまうでしょうし、不倫報道で家庭も崩壊しかねないし、このまま引退試合もできないまま引退に追い込まれる可能性もさらに高まってきたし、踏んだり蹴ったり状態です。
さらにその女性シンガーとつき合い始めたころは彼女は十五歳だったというオマケ付き。さらに数日後にはプロゴルファーのJohn Dalyの元妻とも関係があったとすっぱ抜かれるなど、まあこの先も悩み尽きずという展開です。まあ普通なら鬱になりますね。成功者からゴシップ誌ネタ常連への転落。


でスポーツ観察としてはこの展開がClemensの殿堂入りにどう影響するかが気になる。グラウンド上の記録では文句なしの殿堂入り資格のある名選手。
但しもともと好人物というタイプの人物ではない。どちらかというと剣のあるタイプ。もっと言えば嫌なヤツタイプにほど近いとの評判。鼻っ柱も強く基本けんか腰みたいなタイプ。先日の議会公聴会でも議長の発言が気に入らなかったのか議長発言を妨げる形で口をはさみ議長の怒りをかったりしてましたが、そのときも議長の剣幕とClemensの後ろに控えた弁護士達が制してやっと黙らせた感じ。公聴会で議長にたてつくってのは大変なことになりますが、あの辺はやっぱり普段からの性格なのかなって思わせるところがありました。

まあ性格の悪い人でも殿堂入りしているひとはいくらでもいます。初期の殿堂入りの選手たちの中には当然のように人種差別主義者もいたでしょうし、個人の性向はまあいいんじゃないかと思います。殿堂は善人コンテストではないわけですから。

でも犯罪者となると話がちょっと変わってくる。犯罪までいかなくても野球人として不名誉となるとこれもちょっとした犯罪よりよほどまずい。
これの代表格が元Cincinnati Redsで日米野球でも来日もしたPete Rose。MLB最多安打の4000本超のヒットを放ちながらいまだ殿堂入りが許されていません。直接的には野球賭博に関与したというのが原因で球界追放処分。いまだにMLB主催の一切のイベントに参加できない。(試合前のセレモニー等にはでられませんが、RedsのファンイベントなんかにはMLB主催ではないので登場したりしてるんですけどね)。

以前にBarry Bondsの通算本塁打記録を公式記録とするか?という議論について書いたことがあります。ステロイドや、その後の偽証などを理由に不名誉とされた場合、彼の記録が公式に認められない可能性があります。数字自体を消すことはないでしょうが「*」マーク付きの参考記録扱いになる可能性はある。不名誉により殿堂入りが疑問視されています。殿堂入りっていうのはベテラン記者の投票によるものだからあけてみないとわかりませんが、1998年に当時のシーズンホームラン記録を37年ぶりに塗り替えたMark McGwireがここ数年投票の対象なんですが75%の得票で当選のところ僅か23.5%しか票を得られないでいますし、Bondsもそれに近いコースに行く可能性は高い。
Bondsもダメとなると、通算本塁打王も殿堂入り不可、通算安打記録選手も殿堂入り不可ともうわけがわからなくなってくるんですね。


現在もBondsは議会の訴追を待つ身で展開次第ではこれも公聴会に呼び出される可能性十分。まあBondsの場合有利なのは、Clemensの現在の惨状を見てこりゃダメだ全面降伏でゲロった方がマシと判断する機会があること。実際そうした方がいいかもしれない。

突っ張って疑惑全面否定という戦術を選択してしまったClemensにはもうすでに退却の余地は少ないです。現役引退、名誉散逸、家庭崩壊、多額慰謝料、中年ニート化あたりまでは予想がつきます。格好のネタだけに引退後も様々報道されてしまうし、そうなってしまうと殿堂も遠い可能性があります。

そういえば大学野球の最優秀投手賞はRoger Clemens賞という名前になってるんだけど、これも場合によっては名称変更になるかもしれないですね。