実は昨年2007年、MLBのドラフトが初めて全米中継されました。史上初めて。

アメスポファンはご存知の通りNFLやNBAのドラフトは大変な人気イベントで、それぞれのリーグの最大のオフシーズンイベント。それぞれのドラフト上位指名選手の名前はそれだけでスポーツファンに浸透して即席スターとなるわけです。

今年のNFLドラフトは4/26-27の土日に予定、もうあと十日ほどですね。NFL各チームのファン関係者、また指名される側の大学フットのファンも誰が高い評価で指名されていくかに注目し、熱い議論が各種掲示板で繰り返されている真っ最中です。当日は第一指名から翌日の最終第七巡目まで完全全国中継という念の入れよう。

NFLドラフトほどではないですが、NBAドラフトも人気高いです。こちらの強みはNFLよりも上位候補選手の知名度が高い場合が多い事。
先日終了したアメスポ特級イベント=March Madnessで上位候補をつぶさに見られるダイジェスト版みたいなところもあって、一般ファンも上位候補の名前やプレーぶりをかなり認知してる。(NFLドラフトはスター選手も当然いますがラインの選手などはドラフトで高評価でもカジュアルなファンが知ってるというほど知ってるわけじゃないですから)これも夏に向けて大いにファンの期待と議論の盛り上がる一級のアメスポイベントです。というかその指名順を決めるくじ引き(ロッタリ)自体も期待の中イベントですし。


さてそれに対してMLBのドラフトは昨年まではほぼ無名イベント。
なんと言ってもその差はその即効性にあります。NFLの一巡目指名選手や、NBAのTop5指名の選手たちは入団即戦力。それも即先発レベルの高いレベルの戦力と考えられて入団してきます。(例外はNFLのQBですかね。これは主戦になるのに数年程度かかるのは常識的許容範囲) NFLのラインの選手などはポジションの地味さから一般ファンには無名でしょうが、それを除けば大学スポーツでスターだった選手ばかりが入ってくるわけでそういう意味でもドラフトは華やかです。

それに対してMLBではナンバーワンで指名された選手でもまずは数年マイナーリーグで修行というのがほとんど。その上過去MLBのドラフト上位を占めてきた高校の野球選手は一般スポーツファンにとっては完全に無名。よろこんで見るほどの意味がない、とされてきたんですね。

それが昨年、長いMLBの歴史で初のドラフトTV放送。事情はどうかわったのか、と考えてくるとポイントいくつか。

まずは前項でも指摘した通りMLB全体の人気の上昇。各種数字から見てもMLBは新たな黄金時代に入りつつあるように見えます。また放映する側の多チャンネル化が進んで細かいイベントもコンテンツとしての取り合いの対象になっていること。派生イベントでもとりあえずネタになるということですね。

もうひとつは大学野球の人気が上昇中で、かつドラフト上位に占める大学出身者の数が増加中という点でしょう。高校出身者ではなかなかドラフト候補選手の事前のフォローのしようもいれこみようがないですが(アメリカには日本の甲子園のような高校野球の全国大会はありません。州大会が最後)、アメスポに大きく横たわる大学スポーツファンの水脈とうまくクロスできれば一気にドラフトが興味ある番組に転じる可能性があると見えるからです。

昨年MLBで新人王を獲得したMilwaukee Brewers(NL)のRyan Braunも、Boston Redsox Dustin Pedroiaも大学出身選手。BraunはMiami Hurricanes、PedroiaはArizona State Sun Devils出身。この二校は大学野球の世界では伝統校で、今年は両校ともシーズン前半絶好調。現時点でMiamiは全米ランク一位、先々週まではArizona Stateが一位(今三位、どのランキングを見るかにもよりますが)です。

大学で圧倒的な成績を残したピッチャーが比較的短期間にMLBの表舞台に上がってくることも目立つようになってます。Long Beach Stateのエースとして圧倒的な成績だったJered Weaver(Los Angeles Angels)や、名門USCのエースだったMark Prior(Chicago Cubs)なんかはドラフト二年目でMLBの一流ピッチャーの仲間入り。NBAやNFLほどではないにしても即戦力に近いものとなってきている実績があります。
先に挙げた昨年の新人王のBraunも2005年夏のドラフト指名で2007年に新人王。

高校卒のルーキー素材の潜在能力ももちろん魅力的なのには変わりありませんが、大学で年齢的体力的に熟成されてきた選手が高い成功を収める例が増えてきているというわけです。同時に大学選手ならば大学スポーツの固定ファンも多いしカラーもはっきりしてるので番組作りのネタとしてしこみやすいという面も番組制作の上では有利でしょうね。

などなどあってMLBドラフトのイベント化が進行中というわけです。