アメリカスポーツ三昧

アメリカ永住コースか、または第三国に出国か!?スリルとサスペンスの人生とは別にアメスポは楽しい。

女子サッカー

優良コンテンツも押しのける女子サッカー

地上波FOXの金曜日の夜のゴールデンタイムはプロレスWWEのSmackdownの2時間の定時放送枠。年間に何度かその枠が削られて同系列のスポーツ専門チャンネルのFS1にSmackdownが移動します。毎年MLBのポストシーズンの時期にはWWEのFS1送りが発生するのは定例。定時放送枠が移動すると視聴率がガタ落ちになるのもお決まりでWWEからすれば嬉しくはないでしょうが契約で優先権は決まってるはず。平均で230−240万人近辺を毎週叩き出すFOXにとっては優良コンテンツのSmackdownを押しのけてまで次週放送するのは何か。

何かあったっけ?と思ったら7PMから女子のサッカーW杯の放送だと放送予定に書いてあります。女子W杯が始まるのはもちろん知ってましたがアメリカのゴールデンタイムが試合時刻とは知りませんでした。生?それとも録画?といぶかしく思いました。
今回のW杯はニュージーランドとオーストラリアの共催。時差は日本からだとないのでしょうがアメリカからすれば現地の昼間や夜はあまり都合の良い時間帯ではないはずですがそれを放送するのが金曜日の夜?現地土曜日の午前ですか?換算したら現地1PMかな?(夏時間もあるので1時間ぐらいずれているかもしれません)。

アメリカのTVの都合に合わせて試合開始時刻をその枠にしたってことなんでしょうね。アメリカ的には年少者の視聴者が多いと想像されるため東部時間で9PMキックオフ11PM頃終了は若干遅いが許容範囲ってとこですか。アメリカ西海岸だと6PMキックオフですからそちらにも目配りするとこの時刻が最良とFOXは判断したかも。現地としてはそれよりは早くはしにくいということでこの枠か。FIFAの試合予定を見ると米代表の試合と同じ時刻の試合開始の試合は他にないので米代表のみの特別待遇のようです。

ちなみにこれは今週ニュースで言っていたんですがニュージーランド現地でのチケット販売がふるわず大会直前になってかなりの数のタダ券を配ることになったとのこと。共催のオーストラリアの方は代表通称Matildasが現実的な優勝候補であるという認識で地元の期待は盛り上がっているとされますがニュージーランドはそうでもないらしい。米代表はグループリーグをニュージーランドで戦います。

放映スケジュールの詳細をFOXの公式で読むと東部時間7PMから「FIFA Women’s World Cup Live」というプレゲームショーを2時間放送、9PMから米代表の開幕戦対ベトナム戦を放送、試合後に「FIFA Women’s World Cup Tonight」という名のポストショーも30分予定。さすが女子代表サッカー、人気の高さで地上波トータル4時間半占拠ですか。感心するような分厚い放映態勢です。
その後米代表の第2戦となる7/26水曜日対オランダ戦も同じ態勢のプレ&ポストゲームショーで4時間半地上波ゴールデンタイムを占拠予定。2戦目もプレゲームショー2時間かよという。初戦はW杯開幕を関心の薄い一般非スポーツファンにも告知目的もあり話すべきこともいっぱいあるのかも知れないからともかく2戦目で平日のゴールデンタイムでも2時間も前振り番組をやって良いというのがすごいです。

ベトナムもオランダも強敵ではないはずで米女子代表ファン一般が期待するような爽快圧勝試合になる可能性はあります。一方先日の壮行試合でW杯に出場できないウェールズ女子を相手にゴールを割るのに苦労した例もありFOXや善良なサッカー少女たちが期待するような大量ゴールでの圧勝劇になるかどうか。

女子W杯まであと1ヶ月

FIFA女子W杯の開幕があと1ヶ月となって放映をするFOXを中心に宣伝や露出が増加してきています。他のスポーツの国際大会と比べて宣伝開始が早い。力が入ってる感じがします。今回でさすがにMegan Rapinoe37歳やAlex Morgan33歳など知名度・顔認知度の高い黄金世代は見納めの可能性があり宣伝に余念なしといったところか。
目標はW杯3連覇以外眼中になし。上のリンクで紹介したCMも世界各国を全部敵にまわしても余裕というムードで作られています。そしてそういうのがまさにファンが女子代表に求めるところなのでしょう。男子サッカーではこんな上から目線の宣伝なんて絶対に作れない。
おもしろいのは日本が米国対策で時間を遡ってRapinoeをテニスに誘導とかいうくだり。日本のアニメ連想でこういうのは日本の役かという。他の国の部分も大半ステレオタイプではあるんでしょうがおもしろいかなと。

なんでも欧州各国や日本ではまだ女子W杯の放映権の販売すら確定していないという報道を読むにつけ米国内の女子サッカーの特異性が様々思われます。それらの国がFIFAとモメるのもまた良いのではないでしょうか。FIFAのあこぎな商売に毎度付き合う必要もないわけで。

米国での放映権販売は女子W杯やユース大会も含めて男子のW杯放映権とセットで2026年大会までの分をFOX陣営が獲得しており他国のように女子大会単独の放映権価格を交渉するようなしくみになっていない。何年も前から女子W杯もFOXの全面支援で放映をする予定は固まっており事情はまったく違います。男女セット販売なので女子大会にいくら払ったとは数字が出せない形でもあります。アメリカの国内的な事情としても女子の代表選手の方が米代表男子の選手よりも知名度が高いのもまた米国ならではの事情です。


男子の方もそうですがFIFA W杯は学校の夏休み期間にがっつり放映できるのがスケジュール的にはおいしいです。アメスポ年間スケジュールに抵触しない。ここは大事です。アメスポの場合夏休み向けにはMLB、MiLB、さらにはCollege World Series(開催中)、Little League World Seriesなど野球成分が多めなのですが、正直言えばそれだけではバラエティに乏しい。MLSやNWSL、NASCARなどもありますがファン層の広がりは限定的。X Gamesなんていうのもありますがせいぜい数日のイベント。今年だとラクロスの世界選手権がSan Diegoであったりもしますがラクロスはまだまだマイナースポーツ。
その点でサッカーのW杯は目先が変わって良いです。なにかと道具立ても派手でメジャー感があります。アメスポの夏枯れの時期にその華やかさは良い。移民が多いお国柄で米代表以外の放送にもそれなりに視聴者がつくのも国情に合っている。女子サッカーはプロリーグは目立たず、人気の女子米代表はほぼ五輪とW杯だけが大きな露出機会ですから飽きられるほどは放映がないし、夏休みでお暇となる人口の半分は女性なのですからこれでうまく回ってます。

ついでに言うと6月はPride Month、性指向の多様化の活動の季節であります。米国内各地で関連イベントが開催されています。スポーツ関連でいうと女子サッカー米代表とイメージ的にセットでなんらかの高揚効果がありそうでもあります。サッカーの試合のスタンドではLBGTQのシンボルとされる虹色の旗が振られるのが常です。
これは微妙なんですけどね。他のスポーツのジャンルでも皆無ではないもののなぜかサッカーの会場であきらかに多い。MLBの試合でPride関連の行事を行うと抗議の人が集まっちゃったりすることでこの件は日本では知られているかもしれません。この件とスポーツの関わりについてはまた別途考えてみたいところでもあります。

日本の女子スポーツだと東洋の魔女からの長年の遺産を受け継いでいまも人気をたもっている女子バレーボールなんかもあって、それに次いで女子サッカーも人気を保てる可能性があるのかなと思ってましたがその後あまりうまくいってないみたいですね。(なぜ唐突にバレーに言及したかというとたまたまYouTubeでVNLの試合ビデオがオススメに出てきて女子日本代表の試合を見ちゃったからです。)

女子サッカー加盟料が$50 million

サッカーの話題の連続ですみません。
アメリカが金融引締状況下でも好景気なのは体感でも感じていたところですが、その体感を上回る景気の良い話が女子プロサッカーNWSLから出ています。現在12チーム体制のNWSLに新たに3チームが加盟を申請。そのうち後発となるBostonとSan Franciscoベイエリアの2チームがそれぞれ加盟料で$50 millionをNWSLに支払うというニュースが出てます。

それはすごいなと。カネが余ってる人がいるんだろうなあと思わせられる額です。3チームが新規加盟するうちUtahのチームは昨年度時点で既に加盟申請をしていたので加盟額は$5 million以下になるとのこと。単純に言って過去1年で加盟料が10倍以上に跳ね上がった計算になります。それでも加盟したいという投資家がいるってことですね。それも女子サッカーで。

女子サッカーにとって新市場となるUtahはともかくSan FranciscoベイエリアやBostonは過去の女子プロサッカーリーグのメンバーだった頃に赤字を垂れ流して解散してきた土地柄でもあります。BostonにはBoston Breakersがありました。21世紀初頭の女子プロリーグのくさ分けだったWUSAの創設時のチームとして以来長年存在。SFベイエリアにはWPSでスーパーチームとして好選手を多数保有してWPSで優勝もしたFC Gold Prideがありましたが解散済み。女子プロサッカーチームが経営を失敗してきた都市への再参入となります。

$50 millionなどという加盟料を支払えるオーナーグループなのですから資金は潤沢なのでしょう。よって過去のBoston BreakersやFC Gold Prideの当時の(有り体に言って)貧乏くさいイメージを払拭してきらびやかなマーケティングで市場開拓をはかるということなんでしょう。どれぐらい資金を突っ込んでどれほどの利益を出せるものになっていくのか興味があります。
都市フランチャイズ型の女子プロスポーツとしては現実的にはバスケのWNBAとこのサッカーのNWSLしか投資先がない。それでお金の行所がなくて今回の事態になったとは想像できますが、それにしてもカネ余ってる人がいるんだなあという。

過去の女子プロリーグであったWUSAやWPS当時より現在有利な点としては、全米各地に男子MLSが建てた新しいサッカー専用スタジアムが存在することか。MLSの施設を利用することで低コストで秀逸なユーザーエクスペリエンスを来場者に提供可能というのがあります。UtahはMLSのReal Salt Lakeのスタジアムを使うのであろうし、SFベイエリアはMLSのSan Jose Earthquakeのホームに同居することが可能でしょう。

しかしながらBostonはどうするのか。男子MLSではBoston近郊にNew England RevolutionというMLS創設時からの老舗チームがありますが、ここはサッカー専用スタジアムを持っていません。
RevolutionのオーナーはRobert KraftでNFLのNew England Patriotsのオーナーでもあります。そしてNFL PatriotsもMLS RevolutionもKraft Groupが所有するGillette Stadiumをホームとしてます。Gillette Stadiumは収容65,000人を超える大スタジアムです。MLSの試合のときには20,000人収容扱いとして運営。使わない席は幕で覆っています。いまとなっては数少ないサッカー専用スタジアムを持たないMLSチームとなってます。
よって女子NWSLに新規加入する新チームはサッカー専用スタジアムを使用する目処がないはず。過去Boston Breakersは同市内のHarvard大のフットボールスタジアムをホームとして利用してきました。これは前時代のコンクリートむき出しのスタジアムで完全に時代遅れの代物です。Boston Breakersの不人気に寄与した施設と言っても差し支えないでしょう。

Gillette Stadium自体は美麗なスタジアムで周辺のショッピングモール風施設も含めて優良なユーザーエクスペリエンスは提供できますが、問題はガラーンとしたスタジアム内です。MLSでも大スタジアムの一部に観客が入っている様はあまり見栄えの良いものではないし、ファンにとってはがらがらではわざわざ来場したのにわくわくしない。MLSが専用スタジアムを建てまくったのもNFLスタジアムでは箱が大きすぎてファンのエクスペリエンスを高めようがなかったからで、動員の実力に見合ったサイズの小スタジアムを建てることにしたというのが実態です。新女子チームがBostonでどこをホームとするつもりなのかは成功に直結する大事な問題に思えます。

その問題も含めてもなおかつ$50 millionの加盟料を払い新規に女子サッカーチームを設立してなおかつ儲けが出る可能性を見ている人がいるってことですよね。すごい話だとは思います。

NWSL決勝 地上波プライムタイム放送

女子サッカーNWSLの決勝戦が地上波CBSのプライムタイムでの放送になってます。時間はMLB World Series第2戦(地上波FOX)の裏番組。他にもMichigan State@Michigan戦始めカレッジフットボールの試合も地上波や主要ケーブル局で同時刻に放送されていましたのでどれほどの視聴者を集めたのかはわかりませんが、それでも一種の快挙なのではあるのでしょう。

これがNWSLの10年目のシーズン。リーグ創設当時からエリートチームとして運営されてきたPortland Thornsがリーグ史上最多となる3度目の優勝をしています。Portland Thorns 2−0 Kansas City Current。
場所はWashingtonにあるサッカー専用スタジアムAudi Field(収容2万人)で。今書いている時点では正式な観客数が出てませんが目測では結構入っていたように見えました。どちらのホームでもない中立地での開催でこんなに入るのかという意味では立派かなという感想を持ちました。

試合のMVPは先制ゴールを決めた22歳Sophia Smith。Sophia SmithはレギュラーシーズンでもMVPを獲得しており22歳にして堂々のダブルMVP。
米女子シニア代表でも25キャップ10ゴール。なかなか主力メンバーの代替わりが進まなかった米女子米代表の次世代スコアラーの本命ということになるようです。Portland Thornsにはカナダ代表の大エースを務め続けたChristine Sinclairが創設時から所属。Thornsで3度優勝、前身となるWPSでも2度優勝した北米の女子プロサッカーの大貢献者だった39歳Sinclairの正当後継者ということにもなりそうです。
他にThornsには日本人選手Hina Sugitaも所属。


女子スポーツの放映機会が男子のそれに比べて著しく少ないという課題がアメスポ放送にはあって、そういう問題意識もあって機会を捉えて女子の各種試合の放送をするべく各局努力している感じで、その流れでの今日の放送だったのでしょうが、その辺の事情はともかく私が見たところサッカーの試合としてはまずまず悪くないものだったと思いました。

NWSL/MLS Portlandのオーナートラブル

女子サッカーのNWSLで噴出したセクハラ等問題が男子MLSにも飛び火する形になって来る可能性が出てきたかもしれません。女子NWSL Portland Thornsおよび男子MLS Portland TImbersのオーナー(正確にはMLSはリーグが全チームを所有しますが)であるMerritt PaulsonがThornsの業務・意思決定から退くことを発表しています。これは前日に公表されたNWSL内においてNWSLでの日常的なセクハラパワハラ行為や体質を問題視する第三者機関による調査結果が発表、それを受けた形でPortland ThornsとChicago Chicago Red Starsのオーナーが自主的に業務から外れると表明しています。

これを日本語にそのまま移し替えるのは少々危うい話です。さまざま報道に接していると日本語のセクハラというのと英語でのsexual harassmentは同じ言葉で違うものを表しているといつも感じていてそれをそのまま同義語のように伝えると意味が違ってしまうことを危惧します。特に言葉を輸入した側である日本がセクハラという言葉をうまく定義しないままでなんでもかんでもセクハラと呼んで放置して茶にしている感じは気になるところです。以下その点を留意の上読んでいただけると幸いです。

約200人の選手関係者から聞き取り調査をしたという元判事による調査結果でNWSL内でのsexual harassmentや言葉による侮辱などが日常的に行われている体質が指摘がされています。このニュースが流れた後に選手たちからは、いままでリーグはなにもしてくれなかった、やっと改善するのかという発言が出てます。
その報告の詳細は公表前に関連各所に配布されたのでしょう、上記のThornsとRed Starsのオーナーが自主的に業務から外れると発表。他にも広がる可能性がありそうです。


つい最近NBAのPhoenix Sunsのオーナーが人種差別的で好悪をあらわにした運営をしたとのことで糾弾され1年間の業務停止をリーグから課され、実質的に1年の猶予期間内にSunsを売却することを余儀なくされたという事例があります。
NBAチームなんていうのはアメスポ業界内でも垂涎の物件。めったに売り物は出ないので現実は放逐でもお金の面ではオーナーは高く売って儲けることはできそうです。Sunsは所属選手との契約状況もChris Paulの巨大契約(年間約$30 million)はあと3シーズン残ってますが、NBAチームの売買の額と比較すれば文字通りのはした金。そういう事情もあってSunsのオーナーの退場はスピード感をもって決着しそうに思えます。


NWSLはNBAとは比べ物にならない小規模なプロ組織です。NBA Sunsならリッチな買い手はいくらでもいるわけですが、NWSLのチームではそうは簡単いかないであろうことは容易に想像できます。
NWSL経営がいくらかでも儲かってるかというとなかなか疑わしい。Portland Thornsはリーグ創設時からNWSLの目玉チームとして優遇されてスタートしたチームで、現在も動員では昨年まで2位以下を2倍以上引き離した状態のトップ。公表されていませんがThornsは単体黒字が達成できている可能性があるとすれば最もその可能性の高いチームでした。

今季2022年は新設されたAngel City FC(Serena Williams始めセレブオーナー多数)が試合平均19,000人近い動員に成功して動員で初めてThornsがトップから滑り落ちてます。それでもThornsは試合平均15,000人以上を集めていますから女子プロサッカーとしては世界でも有数の人気だと言って差し支えないでしょう。
Angel City FCが参入して女子プロサッカーの人気が爆上げのきっかけになるか。なかなかしんどいのではないでしょうか。Angel City FCの初年度動員は刮目すべき新しい動きでしたが、それがNWSL全体の底上げになるかは疑問。Angel City FCやPortland Thornsがプロ興行として利益を生む可能性のある動員の数字を出している反面、平均動員で5,000人に届かず今後も浮上の可能性の薄いチームもいくつもあります。Naomi Osakaが部分オーナーであるNorth Carolina Courageもその域。リーグ全体での利益体質構築までにはまだまだ力不足なのが現状でしょう。Thornsとともにオーナーが業務を退くChicago Red Starsは2022年の動員実績は6,200人。

動員好調のThornsならともかくRed Starsの方は簡単に買い手なんて付くのでしょうか。カネ余りのアメリカですから誰かかれか手を挙げる人はいるのでしょうか。

Thornsの方も売るのは売れるのかもしれませんが、今回の調査で批判を浴びているオーナーのMerritt Paulsonのもう一つの物件=MLS Portland Timbersの経営権への影響も気になります。MLS TimbersとNWSL Thornsは同じスタジアムに同居でこれまで同オーナーだったので一体感のあるマーケティングも行われていたのが分離することでダメージを受ける面もあるかもしれません。

MLSは経営形態としてはMLS自体が1つの会社です。各チームは言ってみれば営業所のようなもので、新規参入する「オーナー」たちは各チームの運営でほぼ全権を振るえますが法律上のオーナーではありません。NWSLの方で経営から徹底しなくてはいけない事態となった「オーナー」の持つPortland Timbersは不問・安泰となるのかどうか不明です。女子選手相手には居丈高だった組織が男子チームとは無問題という理屈はアメリカでは通りにくいように思われ、そうなるとMLSはTimbersに対してなんらかの内部調査をして公表しないと対外的に具合が悪くなるんじゃないでしょうか。その結果によってはNWSLだけでなくMLSの経営権も手放さねばならない事態も想像できそうです。事態を注視です。

Rodmanの娘がサッカー米女子代表初招集

Dennis Rodmanの娘であるTrinity Rodmanがサッカーの米女子代表に初招集されるようです。Trinity Rodmanは19歳。サッカー女子代表はアメリカスポーツ界でも激戦区の一つですから19歳での招集は早いと言えそうです。

Dennis RodmanはNBA Chcago Bullsの後期三連覇時代、それ以前にDetroit Pistons "Bad Boys"での二連覇などNBAで異彩を放った選手。選手としてNBAから去ったあともセレブ活動で知名度が高く、容姿も派手。当時人気歌手だったマドンナとの交際、また北朝鮮との交流に中心的な立場を努めたなど単なるNBAの好選手だった以上の人物です。
時代が下ってさすがに最近は顔を見かけることは少なくなりましたが、今でもPlanet FitnessのTVCMに出てたりもします。

そのRodmanの娘が一流アスリートとして活躍しようという時期が来ているってわけですね。ちょうど昨日、カレッジバスケでKentucky@Vandarbilt戦を見ていて、Vandarbilt所属のScotty Pippen Jr.が活躍していたのを見たばかりだったので、また元Bulls栄光の時代の次世代の台頭です。
先日当ブログではRon Harper Jr.の活躍について触れました。これでBulls後期三連覇のスタメンのうち3人までが息子娘がアスリートとして活躍していることになります。すごい確率ではないでしょうか。後期三連覇時の他のスタメンはMichael JordanとLuc Longley。Longleyはオーストラリア人で今はどこで何をしているかまったく存じません。スタメンのアメリカ人4人のうち3人までがジュニアの育成に成功し、スーパースターのMichael Jordanのみそうはならなかったというところがおもしろいなと思います。

Rodmanは現役当時から奇人変人とみなされ異端扱い、Scottyは破産を経験。Ron Harperは当時の先発メンバーの中では一番目立たなかった。スタメンでなかったToni KuKocやSteve Kerrの方がHarperより記憶に残っているファンも多いはず。それぞれ一流選手ながらすべてが順調というような人生ではなかったのが、自身のジュニアの育成では生きた可能性もあったりするんですかね。

NWSLが今週末の全試合を急遽中止

零細からやっと抜け出そうという女子サッカーのNWSLが今週末の全試合の中止を決定しています。直接の理由はNWSLのトップ幹部が揃って辞任したこと。なぜ辞任となったかというとリーグ所属のNorth Carolina Courageの監督であったPaul Rileyが選手との不適切な関係を持ち、それについての調査の要求が選手側から出ていたのをNWSL幹部が放置したからということになっています。

North Carolina Courageは旧女子プロリーグのWPSなどで活動したWestern New York Flashの流れを汲むチームなので言ってみれば女子サッカーの中では数少ない名門の類。テニスのNaomi Osakaが今年1月に出資して共同オーナーにもなっているチームです。オーナーと言っても実質的に恒久スポンサーになっただけで日々のことに関与しているわけではないようですが。オーナーになった当時にチームの帽子をかぶって記者会見に登場したということがありました。この夏の全米オープンの頃にはWNBAのNew York LibertyのTシャツを着て登場という場面もあったりと女子スポーツ全体の応援に熱心なのかなという感じではあります。

女子スポーツにおける監督と選手の不適切な関係というのはしばしば噴出します。監督が男性でなく女性の場合というのも過去カレッジでありました。いずれの場合も表面化するとあっという間に解任という場合が多い。もし今回のNWSLで言われているようにリーグが数ヶ月(可能性としては数年?)に渡って放置したとすると批判は免れない可能性は高いのでしょう。なぜ放置したのかがよくわからないのですが、Paul Rileyは名コーチと目されており影響力が強かったからという説が唱えられたりもしてます。あんまりピンとこない説のように私には思えますけれど。

いずれにせよつまらない不手際でマイナープロ組織にとっては大事な商品である試合が中止。中高カレッジNFLとフットボールシーズンがたけなわの今の時期にわざわざ女子サッカーを観戦に来てくれようと思っていた多くないファンをこんな理由で試合中止、失望させるのは実にまずい気がします。解任されたNWSLの女性コミッショナーは一体何を考えていたのか知りたいものです。放置しておけば消える問題だと思ったんでしょうか。

サッカー女子代表 準決勝敗戦

サッカー女子米代表が東京五輪の準決勝でカナダに1−0で敗戦しています。PKによる1失点なので失点の方は仕方ないとしても、90分でゴールを一度も割れないままの敗戦はいよいよ最強を誇った米女子代表も一時代終わったかなということになりそうです。

今大会これが5試合目ですが、無得点の試合が実に3度目。多彩な攻撃陣を誇り、試合途中で前線を総入れ替えする形で試合を通して圧力を維持したはずなのに得点につながっていかないという結果です。
準決勝で敗戦して3位決定戦に回っていますがアメリカンな価値観からして銅メダルにどれほど執着できるものか。栄光の時代のメンバーによる最後の公式戦になる可能性は高いです。
例年国際大会の年はビクトリーツアーとかなんとか銘打って大会後に米国内での巡業をするので現メンバーによるサヨナラ興行はあるとは思いますが。

たまたまですが昨夜男子の代表の方が若手を揃えてのGold Cup決勝で快勝をしたばかり。女子の方が知名度のある高齢の選手たちがこの五輪での敗戦を境にさすがに去っていくケースが増えるはず。自主的に去らなくても協会の方が世代交代に舵を切ろうとする可能性もある。女子の方が人気も実力も高いというアメリカサッカー代表の風景が、久々に男子向きに潮目が変わる瞬間が今なのかもしれません。


知名度では劣るものの既に女子代表のベストプレーヤーは26歳Rose Lavelleです。Lavelleは既に60キャップ超えと代表での実績は積んでいるんですが、上の世代が大量に残っているためLavelleでも若手扱い。テクニカルで良い選手。
年齢的に次のサイクルにも確実に残りそうなのはKristie MewisとSam Mewisの姉妹、Lindsey Horan、Julie Ertz辺りまででしょうが、この中盤の選手たちでも27−30歳ばかりでかなり年齢的にこの先の伸びしろはどうなのか。つまり中盤の選手は次のサイクルでも同じ顔ぶれになりそうだという意味なんですが、Lavelleはともかく他のメンバーは体力勝負の選手が多い。いままでは前線に決定力のある選手が多かったので中盤からのセットアップなどは適当で運動量でボールを相手から奪って前にどういう形でも供給していれば勝てていたのが、今大会でがっくり得点力が落ちてしまったことで、中盤のタイプの見直しもちょっと考えないといけないようにも思えます。

フォワードの方はさらに深刻。若い方で32歳Alex Morgan & Christen Pressから36歳Megan Rapinoe、39歳Carli LloydというFW陣がこれまでより良くなる可能性は低い。Morganは産休明けなのでひょっとしたらまだ回復途上でまだ次のサイクルで復活する可能性はありますが、こちらも世代交代を目指さないといけないのは確実でしょう。少なくとも若い世代のストライカー候補に機会は作る必要がある。

米女子代表が良く言うセリフで「米女子代表のサブの選手たちで世界2位のチームが組める」というのがあります。代表のベンチの選手の質の良さを讃える言い回しなのですが、同時に固定化・高齢化した先発メンバーが押さえ込んでしまっていた若手の選手の不満を回避するガス抜き発言でもあったかと思います。今五輪での失敗でさすがにこのセリフで若手の不満をそらしているだけではうまくいかなくなる。

ただ同時に女子代表が米国内の興行動員で長年好成績を残していられたのは栄光の時代の知名度の高い選手たちがいつも出場していたからでもあります。米女子代表の戦力の立て直しとして大幅に若手に切り替える起用が求められるのですが、知名度の高い選手をごっそり外すという事は興行成績という面では危険を犯すことになります。

女子代表による男女同報酬要求の問題は過去数年大きく報じられました。法廷闘争も含め論点はほぼ出尽くしています。その中で女子側の大きな主張の根幹のひとつは女子代表の動員力やグッズ販売などの経済的貢献の高さでした。男子代表と遜色がない、または勝っていた。その重大なアドバンテージが世代交代で失われる可能性が高いです。

サッカー女子米代表が五輪初戦で敗戦

サッカー米女子代表、東京で初戦で完敗。スウェーデンに0−3。アメリカからだと見にくい時間帯の試合だったのでハイライトしか見てませんが、さんざんだったようで。

米代表の組は他はオーストラリアとニュージーランド。その対戦は引分となったので、米代表はグループ最下位でのスタート、得失点差-3。まだあと2連勝は十分可能でしょうが、得失点差のビハインドまで解消するような勝ち方は望みにくい相手かも。もし残りの2試合のどちらかを引分るようだと米代表の3位通過なんていう事態が発生しえます。もしそうなると可能性としてはトーナメント初戦でトップ通過した日本代表がアメリカを引き当てるという可能性もありそうです。

たまたまなのですがこの試合の報道を私が最初に見たのがFOXのニュースサイトで。そしてさすがFOX、そのニュースの切り口というのが優勝候補の米代表が予想外の完敗を喫したことではなく、米女子代表が試合前に人種差別に抗議する膝つきをしたという報道になっていて苦笑でした。2021年も半分過ぎてもまだFOXのディレクターにとってはそっちのが重要なのか、と。好きだねーという。ちなみにこの試合は米代表だけでなく、相手のスウェーデン代表も同様に膝つきをしていたようです。


サッカー女子代表の大舞台での大敗というと2007年の女子W杯の準決勝でブラジルに4−0で惨敗したのが思い出されます。今回はグループステージ、そして3位でも通過可能という仕組みの中のことですから取り返しはいくらでも付く話ですが、10代を多く含む健全な若い女性ファンを獲得してアメスポ内に異彩を放ったサッカー女子代表もメンバーが高齢化。多くない若手選手で代表主力になっている選手たちが(そういうことを言ってはいけないのですが)あまり可愛げがなく、いつまでたっても10年前の主力ばかりがTV出演、CM出演でも目立つ。
今回の五輪の結果がどうなるかはわからないですが、さすがに次のサイクルは世代交代になって人気が怪しくなっていきそうなタイミング。現メンバーでの最後の戦いがはかばかしくない結果に終わったときに女子サッカー代表の人気や露出がどうなっていくのかは気になるところではあります。
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