アメリカスポーツ三昧

アメリカ永住コースか、または第三国に出国か!?スリルとサスペンスの人生とは別にアメスポは楽しい。

女子サッカー

NWSLがチームスポーツの先陣を切って開幕

女子サッカーNWSLが今日からシーズンをスタートしています。これまで個人競技・モータースポーツで再開はありましたが、NWSLが疫禍後初のアメスポチームスポーツの開催となります。合計23試合のChallenge Cupとしてユタ州で開催。またユタ州なんですね。
NWSLで過去2シーズン連続優勝しているNorth Carolina CourageとPortland Thornsのカードで。NWSLの過去7シーズンでそれぞれが2度優勝しており、Portland Thornsの方は試合平均20,000人の動員を誇るNWSLの単独で突出した動員頭。一般の方はわからないでしょうが、ほぼこれがNWSLが提供できるベストのカードと言えるのでしょう。
地上波CBSが放送。NWSLにとって創設以来初の地上波全国放送となります。現地で午前10:45、東部時間午後12:45キックオフ。

NWSLには9チームが所属しますが、Orlando Prideはコロナ感染者が10名出てしまい今大会から離脱、8チームの参加となります。
Orlandoのあるフロリダ州は全米で今コロナ感染が一番マズい州のひとつで、その上Orlandoの選手たちはSocial distancingを実行せず夜バーに繰り出して集団感染したというバカっぽさ。ガキか?プロアスリートという自覚はないのか?という感じですね。まあNWSLは大した金額は選手に払っていないのでカネも払わず自覚ばかり要求するのは酷なのかもしれませんが、それにしてもチームごと離脱を余儀なくされたのは今後再開していく各チームスポーツリーグにも反面教師としてもらいたいところです。残りが8チームあってまだ救われてます。7チームになっていたらスケジュールに多きな支障になっていたはず。

また個人の選択としてかなり今大会への辞退者がかなり発生してます。女子アスリートで最も知名度の高いひとりであるMegan Rapinoeは参加しません。他にも日本にも知られた名前ではCarli Lloyd、Tobin HeathもAlex MorganもChristen Pressも出ません。Morganは産休扱いだと思いますが。Rapinoeが出ていればBLM問題や膝つき問題始め、最近出た同性愛者の勝利と言える連邦最高裁判決についてなどマスコミからコメントを求められたでしょうが不参加。


さて試合を見ようかと思ったら、今年は試合の前にこの問題があるんでした。すっかり忘れていました。

試合前の国歌演奏時は両軍全選手が膝つき。立っていたのは審判団だけ。この時点では審判団を含め選手がBlack Lives MatterのTシャツを着用。コマーシャルを挟んでの試合開始前にも場内アナウンスがあって全員が膝つき46秒黙祷。なぜ46秒かというと例のGeorge Floyd氏が警察官に首を押さえつけられていた時間が8分46秒で、抗議の初期の頃には8分46秒の黙祷をしていたイベントもあったのですが間が持たないので最近は46秒らしいです。選手は試合中もBlack Lives Matterと書かれた黒のアームバンドを着用。

さてもう一方の喫緊の問題コロナ対策の方はというと、監督除きベンチの選手・スタッフはマスク着用。但しアップをしているときは外してました。
ハーフタイムにロッカーに向かうときに出場していた選手にすぐにスタッフがマスクを手渡しして、選手たちは屋内に入る前にかけてました。いままだハーフタイムになったばかりで息が切れてるだろ、そこでマスクさせるのかというタイミング。体力のリカバリにこれは障るのでは。防疫としてはなかなか徹底しているとも言えますし、スポーツ的にはちょっと疑問。この先続く他のスポーツもここまできるのかな。いろいろ考えさせられますね。


プレーの方は足を滑らせる選手が目立ったりと準備不足が疑われるところもありましたが、両チームとも球離れの良いプレーぶり、意思が見える展開が多めでなかなか楽しめました。最後の20分にゴールが立て続けに出て2−1でNorth Carolinaの勝利。

それよりもなによりも、やっぱり快晴の太陽の下のスポーツは良いですね。それだけでも開放感と爽快感があります。

女子サッカーの構造的問題が男女同報酬問題に投影

女子サッカー代表チームの報酬が男子代表との差があるという問題ですが、どうも過去ほとんど語られていなかった部分があるということが指摘されるようになってきてます。先日連邦裁判所の一審で女子代表側が敗訴。原告が控訴審に進むことを宣言していますが、アメリカの訴訟の仕組みでは一審の敗訴は日本のそれと比較してとても重いです。

一審の判決文の中で女子側の報酬は男子に劣っていないという認定があったわけですが、これの中身には男子代表には協会が提供していない福利のコストが女子側に提供されていて、その部分を報酬として計算していたってことのようです。それで原告側から見ると男子と女子では手にする金額が違うというもともとの言い分になるし、協会側からするといや女子にも総額で男子と相応の金額をかけている(直接手取りとしては払っていないけど)ということになったようです。
また訴訟の対象となった時期は女子代表の方が公式試合数が多く(女子はほとんどの大会で勝ち進みますからそうなります)総額での収入だと女子が多かったという事情もあるようです。

男子代表選手はほぼ例外なくどこかのプロチームに所属しており、例えば手厚い医療保険やチームドクターによるサービスを所属チームから無償で受けられる。ところが女子選手は今はNWSLというプロリーグがありますが零細リーグでとても福利厚生にコストがかけられる状態ではなく、産休などの補償もない。その辺の事情があるので女子代表は過去サッカー協会との協議で男子よりも手厚い福利厚生条件を引き出していたということです。その部分の女子のみ得ている利益を金額換算して加算すると女子の報酬は少なくないという主張になりえ(議論の余地はありますが)、連邦裁判所一審もその線で女子への利益は多いといえるとして、原告の主張を証明不足、棄却としているということです。これは女子サッカーをめぐる構造的な問題の投影と言えるのでしょう。

なるほど、そういうことなら判決文の女子の方が報酬が多いという指摘の意味がやっとわかりました。報酬金額という具体的・明瞭な数字のあるもので原告の主張が退けられているのが訝しかったのですが、報酬の認定基準が違ったということですね。
それでもわからないのはもしこれが事実なら、なぜ協会はこの点を事前にもっと広報して主張しなかったんでしょうね。私はこの件の記事はかなり目を通しているつもりですが福利の男女差の件をはじめて知りました。今年の3月時点での被告サッカー協会側の主張は多岐に渡ったものでしたが、スポーツニュースや一般非スポーツ報道で取り上げられたのは女子代表の責任は男子より軽いとか、スピードに劣るとか、お金に換算しえない余計なことを書いた部分で、代表選手だけでなく一般女性からのスカンも喰って荒れ、結果として協会会長が辞任する騒ぎとなりました。
一審で勝利したのですから全体としての協会の主たる主張は間違っていなかったと認定されても、女性の権利を阻む悪の組織というレッテルが外れるわけではない。これじゃ女子代表に出すカネを抑制する以上のダメージじゃないか、という。
全体としては女子代表側も協会側も主張を整理すべきなのであろうと思われます。それを双方が検討する中で、出口戦略・和解の機運が熟成されることになりえます。


ところで今回の女子代表の一審敗訴を受けて、男子代表チームの選手会からは女子代表の同額報酬の主張を支持するというコメントが出てます。これは賢いのでしょう。男子代表対女子代表という対立構造にされて男子代表が悪役の一部にされるのを避けられています。
過去、SNS上で男子代表選手と女子代表選手が子供じみた言い合いをしていたりと長く見てるものからすると男子側には忸怩たる思い・またはそれ以上の悪感情を持ってる選手もいるのはずっと感じられていましたが、ロシアW杯進出失敗以来は男子側は完全に沈黙をせざるをえない状況に追いやれており、男女選手によるいがみ合いを見かけることもなくなりました。見かけないからと言って男子側の女子側への不満が消えたわけではないと思いますし、外から見えない形で協会内で女子代表への抵抗勢力があるのは容易に推測できますが(そうでないと協会の執拗な抵抗の理由がわからない)、とりあえず表立っては男子代表は応援してますとさらっと言ってしまうのは賢いでしょう。協会の対応の下手さのとばっちりを受ける必要なんてありません。

サッカー女子代表が一審敗訴

サッカー女子代表選手が米サッカー協会を同待遇問題に関して訴えていた連邦裁判所の一審で敗訴してます。判断が出たのが金曜日、それも西海岸のカリフォルニアでの判決だったため(東部時間では週末間際)か詳細な敗訴理由についての解説記事があまり多方面から出ていないのですが、訴えていた主要部分の主張が証明不足とされて敗訴。原告側は判決を不服として控訴審に進むことを宣言しています。

この件は当ブログでは何度か取り上げてます。判決文についての記事を読むと、選手にとってあまりお金にならない待遇の男女差については認定しているものもあるようです(例えばW杯へ移動するときのチャーター機の差、サポートスタッフの質量など)が、たぶん女子代表側が一番望んでいた試合への参稼報酬を男子と同等とするという部分については証明不足として棄却。他では2015年カナダ女子W杯のときに人工芝で試合をさせられたのが同等の労働環境が提供されていないという点も訴えていたそうですがこれも棄却されたようです。

訴訟の中身を又聞きとなる新聞記事だけで批評するのは問題がありますから避けますが、試合当たりの報酬だと女子の方が高いという計算も成立する(?)という記述が判決文の中にあるらしく、事実関係自体が良くわかりません。金額という客観的な事実で主張が食い違うというのが既によくわからない。
控訴審に進むというのですから原告側はこれからさらに法律上の主張を練り直す必要がありますが、原告側の資金面が脆弱だとどれほど一審以上の主張ができるかは不透明です。アメリカの弁護士事務所は強いところは高いですからね。

敗訴の報を受けて民主党側の大統領候補のバイデン候補は女子代表に今後も法廷闘争の継続を強く勧める発言をしてます。バイデン候補は副大統領候補に女性を起用することを既に公言しており、女性票を強く意識しており、ここでの女子代表への支持はその線に沿ったものなのでしょう。リップサービスも込みでしょうがバイデン候補は自分が当選したあかつきにはもし女子代表が係争中のままでも他の方向からサッカー協会に強力な圧力をかけることも言及してます。

そこまで言われてしまうと控訴審が進む過程で協会と女子代表の歩み寄りがあるんですかね。以前ならトランプの再選が有力視されていたと思いますが、コロナ疫禍で状況が大きく変わりバイデン候補が当選する可能性は数ヶ月前とは比較にならないほど高くなってますから。

米サッカー会長、職を投げ出す

どさくさまぎれのカオスですね。米サッカー協会の会長Carlos Cordeiroが辞職。後任には元女子代表選手で協会副会長のCindy Parlow Cone(選手当時はCindy Parlow)が就くことに。米サッカー協会会長職に女性が就くのは初。

これはあれですね、もうとても対女子代表の訴訟、およびソーシャルメディアでの支持者の圧力に耐えられず辞任、男性会長が後任ではこの問題は決断ができないことでは同じで、女性新会長に責任を押し付けて処理しようという感じでしょう。たぶん男子代表側からの外から見えない圧力がすごいんでしょうね。
新会長となるParlowと現役の選手たちの関係が過去良好かは存じません。Parlowが会長としてこれまでの協会の主張を繰り返すかどうかも見ものです。

少なくとも会長の首の挿げ替えで「旧態依然の男性社会対女性の権利」という構図を崩すことには成功していると言えます。また法廷闘争で事態が長期化することを防げる可能性も新会長の登場で復帰したかも。態度を硬化させていた原告の女子代表もとりあえずParlowの対応を見守ろうとするでしょうし。

Parlowが女子代表の要求を大方の部分で認めたとして、その後長期政権を築けるかはわかりません。なにせ2026年の自国開催は100年単位での米サッカー協会の最大の事業です。それを仕切る手腕があるかどうかは見えない。また現行のコロナウィルスのごたごたという目前の問題も存在しますし、Cordeiroが逃げたのは難しい仕事を全部女性会長に任せて、次期選挙で地位は取り戻せる、あとから見れば好判断ということになるかもです。

女子サッカー代表の同待遇問題は法廷闘争化必至に

女子サッカー代表チームが米サッカー協会の男女差別を訴えている訴訟で、協会側から出された答弁書が原告側の怒りをかってしまい法廷での白黒決着を目指すことになりそうです。険悪化で法定外での当事者交渉による妥協の道は閉ざされたかに見えます。さらに協会自身が出した答弁書の内容について協会の会長が「答弁書で使われた表現は遺憾であり、陳謝する」とコメントを発表、なんともセンスの悪い協会側の対応がまたも目立つことに。

そもそもタイミングも悪いです。ちょうど昨夜は女子代表の春のミニ国際大会であるShe Believes Cupの最終戦が行われたところ。法廷の方で答弁書の提出期限が定められていて協会側の答弁がこのタイミングで出てしまったのかもしれませんが、その答弁書の中で女子は男子よりスピードや強さで劣り責任も軽いという議論を展開して男女の賃金格差は正当であると主張しています。これが原告側を強く刺激する結果となり非難がSNSなどで拡大。火消しで会長が陳謝に回らなくてはいけなくなりました。
代表の試合がない時期にやればまだしも、代表の全国放送試合のあるこの時期にこれをやれば女子代表の選手や関係者の反論が広くファンに共有されるのは予想できたはずですがそれをやってのけてしまうという協会。これはわざとなのか?とすら疑わなくてはいけないような下手を毎度やってのけてます。

批判されている最大のポイントは、男子と女子はスピード体力が違うという主張ならともかく、女子は能力に劣ると言い切ってしまっていること。法廷戦術としてはそういう主張の仕方ももちろんあって良いのですが、男女同権は連邦憲法で保証されているわけです。男女同権は修正憲法で付け加えられたもので当時から女性一般が男性と身体に差があるのはわかっていて定められたことであるのは自明。憲法の要請は法律上とても強いものなのでこの議論は最初から苦しい議論である上に、その表現の仕方も稚拙で火に油だなという感じです。
答弁書は1000ページ以上あるそうで、この答弁書でOKと決裁した会長や協会上層部もちゃんと読んでない可能性は高い。そもそもいまの会長さんは英語が第一言語でない方ですからそんな量の英語書類を読む能力があったのかも疑わしい。それでも決裁して協会の主張として法廷に提出してしまったのですから責任は会長にかからざるを得ない。

以前からご紹介している通り現会長は2026年のW杯自国開催に焦点を合わせて、現在の男子代表の活動にまったく口も手も出さないで丸投げしています。もし2022年サイクルで男子代表が無様なことになってもそれは丸投げした先である男子代表GMの首を斬って逃げ切り、2026年まではとにかく現体制でという意向が見え見えだったわけです。
しかしながらここで女子代表とコトを構えてしまい、このまま法廷闘争を続けて敗北した場合でも現職にとどまれるんでしょうか。裁判になってしまえば女子代表側が勝訴する可能性は高いように見えます。男子代表がW杯に出場できるできないなんていうのはどこまで行ってもサッカー内の話ですが、女子代表を能力が劣るからカネは出せないと言い切ってしまうのはサッカーの外に問題が波及するだけに悪手です。特に今年は大統領選挙年で政治的な主張が例年よりも人々の耳に入りやすい年。現在他にこういう目立つ事例が少ないだけにサッカー協会の悪手が男女同待遇を阻む悪の象徴のようにあげつらわれる危険すらある。そんな危険を冒してまで頑張る協会の意図が読みにくいです。

油を注いじゃったあとですから5月から始まる公判で闘争を継続するしかもはや手がないのか。

サッカー女子代表がサッカー協会を(また)訴える

サッカー女子代表が米サッカー協会に対して性差別による損害$66 millionを訴える訴訟を起こしています。公判は5月から開始とか。

正直言えば、あれ?また?という感じも強いです。
昨年男女同額の参稼報酬を求めて訴訟していたわけですが、そっちの方もまだ続いているようです。なんというか法廷戦術以外の部分、パブリシティの部分で米サッカー協会はなにをそんなに抵抗しているのかなという感想を持ちます。あるいはよーく考えた上で遅延戦術に出ているということか。

女子代表側からすると今年の東京五輪への出場が現行の知名度の高いメンバーによる最後の露出の機会。昨年の女子W杯前後に盛んに雰囲気を盛り上げたのですが、結局サッカー協会からは色よい返事は得られず結果が出てない中、五輪前にもう一度世論の盛り上げを狙っての別訴訟かなという気がします。


Alex Morganが30歳(妊娠休養中)始め、Carli Lloyd37歳、Megan Rapinoe34歳、Becky Sauerbrunn34歳、Kelley O'Hara31歳、Tobin Heath31歳、Christen Press31歳と皆30代に突入済み。皆元気ではあるものの次のW杯サイクルに皆揃って帰ってくるかはわからない。戻ってきたにしても女子代表ファンのコア年代である10代の女子との年齢ギャップは開くばかりで彼女たちが居座ると女子代表の人気は徐々に低下する可能性はありそうです。現状20代で知名度のあるスター選手というとJulie Ertz27歳ぐらい。

その辺りが米サッカー協会側の狙いで遅延戦術をとった方が良いと判断しているふしがあります。原告から高額報酬を受け取っている選手数名を外すように異議申立てしたりなどで訴訟が進んでいないというのもその辺が狙いかもです。
女子代表の人気がピークのW杯優勝の時点で妥結するよりも、五輪後、おなじみの代表が解体して人気選手が代表引退、一般の注目度が下がる時点で妥結したいというのは訴訟戦術としてはありうるとは思います。比較対象となる男子代表の動員が現状底にあるのも比較対象としてはとても良くないという思惑もあるでしょう。


ただしそれがサッカーにとって良いのかどうかはわかりません。サッカー協会内の男子擁護派からすればそれが良いのでしょうが、要は女子サッカーの人気が下がるのを待つというのがアメリカサッカー全体にとって良いことなのかどうか。
アメリカでのサッカーはマイナースポーツの域からは脱したと思いますがいまだにメジャーとは言い切れない部分を抱えている、言ってみればミッドメジャーな存在です。それが内輪もめで女子部分の人気が下がるのを待つという戦術、ひいてはせっかく女子スポーツでトップクラスの人気を誇りながら女性への社会的抑圧の象徴にされてしまうのは得策には見えない気がします。

アメリカ目線でサッカーとともに女子の人気が高いスポーツと言えばテニスですが、テニスでは1973年に全米オープンが男女同額の賞金とすることを決定して先鞭をつけたのと比較すると半世紀後の2020年になっても大いに抵抗するサッカー協会の後進性が目立つ結果になっているような。

Rapinoeは避けられている そこに見えるアメリカの分断

Julie Ertzが今年の米サッカー協会のFemale Athlete of the Yearに選ばれたと発表がありました。意外であると言って良いでしょう。ご本人も受賞インタビューで驚いたと正直な感想を述べていました。興味深いのはJulie Ertzの同賞での得票率が42%だったこと。2位以下にMegan Rapinoe、Carli Lloyd、Alex Morganと言ったこの手の賞の常連の米代表スコアラーたちをすべて押さえてディフェンダー上がりのMFが42%得票というのはかなり高いと感じます。というか他の賞を総なめ状態に近かったMegan Rapinoeが多くても40%程度しか集められていないのか(投票結果の内訳は現時点で確認できず。たぶんもっとずっと低い)という驚きと言ってもいいです。

その発表と同じ日にSports Illusrated誌の最新号が我が家に到着、その表紙はSI誌の選定したSportsperson of the Year(男女別ではない)を受賞したMegan Rapinoeが華麗な姿で写っています。最新過ぎるのかその画像はいまネット上で探せないのでまた機会があったらご紹介します(この衣装ですが違うショット)。Rapinoeは今年のFIFAの女子Player of the Year賞の受賞者でもあり、女子W杯フランス大会でGolden BallとGolden Bootを両取り獲得しています。それらの賞が示す通り今年の彼女のピッチ上の存在感は圧倒的で、そしてフィールド外でも彼女の姿を見かけることは多かったです。

FIFAの最優秀選手賞の選手であろうともW杯であれだけ活躍しても、米国内で最優秀選手賞の投票だと圧勝にならないのか、というところに見えるアメリカの相剋、断裂がアメリカ社会の2019年現在地らしいのかなとも思います。

この件とは別の話として一般的にサッカーの最優秀選手選びというのは微妙なものがあるのは確かです。スタッツだけでも多面的に評価できる可能性のある他のスポーツと違い中盤以降の選手にはそんなものはまずない。Luka Modrićが男子で昨年大きく評価されましたけれどあれはチームの好成績が還元された特殊例ですよね。


今回の米協会のFemale Athlete of the Yearを選ぶにあたって投票権があったのは大半は米サッカー協会内の身内です。代表のコーチ、選手、協会役員、選手協議会メンバー、プロNWSLのヘッドコーチ、元選手、マスコミ代表などなどの投票とか。
こういう有権者。この人達にかかると、これだけ活躍しても、これ以上ありえないほど活躍してもRapinoeは支持を集められないんだなあというのは結構衝撃的な気がします。実は内輪ではRapinoeは支持を固められていないのだ、世間の表向きの評価とはこんなに違うのかと。

Rapinoeはゲイを公表しています。また例のColin Kaepernickの膝つき抗議行動に同調して人種的マイノリティへの差別問題に強い意思を公表しています。トランプ大統領にも噛み付く発言も数々表明してきています。また米代表の男女給与差の解消に向けての行動でもAlex Morganとともに先頭に立って顔として活動しています。W杯前後、とくに後ですかね、TVにも多数出演、喋りのうまいところを見せて気の利いたコメントを何度も残しています。


Kaepernickは先月のNFLの合同トライアウトでわけのわからない方向へ脱線していってしまった(キンタクンテのTシャツ着用とか)のでもうKaepernickはなんともならんなという感じですが、Rapinoeの主張の数々はKaepernickレベルまで脱線しているとは私は思っていなかったので、それでもこんなに身内の支持が薄いのか、それは大変だな、という気がしました。表立っては口には出さないけれどPinoの政治的発言に反発してる身内の選手や、あまりホワイトハウスに睨まれたくない協会の偉い人達とかがかなりいてこういう結果になるんだろうなあ、という感じです。
トランプが大統領選ですべての世論調査を覆して勝利したのと似た構造を感じたりもします。
ちなみにJulie Ertzは白人女性、ブロンド、NFL Philadelphia Eagles TEのZach Ertzと結婚(よって非ゲイ)、政治的な立場は不明です。サッカー女子代表ファンの若年女性ファンには人気のある選手ですが、それらファンは今回の選出の有権者ではありません。

性的な公平、人種的公平というのは合衆国憲法上の要請(法律論で正確にいうと男女平等は憲法で保証されますが、ゲイへの平等は憲法の要請ではなく一段下)なので、表向きはそれに反する意見は表明しにくいのですが、実はそれが嫌だという人たちは潜在的には皆が信じていた以上に多くいるのではないか、というのはトランプの大統領選勝利のときにも論じられたかと思いますが、あれから2年経ってこういう形でまた顕在化したようにも感じられます。ことサッカーだけのことだけ考えたら2019年のRapinoeの成績はケチのつけようがないのですから。サッカー以外の別の部分で減点を食って落選したように私には見えます。
スポーツの世界で、スポーツについての投票をしてももそんなにも抵抗が出るのかというのは抵抗の頑強さを示していると言えるのではないでしょうか。

過去何度も指摘してますが、サッカー女子代表は白人の占める割合が一般人口よりかなり高いです。また前回の米サッカー協会会長選で候補者だったHope Soloが喝破したようにたぶんアメリカサッカーでは代表レベルの選手には社会的に負け組出身者はかなり少ないはずでもあります。つまり差別について敏感と言える層は今回の有権者の中には少ないであろうことが想像できますから、その辺もRapinoeの差別撤廃の言動には世間一般よりも同調者が少なかった理由であろうかなと。
それにしても、これ、サッカー選手、サッカーについての投票だよね?それで今年のPinoが落ちるの?という驚きの落選ですね。

政治の季節

4年に一度の大統領選挙年は来年2020年。今夜はホワイトハウス奪回を期する野党民主党の大統領選挙候補者による第一回の公開討論会が行われています。来年11月の大統領選本番までまだ15ヶ月以上もある時点ではありますが長い長いレースは既にスタートということになります。

前回の大統領選の2016年はトランプ対ヒラリークリントンと知名度の高い(しかし好感度は低かった)2人の激突であったため投票日までの夏からの数ヶ月の公開討論会などの番組が大いに注目を集めてアメスポ最強のNFLまでもがその視聴率で負の影響を受けたとされます。トランプが再選を目指す来年の選挙年もまた4年前と同じように盛り上がる=アメスポすら押しのけるのか。

前回選挙のときはアメスポだとNFL New England PatriotsのHC Bill BelichickやオーナーのRobert Kraftはトランプ支持でした。Tom Bradyもそうだったとされます。あれから時は移ったのにBelichickが健在なのはともかくBradyすら健在というのもすごいです。他方Kraftオーナーは買春疑惑で動きが止まり3人の中で一番影響力が低下しているという意外な展開になってますね。当時は下品な物言いのトランプ支持を声高に言うと恥ずかしいという雰囲気があったのがここまで2年半の実績でかなり風向きが変わったという気がします。

前任のオバマ大統領が推し進めたLGBTの権利擁護が争点にも票にもならなかったのも反トランプ陣営にとっては痛かったというのが前回選挙での民主党候補の敗戦の理由のひとつとされます。当時LGBTの風に乗って民主党候補を推せる最も知名度の高かったアスリートはサッカー女子代表のエースだったAbby Wambachだったはずですが、そのWambachは選挙年の4月に酩酊運転で検挙、コカイン使用まで告白せざるを得ない羽目となってとても応援に出られる状態ではなくなりました。今回は薬物談義は避けます。
女子サッカーもアメリカ大統領選も1サイクルを経て次回のLGBT側からの刺客となるのはAbbyの長年の代表チームメイトでもあったMegan Rapinoeとなります。

RapinoeはW杯優勝後に大手出版社との間でサッカーから政治まで幅広く語りまくる予定の自著の出版契約を結んでます。早くて年末、たぶん来年の出版になるのでしょうがこれは政治の季節にも乗って売れるでしょうね。LGBT関連だけでなく、元San Francisco 49ers QB Colin Kaepernickが始めた国歌演奏時の膝付きにもRapinoeは参加しておりマイノリティ一般への政治の不備不満を語れる立場の選手でもあります。また女子代表が提起している米代表選手の男女の賃金格差是正という大きな問題もあり、様々な層の不満の代弁者になれる選手ということになりそうです。
Abbyもおしゃべりはうまい方でしたが、Rapinoeもウィットが効いたスピーチが得意。反トランプ陣営からすれば大いに活用したい人材であろうかと思います。例えばKaepernickは膝付き運動を始めた人物でその行動の是非はあれ勇気はあったと思いますが、いかんせん新陳代謝の流れの早いNFLではとうに過去の人になってしまっている。その点Rapinoeはいまも現役選手。代表には来年の五輪出場という舞台も残っている。今年のW杯制覇の実績もあるため五輪を通じての大量の露出は既に確保しています。年齢的(34歳)には次のサイクルまで残ることはないためこの五輪が現役最後の舞台となるので五輪優勝後に派手な大統領選向けメッセージを飛ばす可能性もありそうです。

W杯その後 祝勝ツアー 男女同報酬問題

サッカー女子代表がW杯で優勝した余勢をかって8〜10月に5試合の全米ツアー興行をすることが発表されています。但し初戦を収容9万人余のRose Bowlで開催すると発表した以外の4試合は開催日は決まっています(TV局側の都合上)が開催地がなかなか発表にならなず、各地のファンがやきもきという状態になってます。

前回2015年カナダ大会での優勝時には同じように優勝後にVictory Tour 6試合を開催。当時の開催地はPittsburgh、Chattanooga、Detroit、Birmingham, AL、Seattle、Orlando。開催時期がアメスポジャンル1位&2位のNFLとカレッジフットボールのシーズンにかぶるのもあって、開催地はそれを避けた感のある都市名が並んでます。
体感的に言って今年2019年大会での国内での盛り上がりは2015年よりかなり上だったように思えるので、ひょっとしたら思い切ってフットボールに勝負を臨むような意欲的な興行を模索しているのかもしれませんが、同時にシーズンがかぶるので大箱のスタジアムの手当に苦戦している可能性もあります。日程だけは先に決まっているだけに柔軟なスケジュールは組みにくいですし。

うがった見方をすると女子代表が米サッカー協会とモメている代表選手への待遇闘争への反感もあって積極的には貸してくれないスタジアムもあるのかも。南部であるとかMLSのスタジアムとかだと絶対にないとは言えないような気もします。


そのEqual Pay男女報酬格差是正の問題ですが、大会終了直後にはMegan RapinoeやAlex Morganはマスコミに多く露出してやんわりとその主張を繰り広げていました(例1)。おおむねクリーンに勝ってしまったので彼女たちは余裕、あまり強く口に出してこの問題の主張をする必要がないんですね。人気トークショーのホストが「どうして同等の報酬を受取るべきだと主張してるんですか?男子は弱いんだから女子の方がもっと報酬もらうべきなんじゃないの?」などと勝手に話を盛り上げてくれたりするわけです。深夜のトークショーや、朝の定番番組など非スポーツファンでない人が見る番組に多く登場して問題提起をできているのもおいしいところでしょう。

反面防戦側のサッカー協会の方はどうもセンスが悪いです。この流れではほぼ男子代表と同等かはともかく、大幅な女子選手の報酬アップを受け入れなくてはいけなくなるのは避けがたいように見受けますが、サッカー協会長はこのタイミングでもまだスピーチで渋って待遇改善策について予防線を張ってるのが目立つ。男女間の協会内のパワーバランスなど様々事情はあるんでしょうが、対外的なイメージ戦略という意味では思い切って決断しちゃった方が良いんじゃないのかなとも思いますが。勢いのあるいま妥結すると振りなのでほとぼりが冷めるまで放置するつもりか。来年は五輪もありますから引き伸ばし策はあまり有効ではないような気がしますがどうか。

女子代表の方が余裕でその主張を浸透させつつある中、男子側は完全にだんまり。黙らざるを得ない。女子W杯と平行して開催されていた男子代表が出場したCONCACAF Gold Cup。決勝は4大会ぶりにメキシコ対米代表の最も視聴者を集める可能性のある決勝戦のカードとなりました。女子W杯の決勝と同日の夜の試合だったのですがこちらの視聴者数は152万人。
女子決勝の方は既報の通り1427万人。女子決勝は昨年の男子W杯の決勝以上の視聴者数を集めており、Gold Cup程度ではベストカードでもまったく太刀打ちできませんでした。ちなみにGold Cupの優勝はメキシコ。

女子W杯とGold Cup(および南米Copa America)が同時期に開催されることについてはMegan Rapinoeがサッカーファンの興味が分散する(言外に女子W杯への興味を削ぐために重ねてきた、FIFAの陰謀じゃないか)と事前に文句を言っていたのですが、こと米国内に関してはGold Cupが女子W杯に影響した可能性はほとんどないと言って良いのでしょう。どちらかというと女子W杯試合放映中にその晩のGold Cupの試合を大会期間中ずっと宣伝できた(両者ともにFOX系列での放送)男子Gold Cup側により恩恵があったかと思われます。
その上で女子側完勝なのですから、結果的にはその人気の差を見せつけることができてGold Cupと同時開催だったのは米女子代表に有利に働いたことになります。
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