アメリカスポーツ三昧

アメリカ永住コースか、または第三国に出国か!?スリルとサスペンスの人生とは別にアメスポは楽しい。

女子サッカー

サッカー人気の中身 女子代表編

サッカー米女子代表の人気について以前に書きました。その動員力は男子代表にひけをとらない。直近の対オーストラリア戦で17,264人、対ベルギー戦20,941人でともに満員となってます。そしてその特殊な支持層はアメスポ内でも特筆するべきものです。


アメリカ市場で女子サッカーが人気かという質問は愚に近いです。人気があります。正確を期せばサッカー女子米代表チームは人気でしょう。男子代表にもひけをとらない、または上回る。その人気があるので「アメリカでは女子サッカーが人気」という文は真実です。
代表の人気は女子の方が1990年代に先行して、あとからやっと男子が動員力で追いついたかという形でしたが、一昨年のW杯進出失敗でまた男女逆転という感じです。この夏の女子W杯の結果や内容次第では女子がまた上へいくかも。TVコマーシャルを見ても女子の代表選手は何人も見かけますが、男子は既に引退したLandon DonovanやClint Dempsey以降たぶん誰も大手のCMには出ていないはず。

先日の対ベルギー戦のハーフタイムにはアメリカサッカーの一大転機となった1999年女子W杯当時の女子代表選手たちが再集結。当時爆発的人気者になったMia Hamm Graciaparaを含む全選手が紹介されていました。20年前にアメリカのサッカー人気に着火したあの当時の選手たちです。あれ以前のアメリカサッカーって見るコンテンツとしてはホント何もないに近かったもんですが。


これが女子サッカーでもプロリーグのNSWLになるとがっくり支持が落ちます。動員が良いのはPortland Thornsが突出して試合平均18,000人を動員しますが他は3,000-5,000人という動員規模のところがほとんど。その経緯はNSWL結成当時に何度か紹介してありますが、人為的にThornsに人気選手を集めてそこで動員を稼ぐという当初の目論見通りではあります。@Portland Thornsでの試合の様子を撮影しておけばメジャーっぽく見える絵は撮れることになりますが、いかんせん他のチームは苦戦、TV視聴はまったく伸びない。動員の弱いチームは解散移転を余儀なくされている。そんな具合です。
言い方を変えるとNWSLはPortland Thornsに米女子代表の人気を落とし込んで命脈を保っているとも言えます。


Gallup社のスポーツ市場調査結果を見ても自己をサッカーファンと回答する人は常に女性の方が多いです。それらの女性サッカーファンの多くが念頭に置いているのはたぶん圧倒的に米女子代表チームのことであるわけです。サッカーファンの内訳で、例のサッカー狂のヒスパニックを凌ごうかという大きなボリュームがあるのがこの女子代表のファンということになります。


サッカー女子代表の人気はその大きさもさることながら、ファン層の特殊さに強みがあります。他のスポーツジャンルにはほとんど関心を払わないような若い女性ファンが多い。これは企業からすると大いに意味があります。ジャンルごとの市場調査は購買力を計る意味が強いのであまり18歳以下の人数は重視されないのですが、18歳以下をいれると一択調査のFavorite sportsとしてのサッカーの人気はさらに大変なことになるんですが、その中身はサッカー女子代表だけに興味のある非ヒスパニックの白人のティーンの少女たちが大きな割合を占めます。そういう事実があるのでこの層をターゲットにする商品を売るには女子代表チームという存在は大きな意味があります。他にこの購買層に絞って訴えかけられるスポーツジャンルは存在しないので。

但しこのファン層は中期的にはとても弱いファン層でもあります。現在ファンと自認している10代の女子が20代、さらに30代40代になったときにまだスポーツファンでいてくれるか、サッカーの試合を見るか、というとこれが見なくなっちゃうんですよね。またはスポーツファンとしては残ったとしても家庭を持った時点でパートナーの男性の好みに引きずられて伝統的なアメスポ種目に移行したりもする。この先もサッカーファンでいてくれる可能性はあまり高くないファン層なのです。
そもそもが自己投影できる若い白人選手が大半であるゆえに女子代表を応援しているのであって、別にサッカーという競技を特に愛しているというわけでもない、とさえ言えるかもしれない。近い将来にこの層の関心を取り合う競争相手は他のスポーツや男子サッカーなどではなく、ファッションであったり女性ヒーローをフィーチャーしたアクション映画だったりするのでしょう。昨今のアメリカ映画はその手のものが毎月のように公開されて安定した興行成績を出します。


種目は違いますがさらにもう一例を挙げてサッカーの人気の中身の今後の推移についての示唆を。これは過去に当ブログでも何度か取り上げた話なので以前からの当ブログの読者の方はまたかという話で申し訳ないでんですが一応。
1990年代にバスケNBAが一時的にMLBを人気で抜いた、と称された時期がありました。NBAが世界的スーパースターとなったMichael Jordanを擁し、さらには1992年のバルセロナ五輪のDream Teamで全米を熱狂させてその人気を上げていた時期と、MLBが労働争議でシーズンを消滅させファンの怒りをかって動員を激減させた時期がリンクしたため、その時点の様々な人気指標でNBAがMLBを抜いたのです。これは当時かなりの驚きをもって受け止められました。

その後Jordanは引退、MLBにもスト後数年でファンが戻ってアメスポ序列はMLBが2位、NBAが3位と定位置に元に戻ったのですが、その時期の統計で指摘されていたのが、バスケは若者のファンが圧倒的に多いという事実でした。当時の調査で20−30代の若いファンがMLBよりずっと多かったのです。NFLよりも割合は高かった。当時上り坂のNBAに若いファンが多いという事実はNBAの将来をバラ色に見せたわけです。

でそれから30年。それがどうなったかというと実はあまり事情は変わっていません。いまもNBAはメジャースポーツの中で最も若い年代のファンの割合の多いジャンルです。それはそれで良いのですが、疑問があります。
Jordan時代にNBAに熱狂したはずの当時の20代はいま50歳代に、30代は60代になっているはずなんですが、いまもって50代以上のスポーツファンの数はNBAよりMLBやNFLの方が明確に多い。
あれ?30年前の若いNBAファンというのはどこへ行ってしまったの?という謎になります。1990年代にfavorite sportsをNBAだと答えていた人たちが大量に30年後の現在別の回答をしていないとこういう結果にはなりません。
なぜかはわかりません。年齢が行くとバスケに魅力を感じなくなる?リズムが合わなくなる?家庭を持つとバスケを見なくなる?彼らはいま何を見ている?疑問は多々あれ全体の数字ははっきりしている。当時の若いバスケファンは年齢をとるにしたがって蒸発してしまっています。

NBAの人気は全体としては下がってはいないのでそれ自体はさしたる問題ではないものの、1990年代にいた多くの若いファンを(少なくとも一択回答だと)掴み続けられてはいないかったというのは事実です。どうもジャンルごとのファン層の特性というものがあるようで、NBAのファン層は若い方に寄ったままの年齢配分が今も昔も続いているんですね。Jordan時代のファンの年齢配分を知って、NBAが20年後30年後には上のお金を持ってる世代でもアメスポ界を席巻するという予想を立てた方があればその予想は外れたことになります。

女子サッカーを支持する少女〜20代近辺の女性サッカーファンの厚みにかなり依存しているアメリカの「サッカーファン」の総数は以上の理由でこの先にさらに伸びるかは簡単には見通しにくいということになります。

「サッカー人気の中身」と題しての連載を通じて、女子代表のファンとヒスパニックのファンがアメリカサッカーの二大支持コア層だと指摘してみたわけです。ヒスパニックの方は人口増加が続いているのでそれにのってその層のサッカーファンは増える可能性があります(これも三世以降のアメリカナイズがどう影響していくか次第)が、女子代表ファンが増え続けるかは疑問がかなり残るところでしょう。NBAがそうであったように常に同じ年齢層のファンが残る形になる可能性はかなりありそうです。



「サッカーの人気の中身」シリーズの連載分へのリンクは「ヒスパニック編」「MLS Our Soccer編」「Gallup調査編」「南部の偏見編」、そして今回の分が「女子代表編」です。

不正入学問題、スポーツ関係あるのか

最初はESPNを見ていて下に出る速報のところに出ていて知りました。50人規模でカレッジのコーチやADなどが賄賂(英語だと短信では贈賄か収賄かわからなかった)で訴追されたとなっていました。時期が時期なのでまたバスケ関連の裏金でのリクルートの話かなと思ってESPNの記事をちらっと読んだら訴追された人たちは女子サッカーとか水球だとかボートだテニスのコーチだと。そこで「???」になってしまいました。それらはカレッジでは完全な赤字スポーツ。それらの競技のために大学がカネを払って学生を獲るとも思えず。

その後非スポーツニュースでの報道で別の切り口で話を聞いてやっと理解したように思います。コーチたちは収賄側と。たぶんスポーツ特待は隠れ蓑ってことですね。つまりスポーツ特待なら並以下の成績の困った子でも入れてくれるからという。まあそうなんですが。

ざっと想像するにそれらの赤字スポーツのコーチは大したサラリー貰っていないから賄賂に弱いんでしょう。普段、同じ建物で顔をあわせている男子バスケやフットボールのコーチたちはマイナー競技のHCの数十倍も貰っているのを知ってる。メジャー競技のアシスタントでもマイナー競技のHCの何倍も貰ってるでしょう。それでお金に関する不満がたまりがちとか。

でまあ話を理解してから、元の速報を考えてみると、それってスポーツニュースなのか?速報まですべきことだったのか?という気もします。カレッジの女子サッカーとか水球とか報道されているような競技なんてESPNは普段洟もかけてないのに?と。

ここでも尾を引く男子サッカー代表のW杯出場失敗

サッカー女子代表チームの選手全員が原告となった訴えが連邦裁判所に提出されています。同じ仕事をしているのに存在する男女間の賃金格差の是正を求めています。

この問題は男子にとっては痛いタイミングでの訴えと言えます。昨年のW杯への出場に失敗した男子代表は黙って耐えるしかないんでしょう。女子の方も前回のW杯優勝から年数が経過、前回の五輪でのメダル獲得失敗とさほど盛り上がっている時期ではないのですが、まあこれからW杯が近づいて各選手のメディアでの露出が増えてこの件について語る機会も増えていくのでしょう。

細かい数字の中身は存じませんが、全般的にはたぶんこの訴えは通る可能性はそこそこ高いように見えます。男子のサッカー代表の人気の高い多くの国と違って米男子代表の人気はあまり高いとは言えない。新代表監督が就任して迎えた先月の初の代表戦2試合も動員が低調。対パナマ戦9,040人、対コスタリカ戦13,656人と発表になってます。コスタリカ戦の方は収容2万人に満たないMLSスタジアムでやったので7割方埋まっておりTVで見てる限りさほど空席は目立ちませんでしたが、パナマ戦は収容6万人を超える大型スタジアムでやってしまったので寂しさが半端なかったです。大量の空席が映るのを避けるように絞ったTVアングルが多くて苦労してるな、という感じでした。現地のレポートだと実際は7,000人もいなかったのではないかという話もネット上のコミュニティで語られていました。場所は温暖なアリゾナ州での話なので寒さが不入りの理由ではありません。

女子代表の動員もピークの頃からはかなり落ちてますが、男子ほどのひどい落ち込みはない。つい先日やっていたSheBelievs Cupでは3試合で14,500, 22,000, 14,000と動員してます。動員の人数だけではチケット単価がわからないので収入で男子との差がどうなっているかまではわかりませんが、少なくとも男子と比較して桁違いに動員力の劣る他国の女子代表とは事情が違って、米国では女子代表も男子代表と比肩するレベルの動員力を持っていることは確実で、その意味でも訴えの内容は第三者にも理解しやすいものと言えましょう。現役のサッカー選手で最も知名度が高いのは女子のAlex Morganで、どの男子選手よりも明瞭に上でもあるでしょうし。
男女別の代表の収入についてこのNew York Timesの記事によると2016年では女子の方が男子より収入が多かった、この資料が出た時点の予測では翌2017年も女子の方が収入が多い予想であったとか。4年前のW杯優勝後に「Victory Tour」と銘打って女子代表チームが全米10都市を巡業したときにはどこも盛況で$10 million単位の収入を米サッカー協会へもたらしたともされます。

訴えは起こしたもののそれが短期で判決が出るものとは選手たちも思ってはいないことでしょう。W杯が近づき露出が増えるタイミングでそれについて選手やメディアのライターがそれを語る機会が多くなるのがポイント。米サッカー協会としては悪者になりたくないので解決できるなら選手たちからの批判コメントが一般に広まる前になんとか処理してしまいたいでしょうが、たぶんそうはならない。
男子にはW杯からの巨額の分配金があるのでそちらを加味すると男子代表が弱くてもカネになっているから男子選手には高い金額が出せるという理屈なのは承知してますが、その理屈が連邦裁判所で通るかどうかはわかりません。裁判所が判断するのは、同じ仕事をしているのに賃金が違うのが性差が原因であるか否かなので。そのW杯分配金を男子代表が稼いでいると認定されうるかどうかは難しいところがあります。判決が出て、協会の側の主張が通らないとその後も継続的に男子代表のサラリーが女子代表のそれと連動することになって協会のさじ加減でどうこうできるものでなくなってしまいますから協会としては和解してしまいたいところですが、どうなるか。

女子版International Champions Cup@Hard Rock Stadium

男子の方は既に6年目に入ったサッカーInternational Champions Cupですが、今年からは女子版もできていたんですね。4クラブによる初のWomen's International Champions CupがMiamiで準決勝・決勝とも開催されています。
出場チームはNWSLのNorth Carolina Courageが昨季2017年のレギュラーシーズン王者としての資格で出場。フランスからLyonとParis Saint-Germain、英国からManchester Cityが参加してのトーナメントで、各チームが二試合を戦う形式。決勝はESPN2で放映していました。会場はお馴染みのHard Rock Stadium。ガラガラほぼ空の状態での興行になってます。夏場のマイアミで女子サッカー。ビジターはフランスと英国のチーム。うーん。お客さんが入りそうな気がしません。なぜこの企画で収容約65,000人の大箱のHard Rock Stadiumを2日も使うことにしたんでしょうか。損得無視で男女同待遇アピールでしょうか。あまりにもガラガラ過ぎて選手が気の毒な感じすらします。

実は現在女子サッカーは2018 Tournament of Nationsも米国内で開催中です。こちらは国代表同士の大会。ホスト米代表に加えてオーストラリア、ブラジル、日本の4カ国での総当たりの形式。昨年2017年が初年度で、今年は二回目。
昨年はオーストラリアが対米代表を含め3戦全勝で優勝を遂げてます。米女子代表がオーストラリア代表に敗戦したのは昨年の同大会が初。過去圧倒的な強さで人気を得てきた米女子代表がホームで過去負け無しの相手に負けるほど各国の力が接近してきていることを認識させた昨年でした。

それを受けた今年、今日第2戦で対戦した米 x  オーストラリア戦はまたも米代表大苦戦。90分になんとか同点ゴールを決めて辛くも1-1の引分に持ち込んだものの、昨年の借りを返すことには失敗。昨年の勝利でオーストラリアが自信を持ってしまって引いてくれないし、昔のように米代表が高圧的に主導権を握るような試合はできなくなってます。大会優勝は次週の一戦を残して米代表がタイブレーカーを握っており自力での初優勝が見込めますが、来年の女子W杯を見通すとまだまだ今大会後も苦労しそうであります。
今年のTournament of NationsはMLSの収容20,000人前後のスタジアムを使って開催してます(UConnのフットボールスタジアムは少し大きいですが)。一時期よりは落ちたものの米女子代表人気もあるので概ねスタジアムは埋まってます。昨年はNFLスタジアムを使用して開催してかなり空き席が目立ちました。今年のこれが現在の米女子代表の動員能力に適正の会場規模だと思いますし、これぐらいだと雰囲気も悪くない。この記事の前半の話を蒸し返しますがそれに対して一体女子版ICCの方の65,000人収容の大会場使用はなんだったんでしょうか。二戦ともにマイアミ開催=試合の合間にマイアミビーチでのバカンス込とでも言って参加クラブを勧誘でもしたんでしょうか。

NWSL Boston解散

女子プロサッカーのNWSLのBoston Breakersが2018年シーズンを前に活動を停止したのを発表しています。所属選手(ドラフトで指名された選手を含む)はNWSLの残りの9チームが吸収する手はずに。Boston BreakersはNWSLが創設される以前の女子プロリーグであったWPSやWUSA(2001年創設)にも参加してきた女子プロサッカーでは歴史の長いチームですが、ここで息切れして離脱となりました。昨年2017年シーズンのBostonの平均動員が2,900人で全10チーム中8位。先が見えないということですか。
NWSLの昨季のリーグ動員平均は約5000人。でもこの数字はミスリーディングなのです。動員首位のPortland Thornsがダントツで17,600人を叩き出して平均の数字を引き上げているだけで10チーム中平均動員を超えているのはこのPortlandと2016年に参加し始めたOrlando Prideの2チームだけ。
動員8位のBostonが今回離脱を決めましたが、動員最下位だったKansas Cityは昨季を最後に移転して2018年シーズンからは新本拠のUtahでUtah Royals FCとして再出発に希望をつなぐ(というと聞こえは良いですが実際はKansas Cityでは失敗撤退)。動員9位のSky Blue FC(東海岸New Jersey)はWPS当時に優勝もしている女子プロサッカーでは優秀なチームのはずですが動員ではWPS当時からずっと下位を低迷。Bostonより先にギブアップしていても不思議ではなかったチームです。リーグとして低空飛行で新たな投資家が登場する可能性も低い。女子サッカー代表の人気を国内リーグに繋げられないままにジリ貧状態と言っていいかと思われます。唯一成功しているPortlandのようなビジネスをどう他のフランチャイズで実現できるのか。なかなか大変そうです。

アメリカでのスポーツ支持調査などでしばしばサッカーが若年層でメジャースポーツに匹敵するような数字を出します。あれは女子中高生などの女子サッカー代表への支持がサッカーへの支持に大量に含まれているわけです。調査対象の半分は女子なので。その層は別にサッカーというスポーツを愛しているわけでもなくほぼ唯一の女子スポーツのメジャーな存在である女子代表サッカーにシンパシーを感じて支持しているのであって、サッカーという競技の支持としてはとても弱い支持と言って良い。彼女たちはNWSLの試合に足を運ばないし、MLSやEPLといった男子サッカーの試合のTV観戦でも数字になってくれない。その辺りを、女子にはサッカーファンがたくさんいる、と見誤って女子プロサッカーリーグイケるのでは、と投資してしまうと現実にがっかりということになるわけです。なかなか難しいところです。

女子サッカー人気の頼みの綱である女子代表も将来が不安です。先週末に終了した女子のU-20 World CupのCONCACAF予選で米代表は優勝を逃してます。決勝でメキシコに1−1からのPK戦で敗退。準決勝ではハイチを相手に1−1でPK戦でなんとか下している。本戦にはメキシコ・米国・ハイチが出場決定(カナダ落選)。たかがU-20、たかが予選ではありますが、圧倒的にフィジカルでまさるメキシコやサッカー無名国ハイチを相手にぎりぎりの試合をさせられてしまう。数年先にはこの世代がフル代表を担っていくわけです。既にフル代表ではその昔のように米代表が相手を次々となぎ倒すような試合はできなくなっている。それどころか数年のうちにCONCACAF内ですらフル代表で苦戦させられる未来もありうる、というのがU-20予選が示唆することです。そうなったときに過去の女子米代表の勝ちっぷりの爽快感でファンになっていた少女たちの支持をサッカーは繋ぎ止められるんでしょうか。移り気な若いファンの支持を取り付けるのはそう簡単ではないのではと危惧します。ここがうまくいかないとスポーツ支持調査全体でのサッカーの支持の数字にも相当響くはずです。

南ア女子サッカーの進歩

サッカー米女子代表が南アフリカ女子代表との親善試合をしているのを見ました。都合で全編を見ることができなかったのですが、南アの巧みなつなぐサッカーに感心させられる試合となりました。結果は米代表が1-0で勝ったのですが、過去の力関係や双方のかけている予算などから考えたら1−0というスコアも、内容も南アの健闘と進歩ばかりが目に付く試合。

南アの選手たちの根本的なフィジカルは足りず、パスは距離は飛ばないしボールのスピードも遅い。但し意図するサッカーはよく見える。うまく中盤でパスでスピードで勝る米代表の選手たちを翻弄して得点チャンスを切り開いていて、え南ア女子ってこんな気の利いたサッカーができるのかと意外に思いました。両国ともリオ五輪へ出場します。南アはホストブラジルと同組。米女子相手にこれほど健闘できるなら個人の技量で勝るブラジル相手でもおもしろい試合をするのかもしれません。

米代表の方はどうでしょう。ベストメンバーからは数人のレギュラーが抜けて1.5軍程度のメンバーでしたが、良くも悪くもアメリカらしい試合ぶり。格下相手に得意の押し潰すような試合ができず。女子サッカーの広まりで今後はこういう試合が増えて、高圧的な試合ができなくなっていくのを予感させるような試合であったようにも見えました。

NFL Chicago Bearsの本拠地Solder Fieldに19,272人を集めての試合。集まった多くのファンにとっては米代表の良い所を十分に見せられなかった試合になってしまったかもしれません。

男女賃金格差訴訟

米サッカー協会を相手取って女子代表チームが男女間の代表出場給の格差を問題として訴訟を起こしています。サッカーの男女での経済規模の格差はアメリカを除く全ての国で巨大なのでしょうが、ことアメリカだけに限ると事態が違うのもまた事実。訴訟の内容自体もアメリカぽくておもしろいです。

訴状の内容もおもしろいです。曰く「女子代表の方が男子代表よりも多くの収入をもたらしているのに、女子代表選手たちの受け取る補償は男子の1/4以下だ」というくだりなんかもあって、他の国ではあり得ないアメリカサッカー独自の問題なんだなあと思わされる訴訟になりそうです。

アメリカで最も人気のあるサッカーチームが米女子代表チームなのは間違いありません。ひょっとしたら男子メキシコ代表チームが米女子代表より上かもという疑いはありますが、少なくとも米女子代表が米男子代表を上回っていることは確実です。しかしそれが訴状の言うように「女子の方が収入が多い」というのは微妙な点が多く、訴状が正しいかどうか訴訟を通じて米サッカー協会の帳簿の精査がなされるという点に最も意義があるということになりそうです。

男子の方はつい先日プレーオフに敗れてリオ五輪出場失敗。ロンドン五輪に続いて二大会連続での五輪本戦出場失敗となってます。ご存じの通り男子五輪はU-23なので、フル代表の女子の五輪チームとは意味が違いますがそれでも「女子サッカーは世界最強、男子サッカーは弱い」という一般のイメージをまた強化させる結果に終わったと言えます。メディアへの露出でも女子人気選手の方が圧倒的に多いし知名度も高い。Clint Dempseyでは「誰?」という人が多いでしょうがAlex Morganや(引退しましたが)Abby Wambachなら知らない人は少ないはず。

ただ訴状の言うように女子の方が収入が多いという点は本当のところどうなのかはよくわからない。ざっと私の視線から観察すると、女子の方が細かく全米行脚して親善試合興業で稼いでいるのはわかります。女子代表の親善試合の場合の相手の国はどこが相手でもほぼ関係なく動員でき、たぶん相手国への出場支払いも極低い金額でしょう。男子の方は女子ほど試合数を国内でこなせないし、公式戦は女子より多いですがCONCACAFへの上納金もあるので女子の親善試合ほど米協会に入るカネは多くないはず。弱小国相手の試合だとお客もあまり入ってくれないのも女子と違う。女子の場合は弱い国を相手に10-0とかいう試合をやってもファンは喜んでくれますが、男子だとそういうカードではチケットが売れない。わざわざ会場に来てくれない。大箱のスタジアムでの動員が見込めるサッカー強豪国を相手を招請しようとすると多額の出場コストがかかる。そんなこんなを考えると一試合ごとの協会への実入りだと女子の試合の方が儲かるという可能性は十分にあるのです。その上女子代表の方が試合数が多いですから訴状の言うような女子の方が収入が多いというのは一面の事実があるのかもしれないわけです。

他方、サッカーの一大イベントであるワールドカップからの分配金のことを考えると男子側の収入は大幅にアップする。女子W杯からも分配金はありますが微々たるもの。男子とは文字通り桁違い。

協会側からの言い分としては、まったく経済性のなかった女子サッカーに長年投資してきて今があるのだから、女子サッカーの人気がピークになった昨年を基準に論ずるのはおかしい、という言い分もある。それもこれも実際にこの訴訟を通じて協会の帳簿を精査できるという点で決着がつきそうで、その辺ははっきり白黒つけられて良いんじゃないかと思います。

尚、この訴訟の原告の弁護士代理人はスポーツ訴訟のベテランで、最近だとNFLの例のDeflategateでの出場停止問題でTom Bradyの代理人としてNFLを打ち負かした方です。そういうプロ中のプロの方が引き受けたということは勝ち目がある訴訟なのであろうと考えられます。

サッカー米女子代表は代替わり進行中

前項の通りで日曜日はNFLは見ずサッカーばかり見ていたわけです。MLSはプレーオフ争いの公平を期すため各地の試合開始時刻が午後の部(5PM~)と夜の部に統一されていたため午後の部が始まるまでは女子代表サッカーが放送されていまして、久しぶりに女子代表を観戦。

相手は来年のリオ五輪で金メダルを狙って強化中のブラジル代表。ブラジルでは今年になって初めて女子代表の強化に乗り出しているそうです。過去の女子の国際大会で上位に食い込んできていたブラジルですが突出した個の力で勝っていたのが、競争レベルが上がった昨今ではそれでは勝てなくなってしまった。昨年のW杯カナダ大会ではトーナメント初戦でオーストラリアに敗戦したのは記憶に新しいところ。これはブラジルに限ったことではないですが先進国以外での女子スポーツは予算も理解もなかなか得られないことが多い。経済規模も大きくなっている、そしてサッカーが強いブラジルですら今年からやっと強化予算が出て長期の合宿が可能になったのだそうです。それも来年の五輪があるからで、リオ五輪を過ぎたらその予算も継続するかどうかわからないとか。女子アスリートの皆さんはアメリカにせよ日本にせよ恵まれていると言えるのでしょう。男子と比較するといろいろ愚痴もあるんでしょうが、他国の女子選手たちとは比較にならない好待遇とも言えるし、見方次第でしょうか。

この日はNWSLのMVPも受賞したLauren Holidayと、Lori Chalupnyの代表引退試合。Holidayの方は代表だけでなく選手生活の最後の試合です。まだ28歳、来年の五輪もその先も本人が望めば十分に現役を続けられるであろう余力を残しての選手引退。その事情は以前にも少し触れました。幸せな選手生活と明るい見通しのその後の生活。大変結構なことと思います。

それより先に引退するのかと思われたAbby Wambach、Hope Solo、Christie Rampone

Shannon Boxxなど大ベテランの代表たちは来年の五輪まではどうも続けるみたいですね。RamponeやBoxxは本人が続けたくても落選する可能性もかなり高くなってきてますが。

ベテランを蹴落としそうな選手たちがこの日活躍。連続先発の座を得ているCrystal Dunn23歳。この選手はDFとして登録されていますが攻守MFやウィングもできるという万能型。この日はこぼれ球を押し込んで得点。大柄な選手の多い米代表の中では二回りぐらい小さい体躯。これからどういうポジションを代表の中で占めていくのか楽しみです。もうひとりStephanie McCaffreyが代表初招集で初ゴール。難しい高い球にうまく足で合わせてのゴール。センスは良さそうとは言えあのゴールシーンだけでは評価しようもないですが、多彩な才能の揃う米女子代表のフォワードにわざわざ呼んでみようと首脳陣に思わせるだけの何かがある選手なんでしょう。米女子代表の新陳代謝がうまく行ってる感じがぷんぷんする試合となりました。

北米におけるサッカー内の女子人気の特殊性の例

Morgan Sinclair fifa 16 cover


これがEA SportsのFIFA 16の北米版のパッケージ写真です。北米以外ではMessiだけ(のはず。他の国で独自パッケージがあるなら知りたいです) 米国内では右側のAlex Morganが、カナダでは左のChristine Sinclair(カナダ女子代表)がMessiと並んで登場。北米でのサッカー人気の市場を外から知る上でこのパッケージはけっこうなインパクトがあるんじゃないでしょうか。女子の起用は史上初。

現在オンエア中の同製品のTVコマーシャルでもMorganは登場して男子選手からボールをタックルで奪うシーンが出てきます。

当ブログでは何度となくアメリカに於けるサッカーの特殊な人気構造について指摘してきたわけですが今回のパッケージには少々驚きました。女子サッカーの人気が男子よりも高い傾向にあるのは確かでもあるし夏のカナダ女子W杯の盛り上がりからこうなったのもそうでしょう。驚いたのはここまでメインに押し出していいのか?という点。一般に年少の男子は女子を押し出したものを避けます。例としてはハリーポッターシリーズの作者であるJ. K. RowlingがファーストネームをJ. K. としたのは作者の性別をぼかすためですね。想定読者層だった年少の男子は女性作者の作品を避ける傾向があるのをかわすためにわざわざ性別のわからないJ. K.としたわけです。色眼鏡なく読者に読んで貰いたかったということです。それはマーケティングテクニックとしては正しいわけですが、今回のFIFA 16のパッケージはその真逆を行ってます。思い切って女子側に振っている。女性購入者もいるのかもしれませんがビデオゲーム、それもスポーツテーマのものを女子側に振っていいのか?というのが私の驚きの中身です。今回のマーケティング的冒険がこれからのクリスマス商戦でどう出るのかちょっと楽しみです。ともかく北米におけるサッカー人気において「女子」は無視できない存在であるのを再確認させる独自パッケージであるのはまちがいないようです。

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