アメリカスポーツ三昧

アメリカ永住コースか、または第三国に出国か!?スリルとサスペンスの人生とは別にアメスポは楽しい。

女子サッカー

政治の季節

4年に一度の大統領選挙年は来年2020年。今夜はホワイトハウス奪回を期する野党民主党の大統領選挙候補者による第一回の公開討論会が行われています。来年11月の大統領選本番までまだ15ヶ月以上もある時点ではありますが長い長いレースは既にスタートということになります。

前回の大統領選の2016年はトランプ対ヒラリークリントンと知名度の高い(しかし好感度は低かった)2人の激突であったため投票日までの夏からの数ヶ月の公開討論会などの番組が大いに注目を集めてアメスポ最強のNFLまでもがその視聴率で負の影響を受けたとされます。トランプが再選を目指す来年の選挙年もまた4年前と同じように盛り上がる=アメスポすら押しのけるのか。

前回選挙のときはアメスポだとNFL New England PatriotsのHC Bill BelichickやオーナーのRobert Kraftはトランプ支持でした。Tom Bradyもそうだったとされます。あれから時は移ったのにBelichickが健在なのはともかくBradyすら健在というのもすごいです。他方Kraftオーナーは買春疑惑で動きが止まり3人の中で一番影響力が低下しているという意外な展開になってますね。当時は下品な物言いのトランプ支持を声高に言うと恥ずかしいという雰囲気があったのがここまで2年半の実績でかなり風向きが変わったという気がします。

前任のオバマ大統領が推し進めたLGBTの権利擁護が争点にも票にもならなかったのも反トランプ陣営にとっては痛かったというのが前回選挙での民主党候補の敗戦の理由のひとつとされます。当時LGBTの風に乗って民主党候補を推せる最も知名度の高かったアスリートはサッカー女子代表のエースだったAbby Wambachだったはずですが、そのWambachは選挙年の4月に酩酊運転で検挙、コカイン使用まで告白せざるを得ない羽目となってとても応援に出られる状態ではなくなりました。今回は薬物談義は避けます。
女子サッカーもアメリカ大統領選も1サイクルを経て次回のLGBT側からの刺客となるのはAbbyの長年の代表チームメイトでもあったMegan Rapinoeとなります。

RapinoeはW杯優勝後に大手出版社との間でサッカーから政治まで幅広く語りまくる予定の自著の出版契約を結んでます。早くて年末、たぶん来年の出版になるのでしょうがこれは政治の季節にも乗って売れるでしょうね。LGBT関連だけでなく、元San Francisco 49ers QB Colin Kaepernickが始めた国歌演奏時の膝付きにもRapinoeは参加しておりマイノリティ一般への政治の不備不満を語れる立場の選手でもあります。また女子代表が提起している米代表選手の男女の賃金格差是正という大きな問題もあり、様々な層の不満の代弁者になれる選手ということになりそうです。
Abbyもおしゃべりはうまい方でしたが、Rapinoeもウィットが効いたスピーチが得意。反トランプ陣営からすれば大いに活用したい人材であろうかと思います。例えばKaepernickは膝付き運動を始めた人物でその行動の是非はあれ勇気はあったと思いますが、いかんせん新陳代謝の流れの早いNFLではとうに過去の人になってしまっている。その点Rapinoeはいまも現役選手。代表には来年の五輪出場という舞台も残っている。今年のW杯制覇の実績もあるため五輪を通じての大量の露出は既に確保しています。年齢的(34歳)には次のサイクルまで残ることはないためこの五輪が現役最後の舞台となるので五輪優勝後に派手な大統領選向けメッセージを飛ばす可能性もありそうです。

W杯その後 祝勝ツアー 男女同報酬問題

サッカー女子代表がW杯で優勝した余勢をかって8〜10月に5試合の全米ツアー興行をすることが発表されています。但し初戦を収容9万人余のRose Bowlで開催すると発表した以外の4試合は開催日は決まっています(TV局側の都合上)が開催地がなかなか発表にならなず、各地のファンがやきもきという状態になってます。

前回2015年カナダ大会での優勝時には同じように優勝後にVictory Tour 6試合を開催。当時の開催地はPittsburgh、Chattanooga、Detroit、Birmingham, AL、Seattle、Orlando。開催時期がアメスポジャンル1位&2位のNFLとカレッジフットボールのシーズンにかぶるのもあって、開催地はそれを避けた感のある都市名が並んでます。
体感的に言って今年2019年大会での国内での盛り上がりは2015年よりかなり上だったように思えるので、ひょっとしたら思い切ってフットボールに勝負を臨むような意欲的な興行を模索しているのかもしれませんが、同時にシーズンがかぶるので大箱のスタジアムの手当に苦戦している可能性もあります。日程だけは先に決まっているだけに柔軟なスケジュールは組みにくいですし。

うがった見方をすると女子代表が米サッカー協会とモメている代表選手への待遇闘争への反感もあって積極的には貸してくれないスタジアムもあるのかも。南部であるとかMLSのスタジアムとかだと絶対にないとは言えないような気もします。


そのEqual Pay男女報酬格差是正の問題ですが、大会終了直後にはMegan RapinoeやAlex Morganはマスコミに多く露出してやんわりとその主張を繰り広げていました(例1)。おおむねクリーンに勝ってしまったので彼女たちは余裕、あまり強く口に出してこの問題の主張をする必要がないんですね。人気トークショーのホストが「どうして同等の報酬を受取るべきだと主張してるんですか?男子は弱いんだから女子の方がもっと報酬もらうべきなんじゃないの?」などと勝手に話を盛り上げてくれたりするわけです。深夜のトークショーや、朝の定番番組など非スポーツファンでない人が見る番組に多く登場して問題提起をできているのもおいしいところでしょう。

反面防戦側のサッカー協会の方はどうもセンスが悪いです。この流れではほぼ男子代表と同等かはともかく、大幅な女子選手の報酬アップを受け入れなくてはいけなくなるのは避けがたいように見受けますが、サッカー協会長はこのタイミングでもまだスピーチで渋って待遇改善策について予防線を張ってるのが目立つ。男女間の協会内のパワーバランスなど様々事情はあるんでしょうが、対外的なイメージ戦略という意味では思い切って決断しちゃった方が良いんじゃないのかなとも思いますが。勢いのあるいま妥結すると振りなのでほとぼりが冷めるまで放置するつもりか。来年は五輪もありますから引き伸ばし策はあまり有効ではないような気がしますがどうか。

女子代表の方が余裕でその主張を浸透させつつある中、男子側は完全にだんまり。黙らざるを得ない。女子W杯と平行して開催されていた男子代表が出場したCONCACAF Gold Cup。決勝は4大会ぶりにメキシコ対米代表の最も視聴者を集める可能性のある決勝戦のカードとなりました。女子W杯の決勝と同日の夜の試合だったのですがこちらの視聴者数は152万人。
女子決勝の方は既報の通り1427万人。女子決勝は昨年の男子W杯の決勝以上の視聴者数を集めており、Gold Cup程度ではベストカードでもまったく太刀打ちできませんでした。ちなみにGold Cupの優勝はメキシコ。

女子W杯とGold Cup(および南米Copa America)が同時期に開催されることについてはMegan Rapinoeがサッカーファンの興味が分散する(言外に女子W杯への興味を削ぐために重ねてきた、FIFAの陰謀じゃないか)と事前に文句を言っていたのですが、こと米国内に関してはGold Cupが女子W杯に影響した可能性はほとんどないと言って良いのでしょう。どちらかというと女子W杯試合放映中にその晩のGold Cupの試合を大会期間中ずっと宣伝できた(両者ともにFOX系列での放送)男子Gold Cup側により恩恵があったかと思われます。
その上で女子側完勝なのですから、結果的にはその人気の差を見せつけることができてGold Cupと同時開催だったのは米女子代表に有利に働いたことになります。

米女子代表W杯二連覇達成 そして会場は「男女同待遇」のチャント

FIFA女子W杯決勝が行われ米女子代表が2-0で勝利を収めて大会史上初の二連覇を達成してます。米代表の人気者Megan RapinoeがGolden BootとGolden Ball賞の両取り。決勝で鮮やかなゴールを決めた若手24歳Rose LavelleがBronze Ball賞を獲得。大会初戦のタイ戦で5ゴールを量産したAlex Morganはその後ゴールが伸びずRapinoeと同数の6ゴールでSilver Boot賞獲得にとどまりました。

今回がW杯初出場となったLavelleが賞や決勝戦のゴールで目立てたのは来年の五輪、そしてその後の女子代表の代替わりを考えると人気の引き継ぎとなって良かったんじゃないでしょうか。日本の方から見るとどう映るかわかりませんが、アメリカ人的視線でいうと顔立ちや脚の細さなどでLavelleはそこらへんの小学生のように見えます。スピードと突破力を買われて代表で頭角を現した選手ですが、キャラ立ちもしそう。今大会で自信をつけて来年の東京五輪では中心選手となっていきそうです。

試合の方はいつもながらの米女子代表の試合。フィットネス任せ、あとは一部の選手の決定力頼みでサッカーとしては美しくないんですけど、まあアメリカ人向けにはこんなものでいいのでしょう。

それにしても今大会はアメリカ人応援団の多かったのが大変目立ちました。この日の決勝の観衆も大多数がアメリカ人だったんじゃないでしょうか。先日のMLBのYankees x Red Soxのロンドン興行のときも思いましたがアメリカ人ってスポーツ観戦で遠征という旅行パターンが好きですね。逆にいうとアメリカ人はそうでない普通の旅行が下手です(この点は話としてはおもしろい話ができると思うのですが、スポーツと関係ない話になるので我慢してやめておきます)。


表彰式の最中から「Equal Pay! Equal Pay!」とそのアメリカ応援団から大きなチャントが挙がっていたようです。男女の待遇を同等にせよというチャントです。既報の通り現在女子代表は米サッカー協会を相手取って男女の待遇差を巡って訴訟中。優勝した直後にNike提供の気合の入ったTVコマーシャルを放映し、その中でガラスの天井をぶち破ると力強く宣言して格差排除に意欲満々。
今日の決勝の視聴率情報も数日内に出てくるでしょうが良い数字となっている可能性は高いです。他国と違ってサッカー米女子代表の視聴率は男子代表より高い。訴状によれば興行収入も女子の方が高いとか。水曜日にニューヨーク市内で祝勝パレードが予定されていますがそこでも決起集会的な盛り上がりが起こるのでしょう。

来年2020年は大統領選挙年。私の見るところトランプの対立候補が弱くてトランプの再選が有力に見えますが、正面切ってトランプに楯突ける存在・イメージリーダーとして女子サッカー代表、特にRapinoeが大統領選の応援団で活躍する可能性はあるのかなあと。4年前のときは当時の代表の顔だったAbby Wambachが違法薬物使用で逮捕という大失態を犯したためLGTBや女性の権利を応援団として大統領選に持ち込めなかったです。

サッカー女子代表またも高視聴率 

もうこうなってくるとトレンドではなく、実力という風に見るべきでしょう。FIFA女子W杯の準決勝での米代表対イングランドの試合がまた好視聴率を出してます。今大会グループリーグ初戦の対タイ戦からコンスタントに数字を出し続けていたわけですが、先週金曜日準々決勝のホスト国対フランス戦で4.9%、そして火曜日準決勝対イングランド戦の速報値で5.5%。これ、全部平日昼間の放送での数字です。女子代表の人気を支える層は昼間でも家にいるひとたちなわけですね。夏休みですからね。


女子サッカーの視聴率好調と米代表の決勝進出を受けてESPNが女子サッカーリーグNWSLの今季残りプレーオフを含む14試合を放映を決定と今日ニュースが出ていました。NWSLは女性向けチャンネル(非スポーツ局)Lifetimeでほそぼそと放送されていたりしたわけですが、女子W杯での米女子代表の様子を見てからの日和見ではありますが、とにかくESPNが夏の後半の番組としてNWSLを採用ということに。
NWSLの9チームには計55名のW杯出場選手が所属しているということです。




サッカー人気の中身 女子代表編

サッカー米女子代表の人気について以前に書きました。その動員力は男子代表にひけをとらない。直近の対オーストラリア戦で17,264人、対ベルギー戦20,941人でともに満員となってます。そしてその特殊な支持層はアメスポ内でも特筆するべきものです。


アメリカ市場で女子サッカーが人気かという質問は愚に近いです。人気があります。正確を期せばサッカー女子米代表チームは人気でしょう。男子代表にもひけをとらない、または上回る。その人気があるので「アメリカでは女子サッカーが人気」という文は真実です。
代表の人気は女子の方が1990年代に先行して、あとからやっと男子が動員力で追いついたかという形でしたが、一昨年のW杯進出失敗でまた男女逆転という感じです。この夏の女子W杯の結果や内容次第では女子がまた上へいくかも。TVコマーシャルを見ても女子の代表選手は何人も見かけますが、男子は既に引退したLandon DonovanやClint Dempsey以降たぶん誰も大手のCMには出ていないはず。

先日の対ベルギー戦のハーフタイムにはアメリカサッカーの一大転機となった1999年女子W杯当時の女子代表選手たちが再集結。当時爆発的人気者になったMia Hamm Graciaparaを含む全選手が紹介されていました。20年前にアメリカのサッカー人気に着火したあの当時の選手たちです。あれ以前のアメリカサッカーって見るコンテンツとしてはホント何もないに近かったもんですが。


これが女子サッカーでもプロリーグのNSWLになるとがっくり支持が落ちます。動員が良いのはPortland Thornsが突出して試合平均18,000人を動員しますが他は3,000-5,000人という動員規模のところがほとんど。その経緯はNSWL結成当時に何度か紹介してありますが、人為的にThornsに人気選手を集めてそこで動員を稼ぐという当初の目論見通りではあります。@Portland Thornsでの試合の様子を撮影しておけばメジャーっぽく見える絵は撮れることになりますが、いかんせん他のチームは苦戦、TV視聴はまったく伸びない。動員の弱いチームは解散移転を余儀なくされている。そんな具合です。
言い方を変えるとNWSLはPortland Thornsに米女子代表の人気を落とし込んで命脈を保っているとも言えます。


Gallup社のスポーツ市場調査結果を見ても自己をサッカーファンと回答する人は常に女性の方が多いです。それらの女性サッカーファンの多くが念頭に置いているのはたぶん圧倒的に米女子代表チームのことであるわけです。サッカーファンの内訳で、例のサッカー狂のヒスパニックを凌ごうかという大きなボリュームがあるのがこの女子代表のファンということになります。


サッカー女子代表の人気はその大きさもさることながら、ファン層の特殊さに強みがあります。他のスポーツジャンルにはほとんど関心を払わないような若い女性ファンが多い。これは企業からすると大いに意味があります。ジャンルごとの市場調査は購買力を計る意味が強いのであまり18歳以下の人数は重視されないのですが、18歳以下をいれると一択調査のFavorite sportsとしてのサッカーの人気はさらに大変なことになるんですが、その中身はサッカー女子代表だけに興味のある非ヒスパニックの白人のティーンの少女たちが大きな割合を占めます。そういう事実があるのでこの層をターゲットにする商品を売るには女子代表チームという存在は大きな意味があります。他にこの購買層に絞って訴えかけられるスポーツジャンルは存在しないので。

但しこのファン層は中期的にはとても弱いファン層でもあります。現在ファンと自認している10代の女子が20代、さらに30代40代になったときにまだスポーツファンでいてくれるか、サッカーの試合を見るか、というとこれが見なくなっちゃうんですよね。またはスポーツファンとしては残ったとしても家庭を持った時点でパートナーの男性の好みに引きずられて伝統的なアメスポ種目に移行したりもする。この先もサッカーファンでいてくれる可能性はあまり高くないファン層なのです。
そもそもが自己投影できる若い白人選手が大半であるゆえに女子代表を応援しているのであって、別にサッカーという競技を特に愛しているというわけでもない、とさえ言えるかもしれない。近い将来にこの層の関心を取り合う競争相手は他のスポーツや男子サッカーなどではなく、ファッションであったり女性ヒーローをフィーチャーしたアクション映画だったりするのでしょう。昨今のアメリカ映画はその手のものが毎月のように公開されて安定した興行成績を出します。


種目は違いますがさらにもう一例を挙げてサッカーの人気の中身の今後の推移についての示唆を。これは過去に当ブログでも何度か取り上げた話なので以前からの当ブログの読者の方はまたかという話で申し訳ないでんですが一応。
1990年代にバスケNBAが一時的にMLBを人気で抜いた、と称された時期がありました。NBAが世界的スーパースターとなったMichael Jordanを擁し、さらには1992年のバルセロナ五輪のDream Teamで全米を熱狂させてその人気を上げていた時期と、MLBが労働争議でシーズンを消滅させファンの怒りをかって動員を激減させた時期がリンクしたため、その時点の様々な人気指標でNBAがMLBを抜いたのです。これは当時かなりの驚きをもって受け止められました。

その後Jordanは引退、MLBにもスト後数年でファンが戻ってアメスポ序列はMLBが2位、NBAが3位と定位置に元に戻ったのですが、その時期の統計で指摘されていたのが、バスケは若者のファンが圧倒的に多いという事実でした。当時の調査で20−30代の若いファンがMLBよりずっと多かったのです。NFLよりも割合は高かった。当時上り坂のNBAに若いファンが多いという事実はNBAの将来をバラ色に見せたわけです。

でそれから30年。それがどうなったかというと実はあまり事情は変わっていません。いまもNBAはメジャースポーツの中で最も若い年代のファンの割合の多いジャンルです。それはそれで良いのですが、疑問があります。
Jordan時代にNBAに熱狂したはずの当時の20代はいま50歳代に、30代は60代になっているはずなんですが、いまもって50代以上のスポーツファンの数はNBAよりMLBやNFLの方が明確に多い。
あれ?30年前の若いNBAファンというのはどこへ行ってしまったの?という謎になります。1990年代にfavorite sportsをNBAだと答えていた人たちが大量に30年後の現在別の回答をしていないとこういう結果にはなりません。
なぜかはわかりません。年齢が行くとバスケに魅力を感じなくなる?リズムが合わなくなる?家庭を持つとバスケを見なくなる?彼らはいま何を見ている?疑問は多々あれ全体の数字ははっきりしている。当時の若いバスケファンは年齢をとるにしたがって蒸発してしまっています。

NBAの人気は全体としては下がってはいないのでそれ自体はさしたる問題ではないものの、1990年代にいた多くの若いファンを(少なくとも一択回答だと)掴み続けられてはいないかったというのは事実です。どうもジャンルごとのファン層の特性というものがあるようで、NBAのファン層は若い方に寄ったままの年齢配分が今も昔も続いているんですね。Jordan時代のファンの年齢配分を知って、NBAが20年後30年後には上のお金を持ってる世代でもアメスポ界を席巻するという予想を立てた方があればその予想は外れたことになります。

女子サッカーを支持する少女〜20代近辺の女性サッカーファンの厚みにかなり依存しているアメリカの「サッカーファン」の総数は以上の理由でこの先にさらに伸びるかは簡単には見通しにくいということになります。

「サッカー人気の中身」と題しての連載を通じて、女子代表のファンとヒスパニックのファンがアメリカサッカーの二大支持コア層だと指摘してみたわけです。ヒスパニックの方は人口増加が続いているのでそれにのってその層のサッカーファンは増える可能性があります(これも三世以降のアメリカナイズがどう影響していくか次第)が、女子代表ファンが増え続けるかは疑問がかなり残るところでしょう。NBAがそうであったように常に同じ年齢層のファンが残る形になる可能性はかなりありそうです。



「サッカーの人気の中身」シリーズの連載分へのリンクは「ヒスパニック編」「MLS Our Soccer編」「Gallup調査編」「南部の偏見編」、そして今回の分が「女子代表編」です。

不正入学問題、スポーツ関係あるのか

最初はESPNを見ていて下に出る速報のところに出ていて知りました。50人規模でカレッジのコーチやADなどが賄賂(英語だと短信では贈賄か収賄かわからなかった)で訴追されたとなっていました。時期が時期なのでまたバスケ関連の裏金でのリクルートの話かなと思ってESPNの記事をちらっと読んだら訴追された人たちは女子サッカーとか水球だとかボートだテニスのコーチだと。そこで「???」になってしまいました。それらはカレッジでは完全な赤字スポーツ。それらの競技のために大学がカネを払って学生を獲るとも思えず。

その後非スポーツニュースでの報道で別の切り口で話を聞いてやっと理解したように思います。コーチたちは収賄側と。たぶんスポーツ特待は隠れ蓑ってことですね。つまりスポーツ特待なら並以下の成績の困った子でも入れてくれるからという。まあそうなんですが。

ざっと想像するにそれらの赤字スポーツのコーチは大したサラリー貰っていないから賄賂に弱いんでしょう。普段、同じ建物で顔をあわせている男子バスケやフットボールのコーチたちはマイナー競技のHCの数十倍も貰っているのを知ってる。メジャー競技のアシスタントでもマイナー競技のHCの何倍も貰ってるでしょう。それでお金に関する不満がたまりがちとか。

でまあ話を理解してから、元の速報を考えてみると、それってスポーツニュースなのか?速報まですべきことだったのか?という気もします。カレッジの女子サッカーとか水球とか報道されているような競技なんてESPNは普段洟もかけてないのに?と。

ここでも尾を引く男子サッカー代表のW杯出場失敗

サッカー女子代表チームの選手全員が原告となった訴えが連邦裁判所に提出されています。同じ仕事をしているのに存在する男女間の賃金格差の是正を求めています。

この問題は男子にとっては痛いタイミングでの訴えと言えます。昨年のW杯への出場に失敗した男子代表は黙って耐えるしかないんでしょう。女子の方も前回のW杯優勝から年数が経過、前回の五輪でのメダル獲得失敗とさほど盛り上がっている時期ではないのですが、まあこれからW杯が近づいて各選手のメディアでの露出が増えてこの件について語る機会も増えていくのでしょう。

細かい数字の中身は存じませんが、全般的にはたぶんこの訴えは通る可能性はそこそこ高いように見えます。男子のサッカー代表の人気の高い多くの国と違って米男子代表の人気はあまり高いとは言えない。新代表監督が就任して迎えた先月の初の代表戦2試合も動員が低調。対パナマ戦9,040人、対コスタリカ戦13,656人と発表になってます。コスタリカ戦の方は収容2万人に満たないMLSスタジアムでやったので7割方埋まっておりTVで見てる限りさほど空席は目立ちませんでしたが、パナマ戦は収容6万人を超える大型スタジアムでやってしまったので寂しさが半端なかったです。大量の空席が映るのを避けるように絞ったTVアングルが多くて苦労してるな、という感じでした。現地のレポートだと実際は7,000人もいなかったのではないかという話もネット上のコミュニティで語られていました。場所は温暖なアリゾナ州での話なので寒さが不入りの理由ではありません。

女子代表の動員もピークの頃からはかなり落ちてますが、男子ほどのひどい落ち込みはない。つい先日やっていたSheBelievs Cupでは3試合で14,500, 22,000, 14,000と動員してます。動員の人数だけではチケット単価がわからないので収入で男子との差がどうなっているかまではわかりませんが、少なくとも男子と比較して桁違いに動員力の劣る他国の女子代表とは事情が違って、米国では女子代表も男子代表と比肩するレベルの動員力を持っていることは確実で、その意味でも訴えの内容は第三者にも理解しやすいものと言えましょう。現役のサッカー選手で最も知名度が高いのは女子のAlex Morganで、どの男子選手よりも明瞭に上でもあるでしょうし。
男女別の代表の収入についてこのNew York Timesの記事によると2016年では女子の方が男子より収入が多かった、この資料が出た時点の予測では翌2017年も女子の方が収入が多い予想であったとか。4年前のW杯優勝後に「Victory Tour」と銘打って女子代表チームが全米10都市を巡業したときにはどこも盛況で$10 million単位の収入を米サッカー協会へもたらしたともされます。

訴えは起こしたもののそれが短期で判決が出るものとは選手たちも思ってはいないことでしょう。W杯が近づき露出が増えるタイミングでそれについて選手やメディアのライターがそれを語る機会が多くなるのがポイント。米サッカー協会としては悪者になりたくないので解決できるなら選手たちからの批判コメントが一般に広まる前になんとか処理してしまいたいでしょうが、たぶんそうはならない。
男子にはW杯からの巨額の分配金があるのでそちらを加味すると男子代表が弱くてもカネになっているから男子選手には高い金額が出せるという理屈なのは承知してますが、その理屈が連邦裁判所で通るかどうかはわかりません。裁判所が判断するのは、同じ仕事をしているのに賃金が違うのが性差が原因であるか否かなので。そのW杯分配金を男子代表が稼いでいると認定されうるかどうかは難しいところがあります。判決が出て、協会の側の主張が通らないとその後も継続的に男子代表のサラリーが女子代表のそれと連動することになって協会のさじ加減でどうこうできるものでなくなってしまいますから協会としては和解してしまいたいところですが、どうなるか。

女子版International Champions Cup@Hard Rock Stadium

男子の方は既に6年目に入ったサッカーInternational Champions Cupですが、今年からは女子版もできていたんですね。4クラブによる初のWomen's International Champions CupがMiamiで準決勝・決勝とも開催されています。
出場チームはNWSLのNorth Carolina Courageが昨季2017年のレギュラーシーズン王者としての資格で出場。フランスからLyonとParis Saint-Germain、英国からManchester Cityが参加してのトーナメントで、各チームが二試合を戦う形式。決勝はESPN2で放映していました。会場はお馴染みのHard Rock Stadium。ガラガラほぼ空の状態での興行になってます。夏場のマイアミで女子サッカー。ビジターはフランスと英国のチーム。うーん。お客さんが入りそうな気がしません。なぜこの企画で収容約65,000人の大箱のHard Rock Stadiumを2日も使うことにしたんでしょうか。損得無視で男女同待遇アピールでしょうか。あまりにもガラガラ過ぎて選手が気の毒な感じすらします。

実は現在女子サッカーは2018 Tournament of Nationsも米国内で開催中です。こちらは国代表同士の大会。ホスト米代表に加えてオーストラリア、ブラジル、日本の4カ国での総当たりの形式。昨年2017年が初年度で、今年は二回目。
昨年はオーストラリアが対米代表を含め3戦全勝で優勝を遂げてます。米女子代表がオーストラリア代表に敗戦したのは昨年の同大会が初。過去圧倒的な強さで人気を得てきた米女子代表がホームで過去負け無しの相手に負けるほど各国の力が接近してきていることを認識させた昨年でした。

それを受けた今年、今日第2戦で対戦した米 x  オーストラリア戦はまたも米代表大苦戦。90分になんとか同点ゴールを決めて辛くも1-1の引分に持ち込んだものの、昨年の借りを返すことには失敗。昨年の勝利でオーストラリアが自信を持ってしまって引いてくれないし、昔のように米代表が高圧的に主導権を握るような試合はできなくなってます。大会優勝は次週の一戦を残して米代表がタイブレーカーを握っており自力での初優勝が見込めますが、来年の女子W杯を見通すとまだまだ今大会後も苦労しそうであります。
今年のTournament of NationsはMLSの収容20,000人前後のスタジアムを使って開催してます(UConnのフットボールスタジアムは少し大きいですが)。一時期よりは落ちたものの米女子代表人気もあるので概ねスタジアムは埋まってます。昨年はNFLスタジアムを使用して開催してかなり空き席が目立ちました。今年のこれが現在の米女子代表の動員能力に適正の会場規模だと思いますし、これぐらいだと雰囲気も悪くない。この記事の前半の話を蒸し返しますがそれに対して一体女子版ICCの方の65,000人収容の大会場使用はなんだったんでしょうか。二戦ともにマイアミ開催=試合の合間にマイアミビーチでのバカンス込とでも言って参加クラブを勧誘でもしたんでしょうか。

NWSL Boston解散

女子プロサッカーのNWSLのBoston Breakersが2018年シーズンを前に活動を停止したのを発表しています。所属選手(ドラフトで指名された選手を含む)はNWSLの残りの9チームが吸収する手はずに。Boston BreakersはNWSLが創設される以前の女子プロリーグであったWPSやWUSA(2001年創設)にも参加してきた女子プロサッカーでは歴史の長いチームですが、ここで息切れして離脱となりました。昨年2017年シーズンのBostonの平均動員が2,900人で全10チーム中8位。先が見えないということですか。
NWSLの昨季のリーグ動員平均は約5000人。でもこの数字はミスリーディングなのです。動員首位のPortland Thornsがダントツで17,600人を叩き出して平均の数字を引き上げているだけで10チーム中平均動員を超えているのはこのPortlandと2016年に参加し始めたOrlando Prideの2チームだけ。
動員8位のBostonが今回離脱を決めましたが、動員最下位だったKansas Cityは昨季を最後に移転して2018年シーズンからは新本拠のUtahでUtah Royals FCとして再出発に希望をつなぐ(というと聞こえは良いですが実際はKansas Cityでは失敗撤退)。動員9位のSky Blue FC(東海岸New Jersey)はWPS当時に優勝もしている女子プロサッカーでは優秀なチームのはずですが動員ではWPS当時からずっと下位を低迷。Bostonより先にギブアップしていても不思議ではなかったチームです。リーグとして低空飛行で新たな投資家が登場する可能性も低い。女子サッカー代表の人気を国内リーグに繋げられないままにジリ貧状態と言っていいかと思われます。唯一成功しているPortlandのようなビジネスをどう他のフランチャイズで実現できるのか。なかなか大変そうです。

アメリカでのスポーツ支持調査などでしばしばサッカーが若年層でメジャースポーツに匹敵するような数字を出します。あれは女子中高生などの女子サッカー代表への支持がサッカーへの支持に大量に含まれているわけです。調査対象の半分は女子なので。その層は別にサッカーというスポーツを愛しているわけでもなくほぼ唯一の女子スポーツのメジャーな存在である女子代表サッカーにシンパシーを感じて支持しているのであって、サッカーという競技の支持としてはとても弱い支持と言って良い。彼女たちはNWSLの試合に足を運ばないし、MLSやEPLといった男子サッカーの試合のTV観戦でも数字になってくれない。その辺りを、女子にはサッカーファンがたくさんいる、と見誤って女子プロサッカーリーグイケるのでは、と投資してしまうと現実にがっかりということになるわけです。なかなか難しいところです。

女子サッカー人気の頼みの綱である女子代表も将来が不安です。先週末に終了した女子のU-20 World CupのCONCACAF予選で米代表は優勝を逃してます。決勝でメキシコに1−1からのPK戦で敗退。準決勝ではハイチを相手に1−1でPK戦でなんとか下している。本戦にはメキシコ・米国・ハイチが出場決定(カナダ落選)。たかがU-20、たかが予選ではありますが、圧倒的にフィジカルでまさるメキシコやサッカー無名国ハイチを相手にぎりぎりの試合をさせられてしまう。数年先にはこの世代がフル代表を担っていくわけです。既にフル代表ではその昔のように米代表が相手を次々となぎ倒すような試合はできなくなっている。それどころか数年のうちにCONCACAF内ですらフル代表で苦戦させられる未来もありうる、というのがU-20予選が示唆することです。そうなったときに過去の女子米代表の勝ちっぷりの爽快感でファンになっていた少女たちの支持をサッカーは繋ぎ止められるんでしょうか。移り気な若いファンの支持を取り付けるのはそう簡単ではないのではと危惧します。ここがうまくいかないとスポーツ支持調査全体でのサッカーの支持の数字にも相当響くはずです。

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