アメリカスポーツ三昧

アメリカ永住コースか、または第三国に出国か!?スリルとサスペンスの人生とは別にアメスポは楽しい。

MLS/Soccer

静かにPulisicが株を上げる

英FA杯決勝、Chelsea x Arsenal戦。先発したChirstian Pulisicが開始5分で先制ゴール。危険ゾーンへ自身で縦に持ち込んで、チームメイトにパスを出した後も好位置を維持して、戻ってきたボールをGK超えで流し込み。ナイス。スムーズ。

1-1の後半は開始早々にスピードに乗って縦にゴールに迫ったのですが、そのプレーで腿(たぶん)を負傷退場。そのままロッカールームに直行。好調の試合の良いところでの退場はもったいないですがFA杯決勝に爪痕は残したということになるのでしょう。目立ちぶりはサッカー国のスポーツマスコミなら相当に盛り上げられそうな試合だったんですけど、既に指摘してあった通りMLB/NBAは開幕済、NHLも今日から再開とアメスポメニューが盛りだくさんなのでSports Centerでゴールシーンだけでも紹介されれば良い方なのでしょう。
試合自体はなかなかにエンタメ度は高く楽しめました。

Pulisicは疫禍再開後に11試合で5ゴール2アシスト。文句なしではないでしょうか。来季はChelseaの主力としてシーズン開幕時から活躍が期待できそうです。しっかり治して欲しいところです。


例年は夏に多くの欧州のビッグクラブが米国内でプレシーズンツアーをしますが、今年は状況から言ってまったくムリ。昨年2019年の夏の時点でPulisic擁するChelseaは2020年の夏のアメリカツアーを通常年以上の数こなすことに意欲を燃やしていたんですが、Pulisicのアメスポ内での露出増加の面では巡り合わせが悪かったです。

良い方に考えれば夏のツアーもないので元々短い欧州サッカーのオフを身体のケアにフルに使えるってことでPulisicにとっては良かったということになるかも。Chelseaがアメリカツアーなんてしたら酷暑の中Pulisicは毎試合かなりの時間出場しないわけにはいかなかったでしょうから。

EPLは来季を9月12日開幕と数日前に発表したところですから、正味1ヶ月もオフはない感じ。今日のケガの情報がまだ出てないので開幕までに万全になるかすらもわからないですね。ここはアメスポマスコミ視点では目立たないですが静かに実績を積んでおく星回りか。

コロナ下でもアメリカサッカーの限界

現在アメスポメジャーは興行がない状態が続いています。MLBが7月23日から、NBAが7月30日から、NHLが8月1日からと立て続けにシーズン再開・開幕予定です。今週末までがメジャースポーツ不在のアメスポシーンだったわけです。

NFL/MLB/NBA/NHLの4大プロリーグと、カレッジフットボールとカレッジバスケットボールの6ジャンルまでが異論の出ないアメスポのメジャージャンル。
その下のミッドメジャーと言えるジャンルもアメスポではメニューは豊富であり、それらも当ブログでは様々紹介してきています。
その中で日米で人気差の大きなスポーツと言えばなんと言ってもサッカーでしょう。サッカーのアメスポ内での立ち位置というのは特殊なものがあり、移民の国であるアメリカの特性とからみあって非アメリカなものと長年見做されたり、そのアメリカ土着化が進行していたりといった文化的な視点でも興味深い存在であるわけです。そういう点については過去何度か紹介しました。

アメリカにおける観戦スポーツのサッカーというのは常にアメスポメジャーとシーズンが重なって存在してきました。国内リーグであれ、近年サッカー内のメジャーリーグとアメスポ内で認識されるようになったEPLなど欧州リーグであれです。アメスポメジャースポーツが1試合も開催されないのは夏のMLBのオールスター戦の前後の数日のみというのが何十年来のアメスポの常態だったからです。

それがコロナ疫禍という特殊状況の下でアメスポメジャーが揃って活動を停止しているのが今です。アメスポミッドメジャー各ジャンルがメジャーに先行してシーズンを再開する流れとなって、非メジャージャンルにとってはちょっとしたボーナスステージとなりました。メジャーという鬼のいぬ間に各種ジャンルが独自の放送をアメスポファンに提示できる機会となったわけです。
そういう中でサッカーでは女子NWSLが初の地上波全国放送デビューを果たしたり、MLSがトーナメント戦を企画して連日ESPNでの試合生放送を実現して露出機会を増やしました。

MLSのシーズン再開企画である「MLS is Back Tournament」は企画段階から「W杯型のトーナメント」と宣伝していました。MLS全チームが参加してグループリーグを経てトーナメントで優勝チームを決めるという仕組みはたしかにW杯と類似、開催時期も夏で同じなんですけど、その宣伝は違うのではないかとは感じてました。W杯がアメリカ国内でも特別な関心を集めるのは大会形式が理由ではないだろう、と。

MLS is Back Tournamentは暑い亜熱帯のフロリダ州での集中開催のため、昼間の酷暑の時刻は避けて、朝9時からの試合が1試合。あとは夜の試合を8PMと10:30PMと2試合を連日開催放送。
朝の試合っていうのはサッカーぽいとは言えます。EPLを始め欧州の試合放送はアメリカ東部時間の午前中の試合が多いです。土日に早起きして待ち構えて試合を観るという行動はアメリカ在住の欧州サッカーファンには珍しくない行動です。アメリカ市場での欧州サッカー番組の人気が定着してからはアメリカ市場に合わせてという意味もあるのか東部時間の午後の試合=欧州の夜の試合も増えましたが。

W杯にしても欧州サッカーにせよ求心力があるからファンを早起きさせられるわけですが、MLSの急造トーナメント戦でそういう求心力を求めるのはムリです。トーナメント最初の試合となった朝の試合は46万人の視聴者を集めてまずまずのデビューを飾ったのですが、その後は視聴者は平均16万人程度との情報が出ています。そのレベルの視聴者数だとESPNの朝のスポーツ情報番組の方が視聴率を稼げるので生スポーツ中継をやってるメリットが薄いです。
MLSの過去の定時放送が30万人クラスの視聴者を集めていたのが、アメスポメジャーが不在でアメスポファン全体がライブスポーツに飢えているという状況下なのでもうちょっと良い数字を出すのではと期待されていたと思うのですが、実際はそうはならず、ということになります。アメスポファンをサッカーはうまく捉えられなかったと言ってもいいでしょう。


ところでアメリカサッカーがメジャースポーツ化するきっかけとして大昔から当ブログではアメリカ人スーパースター選手の登場と欧州のメジャーリーグでの活躍が欲しいということを書いてきました。しかしこの期待はハズレだったことが今現在進行形で示されています。

Chelseaに移籍した米代表MF/FW Christian Pulisicが期待以上の活躍中。EPLの疫禍再開後もプレータイムもがっちり確保。21歳でロンドンの名門クラブのChelseaに大型移籍金で加入。ポジションも比較的見る側にわかり良い攻撃的ポジション。そしてアメスポがコロナ疫禍処理に手間取っている間にEPLが先行再開しており露出の絶好機。もう少しサッカーがアメスポ内で力があれば一気にアメスポヒーローに踊り出られるような絶好の機会だったように思うんですが、まったくそうなりませんでした。過去各種調査からアメリカに置けるサッカー人気は裾野が狭いのは明らかではあったのですが、これだけ露出条件が揃ってもPulisicの人気が上がらないのか、と。

PulisicはまだEPL内でスーパースターではありません。EPLは中断前からLiverpoolの独走で再開後の優勝争いの興味も薄かったしChelseaもChelsea的基準では失敗シーズンではありました。そういう不足はあるとしても、21歳という年齢の期待値と今季のプレー内容(初ゴール=ハット含む)とChealseというクラブのネームバリューと考え合わせれば他の国出身の選手だったら既にその国のスポーツ選手で最も輝いてる立場であっても不思議じゃない境遇だと思うんですが、アメスポ市場の中だとこんな程度の注目度にしかならないんだなーという感じです。この辺がアメスポ市場に置けるサッカーの限界なのかな、という。これ以上望むとなるとCR7とかMessiクラスのアメリカ人選手が出ないといけなくなる。そんなことは起こることを期待していはいけない話のような。こういうのを見るとサッカーのアメスポメジャー入りはまだまだ遠いなと実感します。

今日のFA杯準決勝にはPulisicは出場しませんでした。ベンチには入っていたのでケガは大したことはなさそう。Chelseaは快勝で決勝進出。個人的にはその試合も期待はしてます。ただ決勝の時期(8月1日)になると冒頭に述べた通りアメスポメジャーが3ジャンル開幕済みですからよしんばPulisicが活躍したとしてもスポーツ報道の上の方に出てくる可能性は極低い、というかゼロにほど近いと予想できます。

続発する感染、離脱するチーム MLS再開シーズン

サッカーMLSのシーズンがMLS is Back Tournanentという同一スタジアムでの集中トーナメント形式で7月8日から再開されていますが、感染者が続出しています。全26チーム参加で始める予定でしたが初戦の前に感染者が発生、FC DallasとNashville SCの2チームが試合をしないままで大会から離脱。それに次いで昨日土曜日の時点でToronto FC x DC Unitedの試合がこれも感染者の発生で試合の中止が決定。こちらの2チームが今後トーナメントに参加するのかどうかはまだ決まってませんが、始まって間もないこの時点でこれだけ感染が広がっているとトーナメントが完走できるのかすら危ぶまれます。予定通りならノックアウトステージが終わるのが8月11日と丸一ヶ月先です。

困ったものです。まず場所が悪い。フロリダ州Orlando近郊のESPN Wide World of Sports Complexでの開催。試合だけでなく普段の生活も含め「バブル」内で行い外部との接触を抑えてほぼ軟禁状態での開催のはずだったのが早くもこれだけ感染が広がってます。現在フロリダ州は全米でも最悪の疫禍状況。

Orlandoでバブル内隔離・移動なしで短期決戦を行うというとNBAも同じことをやろうとしてるわけですが、先行するMLSでボロボロ感染者が発生、離脱チームが出るのを見るとNBAも相当に気合を入れて防疫に努めないとトーナメントが崩壊しかねないです。アウトドアである程度対人の間隔が遠いサッカーでそんなに感染が広がるんじゃ、室内で対人距離がごく近いバスケはさらに危険なのは確実です。
MLSのは急造のトーナメントでなんとなればほっぽらかして止めてもかまわない程度のものですが、NBAの方は年度優勝チームを決めるプレーオフですから中止になってしまった場合のダメージはNBAの方がはるかに大きいわけでもあります。

こういうのを見てしまうとプレーオフの集中開催地をカナダに避難させたNHLの措置は正しかったかに思えてきます。いまさらNBAは開催地は変えられないんですかね。いくら設備が整っているとはいえ今全米最悪のフロリダ州でやる必要はあるんでしょうか?
今週末からはその最悪の感染状況の中、同地のDisney Worldも再開していてさらに市内の感染状況が悪化してる可能性もあるんですけど。それが数字になって出てくるのはまだ数週間先です。

MLSの再開前検査で2.7%の感染発見

男子サッカーMLSが7月8日から開催する「MLS is back Tournament」を前に全選手スタッフのコロナ検査を実施、その結果を公表しています。既に一部のチームは会場となるフロリダ州Orlando入りしていますが、検査はOrlando入り前に行われたもの。26名の陽性が確認されたとしています。

率に直すと2.7%の陽性率で、先に発表されているバスケNBAでの事前検査で5.3%が陽性となったのと比較すれば半分の割合で、スタート段階ではまずまずの成績と考えて良いのでしょう。
MLSもNBAも会場が今全米で最も感染状況が悪い州のひとつであるフロリダ州でのシーズン再始動なので、シーズン再開後に感染が拡大する可能性もないわけではない。選手のオフの行動次第ということになるのかもしれません。Orlando市がある地元の直近5日間の感染率が9%-22%とかなり高いと発表になっており、選手スタッフが気を抜いていたらあっさり感染が広がりまだあと10日あるMLSの開幕までに感染者が増える可能性もあるんでしょうね。
既に女子のNWSLの方ではOrlando Prideの選手スタッフから感染者が続出して、NWSLのトーナメントへの現地入り前に参加を断念したという事件が起こってます。

NBAもMLSもOrlandoで集中開催のトーナメント形式でのシーズン再開ですが、NBAは8試合のレギュラーシーズンとプレーオフ本番、なので敗退チームはそのままオフシーズンに入る。MLSはこの再開トーナメント後に続けてレギュラーシーズンに向かうという仕組みなのが違います。つまりNBAは短期決戦の真剣勝負。MLSはトーナメント形式はとってますが今後半年近くに渡るシーズンの再開始動イベントです。プレシーズンマッチの代替とさえ言える。
NBAチーム、特に優勝を狙えるチームにとっては大事な試合であり、同時にシーズンの終わりが見えている試合であるため試合外の行動も自ずと気合を入れることになるのではないかと思いますが、MLSの方がどうなるか。NBAの方も例年だとプレーオフの期間中のオフの日にはゴルフに行ったとかそんな話はよく聞くところ。それが今回はたぶん自粛対象になるはずです。



NWSLがチームスポーツの先陣を切って開幕

女子サッカーNWSLが今日からシーズンをスタートしています。これまで個人競技・モータースポーツで再開はありましたが、NWSLが疫禍後初のアメスポチームスポーツの開催となります。合計23試合のChallenge Cupとしてユタ州で開催。またユタ州なんですね。
NWSLで過去2シーズン連続優勝しているNorth Carolina CourageとPortland Thornsのカードで。NWSLの過去7シーズンでそれぞれが2度優勝しており、Portland Thornsの方は試合平均20,000人の動員を誇るNWSLの単独で突出した動員頭。一般の方はわからないでしょうが、ほぼこれがNWSLが提供できるベストのカードと言えるのでしょう。
地上波CBSが放送。NWSLにとって創設以来初の地上波全国放送となります。現地で午前10:45、東部時間午後12:45キックオフ。

NWSLには9チームが所属しますが、Orlando Prideはコロナ感染者が10名出てしまい今大会から離脱、8チームの参加となります。
Orlandoのあるフロリダ州は全米で今コロナ感染が一番マズい州のひとつで、その上Orlandoの選手たちはSocial distancingを実行せず夜バーに繰り出して集団感染したというバカっぽさ。ガキか?プロアスリートという自覚はないのか?という感じですね。まあNWSLは大した金額は選手に払っていないのでカネも払わず自覚ばかり要求するのは酷なのかもしれませんが、それにしてもチームごと離脱を余儀なくされたのは今後再開していく各チームスポーツリーグにも反面教師としてもらいたいところです。残りが8チームあってまだ救われてます。7チームになっていたらスケジュールに多きな支障になっていたはず。

また個人の選択としてかなり今大会への辞退者がかなり発生してます。女子アスリートで最も知名度の高いひとりであるMegan Rapinoeは参加しません。他にも日本にも知られた名前ではCarli Lloyd、Tobin HeathもAlex MorganもChristen Pressも出ません。Morganは産休扱いだと思いますが。Rapinoeが出ていればBLM問題や膝つき問題始め、最近出た同性愛者の勝利と言える連邦最高裁判決についてなどマスコミからコメントを求められたでしょうが不参加。


さて試合を見ようかと思ったら、今年は試合の前にこの問題があるんでした。すっかり忘れていました。

試合前の国歌演奏時は両軍全選手が膝つき。立っていたのは審判団だけ。この時点では審判団を含め選手がBlack Lives MatterのTシャツを着用。コマーシャルを挟んでの試合開始前にも場内アナウンスがあって全員が膝つき46秒黙祷。なぜ46秒かというと例のGeorge Floyd氏が警察官に首を押さえつけられていた時間が8分46秒で、抗議の初期の頃には8分46秒の黙祷をしていたイベントもあったのですが間が持たないので最近は46秒らしいです。選手は試合中もBlack Lives Matterと書かれた黒のアームバンドを着用。

さてもう一方の喫緊の問題コロナ対策の方はというと、監督除きベンチの選手・スタッフはマスク着用。但しアップをしているときは外してました。
ハーフタイムにロッカーに向かうときに出場していた選手にすぐにスタッフがマスクを手渡しして、選手たちは屋内に入る前にかけてました。いままだハーフタイムになったばかりで息が切れてるだろ、そこでマスクさせるのかというタイミング。体力のリカバリにこれは障るのでは。防疫としてはなかなか徹底しているとも言えますし、スポーツ的にはちょっと疑問。この先続く他のスポーツもここまできるのかな。いろいろ考えさせられますね。


プレーの方は足を滑らせる選手が目立ったりと準備不足が疑われるところもありましたが、両チームとも球離れの良いプレーぶり、意思が見える展開が多めでなかなか楽しめました。最後の20分にゴールが立て続けに出て2−1でNorth Carolinaの勝利。

それよりもなによりも、やっぱり快晴の太陽の下のスポーツは良いですね。それだけでも開放感と爽快感があります。

MLS再開プランを発表

「MLS is back Tournament」という宣伝なのか大会名なのかわからないような名称で全26チームが参加のトーナメントを開催してMLSが活動再開をすると発表になっています。

7月8日開始8月11日決勝。グループリーグを戦った後のノックアウトラウンドで決着をつけるスタイルでスポーツマスコミでは「W杯式の大会」と説明されています。場所はフロリダ州中部Orlandoで集中開催。7月のOrlandoとか亜熱帯高温多湿の悪コンディションになるのは確定的で、日中の試合は避け、午前中9時と夜に2試合というスケジュールで試合を開催するという予定が組まれています。午前9時キックオフでも試合終了時には11時ですか。それでも夜の1試合目よりはきっとマシなコンディションなのでしょう。

この大会終了後、MLSはそのまま続けてレギュラーシーズンに進むことも発表しています。つまりレギュラーシーズンは8月中旬に再開見込み。いまから2ヶ月後のその時期というのは現在の目論見通りならMLBやNBAが再開後、NFLのプレシーズンも始まっており、カレッジフットボールのシーズンも間近になっている時期で、各ジャンル・各自治体が地元での開催について今より詳細な開催条件を整えてきている時期であろうと推測できます。


ただ先週の各州のコロナウィルスの感染者数・入院者数データは南部を中心にかなり増えています。経済再開で先行したテキサス州はここ2日間で入院者数で過去最悪の数字を出しておりこの先どうなっていくのかとても見通せない。1ヶ月後2ヶ月後に状況が大きく悪化していても不思議ではないところ。
今現在数字が悪化しているのは南部に集中していることからたぶん経済再開政策の影響およびマスクをしないことで病気なんて怖くない!をアピールしようとしていた保守層の行動の結果で、まだここ2週間のデモでの感染(大都市中心)の数字は大きく反映していないと想像されるだけにまだ一層の悪化もありうるところです。

女子サッカーの構造的問題が男女同報酬問題に投影

女子サッカー代表チームの報酬が男子代表との差があるという問題ですが、どうも過去ほとんど語られていなかった部分があるということが指摘されるようになってきてます。先日連邦裁判所の一審で女子代表側が敗訴。原告が控訴審に進むことを宣言していますが、アメリカの訴訟の仕組みでは一審の敗訴は日本のそれと比較してとても重いです。

一審の判決文の中で女子側の報酬は男子に劣っていないという認定があったわけですが、これの中身には男子代表には協会が提供していない福利のコストが女子側に提供されていて、その部分を報酬として計算していたってことのようです。それで原告側から見ると男子と女子では手にする金額が違うというもともとの言い分になるし、協会側からするといや女子にも総額で男子と相応の金額をかけている(直接手取りとしては払っていないけど)ということになったようです。
また訴訟の対象となった時期は女子代表の方が公式試合数が多く(女子はほとんどの大会で勝ち進みますからそうなります)総額での収入だと女子が多かったという事情もあるようです。

男子代表選手はほぼ例外なくどこかのプロチームに所属しており、例えば手厚い医療保険やチームドクターによるサービスを所属チームから無償で受けられる。ところが女子選手は今はNWSLというプロリーグがありますが零細リーグでとても福利厚生にコストがかけられる状態ではなく、産休などの補償もない。その辺の事情があるので女子代表は過去サッカー協会との協議で男子よりも手厚い福利厚生条件を引き出していたということです。その部分の女子のみ得ている利益を金額換算して加算すると女子の報酬は少なくないという主張になりえ(議論の余地はありますが)、連邦裁判所一審もその線で女子への利益は多いといえるとして、原告の主張を証明不足、棄却としているということです。これは女子サッカーをめぐる構造的な問題の投影と言えるのでしょう。

なるほど、そういうことなら判決文の女子の方が報酬が多いという指摘の意味がやっとわかりました。報酬金額という具体的・明瞭な数字のあるもので原告の主張が退けられているのが訝しかったのですが、報酬の認定基準が違ったということですね。
それでもわからないのはもしこれが事実なら、なぜ協会はこの点を事前にもっと広報して主張しなかったんでしょうね。私はこの件の記事はかなり目を通しているつもりですが福利の男女差の件をはじめて知りました。今年の3月時点での被告サッカー協会側の主張は多岐に渡ったものでしたが、スポーツニュースや一般非スポーツ報道で取り上げられたのは女子代表の責任は男子より軽いとか、スピードに劣るとか、お金に換算しえない余計なことを書いた部分で、代表選手だけでなく一般女性からのスカンも喰って荒れ、結果として協会会長が辞任する騒ぎとなりました。
一審で勝利したのですから全体としての協会の主たる主張は間違っていなかったと認定されても、女性の権利を阻む悪の組織というレッテルが外れるわけではない。これじゃ女子代表に出すカネを抑制する以上のダメージじゃないか、という。
全体としては女子代表側も協会側も主張を整理すべきなのであろうと思われます。それを双方が検討する中で、出口戦略・和解の機運が熟成されることになりえます。


ところで今回の女子代表の一審敗訴を受けて、男子代表チームの選手会からは女子代表の同額報酬の主張を支持するというコメントが出てます。これは賢いのでしょう。男子代表対女子代表という対立構造にされて男子代表が悪役の一部にされるのを避けられています。
過去、SNS上で男子代表選手と女子代表選手が子供じみた言い合いをしていたりと長く見てるものからすると男子側には忸怩たる思い・またはそれ以上の悪感情を持ってる選手もいるのはずっと感じられていましたが、ロシアW杯進出失敗以来は男子側は完全に沈黙をせざるをえない状況に追いやれており、男女選手によるいがみ合いを見かけることもなくなりました。見かけないからと言って男子側の女子側への不満が消えたわけではないと思いますし、外から見えない形で協会内で女子代表への抵抗勢力があるのは容易に推測できますが(そうでないと協会の執拗な抵抗の理由がわからない)、とりあえず表立っては男子代表は応援してますとさらっと言ってしまうのは賢いでしょう。協会の対応の下手さのとばっちりを受ける必要なんてありません。

サッカー女子代表が一審敗訴

サッカー女子代表選手が米サッカー協会を同待遇問題に関して訴えていた連邦裁判所の一審で敗訴してます。判断が出たのが金曜日、それも西海岸のカリフォルニアでの判決だったため(東部時間では週末間際)か詳細な敗訴理由についての解説記事があまり多方面から出ていないのですが、訴えていた主要部分の主張が証明不足とされて敗訴。原告側は判決を不服として控訴審に進むことを宣言しています。

この件は当ブログでは何度か取り上げてます。判決文についての記事を読むと、選手にとってあまりお金にならない待遇の男女差については認定しているものもあるようです(例えばW杯へ移動するときのチャーター機の差、サポートスタッフの質量など)が、たぶん女子代表側が一番望んでいた試合への参稼報酬を男子と同等とするという部分については証明不足として棄却。他では2015年カナダ女子W杯のときに人工芝で試合をさせられたのが同等の労働環境が提供されていないという点も訴えていたそうですがこれも棄却されたようです。

訴訟の中身を又聞きとなる新聞記事だけで批評するのは問題がありますから避けますが、試合当たりの報酬だと女子の方が高いという計算も成立する(?)という記述が判決文の中にあるらしく、事実関係自体が良くわかりません。金額という客観的な事実で主張が食い違うというのが既によくわからない。
控訴審に進むというのですから原告側はこれからさらに法律上の主張を練り直す必要がありますが、原告側の資金面が脆弱だとどれほど一審以上の主張ができるかは不透明です。アメリカの弁護士事務所は強いところは高いですからね。

敗訴の報を受けて民主党側の大統領候補のバイデン候補は女子代表に今後も法廷闘争の継続を強く勧める発言をしてます。バイデン候補は副大統領候補に女性を起用することを既に公言しており、女性票を強く意識しており、ここでの女子代表への支持はその線に沿ったものなのでしょう。リップサービスも込みでしょうがバイデン候補は自分が当選したあかつきにはもし女子代表が係争中のままでも他の方向からサッカー協会に強力な圧力をかけることも言及してます。

そこまで言われてしまうと控訴審が進む過程で協会と女子代表の歩み寄りがあるんですかね。以前ならトランプの再選が有力視されていたと思いますが、コロナ疫禍で状況が大きく変わりバイデン候補が当選する可能性は数ヶ月前とは比較にならないほど高くなってますから。

本当ならMLS選手にとっては大チャンス

サッカーMLSが選手へのサラリー総額のほぼ50%の支払いを止めるという条件をMLS選手会に提示しています。一部の選手を除いて元々サラリーが低いMLS。どうも事情を読むと選手会はこのオーナー側の要求を飲む必要はないようなのですが、どうこの交渉をチャンスに繋げられるか。

MLSの金銭的な待遇が悪いことは以前から何度も当ブログでは紹介しています。各チーム3名までのDP(Designated Player)は比較的高額サラリーが出ますが、それ以外の選手は総額$4.9 millionサラリーキャップ下でのサラリー支給。MLSチームは30人まで登録となってますので、ざっとの話27人で$4.9 millionを分けるので平均で$181,500もらってることになります。

MLSと選手会はこの2月に新労使協定に合意したのですが、その後批准作業が進まずオーナー側も選手会側も未批准、正式にはこの新労使協定は法的には浮いたままになっていたようです。発効していない。そうなると法的には以前の労使協定が有効になるはずです。
ところがですね、従来の協定も批准待ちだった新協定も甚大災害発生時のサラリーの減額をうたった条項が入っていないんだそうです。つまり協定上はリーグ側には現時点で選手に減額を飲ませる法的な根拠がないようなのです。


つい先日バスケNBAでは労使間の合意で選手の毎月のサラリー支給額が5月から25%カットになると報道になったばかり。これはNBAとNBA選手会との労使協定で甚大災害でリーグの活動が止まった場合のサラリー支払い停止に関する内容が含まれており、選手側が同意しなくてもリーグはサラリーの支払いを止めることが可能なケースでした。労使の協調でリーグは全面的にサラリーを止めずに、一部支払減額に応じたケースです。さらにこの25%の減額分は現時点ではリーグが留保する扱いになっており、リーグ再開の場合など将来全額が選手に支払われる可能性もある一時停止措置となってます。

NBAとMLSでは選手の報酬は大きく違います。NBAの選手の平均サラリーは$7.7 million。
MLSはチーム全体でもそんなにもらえません。上で説明した通りサラリーキャップが$4.4 million。これにキャップ外の計算となるDPが最大3人ですが3人いるとも限らず、DPでも大半の選手は$2 million以下の報酬、$1 million以下のDPもかなりの数いるので、チーム平均ではNBA選手1人の平均にも及ばないでしょう。
これはサッカービジネスがマイナーだった時代の名残で、昨今リーグ経営が安定したあともリーグ側はリーグ創世記に多額の赤字を出しながらリーグを支えたことを理由に選手のサラリーの大幅上昇を拒否してきて今に至っています。


MLS側の今回のサラリー削減要求案では$100,000以下の選手は減額なし、それ以上もらっている選手も半減の結果が$100,000を下回らないようにする、つまり$200,000以上の選手からはガンガン引いて総額でサラリー半額、という内容のようです。法的な根拠のないサラリー削減要求としてはかなり厳しい要求に見えます。逆に法的根拠がないだけに交渉が不利になるのが見えてるから、最初に大きく出て労使交渉での妥結額をなんとか有利にしようとしているんだろうな、と私には見えます。
私に見えるぐらいですから選手会側にまともな交渉役がいればこんなのは全部突っぱねても良いとわかるはずで、選手たちにもそうアドバイスすべき状況でしょう。こんな有利な交渉条件になったことはMLS選手会にとってただの一度もなかった事態なのです。選手会が強くブレーンにも有名弁護士などを抱えるMLBだったら当然のように全額の支払いを要求すべきだとあっという間に方針が決まりそうな状況に見えますが、MLS選手会がどれほどの能力を持ってるか私にはわかりません。


アメスポメジャースポーツでは伝統的に労使交渉ではMLBの選手会が強く、NFLが最弱。なぜNFLが弱いかというと以前も何度か説明してますが選手寿命が他のスポーツと比較して短いのでストをして1年分、半年分でもサラリーを失うのを選手が嫌がり労働争議にならない。オーナー側にもそれを見透かされているからです。
そのNFLよりもさらに弱いのがMLSと言えます。オーナー側からそんなサラリーを払ったらリーグは解散するしかないと脅されてこれまでずっとサラリーが抑制されたまま今に至っている。下層の選手のサラリーが低いから労働争議でサラリーを止められるとすぐに干上がってしまうからストもできない。
過去はたしかにMLSは零細だったのでオーナー側の自爆解散脅迫も真実味があったのですが、多額のリーグ加盟料を多くの投資家やホスト市からせしめてアメスポのミッドメジャーにまで上昇してきたMLSが今解散を選ぶとはとても思われない。選手会は思い切った要求をしても良いタイミングに見えた今年の2月の交渉でもサラリー総額は大きく上がらないまま地味な待遇向上にとどまっていました。

サッカーで飯が食えるだけでも幸せというものの見方もあっても良いので選手会が待遇改善を強要するのが常に正しいとまでは言いませんが、MLS所属選手はプロアスリートなのに末端の選手は普通の職についた方がマシかという待遇のままで良いのかなという気もします。
この冬の移籍期間を利用してMLSを去ったWayne Rooneyが最近語っているところでもMLSの待遇の悪さではリーグのレベルは上がりようがないだろ、リーグが選手を良いように操っているということを指摘しています。

そういう中で突如起こったコロナ疫禍でのリーグ停止、そして減額を受け入れる必要のない場面での交渉。これは普通ではありえないような大チャンスと考えて選手会は行動すべきなんじゃないかなあと思ったりもします。選手の取り分を増やすのが目の前の一つのポイントですが、それを超えてどこかの時点で例えばお隣のメキシコリーグぐらいにはレベルをあげていかないといけない、それにはサラリーレベルを上げろという具合に話を持っていくべきに見えます。うまいことにストをしなくても断交ができる時間があり、法的には全額カネは入ってくる理想的な舞台が勝手に転がり込んできた状態なのですから。リーグ側は当然抵抗するでしょうがどうせリーグはしばらく再開する可能性はないので2月のときよりも腰を落ち着けて話し合えるはずです。
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