MLS労組弱いなあ、アメリカのビジネス交渉はキツイな、というのが私の感想です。サッカー男子MLSの労使による新労使協定の交渉を終えて批准手続きに入っています。まだ批准前なのでそのとおりになるかは不明ですが、ざっと眺めたところオーナー側が重大な案件で勝利を収めていると思えます。
MLSは現状4月初旬にシーズン開幕予定で、キャンプ入りを今月末に控えています。オーナー側は新労使協定の交渉が不調ならロックアウトを行うと早々宣言して選手会側への圧力を強めていました。
そもそも今回の交渉は予定外のものです。MLSの労使協約は2019年シーズンを最後に失効した旧協約を受けて昨年2020年シーズン前に一度妥結しています。その後コロナ疫禍の拡大で既にシーズンを開幕していたMLSが活動停止を余儀なくされ、夏のシーズン再開前にも労使は再開プランを交渉。さらに2020年シーズンが終わった直後となる2020年12月にオーナー側が新労使協約に含まれていた緊急避難条項を発動して新たな労使協定を目指すことを宣言。簡単に言えば2020年春の時点の合意は反故にされて1年も経っていない現在、3度目の労使交渉をしていたところでした。
緊急避難条項の発動理由はコロナ感染が沈静化しておらず、MLSシーズンの大半で無観客か動員数を大きく制限されたシーズンにならざるを得ず、経営に重大な影響のある事態が進行中であるため、とされます。MLSはアメスポメジャーと比較して現地の動員売上に利益を頼る比率が高い。そのため現在米国内で報道されているコロナワクチン接種のスピードでは2020年の協定内容が実現できる情況ではないというのがオーナー側の言い分で、その言い分自体は筋はそれなりに通ってるとは言えるのでしょう。
今回の批准待ち案のポイントとしては、選手会側の最大のメリットは今後MLSが結ぶ放映権契約から按分でサラリーが増えるという点でしょう。最大25%が選手側に還元される内容となっており、これからMLSの放映権契約金額が伸びれば選手の取り分も伸びます。過去は放映権料伸長の恩恵が選手会側にはほとんどありませんでした。メディア間でのアメスポコンテンツの放映権契約の取り合いはいまも収まっておらず、MLSの放映権交渉も見通しは比較的明るいとはされます。ただ疑問点もあります。ここでは詳しくはやりませんが、Cable cutting、TV離れという新しい潮流がどう将来の放映権契約に影響を与えるか読みにくいからでもあります。
また2021年シーズンに関してはシーズンが短縮されるなどがあってもサラリーカットなしという目先のカネについての勝利も得ています。後述する通り目先のカネ確保に走って長い目での利益を損なった可能性はありますが。
対してオーナー側の最大のメリットは2020年に締結した協定では失効が2025年とされていたのを延長して2027年までとできたことです。これはとても大きいと私には思えます。2026年にはW杯北米三国共催大会があります。アメリカサッカーにとっては何十年に一度のアメスポ市場内のサッカー拡販の大チャンスなわけです。次の機会はいつになるか想像もできない大チャンスです。そこを焦点としてサッカー協会、MLSともに様々な施策・宣伝を打っていくのは確実。2026年にピーク年齢となるであろう代表選手の養成は現在着々と進んでおり2025年2026年はサッカー界が大会成功の盛り上げに向けて全力で注力しているであろう時期です。W杯地元開催の期待と予感を使ってMLSのシーズンの動員や視聴率向上に様々な手を打つことでしょう。代表のスター選手をその時期に合わせてMLSに戻すなんていう手も打てるかもしれません。
その時期にMLSが選手会にゴネられてストをするだのなんだのとスケジュール面でゆさぶりをかけられるのは経営側から見れば好ましいことではないです。W杯のプロモーションや準備にふんだんにカネをかけているのが目に見えている時期に選手会と交渉をすれば、選手たちからなぜ我々はこんなに安いサラリーなのにあんなにプロモにカネが使えるのか云々という不満が鬱積するのは当然の流れに私には思えます。よってその時期の選手会との交渉は難航することが想像できる。選手会側がシーズンを人質にとるような流れにもなりかねない。この厄介事を確実にW杯後に延期できることのメリットは大きいです。
逆向きに見ればMLS選手会は2025年にやってくる大きな交渉アドバンテージを簡単に手放したと言えます。引き換えに得たものは2021年のサラリー保安(金額は増えてすらいない!)と、個人への還元が幾らになるかもわからない将来の放映権料増収の按分のみです。
想像するに経済的基盤の弱いMLSの選手たちが1年で3度も労使交渉をするのはきつかったんだろうなと思えます。その度に法律顧問・交渉役のプロへの支払いもかさんだはず。この手のコストはアメリカではバカになりません。オーナー側が早々とロックアウトを宣言していたことでの選手の収入減が目前に見えてきていたため選手会側が我慢しきれないというのもわかるところ。現状のMLSでは力関係から言ってとても勝負にならなかったということなのでしょう。
MLSは現状4月初旬にシーズン開幕予定で、キャンプ入りを今月末に控えています。オーナー側は新労使協定の交渉が不調ならロックアウトを行うと早々宣言して選手会側への圧力を強めていました。
そもそも今回の交渉は予定外のものです。MLSの労使協約は2019年シーズンを最後に失効した旧協約を受けて昨年2020年シーズン前に一度妥結しています。その後コロナ疫禍の拡大で既にシーズンを開幕していたMLSが活動停止を余儀なくされ、夏のシーズン再開前にも労使は再開プランを交渉。さらに2020年シーズンが終わった直後となる2020年12月にオーナー側が新労使協約に含まれていた緊急避難条項を発動して新たな労使協定を目指すことを宣言。簡単に言えば2020年春の時点の合意は反故にされて1年も経っていない現在、3度目の労使交渉をしていたところでした。
緊急避難条項の発動理由はコロナ感染が沈静化しておらず、MLSシーズンの大半で無観客か動員数を大きく制限されたシーズンにならざるを得ず、経営に重大な影響のある事態が進行中であるため、とされます。MLSはアメスポメジャーと比較して現地の動員売上に利益を頼る比率が高い。そのため現在米国内で報道されているコロナワクチン接種のスピードでは2020年の協定内容が実現できる情況ではないというのがオーナー側の言い分で、その言い分自体は筋はそれなりに通ってるとは言えるのでしょう。
今回の批准待ち案のポイントとしては、選手会側の最大のメリットは今後MLSが結ぶ放映権契約から按分でサラリーが増えるという点でしょう。最大25%が選手側に還元される内容となっており、これからMLSの放映権契約金額が伸びれば選手の取り分も伸びます。過去は放映権料伸長の恩恵が選手会側にはほとんどありませんでした。メディア間でのアメスポコンテンツの放映権契約の取り合いはいまも収まっておらず、MLSの放映権交渉も見通しは比較的明るいとはされます。ただ疑問点もあります。ここでは詳しくはやりませんが、Cable cutting、TV離れという新しい潮流がどう将来の放映権契約に影響を与えるか読みにくいからでもあります。
また2021年シーズンに関してはシーズンが短縮されるなどがあってもサラリーカットなしという目先のカネについての勝利も得ています。後述する通り目先のカネ確保に走って長い目での利益を損なった可能性はありますが。
対してオーナー側の最大のメリットは2020年に締結した協定では失効が2025年とされていたのを延長して2027年までとできたことです。これはとても大きいと私には思えます。2026年にはW杯北米三国共催大会があります。アメリカサッカーにとっては何十年に一度のアメスポ市場内のサッカー拡販の大チャンスなわけです。次の機会はいつになるか想像もできない大チャンスです。そこを焦点としてサッカー協会、MLSともに様々な施策・宣伝を打っていくのは確実。2026年にピーク年齢となるであろう代表選手の養成は現在着々と進んでおり2025年2026年はサッカー界が大会成功の盛り上げに向けて全力で注力しているであろう時期です。W杯地元開催の期待と予感を使ってMLSのシーズンの動員や視聴率向上に様々な手を打つことでしょう。代表のスター選手をその時期に合わせてMLSに戻すなんていう手も打てるかもしれません。
その時期にMLSが選手会にゴネられてストをするだのなんだのとスケジュール面でゆさぶりをかけられるのは経営側から見れば好ましいことではないです。W杯のプロモーションや準備にふんだんにカネをかけているのが目に見えている時期に選手会と交渉をすれば、選手たちからなぜ我々はこんなに安いサラリーなのにあんなにプロモにカネが使えるのか云々という不満が鬱積するのは当然の流れに私には思えます。よってその時期の選手会との交渉は難航することが想像できる。選手会側がシーズンを人質にとるような流れにもなりかねない。この厄介事を確実にW杯後に延期できることのメリットは大きいです。
逆向きに見ればMLS選手会は2025年にやってくる大きな交渉アドバンテージを簡単に手放したと言えます。引き換えに得たものは2021年のサラリー保安(金額は増えてすらいない!)と、個人への還元が幾らになるかもわからない将来の放映権料増収の按分のみです。
想像するに経済的基盤の弱いMLSの選手たちが1年で3度も労使交渉をするのはきつかったんだろうなと思えます。その度に法律顧問・交渉役のプロへの支払いもかさんだはず。この手のコストはアメリカではバカになりません。オーナー側が早々とロックアウトを宣言していたことでの選手の収入減が目前に見えてきていたため選手会側が我慢しきれないというのもわかるところ。現状のMLSでは力関係から言ってとても勝負にならなかったということなのでしょう。