アメリカスポーツ三昧

アメリカ永住コースか、または第三国に出国か!?スリルとサスペンスの人生とは別にアメスポは楽しい。

MLB/Baseball

Mariners社長が解雇 理由が外国人の英語力批判

MLB Seattle Marinersの社長が失言から辞任に追い込まれています。日本関連で言うとHisashi Iwakumaの英語がひどくて、高く付く通訳のカネを払うのが嫌だった、Iwakumaは通訳を通じていることに安住していて、それに小言を言ったらIwakumaの英語力が向上した、といったもの。

このニュース、最初に聞いたときの個人的な感想は、あーこれを言うとクビになるのかーというものでした。継続的に外国人選手を受け入れることが想定できる企業であるMarinersのトップの発言としては立場上まずいのはそうでしょうし、なんでまたそんなことを外部に向けて聞こえる場で言う気になったのかその辺が不思議ですが(なにかハイになるモノが身体に入っていたかも?)どうあれ炎上。言語能力を理由に外国人差別をしたからNGという話、ということになってます。言い方が雑なのも良くないのでしょうが。

この件を聞いて、じゃあ私が同じことを言ったらどうなるのかな、というのを瞬間的に考えざるをえなかったです。私は日本生まれの日本育ち日本語育ちで英語能力は成人になってから外国語として習得しています。日本で特に中高での義務教育を超えた英語教育は受けてないですし、日本の大学受験のときも英語は比較的弱点科目だったほどです。外国の文化全般は好きで、今このブログの元となっている各種のアメスポが日本で放送されていると喜んで見てはいましたから親和性はある性格ではあったと思いますが。
その後いきがかりがあり長くアメリカに生活することになりまして、いまとなってはこのブログを書く時間を除いたら生活の大半は英語で成り立っているし、意識してるわけじゃないですがモノを考えている際も英語のコンテクストで考える場合が多いはずです。一応日本語でも考えられる状態を維持しています(つもり)ので、それは楽しいです。

で、このクビになったMariners社長の発言がどこがどういう構造で「差別」なのかどうかをちょっとよく考えてみないと私も似たようなことを(言うことはないでしょうが)思ってしまう可能性はあるかもなーというところで考えこんでしまったわけです。

移民の国であるというのがアメリカ合衆国の建国時のモットーだったのが、200余年を経て「これは我々の国、よそ者は入れるな」という人たちがアメリカ国内に相当に増えています。建国時の建前と現実が明らかに乖離してきている。そういう時代背景のある今、外国人差別というのはデリケートで危うい問題です。

外国人差別と、英語能力の優劣は、同一視してはいけないような気は前からしていました。今回差別の対象となったことになったIwakuma選手の英語というのは私は聞いたことがないです。
スポーツ関連が例としてわかりやすいのでそれに沿えば、一般的な感想としてMLBに来ている日本人選手は通訳さんに頼りっぱなしっぽい人が多いように見えるかなーと思うことはあります。これは北米進出している一般企業でも見かけることでもあるでしょう。専属通訳がいない選手なんかだと周りとコミュニケーションがとれてないのではと心配になるようになるベンチでも孤立したように見える選手もいるように感じます。MLBに来たばかりならともかく長年MLBに在籍してもちっとも英語がうまくならなかった選手とかもいますよね。そういう方は学ぶ気があったのかなあと私はふと思ってしまったことは何度かあるのですけれど、もしそれをそのまま私が口に出したらMarinersの社長の発言とあんまり変わらない、ということに今回気付かされて愕然。アレ?この基準だと私は外国人差別する側の人になってますか?という。

発言者の私自身がそれなりに苦労して(一応ここではそういうことにしておきましょう)外国語としての英語を習得してるという事情があるので許されるんでしょうか?それとも許されない?アメリカ生まれの英語母国語のアメリカ人が言った場合は差別でクビだとして、私も同様に差別してることになってアウト?うーんそれは困るなあという。努力して英語が話せる人と、通訳に頼り切りの人、どちらも「平等」に扱わないと外国人差別をしていることになる?それはいったい平等なのか。

いやー考えてなかった方向から自分が知らぬ間に差別する側になってるかもしれない話題が飛んできたことになります。けっこう困りますね。

Kenley JansenはまだDodgersのクローザーらしい

MLBのキャンプに投手捕手が既に集合して、徐々にマスコミの野球の話題が増えてきています。1年前を思い起こすと、コロナ疫禍はアメリカ国内では序章、MLBの話題はサイン盗みのHouston Astrosの謝らない会見に厳しい批判がスポーツマスコミを賑わすもスポーツファンの怒りは盛り上がらずというような時期でした。1年経っていろいろ変わったなあとしみじみです。

1年経っても変わらないこともあります。やっとのことで念願のWorld Series制覇を遂げたLos Angeles Dodgersですが、Dodgersの監督Dave Robertsが2021年シーズンもKenley Jansenをクローザーとすると発言してます。この辺まで来ると選手のメンタルヘルスの管理か?と疑わないといけない事態かと。

昨年のWorld Seriesの優勝決定試合では最後2点差のセーブ機会でしたがJansenが登場することはなく、Julio Uriasの続投という形でJansenの起用を避けてフィニッシュ。レギュラーシーズン・ポストシーズンを通じてJansenへの信頼が失われていたのは明らかでしたが、たぶん契約上Jansenをクローザー役から外せないため、Dodgersが苦労してひねり出した戦術がミドルリリーバーの位置にイニングを喰えるUriasを投入。続投という形でJansenのクローザー起用を契約に抵触しない形で回避したというのが私の理解です。

このオフシーズンにJansenがどう回復したかは存じませんが、状態が良くても悪くても、契約で縛られているなら外せないことは今季も同じはず。可能性としてはオフシーズンのうちに水面下でクローザー役についての条項をJansenとDodgersが双方の合意で削る契約改変も不可能ではないですが、契約の改変となればMLBおよび選手会の目を経ることになる。選手の権利を守ることにかけての闘争心ではアメスポ随一のMLB選手会がそのような契約変更を黙って見過ごすことはないようにも思えます。条項改変はあとから書く高額のバイアウトと同じ額になってしまうのかもしれません。
Jansenの契約は今季2021年シーズンまで。それも考えるとクローザー役からの解除をDodgers側から言い出すことはなく、あと1シーズン騙し騙しJansenとの契約を履行する方向と考えた方が現実的。そうだと推測すればキャンプ早々のRoberts監督の今年もJansenで行くという発言も理解可能です。

Roberts監督は選手起用法でしばしば叩かれることがありますが、Jansen以外にもいろいろ契約で縛られているのかもな、でも口にできない立場なのかもな、と想像するとお気の毒な面もあります。あくまで想像ですが。
Jansenの2021年のサラリーは$20 million。MLBのクローザーとして最高額。その額に見合う働きができる可能性は高くなさそうですが、Roberts監督の立場ではなんとかJansenのモチベーションをなんとか維持するしかないのでしょう。


Jansenの側から見ると、Jansenは今季中に34歳になります。34歳でFAになってまともな次期契約が取れるような成績が残せるならともかく、そうでないならこれまで散々稼いだしこれで引退でも良いということになるのかも。もし2021年が無様な成績になった場合はシーズン途中で契約のバイアウトなんていうことがあるかどうか。Dodgersからすれば盗人に追い銭のようなバイアウトですが、他のメンバーは充実しているだけに可能性はゼロじゃないのかもなあとも思えます。私の理解では現時点で2021年シーズンの贅沢税のサラリー総額を超えているのはDodgersだけで、どうせ超えてるのですからバイアウトでもたぶん事態はさほど悪くならないのではないかと思われます。
不調のJansenを(起用法が契約で縛られていると思わずにファンが見ていると)謎の起用でポストシーズンの目立つ場面で敗退するぐらいならバイアウトでの損はDodgersとしては喜んで払うカネにも思えます。その場合の明確な後任候補がいないので、昨年と同じく先発陣からポストシーズン用のリリーバーを立てるってことでしのぐということか。トレード期限前にバイアウトが成立するならよそから代役を獲ってくることも可能ですが。

Tatis Jr.が14年契約

MLB San Diego PadresのFernando Tatis Jr.が14年$340 millionの長期契約延長にサインしたと報道が出てます。この1月に22歳になったばかり。総額ではMLB史上3番目の大型契約。Mike TroutとMookie Bettsの契約がTatisより総額でも単年当たりでも金額は上回ります。
この契約が高いか安いか。なぜこのタイミングでTatisがこの契約を結ぶのかというところはなかなかに興味深いのではないでしょうか。

TroutとMookieがそれぞれの巨大契約を結んだのは27歳のとき。Tatisはまだ22歳。2034年の36歳で迎えるシーズンまでの契約。まだ報道が出たばかりでオプトアウトが設定されているのかどうかなど詳細が不明なので、終身契約と言えるのかどうかは未確定ですがたぶんそれに近いものなのでしょう。

TatisはこのオフシーズンにTVコマーシャルで顔を見る機会がわりとありました。目立ったのはゲータレードの新商品のCMで。NBAからはDamian Lillard、MLBからはTatis Jr.が出演中。放映頻度も高かった。このCMでTatisの素顔がイケメンなのが発覚。MLBの選手でイケメンって少ないような気がするのですが、それは主観的な話なので私の偏見があるかもしれません。Tatis Jr.はMLBのPatrick Mahomesか、と以前も比較されていましたようにただプレーがエキサイティングなだけではない魅力があるなあと。


ところでLos Angeles Dodgersが昨年ついにWorld Series制覇を遂げたところ。しかしそこで手を緩めずにオフの補強にも勤しんで連覇、そして王朝期を狙ってるところです。そこへ近隣のSan Diego PadresがSnell、Darvishと補強して、さらにTatisも長期保有へ。これ、この2チームは西のYankees-Red Soxになろうとしているというように見えます。


TroutやMookieとの比較ですが、彼らは27歳での巨大契約だったのでキャリア内でもうあと2度あるかないかの巨大FAの機会を1度にゲットした形。それがTatisは22歳なのでキャリア内に2度以上あるかもしれないFAの機会を先取りしての長大契約。そしてそれがTroutやMookieより総額でも単年でも下回る(期間も長い)というのはPadresにとっては相当にお買い得な感があります。
その2人との比較はTatisの代理人も十分わかっていたはずで、それでもなおこのタイミングでこの契約をしたということはこの先になると契約額が下がる、上がらないと読んだからですよね。

以前から何度も当ブログでは論じていますが現行のMLBの労使協定が今季2021年シーズン終了時点で期限切れ。2021年も、そして2022年冒頭も労働争議でモメる可能性は高い。なにもなくても次期労使協定交渉はモメると数年前から予想されていたところへコロナ疫禍という大きな負の要素が加味された。今、米国連邦政府が言ってる通りならば希望する全員が5月までにコロナの予防接種を終えられるとされます。もしそうなれば、そして期待通りに予防接種が効力を発揮すればMLB労使協定失効前に観客動員制限の負の要素は解消されるはずですからコロナ変数は労使協定に無関係になる可能性はあります。そうすべてが都合よく運ばない可能性も当然ありますが。
オーナー側は2020年シーズンのコロナ疫禍での半消滅などもあってかなり激しい交渉をすべく手ぐすねひていると想像できます。2022年冒頭のストまたはロックアウトは十分ありうるし、その激しい交渉を経た後に締結される次期労使協定でどのようなサラリー抑制策がとられるか不透明です。MLB選手会が長年抵抗してきたサラリーキャップまで踏み込まれる可能性もある。契約期間の上限すら導入されかねない。

今のタイミングでTatis陣営が長大契約を結んだのは次期労使協定でオーナー側の勝利に終わる可能性が高いと読んだということのように私には思えます。それは現実的な読みと言って良い。NBA型のサラリーキャップや契約期間上限、さらにはチーム予算に占める1選手のサラリーの上限だって導入されるかもしれません。協定が結ばれる前に現存する契約にはなんらかの例外条項が設けられるでしょうからとにかく今長大契約を結んだ方が有利だという意味なのでしょう。

MiLBマイナーリーグ縮小の長期的展望

MLB主導によるマイナーリーグMiLBの再編が先日発表になってます。再編によりMLBの下部組織としての地位から外れたチームの地元などからは怨嗟の声もあがっていますがそれに同情するような野球ファンの声が高まっているとは思えず、MLB本体が開幕してしまえば霧散するような話に見えます。
米国内にはこの再編前から独立したマイナーリーグというものも存在していて、MLBの下部組織でなくなったからと言って即座にチームの消滅とは限らない。MLBからの育成請負のお金が降りてこない中で地道な経営ができるチームがどれほどあるかはわかりません。

それに加えて今はコロナ疫禍で集客に頼るビジネスは運営コストが高く集客力も乏しい。独自での生き残りは苦しい環境とは言えますが、同時に政府からの援助資金補助金はたっぷり出る環境でもあるので意外と当面はどこもチームを維持できるのではとも思われます。その政府からのカネが尽きる前にチームの身の振り方を考えることになるんでしょう。


マスコミ記事SNSその他での反応を見ていると意見は二極化しているかに見えます。ひとつは経済合理性から致し方ないまたは積極的に称賛するもの。もうひとつはMLBが草の根を自ら断って緩慢な死へ自らを追いやったと批判するもの。
前者の論点はMLBが各チーム200人規模の契約選手を抱えている現状は維持不可能、他のメジャースポーツはそんなことはしていない、という点に集約できます。これを突き詰めるとマイナーリーグを整理縮小することでそこそこの好選手もカレッジベースボールを選ぶように誘導している、バスケやフットボールのようにNCAAを事実上のファーム組織化する意欲的な動きだと評価も可能です。この論点に立てばその誘導が成功し始めれば、今回発表されたMLBが4段階のMiLBを将来に渡っても維持するかどうかわからないことになります。その意味でLow-Aの小都市のチームは今回足切りを逃れたというだけで安堵すべきではない。

後者の論点はセンチメンタルな意見が多いかなあと言う意味で一般ウケが悪い主張であるのは否めないところかと。子供の頃にMiLBの試合に行って楽しかったあの思い出を再生産できなくなるじゃないかというのが多くの主張の中心だからです。
ただしだからと言ってその主張が間違ってるとは限らない。もし子供の頃の体験が将来のMLB入場者を産んでいるのなら(そしてそれはたぶん事実)それを減らすことは確かにMLBは緩慢な死へ向かっているのかもしれません。ただそれが末端のMiLBチームを切ったせいだという因果関係を主張するのはムリがあるかなと言う気はします。今回切られたのは小規模チームで人口比で言うならば大半のMiLBチームの動員は維持されたからです。この先もっと減るかもしれませんが。

スポーツ観戦が楽しかったという記憶の効果は確かにあるのでしょうが、それが大人になったときに観戦に行く先が野球である必要はないという点も見逃せないような。その昔は親子でおでかけ、それも子どもたちが夏休みの頃というと野球観戦ぐらいしか手頃な娯楽がなかった時代があるはず。でもいまはそうではありません。その上子どもたちはお出かけ自体が楽しいのであって試合なんてどうでも良い場合が多い。楽しんでいるのはイニング間のマスコットの競走だったり、買い食いだったり、場内コンコースの遊具だったりです。
それよりもスポーツ観戦以外の競争相手のエンタメ施設の方が直接的に子どもたちにウケる可能性は高い。特にMLBの最近のチケット価格や場内の飲食費を考えるとコスパは相当に悪い。どうしても親が野球観戦に連れていく事自体が親のわがままなのかもしれません。真夏に太陽の下で3時間着席とか大人でも拷問に近いでしょう。
もう10年近く前にもこの点は当ブログで書きました。真夏のMLB観戦はナンセンスという常識になっていった場合に集金力のあるMLBはスタジアムを可動式ドーム化してしのげるのではないかということを当時書きましたが、現実はそうはなってません。

MLBの最新スタジアムはTexas RangersのGlobe Life Fieldでこれは可動式屋根付きですが、2000年以降に開場した16スタジアムのうち可動式は4箇所のみ。古式ゆかしいスタジアムとともに大半のMLBスタジアムはこれからも長い期間灼熱の太陽の下で親子連れにも苦難を強いる予定です。本当にこれで良いんでしょうか。MiLBの整理縮小などという程度のコスト削減でいまのビジネスモデルは成立し続けられるのか。

MiLBの整理自体は賛成できるし、NCAAの側を充実させることでドラフトをイベント化できる。それらは過去何度もMLBの課題として取り上げたことなので方向としては間違ってないですが、それは些細な改善でしかないとも思えます。

Metsの強化が小口投資家の反乱でダメージか

日本でも一部報じられているかと思いますが、現在アメリカではヘッジファンドと新型小口株主の攻防が大変な局面を迎えています。ヘッジファンドが持つとされるショートポジション銘柄をSNSで連帯した個人投資家が反対の行動をとることで、金融界を牛耳るとされる大型機関投資家に巨大な損害を与えようとしているという問題です。傍目に見てる分にはおもしろいのですが、ヘッジファンドでなくても個人投資家がたまたま持ってる銘柄がこの攻防に巻き込まれたら大変だろうなと思います。

政治的な背景まではとりあえず解説は避けますが、金融界での革命蜂起行為とさえ言えるかも。Robinhoodというのは小口取引を手数料無料で提供するサービスで、以前から大学生年齢の人たちがここのスマホアプリを利用してこぞって投資してるのは知ってました。以前に会話で「◯◯株を3株持ってる」ということを言われたことがあって、3株?300か3000のことかなと思って聞き返したところホントに3株とか買ってるんですよね。そういう小額取引をする層がRobinhoodのメインユーザーなんですね。そういうまさにお小遣い的な金額を投資する人たちが投資家の裾野を広げ、投資家の性質すら変えているわけです。それがSNSや掲示板などと結びついて総額としては馬鹿にならない力を既に持っているということを示した事件です。

ところでMLB New York Metsの新オーナーとなったSteve Cohen氏がこの事件で大ダメージを受けているという観測があります。Metsを購入した金額どころではない損害を食っているという。それに油を注ぐように今回の事件の焦点の一つであるGameStop株について自身のTwitterで発言、それを削除せざるをえない事態となってます。その後今後のツイート自粛も表明してます。

ダメージを受けているヘッジファンドはCohen氏に限らず、機関投資家はここから小額投資家の投機的行動を違法化しようと慌てて政治アジェンダにあげようとするでしょうが、そんなのはスピードが全然及ばないので損切を余儀なくされれ、危機的事態となるでしょう。この先も同様の事態は何度も起こりえます。しかしながらそもそもヘッジファンド自身が似たようなことは過去何度もやって儲けてきているわけなので違法化ができるのかどうかがまず不明です。いずれにせよそれは中期的課題。

という野球どころではない大問題をCohen氏を抱えたことになります。それ以前にMetsはセクハラ問題でGMをクビにしたばかり。補強の司令塔であるGMがいないうえに、オーナーは壊滅的な損失を目前にした大危機。この情況でMetsは動けるのか。尋常に考えたら野球どころではなく、さらなる補強はとても無理ではないかと想像できます。金満新オーナーとしてYankees/Dodgersを超える強化も目指してMLBに勇躍参入したばかりのタイミングでこの危機に出会ったCohen氏のタイミングの悪さは将来語り草になるかもしれないなと思えます。

とりあえずCohen氏が目立ってますが、他にもアメスポ界でこのヘッジファンド危機に巻き込まれているオーナーグループがいても不思議ではないです。

Tanaka日本復帰の経済学

Masahiro Tanakaが日本NPBに復帰だそうで、日本のファンにとっては楽しみかと思います。報道量は日本でたっぷりあると思うので全体として私が書くようなことは少ないのですが、私が読んだ限りで日米の移籍報道で触れられていないようなMLB側の事情を少し書いておきたいと思います。

昨年2020年シーズンはMLBは各チーム60試合と通常年の37%の試合数での開催となりました。今年2021年は現状4月1日に開幕予定、162試合全試合を消化する予定になってますが、それを信じてる人が機構側にもチーム側にも選手側にもひとりでもいるものかどうか。MLB側は現実的な対応として開幕日を1ヶ月以上遅らせることを提案したところ、選手会側がそれを拒否して、誰も信じていない(であろう)例年通りに近い4月の開幕日を公式には維持している状態です。
若くて元気なMLB選手たちにワクチンが回ってくるのは夏でしょう。2月にキャンプが招集になっても感染があちらこちらで出てキャンプやオープン戦の中止が発生するのは避けがたいように思えます。

TanakaがもしMLBチームとNPBのチームから同額のオファーを受けた場合ですが、MLBの契約は162試合が行なわれる前提での額で、2020年の例からして試合数が削減されれば収入はほぼ按分で減ります。
その上2021年シーズン後には労使協定が失効を迎えるためもしコロナがなくても2021年シーズンは労働争議でシーズンがストップする可能性が高かったシーズンです。つまりコロナと労働争議の二重パンチで2021年シーズンのMLB選手の契約金額は大きく減額をされる可能性の高い、絵に描いた餅の金額です。どんな全額保証の契約でも、契約の前提が変わってしまうので選手側にはできることは少ないです。

対してNPBは2020年シーズンを成功裏に終えており、2021年もMLBより完走できる可能性は高い。日本がコロナ感染者が増えていると言っても米国内とは比べ物にならない少なさです(なのになぜか医療崩壊が言われるのは謎ですが)。となるともしMLBとNPBで同じ額の契約が結べるなら選手にとってはNPBでの契約の方が安全な契約と言えます。

日本側から提示されたと聞こえてくる額は、MLBのチームがTanakaにオファーしていたとされる金額とあまり変わらないこともあって、2021年を日本に避難というのはTanakaから見れば合理的な行動と言えそうです。表に出ているだけでない条件を楽天側がオファーしている可能性もあるでしょう。NPBのシーズン実施試合数に関わらず全額保証とか。

これがアメリカ人選手だと日本での生活やNPBとの野球の質の違いなどお金以外の課題がありお金だけの話じゃなくなりますがTanakaにはその不安はほとんどないはず。MLBのシーズンがコロナと労働争議で試合数減少に苦しむ未来が見えるときに、NPBという避難場所があったTanakaはラッキーということになるかと。
尚MLBの労働争議は最悪2022年のシーズン冒頭まで続く可能性もありますから、2021年次第ですがTanakaのNPB所属は1年限りとはかぎらないことになります。

Curt Schillingが殿堂投票対象から除外を希望

今年の野球の殿堂の投票結果が発表されています。今年は2013年以来の当選者なしの年となっています。記者投票で決まる殿堂入りは、最多得票のCurt Schillingが71%(75%以上で当選)、ステロイド期のスーパースターだったBarry BondsおよびRoger Clemensがそれぞれ62%の得票となってます。3人とも来年が投票対象の最終年となります。

こと成績だけならBondsとClemensの成績はSchillingを大きく上回っており、この2名に関してはPED使用の是非が殿堂入りを阻んでいると言えます。以前から何度か書いてますがBondsに関してはPED使用に走ったのはキャリア後半のはずで、キャリア前半のPittsburgh Pirates時代に既にMVPを獲得(計7度)しており、入れてあげてもいいのではないかという気はします。
但しこれを許すとその後のPED使用選手(Alex Rodriguezが最有力)の評価にも関わってくるので否定したいという投票者がいるのもまた理解はできます。

Schillingについては一応PEDではクリーンってことになってます。時代がそういう時代だったので完全にクリーンな選手がどれほどいるかというと大変疑わしい。そもそもがボーダーライン上の選手は全員落とした方が良いというのが私見なのでSchillingのような選手は落として良いのではないかと思ってます。既に当選した落としておいた方が良かったレベルの選手が殿堂入りしているのはもう仕方ないですが。


歴史的には一旦70%の得票をした候補選手はほとんど最終年までに75%の投票を得て殿堂入りするので、来年が資格最終年となるSchillingには当選の望みがあり、BondsとClemensは無理というのが予想される未来だったわけですが、その有望なはずのSchillingが自ら来年の投票から自身を除外して欲しいと殿堂組織側に申し出ています。

除外希望の理由は声明で長々といろいろご本人は言ってますが、要は来年の投票で得票がガタ落ちするのが見えている、その過程でさんざん晒し者になるのも嫌だという話かと。10年の記者投票による殿堂入り投票の期間を過ぎるとベテラン委員会と呼ばれる過去の選手の殿堂入り審査機関による殿堂入りの道があり、Schillingは記者ではないベテラン委員会の審査を経ての殿堂入りなら受けたいと言ってます。つまり言外に記者投票の対象にはなりたくないと言っているのです。

1月6日にトランプ支持者が連邦議会に突入するというテロ事件が起こったわけですが、Schillingはそれを支持する発言をしていたようです。支持する方、非難する方、個人がどう思うかはまったくそれぞれ自由ですが、さすがにあの事件だとトランプ支持者御用達チャンネルFOX News辺りでも支持までは表明できない。それをSchillingは支持すると表明していたらしいです。引退した一野球選手の意見などあの事態でさしたる意味があるとは思えませんが、ことが殿堂入りという野球人としての最高レベルの名誉に関わっているとなるとただの一野球選手ではないことに。

殿堂入り投票はあの事件の前に締め切りになっており、議会突入事件とSchillingの支持発言は今回の結果に反映されていません。一部投票者がSchillingの議会襲撃支持発言を知った後に、投票を撤回したいと申し出たという話もありますが、それは今回発表された結果では認められていないはず。今回Schillingは落選したので大事にはなりませんが、Schillingが唯一の当選者だったりしたら今頃、投票撤回要求が高まったりかなりの騒ぎになっていたんじゃないですかね。

そんな事情なので歴史的には当選見込み圏内の70%超の得票となったSchillingですが、来季の得票の上積みには期待しにくい情況となった、というかたぶん下がる。その過程で必ず議会襲撃支持発言が何度も取り上げられて晒し者になるのも見えているので、自分から投票対象から撤退申し入れをするということと理解してます。

個人的には殿堂は名前を並べただけでドリームチームになるような選手だけ入れるのが良いのではと思ってるので、ひたすら成績だけでもSchillingは要らないだろとは思いますので、議会突入支持だろうがどうだろうがそれは関係ないような気もしますが、それを大いに気にする投票者がいるのも理解できます。

Schillingが言うベテラン委員会というのは時代の変遷を鑑みて、当初は受け入れられなかった名選手を救済する使命があります。ニグロリーグの選手など人種的マイノリティが再評価されたという場合もありましたし、慈善活動が後世で当時より評価されたというケースもあり、未来で言えば打撃成績の指標が過去20年で大きく変わったことで、その昔の選手の見過ごされていた成績が見直されるという可能性もあるでしょう。
PED使用についても将来正当化されていく可能性はゼロではない。実際BondsやClemensへの投票はこの10年間でかなり増えました。Bondsの成績の数字自体は否定しようのない抜群の成績なので再評価の可能性はあるんでしょうね。PED自体は悪ではないということは当ブログも何度も議論してきています。

一方Schillingは…ないかな。そもそもの成績がボーダーラインなのに、PEDでも灰色だと認識してますし、暴力革命支持では三重苦ぐらいですからベテラン委員会から再評価を受けるのは苦しいように見受けます。
殿堂投票資格者から実際に外されるかどうかは次回の殿堂の運営会議で決まるそうです。

SpringerがBlue Jaysへ

George Springerが6年$150 millionの契約でToronto Blue Jaysと契約になるようです。Houston Astrosがサイン盗みスキャンダルを起こした上で優勝したときの主力メンバーだったSpringer。現在31歳で36歳までのシーズンの大型契約を確保できたことでサイン盗みの負の影響を大きく受けないで逃げ切りになるようです。

Blue Jaysのような立場のチームには大物FAはなかなか来てくれません。所属のAL東はYankees、Red Soxという資金力のあるチームが常に立ちはだかるため優勝への道のりは簡単ではない上に、唯一の在カナダのチーム。税金面でも不利とされます。そういう事情のあるBlue Jaysが一応はNew York Metsなどとの争奪戦を制してSpringerを獲得したということになってます。

ただ本当にそうかなとも思います。噂されたMetsなどがSpringerにそれほど執着していなかったからJaysが獲れたという面があるのではないかとも思ったりもします。サイン盗みの影響はあってこの金額でカナダに都落ちになったのではないかと。

今回の金額で妥結する前の観測では4年$100 million程度で決着するのではとされていました。結果は予想された契約と単年の金額が同じで2年追加というもの。過去数年の$200-300 millionを超える金額の大型FA選手たちと比較するとSpringer獲得で予想された金額はかなり見劣りします。

コロナでの無観客化という大きな経営環境の変化があった後なので単純比較はできない面もありますが、ことSpringerの直近の成績と金額だけを考えたら4年$100 millionで獲得できるならまずまずのお買い得と言えました。その金額が予想されたのはそもそもサイン盗みでイメージを大きく落としているのも含めてのお買い得な金額かなという気もします。イメージの悪さがあるとマーチャンダイズ販売で売上に貢献できません。


ところで契約がまとまったタイミングについては、対抗だったMetsの方の事情が絡んでるかなと推測しています。
新オーナーが経営権を取得したばかりのMets。今オフFAで積極的に動くと予想されながら思うように事態は進んでいませんでした。そこへ雇ったばかりだったGMの過去のセクハラ行為が暴かれてクビを敢行という不測の事態が発生。後任GMはこれから探さなくてはならない。補強政策を進める司令塔GMのクビでMetsの補強活動は当面停滞せざるを得ない。Springerの代理人から見ればMetsが近い将来にSpringerの契約交渉で大きな譲歩をしてくれる可能性が失われたと読めるので、Jaysの気が変わる前に既にJaysから出ていたオファーに決めた、だから今なのだという可能性を感じます。


というようなことをつらつら考えていて、MLBマスコミの論評記事を待っていたんですが、さっぱり出てこないですね。数年前にESPNがMLB関連人員を大幅に削減したのが話題になりました。スポーツ報道最大手のESPNでそれですから他社での人員整理も当然あったことと想像できます。ESPNのMLB関連のネタの発信力が落ちているのは明らかですし、他社も同様。いまとなってはMLBの手持ちのMLB Networkぐらいしか微細な話題が簡単に拾えるところがなくなってきてます。

Padresが労働争議シーズンに勝負

MLBのストーブリーグが突如盛り上がってきました。正確にはSan Diego Padresだけが盛り上がってるんですが、ここまで真正面から勝負に来るのを見ると楽しさは倍増というところではないでしょうか。当ブログではここ数年Padresは注目チームだったところへ、日本のYu Darvishまで加入で日本からの注目も突如大アップというところか。

ここ数日のPadresの強化は、Tampa Bay Raysの左腕エースBlake Snellをトレードで獲得。韓国KBOからポスティングでMLB移籍を目指したHa-Seong Kim内野手を獲得。Chicago CubsからYu DarvishとDarvish専属捕手のVictor Caratiniをトレードで獲得。他のチームの動きの鈍い中、年を越えぬ前に一気に優勝狙いの陣容整備を進行させています。

いろいろ思うところはあります。昨夏の時点でのPadresの打線の魅力は明らかで、数年前からのFAでの戦力整備と自前で育てた戦力が一気に開花となり、本命Los Angeles Dodgersの対抗として2020年ポストシーズンでも期待したんですが同地区で永年優勝候補としてもうこれ以上待てない時期に差し掛かっていたDodgersには及ばず。そのDodgerが遂に優勝をしたことで一区切り。Dodgerは巨大戦力を2021年シーズンも持つのですが2020年までのような飢餓感はなくなりそう。
San Diego視点で言えば若い21歳Fernando Tatis Jrはともかく自慢の強力打線が年齢的にはこれから1-2年がピークとなっても不思議ではなく、勝負は今だというフロントの意向はとても理解できます。来季も2020年と同じく拡張プレーオフとなる可能性は高く、ということはレギュラーシーズンで(試合数が162試合として)95勝100勝を必死に目指す必要はなく、前3人偏重の先発ローテを揃えるのことでWorld Series制覇には足りるという読みが可能です。

じゃあ2枚エースクラスを獲ってくれば優勝可能な陣容になるのか。
それで獲ってきたのが、昨季のWorld Series第6戦で絶好調のままマウンドから降ろされて大いにチームの方針に不満を持ったとされるBlake Snellと、再建に舵を切ろうというCubsのYu Darvish。いずれもWorld Seriesの登板経験ありの経験値の高いエース級です。
Darvishの場合はCubsとFAで契約した当初から契約が長大なのはCubsファンの懸念事項だったのを、Padresが喜んでその晩年部分を引き取ってくれるというのです。2020年の成績には文句は付けるべき点は皆無でも再建期と判断すれば未来が重いDarvishの契約をチームのサラリーから外すには絶好機。同じNL内のPadresが強くなろうと向こう数年に勝負を賭けるPadresと、数年後以降の未来を見てるCubsでは利害は相反しないということですね。


当ブログでは数年前から2021年の労働争議は荒れるということを言ってきました。ストまたはロックアウトによる試合数減少も想定内だったはず。それに加えて今年のコロナ疫禍でMLBの財政は不透明感が高い。2021年の開催だってどうなるものかわかったものではありません。2020年4月と2021年4月の疫禍情況で2021年の方が良いとは言えないはずです。その状況下でいつ開幕して、何試合のシーズンを組めるのか現時点では誰もわかりません。その上労使協定CBAの改定交渉がからむのですから交渉は2020年シーズンの以上の難航混沌になるのは確実です。

先日米国内ではコロナワクチン接種が開始され、私の直接の知り合いでも既に接種を受けた人が出ています(職業上の理由)。承認も早かったけどロジスティクスもすごいスピードだなと感心してますが、だからと言ってMLB選手にそれがどんなタイミングで回ってくるかというと、通常開幕の4月より前に優先的に接種を受けることはできないでしょう。ワクチンなしのままであるなら2021年4月の方が1年前より情況が良いとは言い難くなると思うんですが。それとも健康体のプロアスリートたちまで春までに回ってくるものなんでしょうか。

開幕がいつになるかわからない。昨年のように感染者が出るたびに試合が止まるはず。そこへ労働争議も重なって積年の恨みと相互不信でストの可能性は高い。そんな年に優勝の勝負を賭けるSan Diego Padresは良く言えば勇猛果敢、悪く言えば出たとこ勝負、計画性はないと言って差し支えないです。
まあ最悪の場合でも2022年の通常の162試合のシーズンにもう一度いま揃えたメンバープラスで勝負できるし、それだとトミー・ジョン手術をしたMike Clevingerが戦列復帰できるのでそれでも良いのだ、とにかく2021年もチャレンジという判断‥ですかね。


ところでこのオフっていうのはNew York Metsの新オーナーが大枚をはたきまくって新球界の盟主を目指すのではと予想されていたのに、それっきりなにも聞こえてきません。San Diegoが向こう見ずに2021年シーズンに前のめりなのと対象的に、音なしなのはなぜか。
ビジネスの成功者らしく2021年は不確実要素が多過ぎるという現実的な判断をしているのかもしれません。労使協定締結後、コロナの影響が落ち着いてビジネスの見通しが立ってからと考えているとしたらたぶんそれはビジネスとしては正しいのでしょうが、スポーツチームの優勝っていう意味ではビジネスで正しいことをやっていたのでは実は不正解ってことがあるかとも思うんで、その対比とも込みでSan Diegoの蛮勇を良しとしておきたいと思います。
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