ところで日本側では事前報道でOhtaniの所属先のLos Angeles AngelsからOhtaniはアメリカでの準決勝や決勝では投げないと発言があったのが報じられたのをファンは皆知っていたはずです。でも登板した。それどころではない。MLBが何十年もなしえなかったレベルの興奮をアメリカのスポーツマスコミにもたらすものすごいクローザーぶりでの登板。Ohtaniは投げないと言っていたAngelsの方はいま何を思うのでしょうか。
ちょっと前の記事のコメント欄で書いたのですが「Ohtani本人がその(Angelsの)口先介入に納得しているなら問題ないですが、不満であればAngelsの残留契約交渉に影響するかもですね」という点。大丈夫なんでしょうか。

Ohtaniって口で反論しない人ですよね。二刀流でプレーすることへの批判が各所から出ていた時期も私の知ってる範囲(それは日本のファンからするとかなり狭いでしょうが)ではそれらの批判にOhtaniが口で反論をしたような話を聞いたことがない。ただ黙って素晴らしいプレーをし続けることで結局黙らせてしまった、というように見えます。
今回のAngelsの登板制限の口先介入にもOhtaniは表向き強く反発したわけでもない。言葉少なく(言い回しが確認できませんが)準備はしているとだけほのめかして、あとは黙って準備してそして登板してあの投球をしてのけてしまってます。発言だけ聞いているとAngelsとの黙約はあって登板はできないけど相手チームに警戒させるために登板するかものように言っているようにも聞こえました。

決勝の日の試合前のジャパンの練習を見ていても見える場所ではOhtaniは登板前のルーチンをこなしていない。ジャパン投手陣は前日準決勝で長い回登板した2人以外の他の投手たちは皆登板しそうな練習ぶりでしたから米代表に的をしぼらせない渾身の継投になるのかなというのは試合前から予想できました。最終決戦だし皆気合入ってましたが、Ohtaniが投げそうという素振りはなかった。でも本人は投げるつもりだったのですよね。ということはどこか裏で、どこか見えないところでずっとルーチンこなしていたってことでしょうね。裏でやるほどAngelsから再度の横槍が入るのが嫌だったのか。そうだとしたら発言のAngels担当者は今頃肝を冷やしていそうです。それがGM案件なのかオーナー案件なのか。
投手陣がいい感じで投げている間、当のOhtaniはバッティング練習で一発バックスクリーンのはるか上のスコアボードのスクリーンに届かせていて打つ方は今日もやってくれそうって感じでした。打球があそこに当たったときは外野の立ち見エリア(ちょうど日米の旗があったところ)で見てたんですけどえっと思うような角度で打球が来てました。

試合中に私の席や遠路来られていた日本のファンの買うような良い席から見てるとレフトのブルペンの様子は見えない。間近のレフト席でも日本側のブルペンの半分は席の真下に当たるので見える席が少ないのでは。私の場合、友人が試合中にブルペン情報を送ってくれて「Ohtaniがブルペンに来てるよ!今は座ってるだけだけど」とか「Ohtaniほんとに投げそう!」とか連絡が来ていたので9回、ブルペンからOhtaniが歩いて外野芝に出てきたときに私はOhtaniだとわかったのですが、ジャンパンファンもUSAファンも周りの人たちはわかっていない。Ohtaniがブルペンから出てきたときにうぉぉという会場のざわめきがなかったのが唯一の残念なところ。場内でOhtani登板のアナウンスがされて皆が気づいたときはもう本人はマウンド上でした。
マウンドに上がってからの練習では球速はいきなりキテましたが3球ぐらい連続高めにはずれ、続いてはるか下に外れてワンバウンド。荒れてるというよりは気合が入り過ぎ入れ込み過ぎと見えました。最初の打者への四球もその続きかと不安でしたが次打者のBettsの頃には球筋も落ち着いていて、そしてあのフィナーレへ。


Angelsと日本代表との間のOhtaniの登板に関する申し合わせが不調だったのにAngels側が登板させたくないので既成事実化するために公言したのだとしたら、これから起こるOhtaniとの契約長期延長交渉でAngels側はOhtaniを見誤っていたことになったりするんではないのか。Ohtaniは余計な不満を口に出さない人のようなのでAngelsに対しての不満を表立って言ったりはしないかもしれませんが、もしAngelsに残留するなら2026年次回大会への参加を本人が望んだ場合に条件をつけずに確約を交渉の中でやりとりするかもなんて想像してしまいます。Angelsの場合チーム自体が売却されて別のオーナーの手に渡ってしまうかもしれない中、次回大会の出場確約を契約条件に織り込んだりできるもんなんでしょうか。
またもしWorld Baseball Classic出場確約をOhtaniが条件にするならWorld Baseball Classicへの選手の派遣に消極的なYankeesはOhtani獲得レース即脱落でしょうか。今大会でもAaron Judgeを欠場させました。


OhtaniとTroutの伝説の一回きりの対戦となるかもしれない決勝での対決。MLBにとっては大変な起爆剤を得たわけで、2026年に向けての期待も高まるところではありましょう。これだけの盛り上がりなのでコミッショナー権限で次回大会への選手派遣をさらに進められるのかどうか。
一部のスポーツトークショーではその昔の五輪バスケの例(大学生選抜からプロのDream Teamへ進化)を比較として挙げてWorld Baseball ClassicへのMLBの超一流投手でのチーム編成を期待する論調もありました。


Ohtaniの感情をむき出しにしたメキシコ戦での最終回の2塁打、そして昨夜のTroutを斬ってとったあとの感情の爆発。ああいう姿はAngelsでの5年間では見ることはできなかった。ひりひりした戦いがしたいと言っていたOhtaniにはこういう機会がAngelsの外で生まれました。
同時に最後三振で斬られ役にはなりましたが速球で2ストライク目をとられた後のTroutのぎらついた表情にはこれまためったに見られない気迫があった。TroutもAngelsでの戦いでは味わえないものをこの大会で味わったのではないのか。試合後のコメントで次にShoheiと遭ったらと悔しさをにじませていたのも良いです。
さてAngelsが抱えるこの2大スターがひりひりするようなシーズンをAngelsのメンバーとして戦えるような機会はいつかやってくるんでしょうか。TroutとOhtani、2人合わせてプレーオフ出場歴1回きりでそのときは初戦スイープ敗退。OhtaniはMLBプレーオフ未体験。つまり2人のスーパースター合わせてポストシーズン未勝利です。