サッカー男子米代表の試合を見てこれほど素晴らしいと思ったことはないです。

CONCACAF Gold Cup決勝、米代表 x メキシコの試合がありました。場所はインドア、NFL Las Vegas Raidersの新本拠地Allegiant Stadiumで。65,000人動員のフルハウスで雰囲気は最高。パンデミック以前を思わせるような両国の熱いファンの応援の中の試合となりました。このカードではいつものことですがメキシコのファンの方がずっと多く目測8割方メキシコファンです。9割かも。

米代表の先発メンバーの平均年齢24.6歳。Gold Cup決勝史上最も若いチームとなってます。今大会の米代表は大半の欧州組を含まない二軍ではありますが、ここまでの5試合の試合ぶりは果敢で私個人の印象としては既に及第点。今回招集されていない一軍メンバーとW杯予選での招集メンバーを争える選手が何人もいるという印象でした。


試合の前半はほぼ7割の時間は米陣内での戦いとなり、メキシコが圧倒的に攻勢。しかしかと言って米代表がやられっぱなしという感じでもない。フォワードの面々も含めてのプレス、守りでしっかり走って相手のアタックに時間的余裕は与えてないし、気合充分、運動量十分。場所は自陣でも耐えているという感じではありません。

パンデミック以来標準となった5人交代ルールがあり、かつこの日はインドアスタジアムで気温などのコンディションも最適。立ってるだけで消耗する夏の野外の試合とは違います。若い米代表がスタミナ切れを気にせずにガンガン攻撃的な守備を目指していたのは明らかです。さらに言うとこのスタジアムはアメリカンフットボール用の設計のため通常のサッカーのフィールドよりもかなり狭い。それだけプレスの効果も上がる。ピッチ・環境の特色を生かせていたという言い方もできるでしょう。

メキシコに攻められて何度も枠内のシュートを浴びたのですが、前戦に続いてGK Matt Turner(MLS New England Revolution 27歳)が好セーブの連続で0-0の均衡を維持。このGold CupでTurnerの活躍ぶりは特筆ものでした。試合後には大会最優秀GK賞も獲得。全6試合でPKでの1ゴールを許したのみ。


さて後半に入ってからは米代表が堂々張り合って攻勢を取る時間帯が続きました。攻勢や走ってる、対人で負けていないというだけでなく、そこここに意外性があったのも良かったです。CBのMiles Robinson(MLS Atlanta United)が最後列から中央突破して攻撃1/3まで持ち込んでゴールに迫った場面などは過去米代表でまったく見たこともない展開。これはメキシコ側も意外だったようで誰も追従できず。この辺からペースは米代表側に。

0-0での80分過ぎになっても米代表の足は止まらず。メキシコ代表のポゼッションを米側のボックス付近からフィールド全体で追い回して、後退に次ぐ後退で相手GKまでボールを追いやってしまうなんていうのは私は初めて見ました。それが何度も起こるのです。米代表の方が明らかに状態が良いとこの時点で確信。

前半からプレスをかけていたフォワードの2人、Gyasi Zardes(Columbus Crew)とMatthew Hoppe(ドイツSchalke 04)がこの時間帯になっても相手のバックラインやGKを追い回してます。どんなスタミナだよという展開。
実際は彼らの足は90分フルタイムまで止まらず、それどころではなく延長の30分も前線からのプレスは止まらずで最後の最後まで走りきってます。
そして彼らを含めて選手たちの顔つきが素晴らしいかった。全員目が、顔つきが違う。意欲あふれるのが目に見えている。メキシコ側が延長に入る前の時点に皆へたり込んでいるところ、米代表は円陣組んでガッツにあふれていました。

また試合中、先手を打って米代表側のサブが入るたびにメンバーが良くなっていくというのもまた初めての感覚です。それも二軍と呼ばれるこのチームなのに層が厚い、というのは長年米代表サッカーを見てますが過去に経験したことがない感覚でした。

決勝点は117分にセットプレーからMiles Robinsonがヘッドで下にたたきつけて。堂々の決勝ゴールで快勝です。延長戦の最終局面でこんなにチーム全体が元気いっぱい生き生きしているサッカーの試合って見たことがないような、素晴らしいフィニッシュでそのまま優勝です。

米代表がCONCACAFの大会に勝ったのは6月にあったNations Leagueから二連覇ということになります。Nations Leagueは欧州組を中心としたいわゆる一軍メンバーで臨んで決勝でメキシコに勝利。そのときも延長戦終盤でのChristian Pulisicの決勝ゴールで米代表が勝ったわけです。今日と似た展開。でも今日の方がずっと良いサッカーで、90分が、120分がずっと短く感じられ、生き生きとした内容が、ちょっと大げさかもしれませんが感動的でした。

二軍です。メキシコ側は東京五輪にU-24の好選手たちを派遣してる最中ですからベストのベストのメンバーではありません。コンディションが良いのは上述した通りスタジアムのアドバンテージはありました。が、それを含めても今日の戦いっぷりは素晴らしかったと言い切っていいのだと思います。