欧州サッカーのSuper League構想が具体化してきて彼の地では荒れているようです。いろいろ歴史的な面、地元の草の根クラブから世界最強のエリートクラブまでが有機的につながっているという意識など、地元のファンが慣れ親しんだ仕組みが破壊されるという危機感からか強い反対の声がとりあえずは強いようですが、現実的な話としてUEFA側がよほどの譲歩でもしない限り収まりはつかないのでしょう。アメリカ資本のJP Morganが大規模な融資を既にSuper League側へ実施したという話もありますから、金貸しに手を引かせるためには相当の手打ちの金額を積まないといけないのではと想像できますが、そのレベルの譲歩がUEFAにできるものか。

反対派は国内リーグやUEFA/FIFAの主催試合にSuper League参加クラブやそれらのクラブに所属する選手を参加させないというような報復をぶちあげていますが、実効性は疑わしい。その点は過去にも当ブログでは指摘済み。

EPLから6クラブがSuper League参加。スペインも二強+AtleticoがSuper League参加の意向なのですから、これらを強引にパージして国内リーグを開催することなど現実的には不可能に近い。まず法律的に通るかどうかがわからない。UEFAやFIFAが言ってることは独占禁止法で禁止される優越的地位の濫用でありほとんどの国で法律違反になりかねません。
よしんば法律的に通ったとしてもその場合に放映権を買った国内外のメディアが現行契約通りのお金を払ってくれるかどうかわからないですよね。EPL6強が出場しないEPL放送とかBarcaやRealが出ないスペインリーグとかスカスカの放送となることは必定。Aston VillaとかLeedsにはEPL制覇のチャンスですけど、海外の放映権者・海外のファンからすれば無意味です。

そもそも現時点ではSuper League参加組は国内リーグから抜けたいと言ってるわけではないので、今は発表のショックで反対と叫んでる残される中小クラブのファンも落ち着きを取り戻せばSuper League組が国内リーグにとどまる方が、国内リーグから追い出すよりマシだと気づく。


というところまではわかるんですが、その先はどうなるか。Super Leagueがすごい放映権料で売れると想像するからJP Morganも大きな金額を突っ込んできているわけです。当面は各国国内リーグと事を構えないために国内リーグと同居できる形をオファーしてますが、その先には国内トップリーグの縮小案も待ってるでしょう。そこまで見せてしまうと混乱の収拾がつかないのでとりあえず国内リーグへは参加だと言うことをこの夏のオフシーズン中に衆知させていくことになります。

まだあまり批判の矢面のようには言われていませんが昇降格がない固定メンバーでの世界最高峰リーグを運営するというのはアメスポ経営の影響なのは明らか。アメスポ文化どっぷりの私などからすると、5枠でもゲストが参加できるのならずいぶん欧州型昇降格制度に配慮しているじゃないかという気がしますが、欧州型に慣れている方にはそうは見えないみたいですね。
Super Leagueがアメスポ型経営の利点をさらに取り入れようとしているとすれば、将来にはサラリーキャップなどのサラリー抑制策の導入もありえるかも。ただしサラリーキャップは反トラスト法違反とされるかもしれませんが。(この点は米国内でも議論あり)


アメリカのサッカーファンからすると今回のSuper Leagueに参加表明したクラブというのは毎年のように夏のプレシーズン北米ツアー(International Champions Cup, ICC)に来るメンバーそのものなんですよね。
2018年が典型的でICCには計18クラブが参加、Super Leagueに参加表明した12クラブが見事全部含まれます。プラスPSG、Lyon、Bayern、Dortmund、Benfica、Roma。PSGやドイツの2クラブはSuper League参加が有力視されているので、ほとんどまんまなんですよね。米資本JP Morganが投資しているのと併せてSuper Leagueの集金先の焦点はアメリカ市場であるのは明白というように私には見えます。

Super League構想が現実化すれば欧州サッカーの放映権で後手を踏んでいたアメスポ最大手のESPNがとんでもない金額を積んでSuper Leagueの米国内放映権を取りに来るのは目に見えてる。現時点でEPLを放送して先行優位に立っているNBC系列や、UCLの放映権を持つCBS Sportsもババつかみの可能性から焦って参入してくる可能性も十分。アメスポ3大メジャー(NFL/MLB/NBA)は複数の系列にカネを出させて儲かりまくってますが(第4位のNHLは現時点ではNBC系列単独)、欧州Super Leagueもいきなりアメスポメジャー並に複数系列との大型放映権契約が望めるのではないか。その辺まで見込んで投資家は投資しているように思えます。

International Champions Cupはプレシーズン戦にも関わらずほとんどが米国内各地のスタジアムを大入りにします。勝敗に意味のないプレシーズン興行ですらチケットが売れるのですから、Super Leagueとなって真剣勝負の試合の一部を中立地の米国内で行えばさらに売上は伸びることでしょう。例えばEPLの6強はEPLでもH&Aで戦うわけですから、同じシーズンのSuper Leagueでの対戦は中立地でやったって良いわけですよね。
もっと進めればSuper Leagueのゲスト枠に北米のチャンピオンチームが加わる可能性もまたあるはずで、そういった発展の可能性もすべて見通せば、現行のUCL以上のカネを生み出す可能性は相当に高いように私には見えます。