USAOPC=米五輪およびパラリンピック協会が、来年の東京五輪を含んで今後の大会で選手が拳を突き上げる膝をつくなどの抗議行動をした場合に処罰を課さないという発表をしています。
このタイミングで言い出すんだなあ、という感じです。

アメリカのスポーツの歴史の中では1968年に男子陸上の2選手が表彰台で黒革の手袋をした拳を突き上げて国家演奏を受けたのが事件俗称1968 Olympics Black Power saluteとして残っているわけです。既に半世紀以上前の話です。

たらればですが東京五輪が当初の予定通り2020年夏に開催されていたとして、さらに今日発表になったように人種や社会正義への抗議行動を可としたなら大荒れで大変な事態になっていたでしょうね。ただでさえ米国史上最悪レベルで対立の激しかった大統領選とBLM抗議の世界的な盛り上がりの中でアメリカ人アスリートが次々と拳を突き上げる事態となっていたら、と想像すると怖いほどです。左右賛否両論の罵声が飛び交う事態になったかと。

大統領選がもう変則的な逆転も可能性がほとんどなくなり決着を見たといえるこのタイミングで抗議行動OKとしたのはある種のBLM側の変形の勝利宣言なのかもしれません。東京五輪だけでなくその後も、というところに実はより意味がありそうです。現在の4年毎の夏季五輪の開催時期は、米大統領選と同じ年の夏にあたり、4年毎にこの問題を五輪の場に持ち出す継続的な機会創設と言えます。
ただし私の理解では今日の発表は米協会の判断であって、IOCがこれを許容するかは別問題であるはずですが。

他国と異なりアメリカの場合、政府が五輪選手の育成に使っている予算はないと理解しています。軍出身のパラリンピック選手には政府予算が付くのですがそれは特例で、例え大統領や連邦議会が五輪選手の抗議活動を不快として予算面で圧力をかけようとしても元々カネを出していないのでそれはできないことになってるんですね。そういう意味ではアメリカの五輪アスリートは政府の干渉から自由な面はあります。

公的資金がないので他方私企業からのスポンサー資金を得るための自助努力が必要になってます。たぶんそこが今回の抗議活動の継続的許容発表ともからんでるのかもなーと想像できます。完全に推測でモノを言えばNike社主導かもなーと。少なくとも極右の人種差別主義者ならNikeは売国奴(日本語風に言うならですが)と罵ってそういう結論にとびつきそうな気がしますね。そして実態はそれほどはずれていない可能性はありそうです。

4年毎のアメリカの政治の季節になるたびに五輪が抗議活動の場になるというのもいかがなものかという気もしますが、少なくとも来年に延期された東京五輪では時期がズレるだけマシかなという話にもなります。