前項で触れたTampa Bay RaysのWorld Series第6戦先発投手だったBlake Snellが試合後の記者会見で不満を率直に述べています。6回途中で降板を告げられた時点で無失点2被安打9奪三振73球。迎えるLos Angeles Dodgersの上位打線1番から4番までとこの日のべ8打席7三振と完勝の状態。これで代われと言われて納得するのが難しいはず。交代を告げられたことに失望した、続投を主張するためにできることはすべてやったのに、と不満を述べたあと、監督の判断は尊重するとも発言。大人の対応となってます。SnellはRaysとの契約が2023年まで残っており長い付き合いとなるのも発言を謹んだ理由でしょう。

今はRaysは負けたばかりで来季以降の展望がどうなるかの議論は少し先になるでしょうが、こんな不本意な形で降板させられるチームだと燃えるタイプの先発投手はFAでRaysを選んでくれなくなるというような弊害が発生しそうです。現在のRaysの他の先発陣のCharlie Mortonは2021年が契約最終年。Tyler Glasnowは今季後に調停の権利あり。Ryan Yarbroughは2021年シーズン後に初の調停の権利取得見込み。つまり来季2021シーズンは今季の先発陣がたぶん維持できるという話になります。その後のことはどうなるかわかったもんじゃないと。
この日のSnellの扱いがこれからもRaysの投手起用の方針として定着するのかどうかはRaysの内部でまた議論が戦わされるのでしょうが、もしこの起用を是とした場合に現有勢力の選手が納得してRaysと再契約してくれるものかどうか。


データに基づいた戦術、というのは聞こえは良いのですが、そのデータ自体の粗さやデータ解析の不十分さ未成熟さというのはしばしば感じられるところ。
今回のSnellの降板の根拠となったのは相手打線に三度目に対戦するときには投手の成績が大きく下降するという2017年のオフに提唱され始めた事象であると考えます。当時New York Metsがわざわざ公言して2018年シーズンからその方針を採用するとしたのが話題となった最初でした。現実にはMetsは言ってみただけでその方針を年間通して大胆に導入することはなかったのですが。

相手打者の馴れ、投手の側の疲労による球威低下など回が進めば抑え込める確率が下がるのはなんの不思議もない常識的なことですが、それを打順三巡目とそれ以前の常識より前で区切ったところが比較的新しいと言えるのでしょう。しかしながらその区切りが隔絶した切れ目、正しい区切りであるかどうかはまだ議論の余地がありそうです。しかしRaysは今回それを絶対視してSnellを降ろした。

似たような話で私が昔から不審に思ってるのが先発投手の交代のメドが100球程度というアレです。個人差や当日の投球ストレス度での差があって良いようなものがなぜかMLBの全先発投手が100球メドっておかしいと誰も思わないのかなと昔から思ってるわけです。

レギュラーシーズン中なら毎回の登板での負荷を平準化ルーチン化することのメリットが次回登板へ向けての体調管理にあるかもしれませんが、負ければ次回登板のないポストシーズンではそれは考慮すべきではないし、さらに昨日のSnellのケースならもう今季最終登板なのは確実なのだから普段と違う熱投になっても良いと判断できるはずです。その異なる状況を考慮せずにレギュラーシーズンの起用法をそのままプレーオフに持ち込んで、データ通りの起用で正解とするのはエセ科学になっているように思えるんですが、私の考え違いでしょうか?