プロスポーツについてはここのところコロナ疫禍の影響をいろいろ書いてきたわけですが、カレッジスポーツでは別の形で問題になってきているようです。

カレッジスポーツはフットボールと男子バスケットボールが稼ぎ出すお金を使って他の種目の運営がなされるというのが基本形となっています。一部の学校では女子バスケや野球部もお金を稼げるのですがそれは例外。大半の学校ではフットボールと男子バスケがお金を稼ぎ、その稼ぎが運動部の予算のすべてという場合が多い。フットボールがあるのは大規模校だけですから、大多数の学校では男子バスケが稼ぐのがほとんどすべてとなります。
今回のコロナ疫禍でMarch Madnessおよびカンファレンストーナメントが中止になったのが既に翌年度の予算に大きく響いている学校があるそうです。ちょうどスポーツ中止が相次いだ時期が多数のミッドメジャーカンファレンスの最中。その開催が潰れたのは収入面で既に大きくマイナスになっている。バスケのミッドメジャーの学校の多くはフットボールチームを持ちませんからバスケのカンファレンストーナメントの収入を失ったのは予算に占める割合がとても大きいロスなのです。

フットボール部にしても例年弱小校が強豪校に招かれて切られ役をやる遠征がありますが、その手の試合がなくなりそうだとされます。AlabamaやらFlorida Stateやらがよく例に挙がりますが、相手校に$500,000なり$1 Millionなり払ってホームに呼んでサンドバッグ状態にする試合をやります。どんな試合でも自前の巨大スタジアムを埋めることのできる人気校にとってはそういう額で弱小校を招待してもチケット代や場内での物販で楽にそれを超える収入があるからです。負ける方にとってはその1試合でもらえるお金が運動部全体の予算に占める割合は大きくとても大事な収入源の試合なのですが、そういう試合を強豪校がコストカット目的で早くも避け始めているとされます。無観客試合になれば人気校にとってはメリットが消滅するからです。これは元々その遠征試合の報酬をあてにしていた相手校にとっては大打撃となります。

それでどうなったかというと今年秋学期からの一部スポーツが活動停止の通告を受けたというのですね。お金の面で永年赤字スポーツのレスリングであるとかの選手が来年は学生としては学校に残れるけれどもスポーツ奨学金は支給できないと言われてしまったという話が報告されています。それはまたひどい話だなという感じですが、現実は既にそうなっている学校がある。
メジャーカンファレンスはフットボールにせよ男子バスケにせよ長期かつ金額の大きい放映権契約で先が保証されていますが、ミッドメジャーバスケはそうはいかない。地道に動員でも稼がなくてはいけないのに来季の観客を入れての試合開催ができるかどうか今の時点では見通しがつきません。その不透明感の中、元々学内で力の弱かった部の学生アスリートにしわ寄せがきているということです。


アメスポのプロリーグと違って元々富の偏在、実力の差が激しいのがカレッジスポーツの特徴で、その差が今の環境激変下でマイナー校に、そしてマイナースポーツへの切り捨てという形となって早くも問題になりかかっているということです。

それでまたこういうときに潰される部はほぼ男子の部なんですよね。男女同権をうたう連邦憲法修正第IX条の要請でスポーツ奨学金の男女バランスをとることが必須とされる中、バランスをとりながら潰すとなるとまず男子のマイナースポーツが潰れることになる。上の例でレスリング部が奨学金とりやめというケースを書きましたがそれがまさにその例でしょう。NCAAでは女子レスリングは正式種目ではなく男子のみ正式種目です。
ま、そうでなくてもレスリングなんて感染の危険度で考えれば最悪のスポーツでしょうから来る新年度のシーズン(レスリングは冬シーズン)に活動ができるかどうか一番怪しいスポーツでしょうし。

風が吹くと桶屋が儲かるというのがありますが、コロナが蔓延するとレスリング部が潰れるというのがアメリカカレッジスポーツの世界の現実です。