テニスの全米オープンの放送の合間にスポーツビジネスにおける男女格差の啓蒙CMが流れていました。ナレーターはBillie Jean King。1970年代の女子テニスの女王であり、それよりも男子プロとの男女対決マッチを制したことでより有名な方です。75歳、現在もご健在です。

いくつかバージョンがあるようですが例えばこれとか。いわくスポーツ放送のうち女子のものは4%に過ぎないと訴えています。少ないと言いたいのだと理解。

しかし私個人の感覚では4%もあるのかという気がしました。テニスなら男女比半々、または女子の方が露出が多い(アメリカ人有力選手が多い分)でしょうが、それ以外で女子がまともに放送されているスポーツなんてあるのかという感じです。当ブログでもよく取り上げる女子代表サッカーにしても試合数は年間20試合もあれば良い方、かなり限られます。今年は女子W杯があって、優勝したのでW杯後の祝勝米国内ツアーが追加されて年間22試合の予定です。
女子比率の高いテニスにしてもTVで露出するのは4大トーナメント以外はこれも極限られます。他の女子のジャンルって放映試合数がそこそこあるのはWNBAおよびNCAAの女子バスケぐらいでしょう。日本は女子ゴルフが人気と聞きますが、アメリカのLPGAツアーは人気的に危険水域に入って久しいという理解です。

それに対して男子は4大プロスポーツ・2大カレッジスポーツが毎年大量の試合を放送しているはずです。例えばMLBがレギュラーシーズンだけで毎年2,430試合を開催。NHLが年間1,271試合のレギュラーシーズン。これにそれぞれにプレーオフがあり、他にもMLSだのNASCARだのゴルフPGAだのを加えて、ものすごい数の男性スポーツイベントが全米各地で繰り広げられて、放送されている。女子がその4%もあったらすごく多いように私には思えるのですが。


ご存知の方は多いかと思いますがテニスの全米オープンは男女の賞金が同額です。他のメジャーはすべて男子の方が高い。たぶんテニス以外のすべての種目でも男女の取り分が同額という種目は少ないはずです。男子は5セットマッチで女子は3セットマッチなのですから、労働量との換算で言えば女子の方が男子より待遇が良いわけですね。
で、上で紹介した啓発ビデオにも登場するサッカーの女子代表はその人気の高さ(および米男子代表の人気の低さ)ゆえにテニス全米オープンに続いて男女同待遇を勝ち取ろうと現在法廷係争中。これは過去何度も紹介した通り、女子代表には人気の裏打ちが確実にあるとみえるので実現可能な範囲内・有望でしょう。

しかしその他のジャンルはキツイように見えます。個人的にはNCAA女子バレーは好きですし、女性ドライバーが奮戦するモータースポーツも悪くないとは思いますが、お金になるという意味ではキツイ。それがLPGAの女子選手が「我々も男女同待遇を目指したい」なんていうお花畑発言をしているのを聞くと、首をかしげたくなります。


以前に大学のアスリートに報酬を払うべきかどうかが話題になった時期がありました。ことの発端は巨大な利益を生み出すカレッジフットボールやカレッジバスケから上がる利益を役員だのコーチだのがミリオン単位の報酬を得て搾取しているのに実際の労働をして巨額のカネを稼ぎ出している選手たちは清貧生活を強いられているのはおかしいという話だったはずです。
ところが途中からボート漕ぎだの飛び込みだの長距離走選手だのといった赤字種目の選手たちにも満遍なく報酬を与えるという話にすり替えられてしまい、そうなると報酬をもらう選手の数が膨大になって採算の見込みが立たなくなり結局沙汰止みになったということがありました。わざと話をすり替えて茶にして潰してしまった策士がNCAAの上層部辺りにいたんでしょうか。最近はもうまるでその話題は聞きません。

男女同待遇問題も似たような危機をときに感じます。女子テニスやサッカー女子代表は興行実力も人気もあるから同待遇を要求できるという話なのでそれはそれで良い。ところがどこかで微妙に話がすり替わってきているような。「女子スポーツはもっと注目されるべき」「待遇改善を」「男女格差是正・同待遇を」というのは耳障りの良い話なんでしょうが、カレッジの選手の報酬問題と似た形でそれは無理だろという反応が出そうな主張にすり替えられて、結局全部ダメになっちゃう可能性を感じたりもします。