昨年の今頃のNFL関連の大きな話題のひとつは当時Pittsburgh SteelersのRB LaVeon Bellがトレーニングキャンプに来るか来ないかというものでした。キャンプに来るのか、冒頭は来なかったけれどプレシーズンマッチに間に合うように来るのか、本番のレギュラーシーズン開幕までには来るのか、そしてシーズン全休が確定する時期にも来るのか来ないのかと何度も何度も同じ話題をやってました。
当時の私の感想はホンっとくだらないことをやってんなーと思い、当ブログでは一度も取り上げませんでした。

しかし一年経ってみてちょっと見方を改めた方が良いのか、と思い直しているところです。
きっかけはこうです。アメスポにおいてストやロックアウトなどのシーズンを止めてしまうような労働争議はもう金輪際発生しないのではないか、ということをスポーツトークショーで言及(主題は別の話=MLBのストの可能性だったので軽く触れただけ)するのを見たときに思ったのです。
あのLeVeon Bellのわけのわからない出場拒否は、労働争議ができないNFLの構造を見越して労働法上の労働争議は不可能、なので個人的に労働争議をやっているのではないのか、と。

4大プロスポーツNFL/MLB/NBA/NHLのうち、もっとも選手の待遇が悪いのはNFLと言えます。一番儲かっているのに選手のサラリーは安く、選手寿命は極端に短く、公称されるサラリーの額にしても保証部分は少なく他のスポーツと同じ公称金額ならばほぼ常にNFLのサラリーは実際の収入が大きく下回ります。長期契約だと発表されても実際はチーム側にリスクなくカットできる内容だったりする。その上スポーツの特性上引退後に障害の残る可能性は高い。

NFLがアメスポでMLBを抜いて全体1位の座を得てからもう30−40年となりその地位はまず揺るがない。しかしながら選手の待遇は悪いまま。労働争議になりかねない条件は揃っている。でもそうはならない。

なぜかというと選手寿命が短いため多くの選手が1シーズンを棒に振って待遇改善を勝ち取ることを厭うからです。NFL選手の平均選手寿命は3.3年とされます。長年チームの顔となっているスター選手たちやベテランキッカーなどがいるためカジュアルなファンにはそういう選手寿命の短さは意識されにくいですが現実は厳しい。そういう選手たちが選手会の大半を占めるわけです。

一生のうちたった3シーズンしか稼げないのにそのうちの1シーズンを無給で耐える覚悟をしないと労働争議に入れない。そうしてサラリーアップを勝ち取ったとしてもその恩恵は新労使協定妥結後に契約を結ぶ選手たちだけになって次の契約がないかもしれないほとんどの選手にとっては1シーズン=NFLキャリアの実に1/3のサラリーを失ってしまう。そういう無名の選手たちが多数いる限りNFL選手会がストを議決することは困難、というのが構造です。

労働者保護の視点で言えばこの構造を利してオーナー側が一方的に有利な状態は打破されるべき、という意見もあっても良いのですが、なんだかんだ言ってNFL選手は皆儲かってるだろという一般の無関心もあるし、政治から見てもこの問題は優先権は低く介入して状態を変えてくれる可能性は極低いと見るべきです。政治家へのパイプもオーナー達の方が選手会よりも遥かに確保しているわけですし。


そういう八方ふさがりな状態。NFLに限らずアメスポ全体でももう二度とシーズンが消滅するような労働争議は起こらない可能性を考えたとき、NFLの選手会が待遇改善にできることってなんだろうと。その回答の第一弾が昨年のBellの騒ぎだったのかなと思い直したという話なのです。そして今季キャンプに参加拒否をしたMichael Thomas (Saints)、Melvin Gordon (Chargers)、Jadeveon Clowney (Texans)たちもその一環なのではないか。つまり労働法上の労働争議とはならない別の労働争議の形態なのかなと。

Michael Thomasは昨日Saintsと次期契約がまとまったと発表、WRとして史上最高額をゲットしてます。5年$100 millionと大きくぶち上げられて報道されていました。
但しこれ、保証額は$61 million分しかありません。$100 Millionだぜ、史上最高額だぜ、と見た目は派手ですが、中身はNFLの旧態依然とした契約でしかなく、Thomasは待遇改善には寄与しなかったか、ということに。Bellには続けず。選手側にはできることはほとんどないってことになっちゃうんでしょうか。