フットボールシーズン開幕まで50日を切ったとかでNFLおよびカレッジフットボールの話題が徐々に増えてきてます。その中で目を引いたのがこの話題。西海岸を地盤とするPac-12のフットボールの試合を現地時間9AMに行おうという動きがあります。放映権を持つFOXの意向でこの試合開始を朝とするプランが進行中とか。

カレッジフットボールでFOXが放映権を持つのはBig Ten、Pac-12、Big XIIの3カンファレンス。Big Tenの大半の学校は東部時間帯に位置しますが、Big XIIは大陸中央でほとんどの所属校は中部時間帯(東部より1時間遅れ)、Pac-12は西海岸の学校が大半で多くは太平洋時間帯(東部から3時間遅れ)です。アメリカの全人口の半分は東部時間帯に居住。東部と中部を足すと全人口の2/3がそのゾーンに住んでいます。

今回話題となっている太平洋時間帯での9AM試合開始とはアメリカの大半の人口にとっては正午キックオフという話です。正午キックオフの試合はシーズン中の毎週土曜日の長いカレッジフットボール漬けの最初の放送枠。そこへPac-12の試合を入れたいというのが放送するFOXの意向とか。

ほとんどの試合が東部時間帯で試合をするBig Tenの放映権もあるのになぜ3時間も時差のあるPac-12の試合をしたいか、ということになるわけです。
まずはバランスの問題でしょう。FOXの手持ちに上記の3つのメジャーカンファレンスがあると言ってもPac-12は早い時刻の試合はしないとなるとBig XIIかBig Tenの試合ばかりになる。Big Tenの放映権を一昨年から獲得する前のFOXは正午の放送枠にとても弱かったです。Big Tenを加えてからもBig Tenの試合をすべて独占するわけではない(FOXが優先的に数試合を確保、他はESPN系列やBig Ten Networkが放送)ので人気のOhio State、Michigan、Penn Stateなどの出場する好カードを確保したら視聴率の出る3:30PMキックオフの試合、またはナイトゲームに回したい。そうなるとまた正午の試合はBig XIIばかりになりがち。またはBig Tenの魅力の薄い学校の試合。ここにバラエティを加えて視聴者をFOX系列に引き寄せるにはPac-12の露出強化ということなのでしょう。

Pac-12側からするとメリットもあります。時差の都合上西海岸のスポーツは東海岸での(=大半の人口への)露出が足りない。これはカレッジフットボールに限りません。しかしカレッジフットボールには特有の事情があります。記者投票やコーチ投票ランキングがプレーオフ進出校に影響するからです。プロスポーツなら年間の勝敗数で決着がつきますが、カレッジフットボールでは印象点でランキングが決まり、それがプレーオフ進出校の選定に影響します。ただ勝っただけでは足りない。West Coast Biasと呼ばれる西海岸の学校への認識不足は長年のカレッジフットボールの問題でしたが、過去はそれは仕方がないことをとして放置されてきていたわけです。
そこについに手をつけて朝の9AMから試合を開始してPac-12の好カードを東部のファンに見せてしまおうというわけなんですね。

過去なら無理、と一蹴されていたようなこの提案をPac-12が実際に検討するというのですから時代が変わったんだなということになります。
カレッジフットボールの文化として、試合以外にもテールゲートパーティと言って数時間前からスタジアムの駐車場に陣取ってBBQをやったりしてまったり楽しむのが定番の時間の過ごし方なわけです。9AMキックオフでテールゲートパーティなんてできるのか。そんなファンの古くからの楽しみはないことにしてでもPac-12の全国区での商品性をあげていく方が大事という時代になったんだな、ということなんでしょうね。