College World Seriesの決勝シリーズ第3戦最終戦が水曜夜に開催。Michiganが先勝、1勝1敗後の決着戦はVanderbiltが逆転勝ちで5年ぶりの全米制覇となってます。

Vanderbiltは2014, 2015年に連続で決勝シリーズ進出するなど近年のCWSでは常連。MichiganはCWS登場が1984年以来35年ぶり。1950-60年代に全米制覇の記録はあるもの、今年突然にあらわれてここまで来たという感じです。Michiganだけではなく所属のBig Tenからの野球での上位進出が珍しいです。

カレッジスポーツ全般ではBig Tenはメジャーカンファレンスの中でもその経済規模、各種スポーツでの存在感などで全米一の巨大カンファレンスと考えても良い存在です。しかしながら野球ではふるいませんでした。これは一重に気候の問題です。

カレッジベースボールシーズンは2月に開幕、レギュラーシーズンは5月に終了、その後トーナメントが今6月末まで続くという仕組み。Big Tenの位置する北米大陸中西部(ミシガン州オハイオ州インディアナ州イリノイ州ミネソタ州など)は2月3月はまだ極寒で野外スポーツに向きません。MichiganやMinnesota辺りでは4月でもまだかなり寒いはず。2月開幕ということは1月から公式練習期間が始まっているわけですけど1月のミシガン州とか野外に出て練習とかいうのは自傷行為と言っていいぐらいのはず。
なので伝統的にカレッジベースボールは温暖の地の学校が強かったわけです。カリフォルニア、アリゾナ、テキサス、フロリダと言った州です。学校名で言えばUSC、Arizona State、Texas、Miami-FL,
Florida Statteといったところ。

それらの有力校が所属するカンファレンス内の他校もその影響でまずまずのリクルートを得たりはするのでSEC、ACC、Pac-12などには少し緯度が北に上がった春先は少々寒そうなところでもぼつぼつと新興の強い学校が出てきていた。それが例えば今回の優勝校テネシー州のVanderbiltがそうでしょうし、またはテネシー州の北隣のケンタッキー州のLouisvilleなんかもそうやってカレッジベースボールの世界で強くなってきたと言えます。

ちなみにVanderbiltは今月のMLBドラフトで13人が指名を受けてます。MLBドラフトにかかる大学生はルール上3年生以上(細かいことは省きます)に限られており、上級生だけで13人が指名って、それチームの上級生全員じゃないの?という大量の指名です。カレッジベースボールの新興の新名門って感じですね。有名出身者としてはRed SoxのDavid Priceがいます。Priceは数年前のVanderbiltの初のCWSの優勝シリーズ進出時に現地に観戦に来てたのを見たことがあります。あれはMLBのシーズン中だったのにどうやってPriceは来てたんだったのか事情が思い出せませんが確かに来てました。

しかしBig Tenはさすがに寒いせいかCWSまで残ってくる強いチームはほとんどいませんでした。それが突然MichiganがCWSに登場して勝ち上がってきました。
Big Tenのファンはアウェイの応援への遠征をいとわないことが多いのですが、野球の伝統がないこのCWSにも多くのMichiganファンがやってきていたのは、さすがMichiganだなという感じか。ここまで勝ちこむということは、Michiganも選手のリクルートに静かに取り組んできたということでしょうし、インドアの施設を充実させるなどして投資もしてきたのだろうと想像できます。これまで野球に弱かった最大カンファレンスBig TenがカレッジベースボールにからんでくるというのはCWSの人気にとっては良いことであろうと考えられます。Michiganが全米準優勝となれば、ライバルのOhio Stateも黙っていないように思われますし。今回のMichiganの躍進がカレッジベースボールの地盤を広げる力になる可能性を感じます。

なお今トーナメントの最優秀選手にはVanderbiltの19歳投手Kumar Rockerが選ばれています。昨夜の決勝シリーズ第2戦でMichiganを封じ込めてシリーズの流れを取り戻した快投。RockerはSuper Regionalではノーヒットノーランも達成するなどチームをもり立てました。この選手は先に述べたMLBドラフトで指名された13人の一人ではありません。
ちなみに彼の祖父母がインドからの移民だそうで、本人はアメリカ生まれのアメリカ育ちですから関係ないんですけど、彼の地のクリケットの豪腕選手がMLBに行って野球に挑戦するという映画「Million Dollar Arm」を思い出しました。