"Don't stop and stare. Don't flip your bat. Respect the jersey...."
これ、MLB公式が昨年のポストシーズンから流しているTVコマーシャルです。今年も試合中継の合間に盛んに流されています。リンク先のビデオを見ていただくとわかりますが、立ち止まってボールの行方を見るなバットをわざと投げるななどなど音声で言っていることと反対のことを選手たちがバンバンやっている場面を写してます。そして最後にKen Griffy Jr.が”No more talk. Let the kids play”と締めるこのCM。
これ、つまりは野球のUnwritten Ruleの廃止を訴えるものです。これをMLB公式が作成して昨年から流し続けているというところに意味があります。

この話には伏線がありました。数年前にAtlanta Bravesの有望プロスペクトの選手のユニフォームの着こなしが悪いということで議論があった時期があったのです。当のマイナーリーグ選手がそれに真正面から反発したのでニュースネタになった小事件でした。アメリカ人黒人選手だったかと思います。名前を忘れてしまいました。意訳すると曰く野球は小うるさい不文律が多すぎる、バスケと違って自由がない、と。

それと時を同じくするようにメジャーで派手なbat flipが多くなった。たぶん転機はJose Bautistaの2015年ALDSでの熱戦を制したこの一打だったでしょう。このときのbat flip=バットの放り投げパフォーマンスは試合も熱い試合、熱い場面だったこともあって注目されました。私も見てましたけど大変盛り上がりました。当然のように伝統派からは批判の意見も出たのですが、翌年以降もいくつもの思い出深いbat flipの場面が再現されたのでした。
そしてBautistaの決勝ホームランから3年後にMLB本営がBat flipを公認したのが冒頭に紹介したTVコマーシャルであったと。

MLBがその商品である試合のエンタメ度の向上に(改革スピードは遅いながら)取り組んでいることは当ブログでも過去何度も触れているところ。多くの議論は試合のペースアップや、インプレー率、投打の優劣バランスなど試合の中身の話なわけですが、それとは別に試合にもっと現代にあった活力を注入するために長い伝統であったUnwritten Ruleの歴史を変えて、ストレートな感情をほとばしらせるような表現をMLBに導入しようと啓蒙しているのがこのコマーシャルなんですね。

何のジャンルでも保守派というのはいるもので、保守派の熱心なMLBファンもMLBにとっては大事なお客様なのは間違いがないです。ファンの年齢層が比較的高いMLBに於いては保守派の割合も高い可能性がある。また各地ローカル放送の解説者にも保守派は多く、bat flipに否定的な見解を延々試合中に述べたりという場面もしばしば。
そういうのを承知の上で選手たち(コマーシャル内ではKidsと呼んでますが)にもっと表現の自由を与えよと主張している、そしてそれがMLB公式の見解なのだ、というところが重要です。

さらに言うとこの啓蒙CMはこの視点を少年野球にも適用して欲しいとMLBは考えているんではないかな、とも思います。 Let the kids playのKidsとはMLBの選手たちだけではなく、少年野球に入ってくる子たちにも古い野球の因習を強要することよりも、楽しんで騒いで良いのだと草の根指導者たちにも訴えてるのかな、とも聞こえます。
他のスポーツとの人材の取り合いをしなくてはいけない中、野球だけが子どもたちにアレもだめコレもだめなど言ってる場合ではないという意味でもあるように感じます。