先日コメント欄で少し触れてしまったので一度まとめて書かなくてはいけないかなと思っている件があります。サッカーのアメリカ市場での人気の特殊性についてです。

まず資料としてここのリンクをご覧いただきたいです。リンク先の記事は2018年6月のもので、それが書かれるのに使われた元資料は2016-17のものです。いかにアメリカのサッカー人気の大部分をヒスパニック人口・スペイン語話者が担っているかということが様々な数字で示されています。
現在ヒスパニックがアメリカの総人口に占める割合はほぼ17%、5300万人。ざっと6人に1人がヒスパニックという理解でいいでしょう。その約1/6の人口のヒスパニックが、サッカー放送の全視聴者の67%を占めるという驚異的なサッカー好きを発揮しているという事実が示されていたりするわけです。1/6の人口で2/3のサッカー視聴者。逆に言うと非ヒスパニックは5倍の人口規模がありながらヒスパニックの半分程度、人口比で言うならざっと1/10しかサッカー番組の視聴者を贖えていないという意味でもあります。

5300万人というのは世界の各国の人口に当てはめると世界27位の人口に相当します。スペイン、カナダ、アルゼンチンといった国家の総人口よりも多いわけです。イメージとしてはサッカー狂の別の国がアメリカの中に存在するような状態と考えても良いかもしれません。
そういう人気の極端な偏りを意識せずにアメリカ全体でのサッカーの人気を云々するといろいろ見誤るだろうなあということを考えさせられます。

またこの資料では非ヒスパニックに比較してヒスパニックの若い層がサッカーを見ているということも示されています(SOCCER VIEWERSHIP COMPOSITION BY AGEのグラフ)。例えばヒスパニックでは10代の割合が15%と5%以上高い。ヒスパニックの方が5倍の視聴者規模を持つのでこの5%の差は相当の差と言うことになりますし、全人口をまとめた資料になると15%の方に近い数字になって出てくる結果になるわけですね。一般的に言ってヒスパニックは多産なのでこの差はこの先も広がっていく可能性があります。
年齢が上の世代もまた興味深い数字になっています。観戦スポーツとしてのサッカーはアメリカでは開発が遅れたこともあって比較的若い世代が多いはずという一般的な感触があるかと思うのですが、現実は非ヒスパニックで50歳以上が40%を占めています。なかなかおもしろい数字だと思います。想像するとすでに年配となったサッカー国からの移民一世がサッカーを熱心に見ているという感じでしょうか。


では非ヒスパニック約83%の人口においてサッカーの人気がどうなっているのか。そちらの方が一般的な意味での「アメリカのサッカー人気」の状況を推し量る上では大事かもしれません。なぜなら人口の中ではマジョリティですし、たぶんお金を持っているのもそちらの方だからです。