まだ先ごろ2024年のパリ五輪での新規採用種目決定の報道があったばかりですから、その次の2028年ロス五輪での新採用競技決定まではたぶん4年ほどあるのであろうと想像されますが、それに向けての運動はそろそろ本格化していくのでしょう。ラクロスもその流れで昨年末に統括団体のFILがIOCから暫定承認を受けています。向こう3年の期限付き。その間に正式競技採用へ向けて活動を展開するんだと理解しています。
ラクロスと同時に競技団体として暫定承認を受けたのはサンボとキックボクシングとか。

最近の記事でいろいろ五輪をくさしてみました。それでもその影響力は群小のマイナースポーツにとってはその競技単独では望むべくもない大きな露出の機会を与えてくれるのも確かです。独自でプロ組織がありビッグビジネスとなっている種目ですら国際的な露出増加の手段として五輪種目化を目指したりするわけですから。

例えばNFLがフットボールを五輪種目にしようとひそかに運動しているという話が漏れてきます。しかしいくら地元とは言えやる前から米国の金メダルはまったく動く可能性がゼロなのにやる意味があるんでしょうか。プロが出場しないぐらいではまだ2位以下との差は遥かに遠く勝負にならない。
アメリカ人はまったく存在を知らないでしょうがアメリカンフットボールにも世界選手権大会が存在します。これに出場する米代表はカレッジのウォークオン(非奨学金支給対象選手)卒業生や2部3部の元選手など。そのメンバーですら出場すれば圧勝してます。強すぎるので米代表が出場しない大会もありました。

ちょっと考えてみてください。NFLには32チームありロースターは53人=計1,696人のNFL選手がいます。これにCFLやAAFなどのマイナープロの選手がざっと考えて1000人弱か。カレッジの1部FBS校が130校 x 奨学金選手上限が85枠 = 11,050人。1部FCSが124校 x 63枠 = 7,812人。ここまでだけでもざっと上から2万人の現役選手がいるわけです。それ以外に大学2部3部の選手がいて1部校のウォークオンもいる。1部奨学金選手までの上位2万人を出場させなくても米代表が間違いなく圧勝してしまう競技。最初から金メダル確定なのです。こんなものを五輪で競わせる意味があるんでしょうか。2位以下の争いは意味がないとは言いませんが。
それでもNFLがなにやら五輪種目化を後押ししているというような話を聞くとなにを目指してんのかなともやもやします。


例えばラグビーは40分ハーフの試合を、人数を半分に削った上に7分ハーフという試合の質の変わってしまうモノに差し替えまでして五輪種目化しましたよね。試合時間で言えば2割以下の長さの簡略版ラグビーです。ラグビーは経済規模ではアメスポと比較するとかなり小さいので五輪化でなんとか露出を増やしたい、海外市場を拡張させたいという念願はわからないでもないです。実際、世界のスポーツ市場で最大の市場であるアメリカ国内でのラグビーの認知度はここ10年内に大きく向上したという効果があったわけですから簡略版で五輪競技化した意義はあったわけです。

ではNFLフットボールはどんなものを五輪種目化で目指しているのか。これは以前から当ブログでは書いてますが個人的には女子のLFLのようなもので良いのではないかと思ってます。それも時間をもっと短くしたもので。
フル規格のフットボールなんて世界選手権の様子を見ても選手を揃えられる国がほとんどないはずです。無理にやったとしても試合レベルは米国内の既存のフットボールファンにも見向きしてもらえないものになるのは確実で、そうなったら地元開催枠で競技採用しても一体誰が見るんだよ、ということになります。長続きしそうな気もしません。どうしてもやるというのなら7人制ラグビー同様人数、試合時間を相当に絞ったものを考えているのでは。というか考えていて欲しい。


話が大きくズレました。ラクロスのロス五輪の競技採用の可能性の話をしたくてこの記事は始めたのでした。
フットボールの一強に対して、北米産スポーツのラクロスはアメリカ・カナダの二強の構図。二強ぐらいのスポーツは既存の五輪スポーツでも女子のアイスホッケーなんて例もあります。昨年の平昌での女子ホッケー代表の優勝はアメリカ国内ではまずまずの話題になりました。一強よりはずっとマシでしょう。ラクロスも男女セットで夏季五輪に競技採用となれば米国内的には盛り上がる可能性はあります。米国内の影響でいえばラクロスの普及度に国内東西格差が存在するだけに西への侵攻・全国展開には意義がありそうです。

ではラグビーのようにIOCから簡略版を求められたらどうするのか。ボックスラクロスという室内競技は北米でプロ化されて30年以上にわたって存在するので道具立てやルール整備、運営ノウハウはあるのでしょうが、個人的な感想ではあれはちょっと違うのではないか、と思ってます。時間を短くするのは当然の妥協としてもぜひ野外でやってほしいなあと思っていたわけです。
さすがにそんな私が心配するようなことは米ラクロス協会も承知していたようで昨年末から6人対6人(通常10人づつ)の野外の試合を実験的に行ってみています。ただ時間短縮への踏み込みは足らず(と私には思えます)8分 x 4クォーターとか。通常のラクロスの国際試合は15分 x 4Qなので、中の人が考えると時間の半減は大きな改革なんでしょうが、たぶんもっと削らないといけなくなるんじゃないですかね。削った方が露出効果には良いのは7人制ラグビーで証明済みな気もしますし。またラクロスの場合、力の差のある対戦、一方的な試合が多くなるのも目に見えてるわけで、それを30分以上やり続けるのが良いことかどうかという視点も欲しい。濃厚な試合は決勝戦だけにしてその試合だけは長くやるという工夫でもいいかも。


さてラクロスはそのように五輪採用に向けての取り組みを既に開始しているのに対して、フットボールの方で五輪用の簡易ルールの工夫を模索してるという話は聞きません(まさかフラッグフットを想定?)。ほんとに採用に向けて運動してるのかなと疑いたくなるほど。
ひょっとしたらカネさえ出せばICOはどんな内容でも折れるとでも高を括っているのか。確かにNFLにはそれができます。ラクロス始めマイナースポーツにはそんな真似はできませんがNFLにはできる。IOCの過去の行状を考えると確かにカネで枠を買うことは可能でしょうが、そんなことしてNFLに何の得があるのかというところが知りたいですね。前回の記事で否定したとおりで五輪競技化するのと、他国でそれが見えるところで放映されるのかはまったく別の話なので。そんなので五輪の新規採用枠・地元枠に割り込むならラクロスの方に譲って欲しいような。