それでHarperはPhiladelphia Philliesが契約したわけです。なぜPhilliesなのかは謎のままです。その理由を推測してみようというのが今回のテーマ。既に私なりの答は表題にしてしまいました。

なぜPhilliesがそんなにHarperに執心だったのかです。結果から見ると今オフの大物2人はManny MachadoがSan Diego Padres、HarperがPhillies。San DiegoはMachadoを加えてNL西で本命Los Angeles Dodgersに勝負できる陣容になったとされますが、Philliesの方のNL東は激戦区とされやってみないとわかりません。激戦区のNL東で出遅れ気味だったゆえにPhilliesにはHarperが必要だったのだと主張する向きもあります。

別の角度で考えてみたいと思います。Philliesというと2020年シーズン後にFAとなる予定のLos Angeles AngelsのMike Troutが少年時代にPhiladelphiaの大ファンで、FAではPhilliesがTroutの意中の行き先だという話は以前に聞いたことがあり、当ブログでもその件を書いたことがありました。当然Philliesの首脳もそのことは知っているはず。FA明けとなる2021年シーズンには29歳になる現在のMLBのベストオールラウンドプレイヤーとされるTroutの獲得の本命だったPhilliesですが、今回のHarper獲得でさすがにTroutの行き先からは外れることになるはずです。まさかHarper・Trout両獲りなんていうお金はいくらビジネス好調のMLBでも出てこないはずですから。

ないと仮定して論を進めると、ではなぜPhilliesはMLBベストプレーヤーで相思相愛になれそうなTroutをこの段階で諦めてHarperを選んだのかという疑問になります。

そこで思い出すのがHarperにとって意中の球団だったはずのNew York YankeesがHarperのFAを待たずに昨年2018年のシーズン前のオフにMiami MarlinsからGiancarlo Stantonをトレードで獲得したこと。FAとなる一年前の段階でYankeesはHarper獲得レースから降りたということになります。
当時は「いやまだそれでもHarperも獲るんじゃないか。だってYankeesだから」という論調の推測もありましたが、結果はYankeesはHarper獲りには参戦せず。Stanton獲得時点で既に降りていたのでしょう。いま結果を知ってから考えれば無駄なことでしたが、それに対してHarper側は、Yankeesの外野が埋まっているのを見て取って「一塁手としてもプレーする用意あり」とYankeesのチーム事情に配慮した発言までしました。そこまでしてYankeesに行きたいのだなあ、という感じでした。

ただ他方Harperの代理人周辺は吹かしまくっていて、最低10年$350 million、$400 millionだってあり得るとかいう話がマスコミを通じて流れていました。結果から見ればその代理人の強腰をYankeesは嫌気したのではと思える節がある。自前でマイナーからあがってきたばかりのAaron Judgeもいて、さらに昨オフはMarlins解体という突発事態が発生してそちらでStantonが獲得できることになった。だったらそちらでとYankeesは舵を切って、Harperの代理人と翌オフ(=今オフ)に銭闘をするのを避けたと言えそう。Harper獲得に向けてチーム内のサラリーを整理してみたり、地元マスコミがHarper獲りが確定事項のようにファンの期待を煽る報道し始めたら契約交渉は代理人の売り手ペースにハマってしまう。そんな不利な交渉をするよりも、Stantonの確定契約を引き受けた方が確実だと読むのはYankeesのGMからしたら正しい読みだったでしょう。特にMarlinsはファイヤーセールの真っ最中だったのでStantonの契約額面からの実質の値引き(Marlinsの負担分)もあり、吹かしまくっていたHarperサイドの言い値よりはずっとお得にStantonを獲得できた。そういうふうに私には見えます。

これと同じことをPhilliesの首脳陣も考えたのではないか、というのが今回の私の憶測です。相思相愛のはずのTrout獲得がPhilliesの未来の既定路線ととられてファンが期待し始めるとそこからは交渉はTroutの代理人ペース。既に昨年の時点で憶測記事でTroutの次期契約は総額$500 millionだ!なんてのも飛び出しているぐらいですから。それでビビったのではないかと。
そんなぐらいならYankeesがStantonを獲ってHarper熱を未然に防いだように、Harperを獲得してTrout獲得論の過熱を未然に防いだのかな、と。
特に昨オフ今オフとMLBのFAの市場は厳冬と球団側にとっては好環境。Harperの最終妥結額もFA宣言前にさんざん吹かしていたような金額には伸びなかった。確かにHarperの契約は総額でアメスポ最大の契約ではあるものの、MLBの収入の伸びを考えればオーナー側の許容範囲内の金額での決着で、それで2年後のTroutのFA狂想曲に付き合わない理由付けも完了してPhilliesの首脳陣も安堵という構図かなあ、と。