昨日書いたNBAでのTom Thibodeauが解雇された件と、MLBのフライボール革命をリンクさせて語ってみたいと思います。ジャンル違いの話ですが根底にあるものは同じだと思われるからです。

MLBのフライボール革命というのはものすごく大雑把に言えば強く叩いた飛球であればあるほど攻撃側に有利なのでそれを徹底的に意図して打てというものです。細かい理論はさまざまあって打球の角度やスピンについての理屈もあるのですが大雑把にはそういうことです。
ほぼ時を同じくしてバスケットボールNBAでは3ポイントシュートの攻撃に占める割合が飛躍的にアップしました。

野球の強打にせよ、バスケの3ポイントシュートにせよ、一発決まれば破壊力があるのは以前から感覚的には知られていたのですが、その成功確率の詳細がどうなっているのかはわかっていなかった。失敗も当然ある。確実度が上がる(ように見えた)攻撃方法も他にあった。だから誰もが強振をするわけではなかったし、誰もが3ポイントを打つことはなかった。
それがMLBならAmazonが提供するStatcastが確実なデータとしてすべての打者打席打球の解析をしたところ強振こそが成功への近道だと喝破され、実際にそれを実践したチームが勝つようになった。バスケでは3ポインターを打ちまくるチームが王朝を築いている。

3ポインターの大雑把な話は、3ポイントラインからのシュート成功率が33%だとすると100本打って99得点。これと同じ得点を2ポイントシュートで得るにはほぼ50%のシュート成功確率が必要です。現在のNBAの選手たちの実力からすると3ポイントラインからの33%の成功は比較的たやすいです。現時点の今季の成績を見るとNBA30チーム中、33%を下回っているのはわずか2チーム(1つはRussell Westbrookが絶不調のOklahoma City Thunder)。一方2ポイントシュートは6チームが50%を下回っています。
もちろんこれは単純化し過ぎで、ゴール下へ攻め込めば相手の反則を誘えるので2得点以上の利得はあるのですが、例えば同じ2ポイントシュートでも反則を誘うことがほとんどないミドルジャンプシュートは50%の成功確率では33%の3ポインターとやっと同等。ミドルシュートを50%の確率で決める選手など実際はまずいないし、3ポインターを33%なんていうのはプロの連中はチーム全体の確率としても楽々超えます。

MLBにおいてはフライボール革命に逆らった選手もベテラン選手が少数いました。Ichiroなどは最たる例でしょう。しかし若手にはそんなことは許されずマイナーからガンガン振らされる。概ねMLB全球団がフライボール革命に沿った攻撃に変わったと言っていいでしょう。(思い出してみると何十年も前からほぼ全員がフルスイングをしていたキューバの代表チームは感覚的に正しい野球をしていたと言えるのかも)
NBAもほんのここ2年ほどで3ポインターかゴール間近からのショットかのほぼ二択に変わってしまいました。現在絶好調のHouston Rocketsなんかは徹底しすぎていて本当かどうか今季ミドルシュートゼロなんていう日もあったとか。
そういうトレンドの中でミドルからのジャンプシュートを得意としていたCarmelo AnthonyはこのNBAの戦術変更の波の中に取り残されて、出場機会を失ないこのまま引退かというところまで追い詰められてます。

Thibodeauの解雇の話につなげます。昨季2017-18シーズンではThibodeauのMinnesota Timberwolvesの3ポイントシュートの機会はリーグ最下位の22.5回。トップのHouston Rocketsは42.3回とTimberwolvesの倍近い。ちなみに3ポイント猛爆の印象の強いGolden State Warriorsはリーグ16位の28.9回と意外と少ない。ただしWarriorsは成功率が39%を超える圧倒的なリーグ1位だったので破壊力は高いということになります。
Timberwolvesの成功率はリーグ19位で35%。それでも上で例として検討した33%の3ポインター成功率は楽にクリアしているのです。35%も入っているとなると昨季既に顕在化していたトレンドとしては3ポインターにもっと頼るべきだったとも言えるのですが、Thibodeauはそのトレンドを受け入れなかった。

スポーツチームには現場組と背広組がいて、現場組は放って置くと経験則でものごとを継続しがちな面がある。それを背広組がデータをもとに現場の指揮に口出ししているのがもっとも明らかなのでMLBですが、NBAもそうなってきているように見える中、現場&背広兼任のGM兼HCだったThibodeauにはそれを強要する背広組がいなかったことになります。

今季になってTimberwolvesの3ポイントシュート機会は明確に増えました。シーズンオフにオーナーから言われたか、自らデータを踏まえて方向転換を決意したかなにかでしょうね。シーズンを半分終えた現時点で32.9回、37%。成功率はリーグトップです。方向転換は成功と評価すべき数字でしょう。5割近くアテンプトが増えて、成功がリーグトップなら破壊力抜群のはずです。
3ポインターの戦術は変更したが、しかしながらチーム成績はさほど伸びず。まだまだプレーオフ圏内はすぐ手の届くところで、ここから何をどう変えるかというタイミングでクビとなってます。

MLBとNBAはデータと確率が急激に重視されているのがThibodeauのような古株のコーチの職を奪ったのかもなあと思わされるところがあります。
次はフットボールにもデータ重視が幅を利かせるようになるんでしょうか。